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〚第一章〛〜祈り村編〜
〚12話〛「掟破り」
しおりを挟む「な、なんと…それは本当か…?」
紅葉の母親から話を聞いた村長や集まっていた村人たちに動揺が起こる。
なにせこの、掟を破る者は最低でもこの100年は現れずこの”祈り村”は平和が続いていたのだ、それが笑顔の無い子供に破られてしまったのだ。
そしてその事を伝える紅葉の母も嘘はつかないと村長は思っていた。
勿論その子供を育てた母親の責任が無い訳ではないのでは、と思いはしたが詩亜瑠の母親は、村の皆から見ても十分いい印象だった。
優しい彼女が詩亜瑠をそんなふうにするとは思わなかった、それはこの場にいる全員が分かっていた。
詩亜瑠の母親が原因だとはとても思えなかった。
そして疑惑の目は詩亜瑠に向くことになる。
もし、地球の人達が見たら止めるであろう方向へと話が進んでしまった。
元々浮いていた子供、更には村人たちは平和が優先・祈り神の意志、掟に背く者を罰するという思考が強かったのだ。
それは詩亜瑠の母親も例外では無かった。
彼女は自分のせいで祈り神の掟や村の平和が脅かされる可能性が出来たことを謝る事、火炙りの刑へと進んでいく話を率先して進めていく事はあっても、詩亜瑠への感情は、忌むこと以外無くなっていた。
「所で村長、詩亜瑠に付いてですが、彼女はまだ6歳、罰するにもあと4年は無理です、その間、どの牢に入れるのですか?」
村の一人が村長へと質問する。
理由は牢の数は4つあり、そのどれもが不衛生でその中で二つだけ100年以上前から一切触れていない。
理由は村の外にあるからだ、外には熊や蛇など危険が多く、そして平和が続いていたせいか、長年放置して蛇が住処にしていたせいか、放置していた。
ただ、出来れば正当に罰したかった村長だが、詩亜瑠の母親の目の前で娘を焼くのは精神的に辛いのではないかとか平和が続いていた村人たちに精神的ダメージを受けるのではないかと、平和ボケした村長が考えていた。
なので出来ればその前に病魔か毒蛇にでも噛まれてしまえばといつの間にか牢での死を願っていた。
そんな村長が村の中の牢を選ぶはずもなく、村から一番離れた牢に決定するのであった。
勿論そんな平和ボケ?した村長でも詩亜瑠の気持ちなど微塵も考えていないのだが。
「所で…詩亜瑠はまだ家に帰ってきた様子は無くここに来るまでに村人全員姿を見ていないのですが」
「それはきっとなにか企んでいるに違いない!」
「ああ…!あいつは一回も笑ったことが無いんだぞ!きっと悪魔の子ど……悪魔に乗っ取られているに違いない!」
悪魔の子供と言おうとした青年のように見える村人は、詩亜瑠の母親の事を思い出し、詩亜瑠の母親にこんな苦労をかけるなんてと意味のわからなくなった狂気じみた思考と共に詩亜瑠に怒りを覚えていた。
「…皆落ち着くのだ、それと掟を破る気か、朋樹よ」
「……、分かりました、すいません…」
まだ若いから仕方がない、そう思いながら村長は話を戻した。
「これから詩亜瑠を”掟破り”として扱う、異論あるものは居るか?」
そして本人の知らぬ間に、村人全員が詩亜瑠を”掟破り”として扱う事になった。
まだ幼い紅葉を除いて。
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