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第一章 【転機、あるいは死期】
*帰還
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星が落ちたかのような一撃。頭部を爆散させた【赤黒蠍】はその身体から力を失い、轟音と共に崩れ落ちた。生命活動を止めた身体の端から黒い甲殻が塵となって消えていく。
ひしゃげた背甲まで食い込んだ大槌を引きずり出し、おもむろにジンさんは討伐証明となる硬質な尾の先端を、崩壊する前に根元を叩き潰して回収する。ガラスの割れる様な音と共に砕けるそれをぼんやりと眺めながら、私は痺れる手足を背中に預け、安堵と共に意識を手放した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…………面倒臭ェ……」
背中から引きずり下ろしたが、少女は一向に目が覚める気配がない。消耗し切った彼女を叩き起したところで、一人で歩かせることは出来ないだろう。舌打ちをして少女を肩に担ぎ直す。ジンは強化された肺活量で指笛を吹き鳴らし、馬車を呼ぶ。訓練された馬が彼を見つけるまでさほど時間はかからなかった。そのまま荷台に砕き割った針の先端と引きずり出した大ぶりな球体状の【核】、そして大槌、そしてメリアもまとめて押し込む。乱雑な扱いにも目覚めようとしない少女。ジンは少しの間、その寝顔に誰かを重ねるように眺めた。
「…………セラ」
ぽつりと口端から零れたその声は、本人の耳にも入ることは無かった。ジンは前を向き、馬の背に鞭を振るう。
崩壊して塵の山となった【赤黒蠍】には既に死肉を屠る類の怪物が群がりつつある。齧る場所の少ない怪物だ。殻だけ残してすぐに矛先をこちらへ向けるだろう。ジンは馬の背へ鞭を振るった。
目的は達成した。
後は間に合うかどうか。
荷台の少女は彼の望みも目的も
今は知る由も無いまま眠るのだった。
〖ハルテア砂漠探索任務終了 〗
〖想定外討伐【赤黒蠍】〗
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……頭痛が酷い。目の奥がズキズキと痛む。最悪のコンディションだ。よくこれで眠っていられたなと先程までの自分を賞賛する。このまま再び眠るのは無理そうだと、私は身を起こす。見覚えのある天井に少し埃臭いベッド。自分の家だ。……仮宿だが。そのまましばらくぼんやりと辺りを眺め、状況を確認する。……裸体に包帯、その上に下着という何とも刺激的な格好ではあるが、それよりもその下にジクジクと痛む傷の痛みが、あれは現実だと告げていた。
「……生きてる……」
私がポツリと呟いた瞬間、外開きのドアが内側に吹き飛ぶ。
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!?」
「起きたか。出ろ。」
「貴方ドアの開け方それしか知らないんですかァ!?」
相変わらずの雑っぷりに精一杯の文句をぶつける。そして自分があられも無い格好だと言うことに気づき、慌てて隠すように掛布を身体に引き寄せる。
「ちょ、私服着てないんです!!!」
「俺の知ったことじゃ無ぇ」
「そういう問題じゃないんですよ!!!」
私の絶叫はボロ宿を通り越し、朝の活動を始めた街に虚しく響くのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一章はこれで終了となります!
彼らの物語がどう進んでゆくのか、
書きたいことはまだまだ沢山あります!
どうかもう少しの間だけお付き合い下さい!
よろしくお願いします!
あとすこしでも面白いな、と
思っていただければ、ご友人などに
勧めていただければ……💦
いかんせん見ていただく機会が
少ないもので……もしよろしければ
お願い致します!!
ひしゃげた背甲まで食い込んだ大槌を引きずり出し、おもむろにジンさんは討伐証明となる硬質な尾の先端を、崩壊する前に根元を叩き潰して回収する。ガラスの割れる様な音と共に砕けるそれをぼんやりと眺めながら、私は痺れる手足を背中に預け、安堵と共に意識を手放した。
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「…………面倒臭ェ……」
背中から引きずり下ろしたが、少女は一向に目が覚める気配がない。消耗し切った彼女を叩き起したところで、一人で歩かせることは出来ないだろう。舌打ちをして少女を肩に担ぎ直す。ジンは強化された肺活量で指笛を吹き鳴らし、馬車を呼ぶ。訓練された馬が彼を見つけるまでさほど時間はかからなかった。そのまま荷台に砕き割った針の先端と引きずり出した大ぶりな球体状の【核】、そして大槌、そしてメリアもまとめて押し込む。乱雑な扱いにも目覚めようとしない少女。ジンは少しの間、その寝顔に誰かを重ねるように眺めた。
「…………セラ」
ぽつりと口端から零れたその声は、本人の耳にも入ることは無かった。ジンは前を向き、馬の背に鞭を振るう。
崩壊して塵の山となった【赤黒蠍】には既に死肉を屠る類の怪物が群がりつつある。齧る場所の少ない怪物だ。殻だけ残してすぐに矛先をこちらへ向けるだろう。ジンは馬の背へ鞭を振るった。
目的は達成した。
後は間に合うかどうか。
荷台の少女は彼の望みも目的も
今は知る由も無いまま眠るのだった。
〖ハルテア砂漠探索任務終了 〗
〖想定外討伐【赤黒蠍】〗
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……頭痛が酷い。目の奥がズキズキと痛む。最悪のコンディションだ。よくこれで眠っていられたなと先程までの自分を賞賛する。このまま再び眠るのは無理そうだと、私は身を起こす。見覚えのある天井に少し埃臭いベッド。自分の家だ。……仮宿だが。そのまましばらくぼんやりと辺りを眺め、状況を確認する。……裸体に包帯、その上に下着という何とも刺激的な格好ではあるが、それよりもその下にジクジクと痛む傷の痛みが、あれは現実だと告げていた。
「……生きてる……」
私がポツリと呟いた瞬間、外開きのドアが内側に吹き飛ぶ。
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!?」
「起きたか。出ろ。」
「貴方ドアの開け方それしか知らないんですかァ!?」
相変わらずの雑っぷりに精一杯の文句をぶつける。そして自分があられも無い格好だと言うことに気づき、慌てて隠すように掛布を身体に引き寄せる。
「ちょ、私服着てないんです!!!」
「俺の知ったことじゃ無ぇ」
「そういう問題じゃないんですよ!!!」
私の絶叫はボロ宿を通り越し、朝の活動を始めた街に虚しく響くのだった。
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一章はこれで終了となります!
彼らの物語がどう進んでゆくのか、
書きたいことはまだまだ沢山あります!
どうかもう少しの間だけお付き合い下さい!
よろしくお願いします!
あとすこしでも面白いな、と
思っていただければ、ご友人などに
勧めていただければ……💦
いかんせん見ていただく機会が
少ないもので……もしよろしければ
お願い致します!!
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