157 / 180
挿話
30.5. フォート家の従僕・前編
しおりを挟む
オレの名は、シモン・ベアール。
フォート家で給仕やドアの開け閉め、銀食器磨き、力のいる雑用なんかを担当している従僕。
自分で言うのもなんだが、オレは不運な人間だ。
フォート家に雇われる前は、東部の都トゥルーズの貧民街に暮らすスリだった。
オレはあることが原因で生まれてすぐ修道院の門の前に捨てられ、そのまま修道院併設の施設で育った。
ろくにパンも食えない環境と、呪われた子供となにかあれば懲罰室に入れたがる修道院の連中に嫌気がさして六歳の時に脱走。
身寄りのない子供にとって、外はもっと最悪な場所だなんて知りもしなかった。
三ヶ月程、路地裏で野良猫のように馬鈴薯の皮やくず野菜の残飯を漁ってぶらぶらし、腹が空きすぎて倒れて動けなくなっていたところを、体格のいい赤ら顔のおやじに拾われた。
オレに飯を食わせ、ベッドに寝かせてくれた奴を、最初はいい大人だと思った。
大間違いだった。
奴は貧民街の小悪党。拾ってきた身寄りのない子供を暴力で支配し、盗みや詐欺をさせてその稼ぎを奪い取る。
もちろん抵抗した。オレには生まれつき他の子供にはない力があった。
後で知ったが、どういったわけか精霊の祝福を受けていてつむじ風を操れる。
まだ言葉もままらない幼児のうちはうまくそれを制御することができなかった。
生まれてすぐに捨てられたのも、施設で呪われた子供とされていたのもそのためだ。
といっても、攻撃したところでせいぜい剃刀で薄く傷をつけられる程度の代物、かえって相手の怒りを増幅させるだけ、腕力任せな大人と栄養不足で発育不良な細い子供では勝負にならない。
奴に殴られ蹴られ、文字通り死なない程度にぼろぼろに痛めつけられ、奴の手下になるしかなかった。間も無く来る冬を一人で生き延びていく自信もなかった。
結局、どこにいようが不運はオレにつきまとう。
こうしてオレはスリとなり、街中を行き交う人々の金品をかすめ取っては、奪われ、稼ぎの良し悪しや奴の腹の虫の居所一つで暴力を振るわれる日々を過ごしていた。
奴の元にはオレのような子供が何人かいて、入れ替わっていった。
成長すればどこからかやってくる人飼いの男に引き渡され、代わりに新しい子供が拾われてくる。
気がつけばオレは十二歳で一番年上の兄貴分になっていた。
男三人に女が二人のチビ共と自分を入れて六人で狭い部屋に寝て、朝がくれば街へ稼ぎに急かされて暮らしていた。
稼ぐための道具だったから、飯は一応もらえた。
薄いスープに硬いパサパサしたパンで修道院と大差なかったが、人間たくましいものでその頃になれば悪知恵もついてくる。
奴の目を盗んで稼ぎを誤魔化し、露店でこっそり食べ物を買ってチビ共と分けて食ったりした。
稼ぎが少なければ奴が怒り狂うから、誤魔化せるだけ稼がなければならない。
オレはチビ共に獲物の注意を少しばかりそらさせるようなことはさせても、盗みや騙しに直接手は出させなかった。
失敗して痛い目をみることが多いのは自分がそうだったからわかっていたし、オレ達を飼っている奴や周囲の薄汚い大人共と同じ犯罪者になって欲しくない。
表面は奴に大人しく従い、誤魔化した稼ぎの一部をこっそり貯め、成長して奴を打ち負かし逃げられる機会をオレは待った。
つむじ風を操る技も磨いた、大した攻撃力はないが使いようだ。
貧民街にはオレみたいな悪ガキが他にもいたが、子供同士の喧嘩で負けることはなくなっていた。
あと、二、三年我慢だ、そしたらこんなところ――そう考えていた。
いま思えば、馬鹿な話だ。
字も読めない子供が数人、逃げ出したところでまた似たような場所に戻ることになるに決まっている。
彼と彼女に出会わなかったら、きっとそうなっていたことだろう。
*****
「……っ、足速過ぎんだろ……あの女っ」
入り組んだ迷路のように細い路地を走りながら、後ろから追ってくる女に舌打ちし、道端の樽や積んである木箱を蹴り倒す。
背後でガラガラと響く派手な音に、へっそう簡単に捕まるかよと笑いかけて、バキッ、ミシッと木の板が蹴破られ、その木片がパラパラと落ちている気配と石畳に着地する足音――思わず「いっ!?」っと変な声が出た。
「嘘だろ……おいっ……」
走りながら後ろをわずかに顧みれば、汚い路地裏にまったく似合わない、びしっと仕立てのいい暗い色の服の襟元を直し、顎先で切り揃えた真っ直ぐな黒髪を後ろに払った女の感情の見えない黒い瞳と目があった。
あれは薄暗い路地裏に細く差す陽の光が見せた錯覚だったのだろうか、女が払った髪の隙間から見える目に赤い光が見えたのは。
路地の影に紛れてしまいそうな褐色の肌をした顔、細く長い手足がなにか精巧な作り物めいた綺麗さでいいしれない慄えがオレの内側に走った。
追ってくる足を早めて距離を縮めてきた女にはっとして、オレは風で作った刃を顔めがけて投げつける。
人間誰しも、顔を、特に目の近くでなにかされれば怯む。
そのはずだった。
だが、瞬きもせず目に見えないはずの刃すらかわした女に、オレは単に捕まって痛い目を見るといったのとは違う、これまで感じたことのない恐怖を覚える。
こ、殺されるっ。
いや、さすがにそれはないだろうけど、そんな本能的な恐怖だ。
チビ共が近くにいないのが幸いだ、目をつけた久々に大物そうな獲物に、街の広場で適当に暇をつぶして待ってろと言っていた。
一目で貴族とわかる男だった。
人目を引く、つやつやした銀髪の高級な服を着た優男。
なにか買い物にでも来たのか、馬車を降りて、細い従者を一人だけつれて歩いていた。
しばらく後をつけながら観察していたら、男だと思っていた従者は、男の服を着せている女だった。
はじめて見る肌の色だったが見たこともないような美人で、妙な趣味した変態貴族かよと思いながら、うまくいけば今日の仕事はこいつだけで済むかもしれないとオレはほくそ笑むと、先回りした角から急ぐ用事で慌てた振りして貴族の男の前に飛び出した。
男が「おっと」などと間抜けな声を漏らすのを聞きながら、ぶつかる寸前で男を避けて走りながらすれ違う。
ひらりと男の上着が避けた拍子に揺れたのに合わせて、オレの操る風が銀貨の入った袋を入れている場所を切って落ちたそれを掴む。
ほんの一瞬の間のこと、ぶつかっても触れてもいない、気がつくわけがない。
なのに。
『お待ちなさい、少年』
低く、鋭い女の声が小さくオレを呼び止めた。
『あなた先程、旦那様に……』
『やべっ』
脱兎の如く逃げ出して、いまに至る――。
くそっ、このままいくと細い川沿いの裏通りに出て、その先は行き止まりだ。
川に飛び込んで逃げるか? もう秋で泳ぐにはちと寒い季節だけど。
「仕方ねぇ……、って!?」
飛び込む覚悟を決めて裏通りに出た瞬間、タンっとすぐ後ろで音がして頭上を黒い影が追い越し、目の前に女が降ってきた。
はあ――っ!?
そこからは、足を止める間も無く一瞬だった。
気がついたら両腕を一まとめに後ろに、オレは石畳に組み伏せられ、女の膝で足まで封じられていた。
「旦那様になにを仕掛けたのですか、少年」
「っ……ててッ……っ、なんなんだよっ、オレがなにしたって……」
「答えれば手荒なことはしません」
「ぐっ……してんだろうがっ……!!」
淡々と言いながらオレの腕を捻り上げる女に、痛みに顔を顰めながら無理やり上半身だけ持ち上げて背中を振り返るように噛みつけば、片手で頭を石畳に押さえつけられる。
「もう一度聞きます。旦那様になにを仕掛けたのですか?」
「っからっ……なにも、してえねっ……てっ……!!」
地面に押しつけられながら唸るように答えていたら、オレの頭の向こう、裏通りからこつこつと歩いてくる足音の振動が耳に伝わった。
近づいてきたそれは、オレのあたまの先でぴたりと止まり、やれやれとこの場の状況にそぐわない暢気そうな声が降ってきた。
「オドレイ」
オレを組み伏せている女に呼びかけたらしい声に、目線だけを上に動かせば、オレの額のすぐ先に艶やかに光る磨かれた革の爪先、深い紅色をした絹の裏地を貼った滑らかな毛織物の紺地に金の刺繍がふんだんに施された上着の裾が見えた。
「離してあげてください。なにも仕掛けられてなどいません」
「ですが」
「彼はただのスリです。私のお金を狙った。そうでしょう?」
不意に目の前が暗くなり、腕を捻りあげる力が緩んだのに顔を上げれば、さっきの銀髪の貴族の男が道にしゃがみ、にっこりと青みがかった灰色の目を細めていた。
つけ狙っていたときはろくに顔なんて見ちゃいなかったが、そのへんの女よりも綺麗な顔した男に虚を突かれて一瞬呆けてしまった。
「スリ……?」
背中からの不審気な女の声に我に返り、ああそうだよっ返せばいいんだろうが返せばっと叫べば、拘束から解放された。
貴族の男は静かに立つ。
その場に座り込んで軋む両腕をさすりながら目の前でオレを見下ろしている二人の間にスリ取った革袋を放り出した。
かしゃっと重みのある音と少し緩んだ袋の口から金貨の色が見えたのにちょっと驚いて、思わずちっと舌打ちが漏れる。
「随分と簡単に観念しますね」
「大人二人が立ち塞がって後ろは川。逃げられやしねぇだろ……特にそっちの女、何者だよ……ったく」
「私はオドレイ・ジュブワ。フォート家の使用人です。共和国の元傭兵で、幼い頃から暗殺術と寝間の技を……」
「はぁ!? あ、暗殺っ!? 寝間……っ!?」
オレの言葉に、馬鹿正直かつ律儀に自己紹介を始めた女の言葉に驚いて繰り返せば、「オドレイ」とまるで彼女をとがめるように男が声をかける。
「少年の教育に良くありません」
「申し訳ありません。……体得した諸々の技を生かして旦那様の従者兼護衛をしています」
男に謝り、少しの間じっと黙ってまた淡々と彼女なりになにか言葉を選んだらしい自己紹介の続きを女は言い終えた。
それにしても、なにを考えているかわからない無表情でとってつけたような口調といい、本当に人形が喋っているみたいだ。
「護衛……」
「はい。あなたは本当にただのスリなのですか?」
「そーだよ」
てか、体得した諸々の技ってなんだ……それ。
でもってだだのスリならいいのか?
「変な奴ら」
「まあよく言われます。それにしてもなかなかに珍しい」
「私には、あなたがなにかを操り、旦那様に放ったように見えました」
あれ、見えてたのか!?
この女、どんな目してる。
「ああ、彼女の目は“特別”なので」
「特別?」
「それよりも」
そう言って男は再びしゃがむと、オレと目線を合わせ、オレの顔をじっと見た。
あまりに真っ直ぐに見詰めてくる居心地悪さになんだよっと毒づけば、顎先を摘むようにしてふむと男は言った。
「冬場、強く風が吹く日にまるで刃物に切られたように皮膚に裂傷が起きることがある。あれに近いような鋭さを持つつむじ風……だが切り裂かれた服の裏地にも君にも魔術の片鱗は見られない」
「は? 魔術?」
「私は、魔術師です。仕事と立場上、色々と危険な目にも合いやすいこともあって彼女のような者を連れている。あなたが普通の人にはない力を私に向けて逃げ出したため、警戒した彼女がこのような手荒な真似を……使用人の非礼は主である私の責任です。申し訳ない」
「詫びの言葉だけか」
「攻撃対象としたのはどうやら過ちのようですが、人の金品を盗るのは王国法で刑罰の対象なのでは?」
「たしかに、オドレイの言う通りではありますね」
「ちっ、役人にでも引き渡そうってのか」
二人に虚勢を張りながら、なんとかこの場を切り抜ける方法はと必死で考える。
もし、オレが捕まってしまったらあのチビ共はどうなる?
奴のことを役人にオレが訴えたところで、小汚いスリのガキの話なんかまともに取りあっちゃくれないだろう。
どこまで不運だ、オレは。
「祝福、のようですね」
「あ?」
「そうとしか考えられない。ちなみにつむじ風以外の風は操れるのですか?」
思わず首を横に振って、はっとした。
修道院の連中に散々呪われた異端扱いされたことを思い出す、スリな上につむじ風を操る気味の悪い子供と知られたら、どんな目に合わされるかわかったもんじゃない。
「違っ、つ、つむじ風ってなんだよ……んなもんで布が切れるわけねえ剃刀で……」
「旦那様に仕掛けた時も、私に攻撃した時もあなたはそのような類のものは手にしてはいませんでした」
「オドレイ。彼が警戒するだけです。誤解されては困るので念の為にお伝えすれば、いまのところ君を役人に突き出す考えは私にはありません。あなたが掠め取ろうとしたお金もまあ必要でしたら施して構いません。ですが――」
そんなことでは、あなたが抱える問題は解決しないのではありませんか?
「え……」
「あなたのような子供が単独でスリ、それも手慣れている。日常的に繰り返しているのでしょうそれこそ仕事のように」
「……」
「そんな小悪党にしてはあまりに潔すぎる。タチの悪い大人達が荒稼ぎする子供を見逃すとも思えません。元締めがいてやらされている。それにその手の祝福は生まれた時に受けることがほとんどです」
これは虐げてよい異端と見れば、人は、まるで自分が神からその討伐を託されたとでもいわんばかりの大義名分を掲げてどこまでも虐めぬくこともできるもの。
「あなたの様子から推測するに、あまりよい境遇にいたとも思えませんし」
「……さっきから、んだよ。祝福祝福って」
「精霊の祝福です。あなたなにかで気に入られたのでしょう。他の風全般というのなら私も少々興奮するほどの大物ですが、つむじ風だけというのならその眷属。つむじ風を司る精霊です」
は?
精霊?
なんだそりゃ、冗談じゃないっ。
「はっ、精霊の祝福だ? 生まれてすぐに捨てられて呪われてるだのなんだの……あげく薄汚い大人にいいようにこき使われて不運しかないっ!」
「精霊の祝福はあくまで精霊側が施すもの。それが人間にとって幸となるか不幸となるかは関係ありません。ま、大抵、君の言う通り不運や呪いのようなものになることが多いですが」
「くそっ……!」
なんだよそれ。
精霊って……あんなものは修道院のやつらが口にする嘘話だろ。
けど、魔術師って信じられないような不思議な力を使うのを仕事にして、金をもらっている奴らはいる。
「ところで」
「あ?」
「色々と細々した雑用が増えていましてね。丁度、このオドレイを手伝えるような従僕を雇いたいと考えていたところです。我が家の使用人は少々変わっていますが、主の私などよりよほど善人で気のいい者達です」
「は?」
「あなたさえよろしければいかがでしょう? お詫びにあなたを雇い入れるというのは。フォート家の使用人には王国法基準に則った労働条件と未就学な者には教育の機会も保障します」
はぁっ?
なに言ってんだこいつ。
こいつの金をかすめとったオレを使用人に雇う、だと?
「なっ……ん、なこと……」
「ご心配なら、条件を破れば雇い入れた私に罰が生じる契約魔術を施した条件書もお渡しします。魔術師である私にとって言葉はあらゆることを規定するもの、嘘は言いません」
「だって、あんたどう見たって貴族……」
「ええ、このトゥルーズも含む東部の六割を領地とする公爵家。今日あなたをオドレイの手で痛めつけただけじゃない。あなたをいまの境遇に陥らせたものやあなたを縛る者達を一掃出来ていないのも、領主である私に責任がある」
あなたが真っ当に生きる機会と環境。
それがお詫びです、いかがでしょう?
そう、オレに問いかけてきたが胡散臭いの一言だった。
話がうま過ぎる。
こんな話に素直に頷ける訳がない、オレじゃなくてもそうだろう。
それに。
たとえそれが本当であったところで、オレ一人だけがそんなうまい話にありつけても意味はない。
黙って男を睨みつけているオレの様子でオレの考えを察したのか、男はここへやってきた時同様にやれやれと息を吐いて立ち上がった。
「わかりました。話がうま過ぎて怪しいと頷けないのなら、お詫びではなく取引として話をしましょう」
「取引?」
「ええ。あなたをいまのような境遇に陥らせたものについて、私は領主として手を打たねばならない。とはいえいまのいままで咎められなかった連中です。トゥルーズを治めさせている者に指示したところで、なにもないならこれまで同様手の打ちようもないでしょう」
「……」
「詳細な情報提供と証言をしてくださる方がいれば大変に助かるのですが……やむを得ず罪を犯していたのならその貢献如何で罪を考えることもできる。免罪できなくとも、罪を贖う刑罰には労役もあります」
いかがです?
再び、問いかけてきた男にオレは立ち上がった。
いま決めろということなのだろう。
「……条件がある」
「ん?」
「このままいくとオレのようになりかねないチビが五人いる。そいつらは罪はおかしちゃいないが放り出されたらいずれ手を汚すしかなくなる……そいつらを」
「なるほど。君には情状酌量の余地があるだけでなく、将来を担う子供を五人も守ってきた善行もある。たしかに私の提示した条件では釣り合わないかもしれませんねえ」
「なに……?」
私が出資している孤児院があると男は言った。
そこにチビ共全員を引き取ると。
「そこには清潔な部屋と、温かで十分な食事、母親の如く子供達の面倒を見る院長と彼女の仕事を手伝う者達がいて、勉強を教える教師もいる。会いにいくのも手紙のやりとりも自由です」
いかがです?
もう一度、問いかけてきた男にオレは頷くと差し出された彼の手をとった。
そうしてすべての互いの条件を契約魔術を施した条件書にして交わし、互いの名前を知った。
男は、ルイ・メナージュ・ヴァンサン・ラ・フォートといった長い名前で、“竜を従える最強の魔術師”と呼ばれている男だった。
貧民街のガキでも知ってる、笑えてくるほどの英雄だ――。
フォート家で給仕やドアの開け閉め、銀食器磨き、力のいる雑用なんかを担当している従僕。
自分で言うのもなんだが、オレは不運な人間だ。
フォート家に雇われる前は、東部の都トゥルーズの貧民街に暮らすスリだった。
オレはあることが原因で生まれてすぐ修道院の門の前に捨てられ、そのまま修道院併設の施設で育った。
ろくにパンも食えない環境と、呪われた子供となにかあれば懲罰室に入れたがる修道院の連中に嫌気がさして六歳の時に脱走。
身寄りのない子供にとって、外はもっと最悪な場所だなんて知りもしなかった。
三ヶ月程、路地裏で野良猫のように馬鈴薯の皮やくず野菜の残飯を漁ってぶらぶらし、腹が空きすぎて倒れて動けなくなっていたところを、体格のいい赤ら顔のおやじに拾われた。
オレに飯を食わせ、ベッドに寝かせてくれた奴を、最初はいい大人だと思った。
大間違いだった。
奴は貧民街の小悪党。拾ってきた身寄りのない子供を暴力で支配し、盗みや詐欺をさせてその稼ぎを奪い取る。
もちろん抵抗した。オレには生まれつき他の子供にはない力があった。
後で知ったが、どういったわけか精霊の祝福を受けていてつむじ風を操れる。
まだ言葉もままらない幼児のうちはうまくそれを制御することができなかった。
生まれてすぐに捨てられたのも、施設で呪われた子供とされていたのもそのためだ。
といっても、攻撃したところでせいぜい剃刀で薄く傷をつけられる程度の代物、かえって相手の怒りを増幅させるだけ、腕力任せな大人と栄養不足で発育不良な細い子供では勝負にならない。
奴に殴られ蹴られ、文字通り死なない程度にぼろぼろに痛めつけられ、奴の手下になるしかなかった。間も無く来る冬を一人で生き延びていく自信もなかった。
結局、どこにいようが不運はオレにつきまとう。
こうしてオレはスリとなり、街中を行き交う人々の金品をかすめ取っては、奪われ、稼ぎの良し悪しや奴の腹の虫の居所一つで暴力を振るわれる日々を過ごしていた。
奴の元にはオレのような子供が何人かいて、入れ替わっていった。
成長すればどこからかやってくる人飼いの男に引き渡され、代わりに新しい子供が拾われてくる。
気がつけばオレは十二歳で一番年上の兄貴分になっていた。
男三人に女が二人のチビ共と自分を入れて六人で狭い部屋に寝て、朝がくれば街へ稼ぎに急かされて暮らしていた。
稼ぐための道具だったから、飯は一応もらえた。
薄いスープに硬いパサパサしたパンで修道院と大差なかったが、人間たくましいものでその頃になれば悪知恵もついてくる。
奴の目を盗んで稼ぎを誤魔化し、露店でこっそり食べ物を買ってチビ共と分けて食ったりした。
稼ぎが少なければ奴が怒り狂うから、誤魔化せるだけ稼がなければならない。
オレはチビ共に獲物の注意を少しばかりそらさせるようなことはさせても、盗みや騙しに直接手は出させなかった。
失敗して痛い目をみることが多いのは自分がそうだったからわかっていたし、オレ達を飼っている奴や周囲の薄汚い大人共と同じ犯罪者になって欲しくない。
表面は奴に大人しく従い、誤魔化した稼ぎの一部をこっそり貯め、成長して奴を打ち負かし逃げられる機会をオレは待った。
つむじ風を操る技も磨いた、大した攻撃力はないが使いようだ。
貧民街にはオレみたいな悪ガキが他にもいたが、子供同士の喧嘩で負けることはなくなっていた。
あと、二、三年我慢だ、そしたらこんなところ――そう考えていた。
いま思えば、馬鹿な話だ。
字も読めない子供が数人、逃げ出したところでまた似たような場所に戻ることになるに決まっている。
彼と彼女に出会わなかったら、きっとそうなっていたことだろう。
*****
「……っ、足速過ぎんだろ……あの女っ」
入り組んだ迷路のように細い路地を走りながら、後ろから追ってくる女に舌打ちし、道端の樽や積んである木箱を蹴り倒す。
背後でガラガラと響く派手な音に、へっそう簡単に捕まるかよと笑いかけて、バキッ、ミシッと木の板が蹴破られ、その木片がパラパラと落ちている気配と石畳に着地する足音――思わず「いっ!?」っと変な声が出た。
「嘘だろ……おいっ……」
走りながら後ろをわずかに顧みれば、汚い路地裏にまったく似合わない、びしっと仕立てのいい暗い色の服の襟元を直し、顎先で切り揃えた真っ直ぐな黒髪を後ろに払った女の感情の見えない黒い瞳と目があった。
あれは薄暗い路地裏に細く差す陽の光が見せた錯覚だったのだろうか、女が払った髪の隙間から見える目に赤い光が見えたのは。
路地の影に紛れてしまいそうな褐色の肌をした顔、細く長い手足がなにか精巧な作り物めいた綺麗さでいいしれない慄えがオレの内側に走った。
追ってくる足を早めて距離を縮めてきた女にはっとして、オレは風で作った刃を顔めがけて投げつける。
人間誰しも、顔を、特に目の近くでなにかされれば怯む。
そのはずだった。
だが、瞬きもせず目に見えないはずの刃すらかわした女に、オレは単に捕まって痛い目を見るといったのとは違う、これまで感じたことのない恐怖を覚える。
こ、殺されるっ。
いや、さすがにそれはないだろうけど、そんな本能的な恐怖だ。
チビ共が近くにいないのが幸いだ、目をつけた久々に大物そうな獲物に、街の広場で適当に暇をつぶして待ってろと言っていた。
一目で貴族とわかる男だった。
人目を引く、つやつやした銀髪の高級な服を着た優男。
なにか買い物にでも来たのか、馬車を降りて、細い従者を一人だけつれて歩いていた。
しばらく後をつけながら観察していたら、男だと思っていた従者は、男の服を着せている女だった。
はじめて見る肌の色だったが見たこともないような美人で、妙な趣味した変態貴族かよと思いながら、うまくいけば今日の仕事はこいつだけで済むかもしれないとオレはほくそ笑むと、先回りした角から急ぐ用事で慌てた振りして貴族の男の前に飛び出した。
男が「おっと」などと間抜けな声を漏らすのを聞きながら、ぶつかる寸前で男を避けて走りながらすれ違う。
ひらりと男の上着が避けた拍子に揺れたのに合わせて、オレの操る風が銀貨の入った袋を入れている場所を切って落ちたそれを掴む。
ほんの一瞬の間のこと、ぶつかっても触れてもいない、気がつくわけがない。
なのに。
『お待ちなさい、少年』
低く、鋭い女の声が小さくオレを呼び止めた。
『あなた先程、旦那様に……』
『やべっ』
脱兎の如く逃げ出して、いまに至る――。
くそっ、このままいくと細い川沿いの裏通りに出て、その先は行き止まりだ。
川に飛び込んで逃げるか? もう秋で泳ぐにはちと寒い季節だけど。
「仕方ねぇ……、って!?」
飛び込む覚悟を決めて裏通りに出た瞬間、タンっとすぐ後ろで音がして頭上を黒い影が追い越し、目の前に女が降ってきた。
はあ――っ!?
そこからは、足を止める間も無く一瞬だった。
気がついたら両腕を一まとめに後ろに、オレは石畳に組み伏せられ、女の膝で足まで封じられていた。
「旦那様になにを仕掛けたのですか、少年」
「っ……ててッ……っ、なんなんだよっ、オレがなにしたって……」
「答えれば手荒なことはしません」
「ぐっ……してんだろうがっ……!!」
淡々と言いながらオレの腕を捻り上げる女に、痛みに顔を顰めながら無理やり上半身だけ持ち上げて背中を振り返るように噛みつけば、片手で頭を石畳に押さえつけられる。
「もう一度聞きます。旦那様になにを仕掛けたのですか?」
「っからっ……なにも、してえねっ……てっ……!!」
地面に押しつけられながら唸るように答えていたら、オレの頭の向こう、裏通りからこつこつと歩いてくる足音の振動が耳に伝わった。
近づいてきたそれは、オレのあたまの先でぴたりと止まり、やれやれとこの場の状況にそぐわない暢気そうな声が降ってきた。
「オドレイ」
オレを組み伏せている女に呼びかけたらしい声に、目線だけを上に動かせば、オレの額のすぐ先に艶やかに光る磨かれた革の爪先、深い紅色をした絹の裏地を貼った滑らかな毛織物の紺地に金の刺繍がふんだんに施された上着の裾が見えた。
「離してあげてください。なにも仕掛けられてなどいません」
「ですが」
「彼はただのスリです。私のお金を狙った。そうでしょう?」
不意に目の前が暗くなり、腕を捻りあげる力が緩んだのに顔を上げれば、さっきの銀髪の貴族の男が道にしゃがみ、にっこりと青みがかった灰色の目を細めていた。
つけ狙っていたときはろくに顔なんて見ちゃいなかったが、そのへんの女よりも綺麗な顔した男に虚を突かれて一瞬呆けてしまった。
「スリ……?」
背中からの不審気な女の声に我に返り、ああそうだよっ返せばいいんだろうが返せばっと叫べば、拘束から解放された。
貴族の男は静かに立つ。
その場に座り込んで軋む両腕をさすりながら目の前でオレを見下ろしている二人の間にスリ取った革袋を放り出した。
かしゃっと重みのある音と少し緩んだ袋の口から金貨の色が見えたのにちょっと驚いて、思わずちっと舌打ちが漏れる。
「随分と簡単に観念しますね」
「大人二人が立ち塞がって後ろは川。逃げられやしねぇだろ……特にそっちの女、何者だよ……ったく」
「私はオドレイ・ジュブワ。フォート家の使用人です。共和国の元傭兵で、幼い頃から暗殺術と寝間の技を……」
「はぁ!? あ、暗殺っ!? 寝間……っ!?」
オレの言葉に、馬鹿正直かつ律儀に自己紹介を始めた女の言葉に驚いて繰り返せば、「オドレイ」とまるで彼女をとがめるように男が声をかける。
「少年の教育に良くありません」
「申し訳ありません。……体得した諸々の技を生かして旦那様の従者兼護衛をしています」
男に謝り、少しの間じっと黙ってまた淡々と彼女なりになにか言葉を選んだらしい自己紹介の続きを女は言い終えた。
それにしても、なにを考えているかわからない無表情でとってつけたような口調といい、本当に人形が喋っているみたいだ。
「護衛……」
「はい。あなたは本当にただのスリなのですか?」
「そーだよ」
てか、体得した諸々の技ってなんだ……それ。
でもってだだのスリならいいのか?
「変な奴ら」
「まあよく言われます。それにしてもなかなかに珍しい」
「私には、あなたがなにかを操り、旦那様に放ったように見えました」
あれ、見えてたのか!?
この女、どんな目してる。
「ああ、彼女の目は“特別”なので」
「特別?」
「それよりも」
そう言って男は再びしゃがむと、オレと目線を合わせ、オレの顔をじっと見た。
あまりに真っ直ぐに見詰めてくる居心地悪さになんだよっと毒づけば、顎先を摘むようにしてふむと男は言った。
「冬場、強く風が吹く日にまるで刃物に切られたように皮膚に裂傷が起きることがある。あれに近いような鋭さを持つつむじ風……だが切り裂かれた服の裏地にも君にも魔術の片鱗は見られない」
「は? 魔術?」
「私は、魔術師です。仕事と立場上、色々と危険な目にも合いやすいこともあって彼女のような者を連れている。あなたが普通の人にはない力を私に向けて逃げ出したため、警戒した彼女がこのような手荒な真似を……使用人の非礼は主である私の責任です。申し訳ない」
「詫びの言葉だけか」
「攻撃対象としたのはどうやら過ちのようですが、人の金品を盗るのは王国法で刑罰の対象なのでは?」
「たしかに、オドレイの言う通りではありますね」
「ちっ、役人にでも引き渡そうってのか」
二人に虚勢を張りながら、なんとかこの場を切り抜ける方法はと必死で考える。
もし、オレが捕まってしまったらあのチビ共はどうなる?
奴のことを役人にオレが訴えたところで、小汚いスリのガキの話なんかまともに取りあっちゃくれないだろう。
どこまで不運だ、オレは。
「祝福、のようですね」
「あ?」
「そうとしか考えられない。ちなみにつむじ風以外の風は操れるのですか?」
思わず首を横に振って、はっとした。
修道院の連中に散々呪われた異端扱いされたことを思い出す、スリな上につむじ風を操る気味の悪い子供と知られたら、どんな目に合わされるかわかったもんじゃない。
「違っ、つ、つむじ風ってなんだよ……んなもんで布が切れるわけねえ剃刀で……」
「旦那様に仕掛けた時も、私に攻撃した時もあなたはそのような類のものは手にしてはいませんでした」
「オドレイ。彼が警戒するだけです。誤解されては困るので念の為にお伝えすれば、いまのところ君を役人に突き出す考えは私にはありません。あなたが掠め取ろうとしたお金もまあ必要でしたら施して構いません。ですが――」
そんなことでは、あなたが抱える問題は解決しないのではありませんか?
「え……」
「あなたのような子供が単独でスリ、それも手慣れている。日常的に繰り返しているのでしょうそれこそ仕事のように」
「……」
「そんな小悪党にしてはあまりに潔すぎる。タチの悪い大人達が荒稼ぎする子供を見逃すとも思えません。元締めがいてやらされている。それにその手の祝福は生まれた時に受けることがほとんどです」
これは虐げてよい異端と見れば、人は、まるで自分が神からその討伐を託されたとでもいわんばかりの大義名分を掲げてどこまでも虐めぬくこともできるもの。
「あなたの様子から推測するに、あまりよい境遇にいたとも思えませんし」
「……さっきから、んだよ。祝福祝福って」
「精霊の祝福です。あなたなにかで気に入られたのでしょう。他の風全般というのなら私も少々興奮するほどの大物ですが、つむじ風だけというのならその眷属。つむじ風を司る精霊です」
は?
精霊?
なんだそりゃ、冗談じゃないっ。
「はっ、精霊の祝福だ? 生まれてすぐに捨てられて呪われてるだのなんだの……あげく薄汚い大人にいいようにこき使われて不運しかないっ!」
「精霊の祝福はあくまで精霊側が施すもの。それが人間にとって幸となるか不幸となるかは関係ありません。ま、大抵、君の言う通り不運や呪いのようなものになることが多いですが」
「くそっ……!」
なんだよそれ。
精霊って……あんなものは修道院のやつらが口にする嘘話だろ。
けど、魔術師って信じられないような不思議な力を使うのを仕事にして、金をもらっている奴らはいる。
「ところで」
「あ?」
「色々と細々した雑用が増えていましてね。丁度、このオドレイを手伝えるような従僕を雇いたいと考えていたところです。我が家の使用人は少々変わっていますが、主の私などよりよほど善人で気のいい者達です」
「は?」
「あなたさえよろしければいかがでしょう? お詫びにあなたを雇い入れるというのは。フォート家の使用人には王国法基準に則った労働条件と未就学な者には教育の機会も保障します」
はぁっ?
なに言ってんだこいつ。
こいつの金をかすめとったオレを使用人に雇う、だと?
「なっ……ん、なこと……」
「ご心配なら、条件を破れば雇い入れた私に罰が生じる契約魔術を施した条件書もお渡しします。魔術師である私にとって言葉はあらゆることを規定するもの、嘘は言いません」
「だって、あんたどう見たって貴族……」
「ええ、このトゥルーズも含む東部の六割を領地とする公爵家。今日あなたをオドレイの手で痛めつけただけじゃない。あなたをいまの境遇に陥らせたものやあなたを縛る者達を一掃出来ていないのも、領主である私に責任がある」
あなたが真っ当に生きる機会と環境。
それがお詫びです、いかがでしょう?
そう、オレに問いかけてきたが胡散臭いの一言だった。
話がうま過ぎる。
こんな話に素直に頷ける訳がない、オレじゃなくてもそうだろう。
それに。
たとえそれが本当であったところで、オレ一人だけがそんなうまい話にありつけても意味はない。
黙って男を睨みつけているオレの様子でオレの考えを察したのか、男はここへやってきた時同様にやれやれと息を吐いて立ち上がった。
「わかりました。話がうま過ぎて怪しいと頷けないのなら、お詫びではなく取引として話をしましょう」
「取引?」
「ええ。あなたをいまのような境遇に陥らせたものについて、私は領主として手を打たねばならない。とはいえいまのいままで咎められなかった連中です。トゥルーズを治めさせている者に指示したところで、なにもないならこれまで同様手の打ちようもないでしょう」
「……」
「詳細な情報提供と証言をしてくださる方がいれば大変に助かるのですが……やむを得ず罪を犯していたのならその貢献如何で罪を考えることもできる。免罪できなくとも、罪を贖う刑罰には労役もあります」
いかがです?
再び、問いかけてきた男にオレは立ち上がった。
いま決めろということなのだろう。
「……条件がある」
「ん?」
「このままいくとオレのようになりかねないチビが五人いる。そいつらは罪はおかしちゃいないが放り出されたらいずれ手を汚すしかなくなる……そいつらを」
「なるほど。君には情状酌量の余地があるだけでなく、将来を担う子供を五人も守ってきた善行もある。たしかに私の提示した条件では釣り合わないかもしれませんねえ」
「なに……?」
私が出資している孤児院があると男は言った。
そこにチビ共全員を引き取ると。
「そこには清潔な部屋と、温かで十分な食事、母親の如く子供達の面倒を見る院長と彼女の仕事を手伝う者達がいて、勉強を教える教師もいる。会いにいくのも手紙のやりとりも自由です」
いかがです?
もう一度、問いかけてきた男にオレは頷くと差し出された彼の手をとった。
そうしてすべての互いの条件を契約魔術を施した条件書にして交わし、互いの名前を知った。
男は、ルイ・メナージュ・ヴァンサン・ラ・フォートといった長い名前で、“竜を従える最強の魔術師”と呼ばれている男だった。
貧民街のガキでも知ってる、笑えてくるほどの英雄だ――。
0
お気に入りに追加
1,580
あなたにおすすめの小説
ドS騎士団長のご奉仕メイドに任命されましたが、私××なんですけど!?
yori
恋愛
*ノーチェブックスさまより書籍化&コミカライズ連載7/5~startしました*
コミカライズは最新話無料ですのでぜひ!
読み終わったらいいね♥もよろしくお願いします!
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
ふりふりのエプロンをつけたメイドになるのが夢だった男爵令嬢エミリア。
王城のメイド試験に受かったはいいけど、処女なのに、性のお世話をする、ご奉仕メイドになってしまった!?
担当する騎士団長は、ある事情があって、専任のご奉仕メイドがついていないらしい……。
だけど普通のメイドよりも、お給金が倍だったので、貧乏な実家のために、いっぱい稼ぎます!!
【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜
船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】
お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。
表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。
【ストーリー】
見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。
会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。
手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。
親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。
いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる……
托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。
◆登場人物
・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン
・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員
・ 八幡栞 (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女
・ 藤沢茂 (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
本編完結R18)メイドは王子に喰い尽くされる
ハリエニシダ・レン
恋愛
とりあえず1章とおまけはエロ満載です。1章後半からは、そこに切なさが追加されます。
あらすじ:
精神的にいたぶるのが好きな既婚者の王子が、気まぐれで凌辱したメイドに歪んだ執着を持つようになった。
メイドの妊娠を機に私邸に閉じ込めて以降、彼女への王子の執着はますます歪み加速していく。彼らの子どもたちをも巻き込んで。※食人はありません
タグとあらすじで引いたけど読んでみたらよかった!
普段は近親相姦読まないけどこれは面白かった!
という感想をちらほら頂いているので、迷ったら読んで頂けたらなぁと思います。
1章12話くらいまではノーマルな陵辱モノですが、その後は子どもの幼児期を含んだ近親相姦込みの話(攻められるのは、あくまでメイドさん)になります。なので以降はそういうのokな人のみコンティニューでお願いします。
メイドさんは、気持ちよくなっちゃうけど嫌がってます。
完全な合意の上での話は、1章では非常に少ないです。
クイック解説:
1章: 切ないエロ
2章: 切ない近親相姦
おまけ: ごった煮
マーカスルート: 途中鬱展開のバッドエンド(ifのifでの救済あり)。
サイラスルート: 甘々近親相姦
レオン&サイラスルート: 切ないバッドエンド
おまけ2: ごった煮
※オマケは本編の補完なので時系列はぐちゃぐちゃですが、冒頭にいつ頃の話か記載してあります。
※重要な設定: この世界の人の寿命は150歳くらい。最後の10〜20年で一気に歳をとる。
※現在、並べ替えテスト中
◻︎◾︎◻︎◾︎◻︎
本編完結しました。
読んでくれる皆様のおかげで、ここまで続けられました。
ありがとうございました!
時々彼らを書きたくてうずうずするので、引き続きオマケやifを不定期で書いてます。
◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
書くかどうかは五分五分ですが、何か読んでみたいお題があれば感想欄にどうぞ。
◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
去年の年末年始にアップしたもののうち
「うたた寝(殿下)」
「そこにいてくれるなら」
「閑話マーカス1.5」(おまけ1に挿入)
の3話はエロです。
それ以外は非エロです。
ってもう一年経つ。月日の経つのがああああああ!
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる