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学園入学編
68‐嫉妬
しおりを挟む周りの時間が止まった。そんな感覚に陥った。
目の前のアレンが何を言ったのか。一瞬理解できなかった。
その事実を受け入れられなかったからだ。
うそ…でしょ…?そんな、まさか……
何とか頭で理解しようとしている間にもアレンが手が首にくい込んで圧迫するのは止まらない。なにか喋ろうとしても変な声と息しか出ない。
「ッグッ…キュッ…アレ…ン…ッ」
「2年前だ。階段から落ちた後俺はこの忌々しい平民に成り下がっていた。
何をしたんだお前?なあ!!」
そんなの僕が知りたい。いつの間にかこの体になっていた。返せるなら返したい。
僕だってあんな家のいざこざなんて見たくなかった。巻き込まれたくなかった。
せっかく死んだのに。
ググググッ
「ギッ…ァッ……」
アレンの首を掴む手の力が強まってくる。
もういっそ、ここで殺してくれ。
そう思い始めた時だ。人がこちらに向かってくる足音がする。
「チッ…」
アレンがパッと僕から手を離す。
体に力が入らずそのまましゃがみこんでしまう。
「ゲホッ、ケホっ…」
アレンは僕の頭を掴み、上を向かせる。
「これから仲良くしてね。ルーク様♡」
アレンとは思えない歪んだ悪役の満面の笑みで僕に笑いかける。
僕に興味をなくしたように冷たい顔になって頭から手を離し、手をヒラヒラと僕に振りトイレから出ていった。
「っ…けほ…」
頭がまとまらない。何が起こったんだ。
アレンがルーク?ここは僕が知ってるアニメの世界ではないのか。これからどうなる。何が起こる?僕は死ねるの?アレンはこれから僕をどうするつもりなんだ?
僕は一体、なんなんだ。
「…兄上?」
どうやら足音の正体は戻ってこない僕を探しに来たラルクだったらしい。
「兄上っ!大丈夫ですか!?」
膝を地面についている僕を見つけ、心配そうに駆け寄ってくる。アレンに掴まれ乱れた髪に、乱れた服。首と手に力強く掴まれた鬱血痕。
明らかに何かありましたという状況。
僕の体を触り傷を確かめながら怒った獣のような顔でラルクが唸る。
「…さっきすれ違った奴にやられたのか?」
「…大丈夫…大丈夫だから」
「言えよ。やられたんだろ?」
今にもアレンを追っていきそうなラルクの腕を掴んで何とか行かないように止める。
「ぼ、ぼく…おれが!俺が煽ったから。俺が悪いから」
「……兄上」
「だから…だから…」
「…何で、俺を頼ってくれないんだよ」
怒りの表情に悲しみが混じったようななんとも言えない表情で僕を見る。
…頼れないよ。どうやって頼ればいいの。
何を頼るの。分からないよ。僕どうしたらいいの。どうしたら許してくれる?
ごめんなさい。ラルクに迷惑かけてる。死にたい。ごめんなさいごめんなさい。
頭がこんがらがってぐるぐるする。
「…兄上、もう寮に戻ろう」
「……うん…」
ラルクに服と髪を整えられトイレを出てラルクに支えられ歩いている時だ。
アーノルドとアレンが喋っているのが目に入る。
ぁっ…
無意識に体が立ち止まって一瞬立ちつくしてしまう。
僕は今盗られたと思ったのか…?アーノルドを?ただ喋ってるだけなのに?
馬鹿じゃないのか。何ショックを受けているんだ?あれが正しい形なのに。何がそんなに……中身がルークだから?でもルークは今アレンだろ。
それに、元々婚約者はルークなのだから、盗ったのは僕の方じゃないか。
そもそも盗られたってなんだよ。
あれだけ心を許さないとか、受け入れないとかやってたのに、なんで、なんでだ。
自分が気持ち悪い。嫌い。嫌い。
「兄上…?」
「何でもない。行こうラルク」
アーノルドとアレンを視界に入れないように会場から足早に出て行く。
何人かに話しかけられたが、全て無視をした。とにかく、ここにいたくなかった。
…僕って最低だなぁ。誰でもいい、もう殺してよ。お願いだから。もうこんな汚くてどうしようもない僕を殺してくれ。
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