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9 街へ行くまでの道中にて
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村人の火葬を済ませ、ジェーンは愛馬を迎えに厩舎へ行く。
するとジェーンの馬「フリード」は、おとなしく待っていた。
「ジェーン。俺の荷台に、フリードを入れられるか?」
「大丈夫だ。ちょうどいい足場を見つけた」
ジェーンはみかん箱のような木箱を見つけてきた。それを階段のように積み上げ、俺の荷台への道を作った。これで馬でも俺の荷台に上れる。
フリードは手綱を引っ張られ、ゆっくりと俺の荷台に乗り込んだ。
「厩舎にある備品を積み込みたいんだが、いいか? 少し荷台が汚れてしまうが」
馬用の道具一式か? 工具とかもいろいろあるな。泥と錆だらけで、確かに俺の荷台が汚れるな。
「それは構わない。きちんと整理整頓すれば、多少の汚れは気にしない。問題は、その道具を勝手に持ち出していいのかってことだ」
「構わないさ。どうせすぐに野盗に荒らされる。国に報告が行って、新しい住民が来る前に、この村は残っていない。いつものことだ」
この草原には野盗までいるのか。俺はまだ出会っていないが、会ったらめんどくさいな。次の改造でレーダーを取っておくか。
それからジェーンは必要なものをトラックの荷台に次々と運び込む。
住民のお金も乗せる。国に返却するのだという。大した額ではないらしいが、あるのとないのとではやはり違うらしい。
食料や、衣類、畑の野菜なども収穫して、二日かけて積み込みをした。おかげで、大型の冷蔵庫はパンパンだ。この冷蔵庫だが、業務用クラスなので、食べ物がいっぱい入る。冷凍庫もかなり大きい。
「他の騎士は来ないのか? ジェーン一人だけなのか?」
「この区画には、私一人しかいなかった。連絡が行っていても、到着するまでに5日はかかる。それに私が村は全滅していたと、無線機で連絡した。だから応援は来ない」
そういえば、ジェーンは小型の無線機を持っていた。厩舎に隠してあった。あれで連絡していたのか。
「これから来るのは、国の役人さ。どれだけの被害で、どれだけの損失を出したかの計算にね」
「どうして草原に開拓しにくるんだ? 他に開拓地はないのか?」
「ないこともないけど、ここが一番安全だからかな? 東は火山で、西は海。北は荒野だし、水がある南の草原の方が、まだマシだな」
「他に国はないのか?」
「あるけど、火山地帯を超えないとないな」
「魔国ってのはどこにあるんだ?」
「海を越えたところだな。海の向こうから、奴らは侵略してくる」
「話は変わるが、機械騎士ってのは、いっぱいいるのか?」
「いる。人間と同等の権利を持っているのが、機械騎士だ。私はまだ下級騎士だから、給料が低くて、危険な任務ばかりさせられる。戦争に参加させられないだけ、私はまだマシな方だな」
聞けば、機械騎士の性能は様々らしい。詳しくは聞いていないが、魔石を体に取り込むことによって、能力を底上げできるらしい。人間よりも魔物よりの力を持っているのが、機械騎士だ。
彼女がキマイラの魔石に喜んでいたのは、金の為ではない。最終的には金に繋がるんだろうが、彼女が求めていたのは、魔石による戦闘力アップだ。あとでキマイラの魔石を体に取り込むのだという。俺はその取り込むところを見させてもらうことにした。というより、トラックの中に俺の死角はなかった。念じれば、車内のどこでも自動的に見れる。当然、シャワーシーンも見放題だ。
最後に、水も大目に積み込んだ。ジェーンの愛馬、フリードもいっぱい水を飲む。シャワーの水に、ペットボトルの飲料水を使うわけにはいかない。レベルアップ時に水のタンクなども満タンになるが、生活用水のタンクは100リットルと多くない。すぐに使い切るだろう。
「フリードの様子はどうだ? 暴れていないか?」
「フリードは賢い。言って聞かせればすぐに分かる。安全だと分かればすぐにおとなしくなるし、荷台には藁(わら)をたくさん敷いたから、過ごしやすいはずだ」
そうか。俺の荷台が藁だらけか。仕方あるまい。馬をトラックの荷台に入れたんだ。ダンボールもいっぱいあるし、フリードがぶつからないように藁でガードしなければならないな。
「それじゃぁ、出発するぞ。方角はどっちだ?」
「村の入り口から出て、右へまっすぐ行ってくれ。けもの道が見えるから、あとはそれを頼りに進むだけだ」
そうか。けもの道か。舗装道路ではないが、まだ巨石がないだけマシかな?
俺は言われたとおり、ジェーンの指示に従った。
初めて訪れた村人は全滅してしたし、人間を火葬にまでしたのは初めてだった。子供の死体を運んだ時は胸が締め付けられる思いだった。
なんだかこの世界は物騒だ。
俺がゆっくり過ごせる土地はあるのだろうか?
俺はそう思いながら、トラックを走らせた。
★★★
朝からトラックを半日走らせて、フリードの散歩の為に、小川付近で停車させた。
ジェーンも運転席で暇そうにしていたので、ちょうどよかった。
ちなみに、ジェーンもフリードも乗り物酔いはしなかった。理由は不明だが、酔わないのならそれに越したことはない。
フリードを荷台から下し、近くを散歩させるジェーン。もちろん、俺もフリードに乗せてもらう。人生初のホースライディング!! (乗馬)
人体生成によりガソリンを消費するが、知ったこっちゃない。目の前に馬がいれば、乗る。
登山家ジョージ・マロリーはこう答えたがある。
「あなたはなぜエベレストに登りたいのですか?」
「そこにエベレストがあるから」
素晴らしい。ならば俺も馬に乗らないわけにはいかない。
俺は興奮しつつフリードに乗った。ジェーンが手綱を引いて、ただ歩くだけだが、俺はすごく興奮した。馬って良い。俺もいつか馬主になりたい。
それからフリードに野菜を手渡しで食わせたりして、まったりと過ごす。ジェーンも自分の鎧や剣のメンテナンスを始めた。
「フリード、私の見える範囲にいろよ。遠くには行くなよ?」
「ブルルル」
フリードはジェーンに言われて理解したようだ。頭を下げて返事をした。
その後フリードは草原に生えている雑草を食いまくっている。馬は起きている半分以上の時間、草を食うらしい。荷台にある大量の藁も、かなりの勢いで消費している。
ためしに、俺はナビに藁を購入できるか聞いてみた。レベルアップで得た、謎の通信販売だ。
『可能です。通常の飼い葉でしょうか?』
飼い葉?
『えん麦、干し草、青草などを混ぜたものです。ヘイキューブというものもあります』
「よくわからない。普通の飼い葉でいいよ。野菜もあるから、おやつにニンジンとか上げればいいだろ」
俺はガソリンを5リットル消費し、大量の飼い葉を用意した。大量に藁を買ったせいで、フリードの動けるスペース以外に、荷台の空きはもうない。
藁で埋め尽くされた俺の荷台。これはこれで不味い気がする。
ま、まぁいいか。フリードは体も大きいし、いっぱい食べるだろ。
俺は謎すぎる通信販売を、ナビに聞いていろいろ調べていると、ジェーンから声がかかった。
「肉を食べたい。近くに水牛の群れがいるから、殺してくれないか」
「嫌だ」
俺は考える間もなく即答する。
「な!? なぜだ? 水牛だぞ」
「俺は牛が好きなんだ。自ら好んで殺すなど、絶対にしたくない」
菜食主義でもないし、牛肉も出されれば食うが、自ら殺すなどもってのほかだ。
「そ、そうだったか。それはすまんな」
肉なら、たしかダンボールの中にあったんじゃないか? 缶詰で見かけた気がするな。
「なら、ワニを殺してくれないか? 小川を歩いていたら、デカいワニが水牛を襲っていたんだ。そいつならどうだ?」
水牛を襲っていただと? いいだろう。殺してやる。どこにいるんだその腐ったワニは!!
「そのワニはどこだ? 乗れ」
「わかった。まずは馬を乗せる」
ジェーンはフリードを荷台に乗り込ませると、ワニがいる方向を指し示した。
「あっちの方にいた。デカいから、気をつけろ」
俺はエンジンをドゥルンドゥルン鳴らすと、ワニのいる方に走り出す。
3分ほどゆっくり走ると、巨大なワニがいた。全長8メートルはあろうかという、巨大ワニだ。体色も青く、鎧のような皮膚だ。
ここは小さな川ではあるが、川の水を飲みに来た水牛を殺しているようだ。ワニの近くに、牛の角や足が転がっている。川の水も、真っ赤に染まっている。
ほうほう。貴様やってしまったようだな。俺の癇に障ったようだぞ? ワニよ。
悪いが、死ね。
生態系が壊れるなど知ったことか。
俺はチェーンマシンガンを出すと、デカいワニに向ける。
「あのワニはなんていうんだ?」
「多分、スティールブルーっていう種類だと思う」
「スティールブルー? 鋼のワニか?」
「ここら辺にいるワニって言ったら、そいつしか知らない」
よくわからないが、悪名高いワニらしい。食べるためと、水牛の被害が出ているという大義名分で、俺の心は軽くなる。これでトリガーをためらいなく引けるぜ。
俺は狙いを定めると、ワニめがけて、チェーンマシンガンから魔力弾を掃射した。
ワニの硬さそうな皮膚に通じるか心配だったが、それは杞憂だった。
バスバスバスッという、音ともに、ワニの体に弾丸が命中した。一部は肉が吹き飛ぶ威力だ。
ほんの一秒足らずで、15発近い魔力弾を食らい、ワニは絶命した。頭にも食らったので、即死である。
これで、硬い生物であろうと余裕で殺せることが証明された。チェーンマシンガン、恐るべし。
『レベルが上がりました。レベル35になりました』
ナビから音声が聞こえた。改造もすでに決まっていたので、レーダーを取得すると伝えた。ナビから言われる前に、食い気味で答えてやった。
「レーダーを取る」
すると、ナビからは何か電子音が鳴った。
『レーダーの設置が完了しました』
相も変わらず、謎の技術によって、車内に四角い液晶のレーダーが設置された。
「レーダー? なんだかよくわからないが、私はワニを見てくるぞ。いいか?」
「近くにワニの仲間がいるかもしれないから、気を付けるんだぞ。それと、ウインチのフックを持って行け。俺が引っ張り上げてやる」
ジェーンはうなづいて、ワニのいる方に走って行った。とても喜んでおり、彼女の足取りがスキップに見えたのは、気のせいだろうか?
するとジェーンの馬「フリード」は、おとなしく待っていた。
「ジェーン。俺の荷台に、フリードを入れられるか?」
「大丈夫だ。ちょうどいい足場を見つけた」
ジェーンはみかん箱のような木箱を見つけてきた。それを階段のように積み上げ、俺の荷台への道を作った。これで馬でも俺の荷台に上れる。
フリードは手綱を引っ張られ、ゆっくりと俺の荷台に乗り込んだ。
「厩舎にある備品を積み込みたいんだが、いいか? 少し荷台が汚れてしまうが」
馬用の道具一式か? 工具とかもいろいろあるな。泥と錆だらけで、確かに俺の荷台が汚れるな。
「それは構わない。きちんと整理整頓すれば、多少の汚れは気にしない。問題は、その道具を勝手に持ち出していいのかってことだ」
「構わないさ。どうせすぐに野盗に荒らされる。国に報告が行って、新しい住民が来る前に、この村は残っていない。いつものことだ」
この草原には野盗までいるのか。俺はまだ出会っていないが、会ったらめんどくさいな。次の改造でレーダーを取っておくか。
それからジェーンは必要なものをトラックの荷台に次々と運び込む。
住民のお金も乗せる。国に返却するのだという。大した額ではないらしいが、あるのとないのとではやはり違うらしい。
食料や、衣類、畑の野菜なども収穫して、二日かけて積み込みをした。おかげで、大型の冷蔵庫はパンパンだ。この冷蔵庫だが、業務用クラスなので、食べ物がいっぱい入る。冷凍庫もかなり大きい。
「他の騎士は来ないのか? ジェーン一人だけなのか?」
「この区画には、私一人しかいなかった。連絡が行っていても、到着するまでに5日はかかる。それに私が村は全滅していたと、無線機で連絡した。だから応援は来ない」
そういえば、ジェーンは小型の無線機を持っていた。厩舎に隠してあった。あれで連絡していたのか。
「これから来るのは、国の役人さ。どれだけの被害で、どれだけの損失を出したかの計算にね」
「どうして草原に開拓しにくるんだ? 他に開拓地はないのか?」
「ないこともないけど、ここが一番安全だからかな? 東は火山で、西は海。北は荒野だし、水がある南の草原の方が、まだマシだな」
「他に国はないのか?」
「あるけど、火山地帯を超えないとないな」
「魔国ってのはどこにあるんだ?」
「海を越えたところだな。海の向こうから、奴らは侵略してくる」
「話は変わるが、機械騎士ってのは、いっぱいいるのか?」
「いる。人間と同等の権利を持っているのが、機械騎士だ。私はまだ下級騎士だから、給料が低くて、危険な任務ばかりさせられる。戦争に参加させられないだけ、私はまだマシな方だな」
聞けば、機械騎士の性能は様々らしい。詳しくは聞いていないが、魔石を体に取り込むことによって、能力を底上げできるらしい。人間よりも魔物よりの力を持っているのが、機械騎士だ。
彼女がキマイラの魔石に喜んでいたのは、金の為ではない。最終的には金に繋がるんだろうが、彼女が求めていたのは、魔石による戦闘力アップだ。あとでキマイラの魔石を体に取り込むのだという。俺はその取り込むところを見させてもらうことにした。というより、トラックの中に俺の死角はなかった。念じれば、車内のどこでも自動的に見れる。当然、シャワーシーンも見放題だ。
最後に、水も大目に積み込んだ。ジェーンの愛馬、フリードもいっぱい水を飲む。シャワーの水に、ペットボトルの飲料水を使うわけにはいかない。レベルアップ時に水のタンクなども満タンになるが、生活用水のタンクは100リットルと多くない。すぐに使い切るだろう。
「フリードの様子はどうだ? 暴れていないか?」
「フリードは賢い。言って聞かせればすぐに分かる。安全だと分かればすぐにおとなしくなるし、荷台には藁(わら)をたくさん敷いたから、過ごしやすいはずだ」
そうか。俺の荷台が藁だらけか。仕方あるまい。馬をトラックの荷台に入れたんだ。ダンボールもいっぱいあるし、フリードがぶつからないように藁でガードしなければならないな。
「それじゃぁ、出発するぞ。方角はどっちだ?」
「村の入り口から出て、右へまっすぐ行ってくれ。けもの道が見えるから、あとはそれを頼りに進むだけだ」
そうか。けもの道か。舗装道路ではないが、まだ巨石がないだけマシかな?
俺は言われたとおり、ジェーンの指示に従った。
初めて訪れた村人は全滅してしたし、人間を火葬にまでしたのは初めてだった。子供の死体を運んだ時は胸が締め付けられる思いだった。
なんだかこの世界は物騒だ。
俺がゆっくり過ごせる土地はあるのだろうか?
俺はそう思いながら、トラックを走らせた。
★★★
朝からトラックを半日走らせて、フリードの散歩の為に、小川付近で停車させた。
ジェーンも運転席で暇そうにしていたので、ちょうどよかった。
ちなみに、ジェーンもフリードも乗り物酔いはしなかった。理由は不明だが、酔わないのならそれに越したことはない。
フリードを荷台から下し、近くを散歩させるジェーン。もちろん、俺もフリードに乗せてもらう。人生初のホースライディング!! (乗馬)
人体生成によりガソリンを消費するが、知ったこっちゃない。目の前に馬がいれば、乗る。
登山家ジョージ・マロリーはこう答えたがある。
「あなたはなぜエベレストに登りたいのですか?」
「そこにエベレストがあるから」
素晴らしい。ならば俺も馬に乗らないわけにはいかない。
俺は興奮しつつフリードに乗った。ジェーンが手綱を引いて、ただ歩くだけだが、俺はすごく興奮した。馬って良い。俺もいつか馬主になりたい。
それからフリードに野菜を手渡しで食わせたりして、まったりと過ごす。ジェーンも自分の鎧や剣のメンテナンスを始めた。
「フリード、私の見える範囲にいろよ。遠くには行くなよ?」
「ブルルル」
フリードはジェーンに言われて理解したようだ。頭を下げて返事をした。
その後フリードは草原に生えている雑草を食いまくっている。馬は起きている半分以上の時間、草を食うらしい。荷台にある大量の藁も、かなりの勢いで消費している。
ためしに、俺はナビに藁を購入できるか聞いてみた。レベルアップで得た、謎の通信販売だ。
『可能です。通常の飼い葉でしょうか?』
飼い葉?
『えん麦、干し草、青草などを混ぜたものです。ヘイキューブというものもあります』
「よくわからない。普通の飼い葉でいいよ。野菜もあるから、おやつにニンジンとか上げればいいだろ」
俺はガソリンを5リットル消費し、大量の飼い葉を用意した。大量に藁を買ったせいで、フリードの動けるスペース以外に、荷台の空きはもうない。
藁で埋め尽くされた俺の荷台。これはこれで不味い気がする。
ま、まぁいいか。フリードは体も大きいし、いっぱい食べるだろ。
俺は謎すぎる通信販売を、ナビに聞いていろいろ調べていると、ジェーンから声がかかった。
「肉を食べたい。近くに水牛の群れがいるから、殺してくれないか」
「嫌だ」
俺は考える間もなく即答する。
「な!? なぜだ? 水牛だぞ」
「俺は牛が好きなんだ。自ら好んで殺すなど、絶対にしたくない」
菜食主義でもないし、牛肉も出されれば食うが、自ら殺すなどもってのほかだ。
「そ、そうだったか。それはすまんな」
肉なら、たしかダンボールの中にあったんじゃないか? 缶詰で見かけた気がするな。
「なら、ワニを殺してくれないか? 小川を歩いていたら、デカいワニが水牛を襲っていたんだ。そいつならどうだ?」
水牛を襲っていただと? いいだろう。殺してやる。どこにいるんだその腐ったワニは!!
「そのワニはどこだ? 乗れ」
「わかった。まずは馬を乗せる」
ジェーンはフリードを荷台に乗り込ませると、ワニがいる方向を指し示した。
「あっちの方にいた。デカいから、気をつけろ」
俺はエンジンをドゥルンドゥルン鳴らすと、ワニのいる方に走り出す。
3分ほどゆっくり走ると、巨大なワニがいた。全長8メートルはあろうかという、巨大ワニだ。体色も青く、鎧のような皮膚だ。
ここは小さな川ではあるが、川の水を飲みに来た水牛を殺しているようだ。ワニの近くに、牛の角や足が転がっている。川の水も、真っ赤に染まっている。
ほうほう。貴様やってしまったようだな。俺の癇に障ったようだぞ? ワニよ。
悪いが、死ね。
生態系が壊れるなど知ったことか。
俺はチェーンマシンガンを出すと、デカいワニに向ける。
「あのワニはなんていうんだ?」
「多分、スティールブルーっていう種類だと思う」
「スティールブルー? 鋼のワニか?」
「ここら辺にいるワニって言ったら、そいつしか知らない」
よくわからないが、悪名高いワニらしい。食べるためと、水牛の被害が出ているという大義名分で、俺の心は軽くなる。これでトリガーをためらいなく引けるぜ。
俺は狙いを定めると、ワニめがけて、チェーンマシンガンから魔力弾を掃射した。
ワニの硬さそうな皮膚に通じるか心配だったが、それは杞憂だった。
バスバスバスッという、音ともに、ワニの体に弾丸が命中した。一部は肉が吹き飛ぶ威力だ。
ほんの一秒足らずで、15発近い魔力弾を食らい、ワニは絶命した。頭にも食らったので、即死である。
これで、硬い生物であろうと余裕で殺せることが証明された。チェーンマシンガン、恐るべし。
『レベルが上がりました。レベル35になりました』
ナビから音声が聞こえた。改造もすでに決まっていたので、レーダーを取得すると伝えた。ナビから言われる前に、食い気味で答えてやった。
「レーダーを取る」
すると、ナビからは何か電子音が鳴った。
『レーダーの設置が完了しました』
相も変わらず、謎の技術によって、車内に四角い液晶のレーダーが設置された。
「レーダー? なんだかよくわからないが、私はワニを見てくるぞ。いいか?」
「近くにワニの仲間がいるかもしれないから、気を付けるんだぞ。それと、ウインチのフックを持って行け。俺が引っ張り上げてやる」
ジェーンはうなづいて、ワニのいる方に走って行った。とても喜んでおり、彼女の足取りがスキップに見えたのは、気のせいだろうか?
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