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第一章 伝説の水魔法使い

22 職人街

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 リザに連れられて、職人街に来た。ここは日本で言う、オランダのような街並みだ。レンガ造りの家々が並び、すごく風情のある街並みだ。まるでファンタジー映画の中にいるような感じなのに、ものすごく臭い。

 カイトの街に入って感じてはいたが、ここはかなり臭い。下水施設が整っていないからだろう。そこらじゅうに糞尿と、工業用水が撒かれている。

 村では肥溜めなどの処理があったし、自然に近い感じで処理できた。だから村では匂いに関してあまり気にしなかった。しかし、レンガ造りが並ぶ街では、下水が無ければ最悪である。職人街に期待してきたのに、この匂いはひどすぎる。

 俺は鼻をつまんで職人街を歩く。

「どう? アオ君。ここが職人街だよ。いろんな職人の店があるんだ」

 リザに聞かれるが、俺はそれどころではない。

「臭すぎる。早く買い物をして出よう」

「そう? 私は慣れてしまったよ。どの街もこんなだしね」

 リザは俺の手をつないで、離さない。彼女の手が温かすぎて、火傷しそうだ。出会って数日だが、ものすごく彼女になつかれてしまった。

「そういえばアオ君はお日様の匂いがするね。すごくいい匂いだ。あぁそうだ。アオ君の髪を切る鋏を買わないとだね」

 リザは言いながら、俺の頭の匂いをクンカクンカと嗅ぐ。

「やめろ。匂いを嗅ぐな。というか、俺は水が使えるから、毎日体を洗っているだけだ」

「そうか。いいなぁ」

「何言ってるんだ。リザにも水は分け与えてるだろう」

「あれはいざと言う時の為に取って置いてる」

「やめろ。すぐ使え」

「今までが水不足だったからな。高級な水を毎日ジャブジャブ使うのは性に合わないんだ。貧乏性だからね」

 臭いとかは彼女にとって慣れっこなのだろう。今までは、水で体を洗うこともほとんど出来なかったはずだからな。

 今度から、何が何でもリザの体を清潔にしよう。俺の力があれば可能だ。病気になられてからでは遅い。

 そんな旅に関係ないことも考えつつ、見つけた店に入った。一番初めに入った店は荷車や馬車などを作る店。木材などが大量に置いてある、工務店のような店だ。

 リザはその店に入ると、頑固そうな親父と何か話しを始めた。親父は叫ぶように話をしていて、なんだかうるさい。頑固な職人だから、ヒステリックなのだろうか?

 俺は子供なので、出来るだけ話し合いには混ざらず、買う時だけ口を出すようにする。「あれが欲しい!」と、子供っぽく演技するだけでいい。そうすればリザが職人と話を付けてくれるはずだ。

 店の奥は倉庫になっており、商品が乱雑に置かれている。一人用の手押し車から、リヤカーみたいなもの。貴族用の馬車も置いてあった。

 今回買うのは、商人用の幌付ほろつき牛車だ。それなりにしっかりとした物で、大きさで言えば2トントラックに相当する。今は牛二頭しかいないので、その牛車を引っ張るには重すぎる。牛はあとで買い足すことになった。

「それじゃ、アオ君。明日牛を連れて取りに来ることになったから、お金出して」

 俺はリザに金を2万シリル渡す。一気に金が無くなったが、仕方あるまい。 

 俺たちはそれからさまざまな店を一気に回る。ポーションなどを売っている薬屋。鍋や包丁、生活に必要な道具を売っている雑貨屋。必要なものを買いそろえる。牧草や野菜なども買っておいたが、手に持てない大きさだったので、出発するときまで店で保管してもらうことになった。

「アオ君。大体買い物は終わりそうだね。後は武器屋くらいかな?」

「そうだな。それは明日にしよう」  

 俺とリザは日が暮れそうになった職人街を後にし、食べ物を買って教会に戻った。
 
 
 
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