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私が義姉に?
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朝食後、エルヴィス様と談話しているとオーバンさんがやってきた。
「旦那様。お嬢様がお帰りになりました」
「……そうか」
エルヴィス様は苦虫を嚙み潰したような顔をした。
どういう心境なんだろう。
「お嬢様といいますと?」
「俺の妹だ。ここ数年は家に帰ってきていなかったから、久方ぶりに顔を合わせるな」
「たしか妹さんに領地経営を任せているのでしたっけ?」
「そうだ。若いころから非常に頭が切れて、俺のような無能とは比べものにならない秀才だ。俺はあいつの作った書類に印を押すだけの無能侯爵だよ」
「またエルヴィス様の卑下が始まりました……!」
ときおりネガティブモードに切り替わる。
特に領地や家族に関する話をするときはそうだ。
そういった話題は避けるべきなのかもしれない。
しばらくして、ひとりの令嬢が現れた。
赤い髪を長く伸ばし、碧眼をもつ……エルヴィス様と同じ色彩をまとった女性。
年齢は私とほとんど変わらないんじゃないかな?
エルヴィス様の妹さんだけあって、すごく綺麗な方だ。
「お久しぶりだな、兄上。二年ぶりだろうか、お元気そうで安心した」
「……リア、お帰り。そう言うわりには長いこと帰省していなかったよな。本当は俺のことなんて心配していないんだろう」
「相変わらず卑屈で重畳。常変わらぬ嫌味は壮健の証と受け取っておこう」
な、仲が……悪いのかな……?
顔を合わせて会話しているだけ、私とドリカ姉様の関係よりはマシだと思うけど。
「して、そちらのご令嬢は……海のような青髪。ディアナ・スリタール子爵令嬢か」
「あ、はい! ディアナ・スリタールです、よろしくお願いします」
「お初にお目にかかる、私はリア・アリフォメン。エルヴィスの妹だ。以後お見知りおきを」
優雅にカーテシーするリアさんに合わせて、私も礼を返す。
なんていうか……思っていた人と違う。
エルヴィス様と対照的に元気な人かと思っていたら、すごく落ち着いた人だった。
「ディアナ嬢……まずは謝辞を。わが兄エルヴィスとの婚姻を受け入れてくださったこと、心から感謝申し上げる」
「いえいえ! エルヴィス様はとてもお優しくて、私と趣味も合うんです。私こそこんなに素敵なお相手を紹介してもらって、感謝してもしきれません」
「差し支えなければ義姉上と呼んでも構わないだろうか。歳は私の方がふたつ上だと聞き及んでいるが、兄上の妻となる人に敬意をこめて」
そうか、私……お姉さんになるんだ!?
今までは妹として散々な目に遭ってきたけれど、今度は私が姉になる番。
ドリカお姉様みたいにならないよう、反面教師にしないと。
姉だから、親だからって偉そうにしていいわけじゃないんだし。
「ぜひ! なにか困ったことがあれば、姉の私を頼ってくださいね!」
誇らしげに胸を張る私に、リアさんは口元をほころばせて微笑んだ。
その様子を見ていたエルヴィス様が口を挟む。
「俺とディアナ嬢の縁談を用意したのはリアだ。今回の婚姻に関して、リアが来たら話をしようと思っていたのだが……」
「まだ話していないのか。では、夕刻に三者交えて仔細を話すとしよう。まずは親睦を深めるという意味で……義姉上。茶会でもどうだろうか?」
お茶会。
令嬢同士が顔を合わせてすることと言えば、やっぱりお茶会だ。
私もリアさんがどういう人か知りたいし、エルヴィス様のことも聞きたいし。
「はい! 一緒にお茶を楽しみましょう」
「あー……ディアナ嬢。妹に嫌なことを言われたら、すぐに俺に相談することだ。こいつは俺より陰険ではないが、陰険であることに変わりはないからな」
「やめたまえ兄上。私が礼節を欠くのは、兄上のように不審な人間に対してだけだ」
「言っておけ。昔はかわいげがあったというのに、ここ数年で一気に生意気になって……偉そうな話し方になったものだな」
や、やっぱり仲が悪いのかな……?
「旦那様。お嬢様がお帰りになりました」
「……そうか」
エルヴィス様は苦虫を嚙み潰したような顔をした。
どういう心境なんだろう。
「お嬢様といいますと?」
「俺の妹だ。ここ数年は家に帰ってきていなかったから、久方ぶりに顔を合わせるな」
「たしか妹さんに領地経営を任せているのでしたっけ?」
「そうだ。若いころから非常に頭が切れて、俺のような無能とは比べものにならない秀才だ。俺はあいつの作った書類に印を押すだけの無能侯爵だよ」
「またエルヴィス様の卑下が始まりました……!」
ときおりネガティブモードに切り替わる。
特に領地や家族に関する話をするときはそうだ。
そういった話題は避けるべきなのかもしれない。
しばらくして、ひとりの令嬢が現れた。
赤い髪を長く伸ばし、碧眼をもつ……エルヴィス様と同じ色彩をまとった女性。
年齢は私とほとんど変わらないんじゃないかな?
エルヴィス様の妹さんだけあって、すごく綺麗な方だ。
「お久しぶりだな、兄上。二年ぶりだろうか、お元気そうで安心した」
「……リア、お帰り。そう言うわりには長いこと帰省していなかったよな。本当は俺のことなんて心配していないんだろう」
「相変わらず卑屈で重畳。常変わらぬ嫌味は壮健の証と受け取っておこう」
な、仲が……悪いのかな……?
顔を合わせて会話しているだけ、私とドリカ姉様の関係よりはマシだと思うけど。
「して、そちらのご令嬢は……海のような青髪。ディアナ・スリタール子爵令嬢か」
「あ、はい! ディアナ・スリタールです、よろしくお願いします」
「お初にお目にかかる、私はリア・アリフォメン。エルヴィスの妹だ。以後お見知りおきを」
優雅にカーテシーするリアさんに合わせて、私も礼を返す。
なんていうか……思っていた人と違う。
エルヴィス様と対照的に元気な人かと思っていたら、すごく落ち着いた人だった。
「ディアナ嬢……まずは謝辞を。わが兄エルヴィスとの婚姻を受け入れてくださったこと、心から感謝申し上げる」
「いえいえ! エルヴィス様はとてもお優しくて、私と趣味も合うんです。私こそこんなに素敵なお相手を紹介してもらって、感謝してもしきれません」
「差し支えなければ義姉上と呼んでも構わないだろうか。歳は私の方がふたつ上だと聞き及んでいるが、兄上の妻となる人に敬意をこめて」
そうか、私……お姉さんになるんだ!?
今までは妹として散々な目に遭ってきたけれど、今度は私が姉になる番。
ドリカお姉様みたいにならないよう、反面教師にしないと。
姉だから、親だからって偉そうにしていいわけじゃないんだし。
「ぜひ! なにか困ったことがあれば、姉の私を頼ってくださいね!」
誇らしげに胸を張る私に、リアさんは口元をほころばせて微笑んだ。
その様子を見ていたエルヴィス様が口を挟む。
「俺とディアナ嬢の縁談を用意したのはリアだ。今回の婚姻に関して、リアが来たら話をしようと思っていたのだが……」
「まだ話していないのか。では、夕刻に三者交えて仔細を話すとしよう。まずは親睦を深めるという意味で……義姉上。茶会でもどうだろうか?」
お茶会。
令嬢同士が顔を合わせてすることと言えば、やっぱりお茶会だ。
私もリアさんがどういう人か知りたいし、エルヴィス様のことも聞きたいし。
「はい! 一緒にお茶を楽しみましょう」
「あー……ディアナ嬢。妹に嫌なことを言われたら、すぐに俺に相談することだ。こいつは俺より陰険ではないが、陰険であることに変わりはないからな」
「やめたまえ兄上。私が礼節を欠くのは、兄上のように不審な人間に対してだけだ」
「言っておけ。昔はかわいげがあったというのに、ここ数年で一気に生意気になって……偉そうな話し方になったものだな」
や、やっぱり仲が悪いのかな……?
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