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学園入学編
71‐不審な双子ガイン・バレリアーノ
しおりを挟む「おはようございます。フォンルージュ様」
「おはよう、ノール」
同クラスのアーノルドの騎士候補、ノールと挨拶を交わす。ノールは必ずと言っていいほど、僕の近くの席か、又は隣に座ってくる。
アーノルドはこの学園に来る前も何回かノールを連れてきて、その…そういうことを見せびらかしていた。だからすごく気まずい。どんな顔して喋ればいい。ノールだって同じはずなのに。
「…なんで俺の近くに座るの?」
「えっ!?いや、それは、その…あいつに…」
しどろもどろになってワタワタしてるノールを眺めていると後ろから肩をツンツンとつつかれる感触があり、振り返る。
「どーも、フォンルージュ様」
褐色肌に濃いブラウンの長髪をひとつに束ねている。つり目で髪とおなじ色の瞳を持った、異国を感じさせる男が立っていた。耳には至る所にピアスが空いている。
…誰だ?この男。
「お隣いーい?」
「え?いい……けど」
「ダメだ」
僕が流されるまま承諾しようとすると隣のノールが即座に断った。
「ガイン、お前何の用だ。何を企んでいる」
ガインと呼ばれたその男はノールに睨まれているにも関わらずヘラヘラとして、空いている隣の椅子に手をかける。
「いやぁ、お前の返事は聞いてねぇし。何?フォンルージュ様の騎士気取りぃ?」
「お前と関わってろくな目にあったことは無い。近寄るな」
ドカッとノールの制止も完全無視して僕の隣に座る。わざとらしく眉を悲しそうに歪めて、僕に話しかけてくる。
「悲しいな~そんな風に思われてたなんて。ね、フォンルージュ様?酷いと思いませんか?」
「…君は誰なの?」
「あー…自己紹介遅れましたね。
俺はガイン・バレリアーノ。ノールとは稽古場で一緒に試合した仲です。以後お見知り置きを」
そう言って初めてノールにあった時みたいに僕の手を取って、手の甲にキスをする。
ノールと同じく騎士見習いなのだろうか…?にしては騎士と言うには荒んだ雰囲気がある。
「こいつは人を甚振って楽しむ為に稽古場に来ていたクソ野郎です。相手しなくていいです」
「俺に負けたからって、そんなに噛み付かなくてもいいじゃん~。仲良くしようぜノール」
「お前が騎士とは思えない邪道な戦い方をするからだ。負けてない」
「戦いに邪道も正道も何もねぇの。死んだ方が負け。強い奴が正義で、弱い奴が悪なんだよ。負け犬」
「何だと!?」
どうでもいいけど、僕を挟んで喧嘩しないで欲しい。
2人の言い合いを聞き流しながら授業で使う道具を用意しようとした時、急にガインに手をパシッと掴まれる。
一瞬のうちに肩を組まれ、ガインの顔が耳に近付き吐息が聞こえるくらいまでに距離を詰められる。独特な怪しい匂いが鼻につく。
「クラスメイト同士仲良くしましょーね。ルーク様」
僕にしか聞こえない程度の声で耳打ちする。ゾワリと背中に悪寒が走る。
「ガイン!お前!!」
ノールが立ち上がりガインを制止しようとするが、一足先にガインが動き、席から立ってヒラヒラとノールの手を躱す。
「じゃあねフォンルージュ様~。ノールがいない時でもゆっくり話しましょ~」
そう言ってガインは手を振って後ろの席へと歩いて行った。
「だ、大丈夫ですか!何か変なこと言われたりとか…」
「大丈夫。何もないよ」
「本当にあいつとは関わらないでください。あいつ関連で良い噂を聞いたことがありません」
ガインに肩を組まれた時怪しいお店のお香みたいなガインの匂いと一緒に、鉄みたいな臭いがした。
それに、あの目。あの目を僕は知っている。前世で見た、あの人が連れてきた再婚相手と似ている。
いつの間にか体が無意識のうちに硬直していてギシギシと痛んでいた。
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