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マルフィに起きた大異変
66話 透明なスライムに襲われたわ......
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ユリアナ視点(荒川恵美視点)
61話の続き
前回のあらすじ
エルトロンを探しに山形県の鳥海山へ跳ぶ
↓
天狗と出会い、ディメルバケイブの事を聴き、入り口へと向かう
--------------------------------
「大きいね.....」
「うん......大きいね」
私達は天狗さんと別れた後、すぐにディメルバケイブの入り口へと向かった。
そして、今、その入り口を二人で見つめている。
洞窟の入り口は異常な大きさで、高層ビルが丸々入るのでは無いだろうか。
周囲の緑も相まって、その巨大な穴により雄大な景色が生み出されている。
再度、探知魔法を使ってみたが、この奥を進めばエルトロンがいるので間違いなさそうだ。
「魔物がいるみたいだから気を付けていこう」
私は足元の岩を踏み前進しつつ、マルシャに声をかける。
「魔物がアホみたいにいるって天狗さん言ってたね。戦闘はパーゲトル殲滅以来か......戦いたくないなぁ」
マルシャは両手で自分の身体を抱きかかえるようにして呟きつつ進む。
「そうだね.....」
役割にもよるのだが、天使が戦闘をすることは意外と多い。
人間の進歩を見守る仕事が主なのだが、人間の進歩を妨げる存在がいくつもいるのだ。
邪神を筆頭とする魔族や魔物などがその一つである。
アースで悪霊と呼ばれる存在も魔族の内に入り、魔族の範囲は広い。
魔族かそうでないかは”何かに対する悪意により容貌が醜悪になっていれば魔族であろう”という曖昧な判断基準で分けられている。
魔族は頻繁に人間を支配し、悪影響をもたらす。
その規模が大きくなると天使が出向いて、その魔族を退治するのだ。
そのために、天使は父から力を与えられていて、魔族の多くは問題なく退治することができる。
しかし、たまに天使が何百人といても敵わないような魔族も存在する。
そうした時には神々、さらには破壊神などが出向くこともある。
なぜ、魔族が人間を支配し悪影響を出したがるのか?
《人間を欲望に忠実にさせるほど魔族としての力が上昇する》
という法則があるためだというのが、一般的な説である。
それを裏付けるように、過去、私が見てきた例でも、アースの人間を誑かし、欲まみれの状態にした魔族ほど、強い力を持っていたのだ。
一方、天使の力の向上は、魔族と真逆の法則が働いている。
《人間が自身の欲望に負けず、世界のために尽くすように導く》
ということで、天使としての力は向上していく。
ちなみに、”人間”というのは自身も含まれていて、自身が欲望に負けず世界のために尽くす場合でも、天使としての力が向上する。
そういう意味では、私はまだまだ自我が分厚く、世界よりも自分の思いに従ってきた面もある。正直、なぜ、私程度の精神で天使になれたのか昔から疑問なぐらいである。
「わわ!洞窟の中すっごく暗い!」
洞窟の入り口から中へと進むほどに暗くなり、マルシャが慌てた声を出す。
「じゃあ、私が明かりをつけるね」
周囲を照らすのは初歩的な光魔法で可能である。
私とマルシャを中心に光が広がるイメージをする。
同時に、二人の足元に魔法陣が広がり、そこから光が飛沫をあげ周囲に巻き散った。
光の飛沫が落ちた所からみるみる光が広がっていき、半径30メートルぐらいの範囲まで明るくなる。
天使かどうかに関わらず、ほどほど明るくて思いやりのある精神があれば、周囲を明るくする光魔法を使用できる素質はあるだろう。(使える事を自覚しなければ使えないと思うが)
明るくなった洞窟内を見渡してみた。
灰色の岩がゴロゴロしている、何の変哲もない洞窟である。
ただ、”何の変哲もない洞窟”と感じるのは、転生によりアースを経験した事による感覚だ。
というのも、灰色の岩など存在しない世界もある。
基本的には、上層の世界であるほど岩などの無機物においても美しさが備わる傾向がある。
マルフィはアースの写しとも呼べる世界なので、アースと同様の光景が目の前に広がっている。
「うわぁ!!!いたたたた.......」
マルシャが岩につまづいて転んだ。
何となく歩いてみたけど、この足場じゃ中々進めないわ。
「大丈夫?飛翔魔法で行こうか」
「あ......そうか。洞窟の中だからって歩いていく必要はないね」
マルシャが体を起こしながら同意する。
私達は飛翔魔法で地面から1メートルほど浮かび上がると、ゆっくりと前進していった。
「まだ魔物はいないね....このまま出てこないといいなぁ」
マルシャが変なフラグを立ててる。
「そうね.......」
先へ進み、傾斜を少し下りていくと、壁から湧き水が出ていて、岩が段々になっていて一段ごとに小さい池を作っている箇所があった。
こういうのをリムストーンプール(日本名 畔石池)と言うらしい。
一番下には大きな池が出来ている。
「水が溜まってる!何だか綺麗ね」
アースで友人と女二人で旅行に行き、山口県の秋芳洞という鍾乳洞に行ったのを思い出す。
「んん?ユリアナ......この大きな池.....水面の波うち方がおかしくない?なんかドロドロしたスライムみたいな.......」
大きな池の真上を飛び、私も池の様子を見ようとした。
その瞬間.......
「危ない!!ユリアナ!!!」
私目掛けてスライムの触手のようなものが襲い掛かってきた。
魔法障壁など間に合うはずもない。
(私は魔法障壁の常時発動などできないのだ)
私は透明なスライムに飲み込まれた。
うわぁー!!!こんなのやだー!体中ヌルヌルして気持ち悪いよ!!
あうぅ....息も出来ない!!
マルシャが物理魔法である念動絹糸で私を引きずり出そうとするのを感じるが、スライムががっちりと私をホールドしているらしい。
マルシャの念動絹糸は大型フェリーでも余裕で浮かせられるのに......
なんでなの?
私は自分に出来る事を必死に探る。
相手は流体.......それに対して、私に出来る魔法は.....あったぁ!!
流体相手の定番中の定番。
氷魔法だ。
絶対零度を発動する。
私は体を丸め両手で抱え、私の周囲を凍結するイメージを浮かべた。
身体を丸めるのは、スライム凍結時に固定される部位を減らすためである。
私の身体中に、ひも状の魔法陣が瞬間的に出現する。
ガチィ!ピシピシ....
発動したら、スライムが凍結していった。
一瞬の出来事である。
スライムと接していた大きな池も1秒ほどの時間差で凍結した。
それと同時に、マルシャが凍ったスライムの上部を念動絹糸《サイコスレッド》によって砕き、私を外に出してくれた。
「ユリアナ!!........大丈夫?.......なんかすごい髪型になってるけど....」
マルシャが私の髪についた氷をペタペタ触りながら言う。
サファイアブルーの髪が真上に逆立って凍っている。
「助けてくれてありがとう......この氷は自分で溶かせるから大丈夫」
意志を氷に通すことで溶かした。
この氷は魔法を使用した人間の精神エネルギーにより出来ているため、氷に意志を通すことで自在に溶かせる。
髪が下りてきて、いつものボブカットに戻った。
氷魔法は冷徹な部分を持ち合わせている人間が得意とするものだ。
あと、氷魔法が得意なのは、ツンデレっぽい人が多かったような......
荒川恵美としての人格にはツンデレ要素が多いのだろうか。まあ........過去の自分を振り返れば納得がいく。どうやら、荒川恵美の個性により、以前よりも絶対零度の威力が遥かに上昇している。
ちなみに、マルシャの念動絹糸は、執着の少ないフワフワした性質により適性が上がってくる。
この魔法の使い手は、マイペースで掴みどころの無い人が多かったような。
それにしても、危なかった.....
やっぱり魔物がいるのね。この池を寝床にしていたのかしら。
凍結して動かなくなったスライムを横目に考える。
マルシャの念動絹糸は大型フェリーといった巨大質量でも自由に動かせるし、パーゲトル殲滅の際にもその力をいかんなく発揮していた。
マルシャが私を引きずり出せなかったのは、このスライムが強力なのか.......それとも...マルフィで力を発揮しにくい理由でもあるとか?
氷魔法はスライムと相性が良かったから通用しただけで、私もパーゲトルほどの力を発揮しにくい可能性もある。
まだこの辺の事情はよく知らないから、注意深く進まないと......
う~ん、そうだ。
このスライムのリーディングをしてみようかな。
何かマルフィに関する情報が得られるかもしれない。
61話の続き
前回のあらすじ
エルトロンを探しに山形県の鳥海山へ跳ぶ
↓
天狗と出会い、ディメルバケイブの事を聴き、入り口へと向かう
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「大きいね.....」
「うん......大きいね」
私達は天狗さんと別れた後、すぐにディメルバケイブの入り口へと向かった。
そして、今、その入り口を二人で見つめている。
洞窟の入り口は異常な大きさで、高層ビルが丸々入るのでは無いだろうか。
周囲の緑も相まって、その巨大な穴により雄大な景色が生み出されている。
再度、探知魔法を使ってみたが、この奥を進めばエルトロンがいるので間違いなさそうだ。
「魔物がいるみたいだから気を付けていこう」
私は足元の岩を踏み前進しつつ、マルシャに声をかける。
「魔物がアホみたいにいるって天狗さん言ってたね。戦闘はパーゲトル殲滅以来か......戦いたくないなぁ」
マルシャは両手で自分の身体を抱きかかえるようにして呟きつつ進む。
「そうだね.....」
役割にもよるのだが、天使が戦闘をすることは意外と多い。
人間の進歩を見守る仕事が主なのだが、人間の進歩を妨げる存在がいくつもいるのだ。
邪神を筆頭とする魔族や魔物などがその一つである。
アースで悪霊と呼ばれる存在も魔族の内に入り、魔族の範囲は広い。
魔族かそうでないかは”何かに対する悪意により容貌が醜悪になっていれば魔族であろう”という曖昧な判断基準で分けられている。
魔族は頻繁に人間を支配し、悪影響をもたらす。
その規模が大きくなると天使が出向いて、その魔族を退治するのだ。
そのために、天使は父から力を与えられていて、魔族の多くは問題なく退治することができる。
しかし、たまに天使が何百人といても敵わないような魔族も存在する。
そうした時には神々、さらには破壊神などが出向くこともある。
なぜ、魔族が人間を支配し悪影響を出したがるのか?
《人間を欲望に忠実にさせるほど魔族としての力が上昇する》
という法則があるためだというのが、一般的な説である。
それを裏付けるように、過去、私が見てきた例でも、アースの人間を誑かし、欲まみれの状態にした魔族ほど、強い力を持っていたのだ。
一方、天使の力の向上は、魔族と真逆の法則が働いている。
《人間が自身の欲望に負けず、世界のために尽くすように導く》
ということで、天使としての力は向上していく。
ちなみに、”人間”というのは自身も含まれていて、自身が欲望に負けず世界のために尽くす場合でも、天使としての力が向上する。
そういう意味では、私はまだまだ自我が分厚く、世界よりも自分の思いに従ってきた面もある。正直、なぜ、私程度の精神で天使になれたのか昔から疑問なぐらいである。
「わわ!洞窟の中すっごく暗い!」
洞窟の入り口から中へと進むほどに暗くなり、マルシャが慌てた声を出す。
「じゃあ、私が明かりをつけるね」
周囲を照らすのは初歩的な光魔法で可能である。
私とマルシャを中心に光が広がるイメージをする。
同時に、二人の足元に魔法陣が広がり、そこから光が飛沫をあげ周囲に巻き散った。
光の飛沫が落ちた所からみるみる光が広がっていき、半径30メートルぐらいの範囲まで明るくなる。
天使かどうかに関わらず、ほどほど明るくて思いやりのある精神があれば、周囲を明るくする光魔法を使用できる素質はあるだろう。(使える事を自覚しなければ使えないと思うが)
明るくなった洞窟内を見渡してみた。
灰色の岩がゴロゴロしている、何の変哲もない洞窟である。
ただ、”何の変哲もない洞窟”と感じるのは、転生によりアースを経験した事による感覚だ。
というのも、灰色の岩など存在しない世界もある。
基本的には、上層の世界であるほど岩などの無機物においても美しさが備わる傾向がある。
マルフィはアースの写しとも呼べる世界なので、アースと同様の光景が目の前に広がっている。
「うわぁ!!!いたたたた.......」
マルシャが岩につまづいて転んだ。
何となく歩いてみたけど、この足場じゃ中々進めないわ。
「大丈夫?飛翔魔法で行こうか」
「あ......そうか。洞窟の中だからって歩いていく必要はないね」
マルシャが体を起こしながら同意する。
私達は飛翔魔法で地面から1メートルほど浮かび上がると、ゆっくりと前進していった。
「まだ魔物はいないね....このまま出てこないといいなぁ」
マルシャが変なフラグを立ててる。
「そうね.......」
先へ進み、傾斜を少し下りていくと、壁から湧き水が出ていて、岩が段々になっていて一段ごとに小さい池を作っている箇所があった。
こういうのをリムストーンプール(日本名 畔石池)と言うらしい。
一番下には大きな池が出来ている。
「水が溜まってる!何だか綺麗ね」
アースで友人と女二人で旅行に行き、山口県の秋芳洞という鍾乳洞に行ったのを思い出す。
「んん?ユリアナ......この大きな池.....水面の波うち方がおかしくない?なんかドロドロしたスライムみたいな.......」
大きな池の真上を飛び、私も池の様子を見ようとした。
その瞬間.......
「危ない!!ユリアナ!!!」
私目掛けてスライムの触手のようなものが襲い掛かってきた。
魔法障壁など間に合うはずもない。
(私は魔法障壁の常時発動などできないのだ)
私は透明なスライムに飲み込まれた。
うわぁー!!!こんなのやだー!体中ヌルヌルして気持ち悪いよ!!
あうぅ....息も出来ない!!
マルシャが物理魔法である念動絹糸で私を引きずり出そうとするのを感じるが、スライムががっちりと私をホールドしているらしい。
マルシャの念動絹糸は大型フェリーでも余裕で浮かせられるのに......
なんでなの?
私は自分に出来る事を必死に探る。
相手は流体.......それに対して、私に出来る魔法は.....あったぁ!!
流体相手の定番中の定番。
氷魔法だ。
絶対零度を発動する。
私は体を丸め両手で抱え、私の周囲を凍結するイメージを浮かべた。
身体を丸めるのは、スライム凍結時に固定される部位を減らすためである。
私の身体中に、ひも状の魔法陣が瞬間的に出現する。
ガチィ!ピシピシ....
発動したら、スライムが凍結していった。
一瞬の出来事である。
スライムと接していた大きな池も1秒ほどの時間差で凍結した。
それと同時に、マルシャが凍ったスライムの上部を念動絹糸《サイコスレッド》によって砕き、私を外に出してくれた。
「ユリアナ!!........大丈夫?.......なんかすごい髪型になってるけど....」
マルシャが私の髪についた氷をペタペタ触りながら言う。
サファイアブルーの髪が真上に逆立って凍っている。
「助けてくれてありがとう......この氷は自分で溶かせるから大丈夫」
意志を氷に通すことで溶かした。
この氷は魔法を使用した人間の精神エネルギーにより出来ているため、氷に意志を通すことで自在に溶かせる。
髪が下りてきて、いつものボブカットに戻った。
氷魔法は冷徹な部分を持ち合わせている人間が得意とするものだ。
あと、氷魔法が得意なのは、ツンデレっぽい人が多かったような......
荒川恵美としての人格にはツンデレ要素が多いのだろうか。まあ........過去の自分を振り返れば納得がいく。どうやら、荒川恵美の個性により、以前よりも絶対零度の威力が遥かに上昇している。
ちなみに、マルシャの念動絹糸は、執着の少ないフワフワした性質により適性が上がってくる。
この魔法の使い手は、マイペースで掴みどころの無い人が多かったような。
それにしても、危なかった.....
やっぱり魔物がいるのね。この池を寝床にしていたのかしら。
凍結して動かなくなったスライムを横目に考える。
マルシャの念動絹糸は大型フェリーといった巨大質量でも自由に動かせるし、パーゲトル殲滅の際にもその力をいかんなく発揮していた。
マルシャが私を引きずり出せなかったのは、このスライムが強力なのか.......それとも...マルフィで力を発揮しにくい理由でもあるとか?
氷魔法はスライムと相性が良かったから通用しただけで、私もパーゲトルほどの力を発揮しにくい可能性もある。
まだこの辺の事情はよく知らないから、注意深く進まないと......
う~ん、そうだ。
このスライムのリーディングをしてみようかな。
何かマルフィに関する情報が得られるかもしれない。
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