上 下
75 / 79
学園入学編

71‐不審な双子ガイン・バレリアーノ

しおりを挟む


「おはようございます。フォンルージュ様」


「おはよう、ノール」


同クラスのアーノルドの騎士候補、ノールと挨拶を交わす。ノールは必ずと言っていいほど、僕の近くの席か、又は隣に座ってくる。



アーノルドはこの学園に来る前も何回かノールを連れてきて、その…そういうことを見せびらかしていた。だからすごく気まずい。どんな顔して喋ればいい。ノールだって同じはずなのに。


「…なんで俺の近くに座るの?」


「えっ!?いや、それは、その…あいつに…」


しどろもどろになってワタワタしてるノールを眺めていると後ろから肩をツンツンとつつかれる感触があり、振り返る。


「どーも、フォンルージュ様」


褐色肌に濃いブラウンの長髪をひとつに束ねている。つり目で髪とおなじ色の瞳を持った、異国を感じさせる男が立っていた。耳には至る所にピアスが空いている。


…誰だ?この男。


「お隣いーい?」


「え?いい……けど」


「ダメだ」


僕が流されるまま承諾しようとすると隣のノールが即座に断った。


「ガイン、お前何の用だ。何を企んでいる」


ガインと呼ばれたその男はノールに睨まれているにも関わらずヘラヘラとして、空いている隣の椅子に手をかける。


「いやぁ、お前の返事は聞いてねぇし。何?フォンルージュ様の騎士気取りぃ?」


「お前と関わってろくな目にあったことは無い。近寄るな」


ドカッとノールの制止も完全無視して僕の隣に座る。わざとらしく眉を悲しそうに歪めて、僕に話しかけてくる。


「悲しいな~そんな風に思われてたなんて。ね、フォンルージュ様?酷いと思いませんか?」


「…君は誰なの?」


「あー…自己紹介遅れましたね。

俺はガイン・バレリアーノ。ノールとは稽古場で一緒に試合した仲です。以後お見知り置きを」


そう言って初めてノールにあった時みたいに僕の手を取って、手の甲にキスをする。

ノールと同じく騎士見習いなのだろうか…?にしては騎士と言うには荒んだ雰囲気がある。


「こいつは人を甚振って楽しむ為に稽古場に来ていたクソ野郎です。相手しなくていいです」


「俺に負けたからって、そんなに噛み付かなくてもいいじゃん~。仲良くしようぜノール」


「お前が騎士とは思えない邪道な戦い方をするからだ。負けてない」


「戦いに邪道も正道も何もねぇの。死んだ方が負け。強い奴が正義で、弱い奴が悪なんだよ。負け犬」


「何だと!?」


どうでもいいけど、僕を挟んで喧嘩しないで欲しい。



2人の言い合いを聞き流しながら授業で使う道具を用意しようとした時、急にガインに手をパシッと掴まれる。

一瞬のうちに肩を組まれ、ガインの顔が耳に近付き吐息が聞こえるくらいまでに距離を詰められる。独特な怪しい匂いが鼻につく。



「クラスメイト同士仲良くしましょーね。ルーク様」



僕にしか聞こえない程度の声で耳打ちする。ゾワリと背中に悪寒が走る。


「ガイン!お前!!」


ノールが立ち上がりガインを制止しようとするが、一足先にガインが動き、席から立ってヒラヒラとノールの手を躱す。


「じゃあねフォンルージュ様~。ノールがいない時でもゆっくり話しましょ~」


そう言ってガインは手を振って後ろの席へと歩いて行った。


「だ、大丈夫ですか!何か変なこと言われたりとか…」


「大丈夫。何もないよ」


「本当にあいつとは関わらないでください。あいつ関連で良い噂を聞いたことがありません」


ガインに肩を組まれた時怪しいお店のお香みたいなガインの匂いと一緒に、鉄みたいな臭いがした。

それに、あの目。あの目を僕は知っている。前世で見た、あの人が連れてきた再婚相手と似ている。


いつの間にか体が無意識のうちに硬直していてギシギシと痛んでいた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

残虐悪徳一族に転生した

白鳩 唯斗
BL
 前世で読んでいた小説の世界。  男主人公とヒロインを阻む、悪徳一族に転生してしまった。  第三皇子として新たな生を受けた主人公は、残虐な兄弟や、悪政を敷く皇帝から生き残る為に、残虐な人物を演じる。  そんな中、主人公は皇城に訪れた男主人公に遭遇する。  ガッツリBLでは無く、愛情よりも友情に近いかもしれません。 *残虐な描写があります。

弟に殺される”兄”に転生したがこんなに愛されるなんて聞いてない。

浅倉
BL
目を覚ますと目の前には俺を心配そうに見つめる彼の姿。 既視感を感じる彼の姿に俺は”小説”の中に出てくる主人公 ”ヴィンセント”だと判明。 そしてまさかの俺がヴィンセントを虐め残酷に殺される兄だと?! 次々と訪れる沢山の試練を前にどうにか弟に殺されないルートを必死に進む。 だがそんな俺の前に大きな壁が! このままでは原作通り殺されてしまう。 どうにかして乗り越えなければ! 妙に執着してくる”弟”と死なないように奮闘する”兄”の少し甘い物語___ ヤンデレ執着な弟×クールで鈍感な兄 ※固定CP ※投稿不定期 ※初めの方はヤンデレ要素少なめ

断罪は決定済みのようなので、好きにやろうと思います。

小鷹けい
BL
王子×悪役令息が書きたくなって、見切り発車で書き始めました。 オリジナルBL初心者です。生温かい目で見ていただけますとありがたく存じます。 自分が『悪役令息』と呼ばれる存在だと気付いている主人公と、面倒くさい性格の王子と、過保護な兄がいます。 ヒロイン(♂)役はいますが、あくまで王子×悪役令息ものです。 最終的に執着溺愛に持って行けるようにしたいと思っております。 ※第一王子の名前をレオンにするかラインにするかで迷ってた当時の痕跡があったため、気付いた箇所は修正しました。正しくはレオンハルトのところ、まだラインハルト表記になっている箇所があるかもしれません。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 哀しい目に遭った皆と一緒にしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

転生先がハードモードで笑ってます。

夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。 目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。 人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。 しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで… 色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。 R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。

処理中です...