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第二章

79 新しい力を得るために

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 村での戦いから、早くも二週間が経過した。神殿騎士団長のハインツを俺らが倒したので、エルメールの王国軍も本腰を上げたようだ。ついに、全面戦争を始め、俺たちを殲滅するようだ。

 アルテアがいろいろと手を打っているが、基本的には策を用いた戦いである。数と力でゴリ押すわけじゃない。作戦が失敗すれば、あっという間に俺たちは負けるだろう。最初から相手が強いのだからな。

 俺は最終決戦に向け、新しい必殺技を考えていた。今の俺ならば、水を使った強力な技を使えるはずだ。何か言いアイディアが無いかと、砦の中を散歩しながら考える。

 そう言えば、以前戦ったルドミリア教会のロイドは、水の魔法と炎の魔法を同時発動していた。水魔法使いなのに、火の魔法を使って俺を追い詰めた。

 今まで水魔法しか使って来なかったが、俺も火の魔法が使えるんじゃねぇか?

「そうだ。俺も混合魔法で戦うぞ!」

 善は急げ。俺は魔法を教えてくれそうな、リザの所に向かった。彼女はまだ体が全回復していなかったが、すでに砦の訓練所でリハビリを行っていた。

 俺は兵士たちの訓練所に向かった。そこは小さなコロシアムで、円形闘技場のような場所だった。




★★★


 訓練所に来て、俺はすぐにリザを見つけた。訓練所の隅っこで、一人で筋トレしていた。

「リザ。そんなに激しく動いて、体は大丈夫なのか?」

「あ、アオ君か。う、うん。大丈夫だ。予定よりも早く治った。すべてアオ君のおかげだ」

 彼女は俺を見て、少し伏し目がちにそう言った。少し顔が赤い。

「そうか。本当に良かった。リザがいなくなったら、寂しいからな」

 俺は臭いセリフを言ってみる。するとリザはまんざらでもないようで、顔を真っ赤にしてうつむいた。

「う、うん。ありがとう。嬉しいよアオ君」

「あぁ」

 リザは最近、俺を見ると顔を赤くする。俺が命を賭して助けたからか、ついに彼女はデレ期に突入したらしい。リザは出会った時から優しかったが、これは違う。本格的な恋だ。ついに俺の夢が……。

 と、そんなことを考えている場合じゃない。今はそれどころじゃなかった。

「リザ。話しがあるんだがいいか?」

「話し? ちょっと待っててくれアオ君。あと10回スクワットすれば500回なんだ」

「え? 500?」

「うん。500回」

 マジかよこの女。病み上がりでよくそんなに動けるな。鉄人かよ。

 リザはすぐに俺の目の前でスクワットを始めた。手を伸ばせば届く距離で、リザの胸がブルンブルン揺れ始める。彼女の着ているシャツ越しに、胸がダンスしている。

「ゴ、ゴクリ……」

 俺はリザの巨乳を見て、つばを飲み込む。

 そんなタンクトップみたいなシャツ一枚で、ブラジャーなしにスクワットしたら、おっぱいがポロリするぞ。ここには他にも兵士が大勢いるのに、よくそんな恰好で筋トレするな。
 
「よし。500回終わり。待たせたねアオ君。話と言うのは?」

 リザがタオルで汗を拭い、俺に問いかける。

「あ、あぁ。ついに全面戦争が始まるよな? このままじゃいけないから、俺も魔法訓練をしようと思ってここに来た」

「魔法訓練? どんな? アオ君は水魔法使いだろ? 我々とは訓練の仕方が違うと思うが」

「いや、水魔法以外にも火魔法とか使ってみたい。リザがよければ教えてくれないか?」

「私がか? 私は魔法に関してはそれほど得意じゃないぞ。低級魔法ならある程度使えるが……」

 リザは言いよどむ。確かに、リザ以外にも適任はいるだろう。だが今は戦争前でかなりあわただしい。アルテアは魔法に詳しそうだが、毎日会議で話かける暇がない。ライドも会議に出席しているし、クーは戦闘訓練を兵士としてる。プルウィアも料理当番で忙しい。なぜか俺だけプラプラしている状態だ。

 ちなみにリザは怪我があるので、砦に残って防衛組に入る。今は元気に見えるが、内臓の修復は完全ではない。だから居残り組だ。

「頼むよ。今はリザしか手が空いていないんだ」

「そうだな。分かった。私でよければ教えよう」 

 リザはニコッと笑いかけてくれる。当たり前のように俺の頭を撫で、図書室に向かった。



 














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