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〚第四章〛〜絶望の底編〜
〚98話〛「助けを待つ日々1」
しおりを挟むステータスを確認し終えると、上の階からワラジムシ形の異形の足音が聴こえてきた。
てっきり前の階層の異形は全滅させたつもりだったのに、まだワラジムシの異形が残っていたようだ。
それからスキルによるものか、階段上から時々覗くワラジムシの触角がぼんやり紫色に光っていた。
…魔力感知?
多分それのおかげだろう。今はそんな事よりも…
挑むべきだろうか。異形に。
次は獲物としてではなく敵として僕を殺しにかかるだろう。
だけど前に見た異形のステータスは今の僕のステータスより下だった、勝てるのではないか?
…どうせ死んでもまた戦えるんだ、なら一度挑んでみた方がいい…。
そんな思いで、異形へと足を進めた。
きっとこんな軽い思いなんかで行ったせいで、僕の心は簡単に壊れるようになっていたのだろう。
階段を上がり終えると同時に僕の視界は黒一色となった。
「ッ…!」
全力で後ろに飛びそれを避けようとするが、間に合わず衝撃が来た。
そして左側の壁に当たり倒れこむ。
顔に来た衝撃で、右目はつぶれ、背中に来た衝撃で息が出来なくなり咳き込むと口からは血が出ていた。
さらに追撃が来て思わず両腕で顔を守るが、衝撃は脇腹へ来ていた。思わず顔に来ればよかったと思うような意味のわからなくなるほどの激痛が脇腹に走り、異形を見ていた左目は、脇腹へと向かってしまった。
それを見た瞬間頭が真っ白になると同時に更なる追撃が襲ってきた。
僕の脇腹は、凹んでいたのだ、しかも折れた肋骨が飛び出していた。
そして追撃が僕の左腕に襲い、そして僕の頭へと来た。その衝撃で僕は階段下へと飛ばされた。
そんな中何か肉の千切れるような音がし、異形の方へ半分暗くなった視線を向けると、ワラジムシの背中から無造作に映えている腕や耳がミチミチと音をたてながら蠢き、所々にある人の顔がブチブチと肉が千切れる音をたてながら口を開けてこちらを見ていた。
その視線に心が完全に潰された。暗くなる視界の中、僕はもう二度と挑みたくないという思いに支配されていった。
あれは餌として見られていた方がよかった。容赦なく、確実に殺しに来るその目は、餌として見られる生ぬるい視線なんかより圧倒的にショックだった。
追撃が来たあと、階層間の階段という安全圏に入ってしまい、追撃ができなくなってしまったせいで、殺気に溢れた視線を、目が覚めた今も受けていた。
かなりの長い間、全身の顔が僕に視線を寄越し、僕は完全にトラウマになってしまっていた。
頭を抱え、うずくまって、涙を流していた。
気付くと異形は消え、また静かな空間に戻っていた。
異形が去ったあとは、まるで死んだように何日も過ぎて行った。
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