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第三部 王都の社交
111.ソフィー様からのお誘い
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「まあ。思い出の場所を修繕したいだなんて。公爵様はマリーベル様のことが本当にお好きなのですね」
イザベル様が両手の指先を胸元で合わせるようにして感嘆の声を上げる。
なんだか心持ち目がきらきらしているような様子に、ええまあと応じて。
わたしは若干引き攣る口元を扇で隠し、目元だけで微笑んだ。
お祖母様やソフィー様がお使いなのを見て、表情を隠すのにいいかもと思っていたけれど。
扇、やはり便利だ。
装いに不釣り合いにならなければそれでいいのに、ルイが凝り性なものだから社交期間も終盤になって、頼んだものがようやく届けられたのだけど。
透かし彫りを施した象牙の骨に、夏の晴天の淡い青から野の緑の色を映したように、美しく染めた薄絹を張った扇。
まるでルイの魔術の陣の紋様の如く、それはもう精緻な四季の女神の象徴も含めた図案が銀糸で刺繍されていて、この扇一つで農夫の一家が二年は遊んで暮らせると思う。たぶん。
浪費家の公爵夫人、なんて噂が立ったらどうしてくれるのかしら、なんてとりとめもないことも思いつつ。
セギュール侯爵家の中庭を望むサロンで、カトリーヌ様、イザベル様、ソフィー様とのお茶の席にわたしはいた。
なんとなくルイへの文句を浮かべてしまうのは、カトリーヌ様とソフィー様からの視線が妙に穏やかなのを大聖堂の話をし始めたあたりから感じて……なんだか居た堪れないのもあってのことで。
「本当に、愛されておりますわよね」
呆れ半分に据わった眼差しをわたしに向けてのソフィー様の呟きに、ご自分だって鬱陶しがって喧嘩に発展するぐらい、法務大臣様に溺愛されているじゃないですかと思いながら、白い小さな器を空いた手にお茶を飲む。
青い模様の映える、つるりとした取手のない茶器は東の大陸からの渡来品らしい。
「マリーベル様の惚気話はいつもの事として」
ちょっと待ってください、ソフィー様!
惚気話だなんて、これっぽっちもした覚えありません!
わたしがそう内心叫びながら、どう返したものかと言葉を選んでいる内に、ソフィー様はさっさとわたしからカトリーヌ様へと視線を移動させて、話題も移してしまう。
「カトリーヌ様の“青のお部屋”は、やはり素敵ですわね」
「貴女、もう五度はいらしてるでしょう」
「王都で指折りの美しさと称えられる侯爵邸の中でも、とりわけ飽きのこない美しいお部屋だと思いますもの」
たしかに。
訪ねる前からマルテがそれはもう楽しみにしていただけあって、セギュール家の邸宅は素敵だ。
夜会の時は暗くて建物やお庭がよく見えなかったけれど、門から母屋の建物までの真四角の庭を囲う左右の棟を持つ、白大理石に青がかった鉄色の屋根が特徴的な、ソフィー様の言葉通りに美しいお屋敷だった。
“青のお部屋”は、カトリーヌ様の私室の一つで、先日夜会が行われた大広間からさらに奥まった、右翼に繋がる廊下が見える突き当たりの一室である。
鮮やかな薄青の壁布が張られ、壁布が張られていない壁面には白に金彩を施した花綱飾り象った木彫りの装飾板が嵌め込まれている。
天井へ続く上部を白い石膏のレリーフが飾り、控えめながら凝った華やかさがある。
アルコーブのあるアーチ型の大きな窓から出られるお庭は、フォート家の邸宅の庭に勝るとも劣らない広さで、中央に噴水を備える贅沢さだ。
ソフィー様の褒め言葉に、わたしも頷く。
「夜会の壮麗さとはまた違った、昼間の美しさですね」
「あら、あの邸に住んでいる貴女に褒められるなんて光栄ね」
「それなりにはしましたけれど、こちらは急拵えです」
「まあっ、マリーベル様ったら。あのナタンに手掛けさせたのでしょう? それだけでもうこの夏の前哨戦はフォート家のひとり勝ちでしたのに!」
「ソフィー様、そんな大袈裟な……」
社交期間に関係なく、王都住まいのお二人からそこまで仰っていただけるような邸宅ではない。どちらの家の邸宅も、王都屋敷として長年工夫を凝らしてきたに違いない。
先々代から最低限の管理だけでほぼ放置。中は寂れたままにしていたフォート家とは違う。
困惑するわたしに、イザベル様が穏やかに微笑んだ。
「大袈裟ではありませんよ。わたくし達、王都住みの者の間では、春先からあの一等地でまったく人の気のなかったお屋敷がと、度々噂になっておりましたもの」
「そういえば。イザベル様も年中王都にお住まいなのでしたね」
「はい。夫が王宮に仕えておりますので。領地はこの北部でも北の辺りなのですけれど」
「ヴァランシエンヌ領ってたしか、海の側でしたわね」
「ですが、ほとんど断崖絶壁ですのよ、ソフィー様。下りられるところも岩が多く港にも不向きでただ眺めるだけです。西や南と違って陰鬱な風景で……夫が気難しいのもあの景色を見て育ったからではないかしらと思うくらい」
「まあ」
「あっでも、貝は美味しいです。特にこれからの秋から春の間は。わたくしも嫁いで初めて食べた時はもうびっくりしてしまって」
うっとり頬に手を当てて思い出すように目を閉じるイザベル様に、わたしもソフィー様もカトリーヌ様までも少しばかり前のめりになる。美味しいものはみな好きだ。
「……王宮仕えといえば」
ふと、ソフィー様が声をひそめて呟いた。
「あら、なにか面白いお話?」
高貴な紫色の目を細めてカトリーヌ様が軽く手を払い、壁際に控えている人達に部屋を出るよう伝える。
給仕やなにか用あれば対処にあたる使用人だけで、男女混合で六人。
彼等が身を軽くかがめて静かに部屋を出ていくのを目の端で追いながら、そうよねえお茶だけにしても普通はこれくらいの人数よねと、今更ながらフォート家の使用人の少なさをわたしは思う。
他にも部屋の外に、護衛騎士や扉を開ける従僕の方も、扉の左右に控えていらっしゃる。
カトリーヌ様のお世話をする侍女もジャンヌ嬢だけでなく、それぞれ仕事を分担して複数いる。
王都屋敷でこの人数。領地の屋敷はもっと多いはず。
侍女といえば、今日集まった夫人達のお供の彼女達は、カトリーヌ様の計らいで別室で労われている。
あちらはあちらでお茶会となっていることだろう。
マルテの他は、下級貴族のご令嬢か、夫と共に隠居生活に入った後に未亡人となられた元伯爵夫人で貴族女性。
もっともマルテも王都に出る前に、王宮に出入りする公爵夫人の侍女が貧民街の孤児というわけにもといったことで、孤児院長の養女の手続きを済ませている。
孤児院長はトゥルーズの子爵家当主の母親で、息子が家督を継いでから慈善事業で孤児院運営を行なっている人だ。
だからマルテは表向き子爵令嬢ということになっている。
テレーズについては、元々父親がロタールの統括組織でそこそこ上級の文官なので問題はない。
「なんだか王宮で人の入れ替えがあるようですね。現宰相が退けられるとか」
「えっ!?」
そ、そんな重大な事こんなところで迂闊に話していいんですかっ、ソフィー様。
おまけになんだか含みのある微笑みをカトリーヌ様に向けている。
「ユーグ様がずいぶん水面下で動いていらっしゃったとか。いつも異国から戻ってはすぐまたどこかへな“放浪者のロワレ公”も、流石にご令息の結婚となれば王都にいらっしゃるのねと思っておりましたけれど。違ったようですね」
「わたくしはなにも知りませんよ」
「でも……セギュール家は、過去何人も宰相を輩出していらっしゃいますよね。もしかして」
「ですからなにも知らないのよ、イザベル」
ソフィー様とイザベル様に、ふふふと不敵な女王様の笑みを浮かべていらっしゃる。
カトリーヌ様。
それもう、半ば次の宰相はセギュール侯爵ですと仰ってるも同然ですよね?
「……現宰相閣下は、王様を支持しない派閥の方ではありましたものね」
「まあ、そうなのですか!?」
「えっ、イザベル様?」
「マリーベル様……現宰相閣下は陛下の右腕と評判で、かつ表面中立を保っていますから知る方は一握りですわ。流石は元エレオノール様のお側にいらしただけあって事情通ですわね」
「あ、いえ、そういったわけでは」
偶々、偶々知っただけです。
王様と王妃様との仲が一時期冷えかけた原因の一つ。
お若い愛人の噂が王様の評判を落とすための宰相閣下による工作だったと、侍女だった頃に聞いている。
なぜそんな話を、当時王宮勤めの平民だったわたしが耳にしたかといえば。
王妃様にきちんと説明するまで寝室から追い出す構えで、王様と正面切って衝突し、王妃様の側で一緒に事情を聞いたからで……。
あの時は、王妃様のために必死だったけれど。
わたし……よく首を刎ねられずに済んだものだわ。
「マリーベル様? ぼんやりしてどうなさったのですか?」
「え? いいえなにも。なんでもないですよ、ソフィー様。ええなんでもありませんですとも!」
「はあ……」
こんな話。
ソフィー様とカトリーヌ様が知ったら絶対面白がるに決まっている。
「ちょ、ちょっと小耳にそんなことを」
「ま、ルイ様がいらっしゃいますものね」
「ええ、まあ」
ルイからは、ほとんどなにも王宮のことは教えてもらえないけれど。
聞けば教えてくれるというのもなかなか厄介だ。
裏返せば、聞かなければ教えてもらえない。
知らなければできない質問というものもある。
だからわたしにとって、ご夫人達との交友、特に中枢に近いソフィー様やカトリーヌ様、そして中枢の決定を支え現場を管理監督する立場の方を夫に持つイザベル様との交友は、勿論友人付き合いが一番だけれど、本来の社交の意味でも重要だ。
ソフィー様のお話などは、ほぼ中枢の動きと直結する。
なんといっても夫は王様の側近の法務大臣、お兄様は軍部の長官。
王宮に法科院、軍部、何故か魔術の上層との繋がりまであるらしい事情通。
ルイがまだ断定はできないと、それ以上は語らなかった共和国のこともなにか聞いているかもと思ったけれど。
残念ながら、それ以上の話はなかった。
「ところで貴女、エドガーはどう?」
「カトリーヌ様のご紹介通り、とても素敵な絵を描いてくださってますよ」
「でも、おかしな人でしょう。紹介したものの迷惑かけてないかしらと思って」
また話題が移った。
頬に手を当ててそうわたしに尋ねたカトリーヌ様に、なるほど絵ではなくそこが気になっていたのですねと思う。
「まあ……少しばかり変わったところはたしかにありますけれど。ルイに比べたらですから」
「言われてみたらそれもそうね」
あっさり納得されたカトリーヌ様にそれはそれでどうなのと思ったけれど、根の詰め方でいえばルイのが酷いため、あははと苦笑するしかない。
「あの……もしかして、その方ってカトリーヌ様が最近お気に入りの……」
「ええ、イザベル様その通りです」
「どなたですの?」
「カトリーヌ様にご紹介いただいた画家の方です。ルイとわたくしの絵をお願いしているのですよ。フォート家の夜会にもいらしてましたから、ソフィー様もお顔は見てると思います」
「……そういえば、なんだかぼさっとした方がいましたわね。あの方画家でしたの」
「ええ、カトリーヌ様のお手紙で、絵の具合を気にしてくださっていたようでしたから……」
ドレスのポケットから小さく丸めた紙を取り出してテーブルに置く。
エドガーの様子を覗きに行った際、床に無数に落ちていた素描のなかからルイを横顔を描いたものを二枚、本人に尋ねて貰ってきた。
これから噂を流してもらうわけだし、ルイを例の小説の『銀灰公爵』様に重ねて楽しまれているカトリーヌ様とイザベル様向けに。
夫の絵を、こういった場で披露するというのもだけれど、ルイというよりはカトリーヌ様が依頼しているのだろう挿絵の“公爵様”っぽい趣きのもので、エドガーもそれはいらないやつと言っていたから……たぶんそういったものなのだろう。
「こういった、素描を何枚かお描きになられて。昨日からようやく本番の下絵に入ったようです」
「まあっ!」
誰よりも早く声を上げたイザベル様に、その時にはもう一枚をご自分の手元にお持ちになられたカトリーヌ様。
お二人と対照的に冷めた表情のソフィー様の差異がすごい。
「お好きですわねえ……それは人を逆撫でする側の公爵様ですのに」
「鑑賞には耐える人ですもの」
こうして、話はご夫人同志の楽しいお喋りへと戻り。
午後の陽も少し傾いた頃にお茶会もお開きとなり、セギュール邸を辞す間際。
「あの、このあと少しよろしいですか?」
そう、ソフィー様に耳打ちするように声をかけられ、もしかして共和国の件だろうかと思ったわたしは僅かに頷いて了承の意を示した。
セギュール邸をでて一番近くの分かれ道のところでと早口に伝えられた言葉に従って、先に出て指定された場所で馬車を停め、マルテにそちらはどうだったか話を聞きながら待っていると、伯爵家の馬車が並んで停まった。
「すみません、マリーベル様」
窓が開いてかかった声に、同じく窓を開けてどうしたのですかと尋ねる。
「本当は……こんなことはあまり良くないと思うのですけれど。どうしても気になってしまって。これからわたくしと一緒にお越しいただけませんでしょうか?」
「え?」
「帰りはダルブレの馬車でお送りいたします。マリーベル様の身の安全は保証いたします」
流石に共和国の話は大ぴらにできないから個別にと予想したのだけれど、どうやらそれとは違うようだ。それにソフィー様の言葉から読み取るに、わたし一人だけ一緒に来てもらいたいようでマルテの顔を見る。
「奥様……一体……」
「わからないわ。でもご一緒した方がよさそう」
たぶんルイは私室で魔術研究。
わたしが戻ったと声をかけるまでは部屋から出てこない。
とはいってもせいぜい日暮れまでだ。
それ以上は、流石に声をかけずにいたらルイも訝しむ。
「夕刻の鐘が鳴って、日が沈みかけてもわたくしが戻らなかったらルイに伝えて。それまでは静かに」
「はい」
「シモンには戻ってすぐ伝えて頂戴。外のオドレイにはわたしから言っておくから」
わたしは馬車を降りて、御者台のオドレイにマルテに話したことと同じことを伝える。マルテと違って渋った彼女を言い含めて、ソフィー様の馬車に近寄れば中へと招かれた。
「ありがとうございます」
「ソフィー様、一体どういうことでしょうか。帰りはダルブレの馬車ということは、サンシモン家ではなく王家側にご一緒するということですよね?」
ソフィー様の侍女としてついている夫人がいない。
複数の護衛をつれて大抵馬車二台でいらしているから、もう一台の方に乗っているのだろう。
騎乗した護衛騎士らしい人が馬車の後ろに二人ついている。
「ええ。でも誤解なさらないでくださいませ。これはわたくしの独断です。わたくしもやはり帰りたくないからあちらへ戻りますといってきましたから」
「え?」
「そう遠くありませんから、着いてからお話しします」
*****
馬車は小さめの離宮のような場所で停まった。王都に王家縁の建物は大小無数に点在しているけれど、わたしは知らない建物だ。
ユニ領のわたしの家より少しばかり大きいくらい、宮というより館といった様子でかなり小規模なものといえる。
蔓バラで小さなアーチがいくつも整えられているお庭はなんだか可愛らしく、公的な意味合いが強い場所は威厳を重んじるのが基本だから、私的な用途のためのものなのだろう。
やや横長な四角の三階建の建物は灰色の石造り。
細かな装飾がそこかしこに彫り込まれているのは流石だけれど、全体的にやはりなんだか地味だ。地味といってもそれは他の離宮などと比べればの話で、十分凝った装飾ではあるけれど、色石も使わず、金も彩色も施されていない。
主棟の左斜めに低くずんぐりした趣の塔が見える。
「こちらへ、マリーべル様」
ソフィー様の案内されるまままその敷地を歩く。
なんだか……おかしい。
馬車を降りてから誰もついてこない。
「あの、ソフィー様……側仕えの方々は」
「来ません。というより、やはりすんなりとわたくしの後をついてこられるのですね」
「ソフィー様……?」
なんだか少しばかり不可解そうに眉の端を下げて、わたしを見て微苦笑したソフィー様にわたしは首を傾げたけれど、ソフィー様はもう一度微笑んで背を見せただけだった。
「こちらです」
案内されたのは母屋だろう建物ではなく、ずんぐりした塔の側だった。
近づけば、どの窓にも繊細な植物紋様の鉄細工の装飾が嵌め込まれているのが見える。
塔の外観を飾る美しい装飾ではあるけれど、なんだか檻の柵のようでもある。
入口の扉も重々しい鉄扉だ。ぴったり閉じた左右の扉を四つに区切るように、ハアザミの葉を組み合わせた紋様があしらわれている。
「この塔の一番上が、曽祖母のお部屋なのです」
「はあ……」
そうして塔へ入る扉の前でソフィー様は足を止めると、わたしを振り返って少しお待ちくださいませと、手にしている畳んだ扇を静かにと口元に指を立てるように、縦にご自分の唇に軽くあてた。
「そしてどうかこれからご覧になることは、ルイ様以外に他言しないでくださいませ」
「え、あの……」
「初めてお会いした時に薄々お気付きのご様子でしたけれど、このことは一応、わたくしとお兄様とだけの秘密なのです」
「秘密……?」
ソフィーは扇の先を扉の閉じ目へ、すっと持ち上げた。
初めて会った時とは、たぶんルイとのお見合いのことだろう。
フォート家の家督を継いで、十二歳で公爵となることを許されたルイを取り込むため、王家は受洗式を終えたばかり七歳のソフィー様をルイの婚約者にしようとした
薄々お気付きってなんだろうと思ったわたしの疑問は、ソフィー様が発した小さく歌うような声にすぐに解消した。
“貴き種と恵みとその力を護りし冬の女神ケイモーヌに仕え、万物に通じる叡智を司る地の精霊グノーンの眷属……”
聖職者やお祈り以外に、神と精霊の名とともに捧げるような言葉を紡ぐ人を見聞きするのは正直初めてだ。
けれど、それがある事実を示していることはわかる。
まさか。
“地を覆い閉じ込める凍えを解く、雪解けの雫の祝福を許されし証に示す――”
ピィィンと、高音の弦を弾いたような耳鳴りがして。
ぴたりと閉じた鉄の扉に十字に走った白い光が扉を装飾する文様に沿って流れ、ぎいっと鈍く軋む音を立ててひとりでに塔の内へゆっくりと開いていく。
間違いない。
これは、魔術――。
イザベル様が両手の指先を胸元で合わせるようにして感嘆の声を上げる。
なんだか心持ち目がきらきらしているような様子に、ええまあと応じて。
わたしは若干引き攣る口元を扇で隠し、目元だけで微笑んだ。
お祖母様やソフィー様がお使いなのを見て、表情を隠すのにいいかもと思っていたけれど。
扇、やはり便利だ。
装いに不釣り合いにならなければそれでいいのに、ルイが凝り性なものだから社交期間も終盤になって、頼んだものがようやく届けられたのだけど。
透かし彫りを施した象牙の骨に、夏の晴天の淡い青から野の緑の色を映したように、美しく染めた薄絹を張った扇。
まるでルイの魔術の陣の紋様の如く、それはもう精緻な四季の女神の象徴も含めた図案が銀糸で刺繍されていて、この扇一つで農夫の一家が二年は遊んで暮らせると思う。たぶん。
浪費家の公爵夫人、なんて噂が立ったらどうしてくれるのかしら、なんてとりとめもないことも思いつつ。
セギュール侯爵家の中庭を望むサロンで、カトリーヌ様、イザベル様、ソフィー様とのお茶の席にわたしはいた。
なんとなくルイへの文句を浮かべてしまうのは、カトリーヌ様とソフィー様からの視線が妙に穏やかなのを大聖堂の話をし始めたあたりから感じて……なんだか居た堪れないのもあってのことで。
「本当に、愛されておりますわよね」
呆れ半分に据わった眼差しをわたしに向けてのソフィー様の呟きに、ご自分だって鬱陶しがって喧嘩に発展するぐらい、法務大臣様に溺愛されているじゃないですかと思いながら、白い小さな器を空いた手にお茶を飲む。
青い模様の映える、つるりとした取手のない茶器は東の大陸からの渡来品らしい。
「マリーベル様の惚気話はいつもの事として」
ちょっと待ってください、ソフィー様!
惚気話だなんて、これっぽっちもした覚えありません!
わたしがそう内心叫びながら、どう返したものかと言葉を選んでいる内に、ソフィー様はさっさとわたしからカトリーヌ様へと視線を移動させて、話題も移してしまう。
「カトリーヌ様の“青のお部屋”は、やはり素敵ですわね」
「貴女、もう五度はいらしてるでしょう」
「王都で指折りの美しさと称えられる侯爵邸の中でも、とりわけ飽きのこない美しいお部屋だと思いますもの」
たしかに。
訪ねる前からマルテがそれはもう楽しみにしていただけあって、セギュール家の邸宅は素敵だ。
夜会の時は暗くて建物やお庭がよく見えなかったけれど、門から母屋の建物までの真四角の庭を囲う左右の棟を持つ、白大理石に青がかった鉄色の屋根が特徴的な、ソフィー様の言葉通りに美しいお屋敷だった。
“青のお部屋”は、カトリーヌ様の私室の一つで、先日夜会が行われた大広間からさらに奥まった、右翼に繋がる廊下が見える突き当たりの一室である。
鮮やかな薄青の壁布が張られ、壁布が張られていない壁面には白に金彩を施した花綱飾り象った木彫りの装飾板が嵌め込まれている。
天井へ続く上部を白い石膏のレリーフが飾り、控えめながら凝った華やかさがある。
アルコーブのあるアーチ型の大きな窓から出られるお庭は、フォート家の邸宅の庭に勝るとも劣らない広さで、中央に噴水を備える贅沢さだ。
ソフィー様の褒め言葉に、わたしも頷く。
「夜会の壮麗さとはまた違った、昼間の美しさですね」
「あら、あの邸に住んでいる貴女に褒められるなんて光栄ね」
「それなりにはしましたけれど、こちらは急拵えです」
「まあっ、マリーベル様ったら。あのナタンに手掛けさせたのでしょう? それだけでもうこの夏の前哨戦はフォート家のひとり勝ちでしたのに!」
「ソフィー様、そんな大袈裟な……」
社交期間に関係なく、王都住まいのお二人からそこまで仰っていただけるような邸宅ではない。どちらの家の邸宅も、王都屋敷として長年工夫を凝らしてきたに違いない。
先々代から最低限の管理だけでほぼ放置。中は寂れたままにしていたフォート家とは違う。
困惑するわたしに、イザベル様が穏やかに微笑んだ。
「大袈裟ではありませんよ。わたくし達、王都住みの者の間では、春先からあの一等地でまったく人の気のなかったお屋敷がと、度々噂になっておりましたもの」
「そういえば。イザベル様も年中王都にお住まいなのでしたね」
「はい。夫が王宮に仕えておりますので。領地はこの北部でも北の辺りなのですけれど」
「ヴァランシエンヌ領ってたしか、海の側でしたわね」
「ですが、ほとんど断崖絶壁ですのよ、ソフィー様。下りられるところも岩が多く港にも不向きでただ眺めるだけです。西や南と違って陰鬱な風景で……夫が気難しいのもあの景色を見て育ったからではないかしらと思うくらい」
「まあ」
「あっでも、貝は美味しいです。特にこれからの秋から春の間は。わたくしも嫁いで初めて食べた時はもうびっくりしてしまって」
うっとり頬に手を当てて思い出すように目を閉じるイザベル様に、わたしもソフィー様もカトリーヌ様までも少しばかり前のめりになる。美味しいものはみな好きだ。
「……王宮仕えといえば」
ふと、ソフィー様が声をひそめて呟いた。
「あら、なにか面白いお話?」
高貴な紫色の目を細めてカトリーヌ様が軽く手を払い、壁際に控えている人達に部屋を出るよう伝える。
給仕やなにか用あれば対処にあたる使用人だけで、男女混合で六人。
彼等が身を軽くかがめて静かに部屋を出ていくのを目の端で追いながら、そうよねえお茶だけにしても普通はこれくらいの人数よねと、今更ながらフォート家の使用人の少なさをわたしは思う。
他にも部屋の外に、護衛騎士や扉を開ける従僕の方も、扉の左右に控えていらっしゃる。
カトリーヌ様のお世話をする侍女もジャンヌ嬢だけでなく、それぞれ仕事を分担して複数いる。
王都屋敷でこの人数。領地の屋敷はもっと多いはず。
侍女といえば、今日集まった夫人達のお供の彼女達は、カトリーヌ様の計らいで別室で労われている。
あちらはあちらでお茶会となっていることだろう。
マルテの他は、下級貴族のご令嬢か、夫と共に隠居生活に入った後に未亡人となられた元伯爵夫人で貴族女性。
もっともマルテも王都に出る前に、王宮に出入りする公爵夫人の侍女が貧民街の孤児というわけにもといったことで、孤児院長の養女の手続きを済ませている。
孤児院長はトゥルーズの子爵家当主の母親で、息子が家督を継いでから慈善事業で孤児院運営を行なっている人だ。
だからマルテは表向き子爵令嬢ということになっている。
テレーズについては、元々父親がロタールの統括組織でそこそこ上級の文官なので問題はない。
「なんだか王宮で人の入れ替えがあるようですね。現宰相が退けられるとか」
「えっ!?」
そ、そんな重大な事こんなところで迂闊に話していいんですかっ、ソフィー様。
おまけになんだか含みのある微笑みをカトリーヌ様に向けている。
「ユーグ様がずいぶん水面下で動いていらっしゃったとか。いつも異国から戻ってはすぐまたどこかへな“放浪者のロワレ公”も、流石にご令息の結婚となれば王都にいらっしゃるのねと思っておりましたけれど。違ったようですね」
「わたくしはなにも知りませんよ」
「でも……セギュール家は、過去何人も宰相を輩出していらっしゃいますよね。もしかして」
「ですからなにも知らないのよ、イザベル」
ソフィー様とイザベル様に、ふふふと不敵な女王様の笑みを浮かべていらっしゃる。
カトリーヌ様。
それもう、半ば次の宰相はセギュール侯爵ですと仰ってるも同然ですよね?
「……現宰相閣下は、王様を支持しない派閥の方ではありましたものね」
「まあ、そうなのですか!?」
「えっ、イザベル様?」
「マリーベル様……現宰相閣下は陛下の右腕と評判で、かつ表面中立を保っていますから知る方は一握りですわ。流石は元エレオノール様のお側にいらしただけあって事情通ですわね」
「あ、いえ、そういったわけでは」
偶々、偶々知っただけです。
王様と王妃様との仲が一時期冷えかけた原因の一つ。
お若い愛人の噂が王様の評判を落とすための宰相閣下による工作だったと、侍女だった頃に聞いている。
なぜそんな話を、当時王宮勤めの平民だったわたしが耳にしたかといえば。
王妃様にきちんと説明するまで寝室から追い出す構えで、王様と正面切って衝突し、王妃様の側で一緒に事情を聞いたからで……。
あの時は、王妃様のために必死だったけれど。
わたし……よく首を刎ねられずに済んだものだわ。
「マリーベル様? ぼんやりしてどうなさったのですか?」
「え? いいえなにも。なんでもないですよ、ソフィー様。ええなんでもありませんですとも!」
「はあ……」
こんな話。
ソフィー様とカトリーヌ様が知ったら絶対面白がるに決まっている。
「ちょ、ちょっと小耳にそんなことを」
「ま、ルイ様がいらっしゃいますものね」
「ええ、まあ」
ルイからは、ほとんどなにも王宮のことは教えてもらえないけれど。
聞けば教えてくれるというのもなかなか厄介だ。
裏返せば、聞かなければ教えてもらえない。
知らなければできない質問というものもある。
だからわたしにとって、ご夫人達との交友、特に中枢に近いソフィー様やカトリーヌ様、そして中枢の決定を支え現場を管理監督する立場の方を夫に持つイザベル様との交友は、勿論友人付き合いが一番だけれど、本来の社交の意味でも重要だ。
ソフィー様のお話などは、ほぼ中枢の動きと直結する。
なんといっても夫は王様の側近の法務大臣、お兄様は軍部の長官。
王宮に法科院、軍部、何故か魔術の上層との繋がりまであるらしい事情通。
ルイがまだ断定はできないと、それ以上は語らなかった共和国のこともなにか聞いているかもと思ったけれど。
残念ながら、それ以上の話はなかった。
「ところで貴女、エドガーはどう?」
「カトリーヌ様のご紹介通り、とても素敵な絵を描いてくださってますよ」
「でも、おかしな人でしょう。紹介したものの迷惑かけてないかしらと思って」
また話題が移った。
頬に手を当ててそうわたしに尋ねたカトリーヌ様に、なるほど絵ではなくそこが気になっていたのですねと思う。
「まあ……少しばかり変わったところはたしかにありますけれど。ルイに比べたらですから」
「言われてみたらそれもそうね」
あっさり納得されたカトリーヌ様にそれはそれでどうなのと思ったけれど、根の詰め方でいえばルイのが酷いため、あははと苦笑するしかない。
「あの……もしかして、その方ってカトリーヌ様が最近お気に入りの……」
「ええ、イザベル様その通りです」
「どなたですの?」
「カトリーヌ様にご紹介いただいた画家の方です。ルイとわたくしの絵をお願いしているのですよ。フォート家の夜会にもいらしてましたから、ソフィー様もお顔は見てると思います」
「……そういえば、なんだかぼさっとした方がいましたわね。あの方画家でしたの」
「ええ、カトリーヌ様のお手紙で、絵の具合を気にしてくださっていたようでしたから……」
ドレスのポケットから小さく丸めた紙を取り出してテーブルに置く。
エドガーの様子を覗きに行った際、床に無数に落ちていた素描のなかからルイを横顔を描いたものを二枚、本人に尋ねて貰ってきた。
これから噂を流してもらうわけだし、ルイを例の小説の『銀灰公爵』様に重ねて楽しまれているカトリーヌ様とイザベル様向けに。
夫の絵を、こういった場で披露するというのもだけれど、ルイというよりはカトリーヌ様が依頼しているのだろう挿絵の“公爵様”っぽい趣きのもので、エドガーもそれはいらないやつと言っていたから……たぶんそういったものなのだろう。
「こういった、素描を何枚かお描きになられて。昨日からようやく本番の下絵に入ったようです」
「まあっ!」
誰よりも早く声を上げたイザベル様に、その時にはもう一枚をご自分の手元にお持ちになられたカトリーヌ様。
お二人と対照的に冷めた表情のソフィー様の差異がすごい。
「お好きですわねえ……それは人を逆撫でする側の公爵様ですのに」
「鑑賞には耐える人ですもの」
こうして、話はご夫人同志の楽しいお喋りへと戻り。
午後の陽も少し傾いた頃にお茶会もお開きとなり、セギュール邸を辞す間際。
「あの、このあと少しよろしいですか?」
そう、ソフィー様に耳打ちするように声をかけられ、もしかして共和国の件だろうかと思ったわたしは僅かに頷いて了承の意を示した。
セギュール邸をでて一番近くの分かれ道のところでと早口に伝えられた言葉に従って、先に出て指定された場所で馬車を停め、マルテにそちらはどうだったか話を聞きながら待っていると、伯爵家の馬車が並んで停まった。
「すみません、マリーベル様」
窓が開いてかかった声に、同じく窓を開けてどうしたのですかと尋ねる。
「本当は……こんなことはあまり良くないと思うのですけれど。どうしても気になってしまって。これからわたくしと一緒にお越しいただけませんでしょうか?」
「え?」
「帰りはダルブレの馬車でお送りいたします。マリーベル様の身の安全は保証いたします」
流石に共和国の話は大ぴらにできないから個別にと予想したのだけれど、どうやらそれとは違うようだ。それにソフィー様の言葉から読み取るに、わたし一人だけ一緒に来てもらいたいようでマルテの顔を見る。
「奥様……一体……」
「わからないわ。でもご一緒した方がよさそう」
たぶんルイは私室で魔術研究。
わたしが戻ったと声をかけるまでは部屋から出てこない。
とはいってもせいぜい日暮れまでだ。
それ以上は、流石に声をかけずにいたらルイも訝しむ。
「夕刻の鐘が鳴って、日が沈みかけてもわたくしが戻らなかったらルイに伝えて。それまでは静かに」
「はい」
「シモンには戻ってすぐ伝えて頂戴。外のオドレイにはわたしから言っておくから」
わたしは馬車を降りて、御者台のオドレイにマルテに話したことと同じことを伝える。マルテと違って渋った彼女を言い含めて、ソフィー様の馬車に近寄れば中へと招かれた。
「ありがとうございます」
「ソフィー様、一体どういうことでしょうか。帰りはダルブレの馬車ということは、サンシモン家ではなく王家側にご一緒するということですよね?」
ソフィー様の侍女としてついている夫人がいない。
複数の護衛をつれて大抵馬車二台でいらしているから、もう一台の方に乗っているのだろう。
騎乗した護衛騎士らしい人が馬車の後ろに二人ついている。
「ええ。でも誤解なさらないでくださいませ。これはわたくしの独断です。わたくしもやはり帰りたくないからあちらへ戻りますといってきましたから」
「え?」
「そう遠くありませんから、着いてからお話しします」
*****
馬車は小さめの離宮のような場所で停まった。王都に王家縁の建物は大小無数に点在しているけれど、わたしは知らない建物だ。
ユニ領のわたしの家より少しばかり大きいくらい、宮というより館といった様子でかなり小規模なものといえる。
蔓バラで小さなアーチがいくつも整えられているお庭はなんだか可愛らしく、公的な意味合いが強い場所は威厳を重んじるのが基本だから、私的な用途のためのものなのだろう。
やや横長な四角の三階建の建物は灰色の石造り。
細かな装飾がそこかしこに彫り込まれているのは流石だけれど、全体的にやはりなんだか地味だ。地味といってもそれは他の離宮などと比べればの話で、十分凝った装飾ではあるけれど、色石も使わず、金も彩色も施されていない。
主棟の左斜めに低くずんぐりした趣の塔が見える。
「こちらへ、マリーべル様」
ソフィー様の案内されるまままその敷地を歩く。
なんだか……おかしい。
馬車を降りてから誰もついてこない。
「あの、ソフィー様……側仕えの方々は」
「来ません。というより、やはりすんなりとわたくしの後をついてこられるのですね」
「ソフィー様……?」
なんだか少しばかり不可解そうに眉の端を下げて、わたしを見て微苦笑したソフィー様にわたしは首を傾げたけれど、ソフィー様はもう一度微笑んで背を見せただけだった。
「こちらです」
案内されたのは母屋だろう建物ではなく、ずんぐりした塔の側だった。
近づけば、どの窓にも繊細な植物紋様の鉄細工の装飾が嵌め込まれているのが見える。
塔の外観を飾る美しい装飾ではあるけれど、なんだか檻の柵のようでもある。
入口の扉も重々しい鉄扉だ。ぴったり閉じた左右の扉を四つに区切るように、ハアザミの葉を組み合わせた紋様があしらわれている。
「この塔の一番上が、曽祖母のお部屋なのです」
「はあ……」
そうして塔へ入る扉の前でソフィー様は足を止めると、わたしを振り返って少しお待ちくださいませと、手にしている畳んだ扇を静かにと口元に指を立てるように、縦にご自分の唇に軽くあてた。
「そしてどうかこれからご覧になることは、ルイ様以外に他言しないでくださいませ」
「え、あの……」
「初めてお会いした時に薄々お気付きのご様子でしたけれど、このことは一応、わたくしとお兄様とだけの秘密なのです」
「秘密……?」
ソフィーは扇の先を扉の閉じ目へ、すっと持ち上げた。
初めて会った時とは、たぶんルイとのお見合いのことだろう。
フォート家の家督を継いで、十二歳で公爵となることを許されたルイを取り込むため、王家は受洗式を終えたばかり七歳のソフィー様をルイの婚約者にしようとした
薄々お気付きってなんだろうと思ったわたしの疑問は、ソフィー様が発した小さく歌うような声にすぐに解消した。
“貴き種と恵みとその力を護りし冬の女神ケイモーヌに仕え、万物に通じる叡智を司る地の精霊グノーンの眷属……”
聖職者やお祈り以外に、神と精霊の名とともに捧げるような言葉を紡ぐ人を見聞きするのは正直初めてだ。
けれど、それがある事実を示していることはわかる。
まさか。
“地を覆い閉じ込める凍えを解く、雪解けの雫の祝福を許されし証に示す――”
ピィィンと、高音の弦を弾いたような耳鳴りがして。
ぴたりと閉じた鉄の扉に十字に走った白い光が扉を装飾する文様に沿って流れ、ぎいっと鈍く軋む音を立ててひとりでに塔の内へゆっくりと開いていく。
間違いない。
これは、魔術――。
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