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第一章 伝説の水魔法使い

18 商人に水を売る

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 リザは商人がいる場所を知っているのか、露天市という場所に向かった。

 露天市とは、その名通り、露天商が多くいる場所だ。三つの都市から様々な物が流れ込んでいるので、服から宝石、野菜から珍味まで、たくさんの物資が並んでいる。

 大体が荷馬車を改造して、荷台の上に商品を広げて売っている。

 道路は舗装されていないただの土なので、すごく砂埃が舞っている。俺は牛二頭とオルフェを連れて、人ごみの中を歩く。物が取られないか心配だが、警備兵がいるのか、治安は維持されていた。

「こいつだ」

 リザは商人の所に来ると、ビシッと指を差した。人に指を差しても、この国では何ともないのだろうか? 指を差された商人は苦笑している。この商人も、荷馬車で露天を開いていた。売っているものは水と魔石だった。

 水は、「10リト=2000シリン」と書いてあった。何とか読めた。2000シリンとは、普通の農民が稼ぐ一か月分の給料に相当する。10リトとは、日本にして大体10リットルだ。

 売られている水を見るが、ガラスに瓶に入っている。かなり濁っているが、これで2000シリンも取るのか?

 俺は水を売られている商品を見ていると、商人が口を開いた。

「リザじゃないか。結局帰ってきたのか? 水が無いままこの町を出て行ったから、心配していたよ」

「心配していたなら水を寄越せばよかっただろう」

「なんでタダであげなきゃならないんだ。言っただろう? 一晩好きにさせてくれたら、水をやるって」

「一晩で水筒一杯とはありえんだろう」

「ははは。リザ、君のようなやせ細った子は、俺くらいしか抱かないよ」

 商人の男は軽口を叩いて笑う。見たところ、まだ若い商人だ。30代前半くらいだろうか? 駆け出しの商人ではないようだが、ベテランでもなさそうだ。外見は悪くないが、頭にターバンを巻いているので、もしかしたらハゲかもしれない。 

「それで? 牛でも売りに来たのかい? その子は? 奴隷かい?」

 商人はぼさぼさ頭の俺を見たので、奴隷だと思ったようだ。だから俺は言った。

「奴隷じゃない」

「へぇ。口が聞けたのか。俺はライド。君は?」

「アオ」

「アオ?」

「そうだ」

「ふーん」

 商人は俺を見て値踏みしている。

「ライド。少し話がある。良い商品があるから、人がいない場所を用意してくれ」

「良い商品? 魔石かい?」

「もっといいものだ」

 リザはにやりと笑う。

「良いだろう。俺の取っている宿がいい。そこで話を聞こう」

 俺とライドたちは露天市から移動を開始した。






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