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第9章 惑わぬ佯狂者の殉教
深山の偶像
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カウンター席に座り、メニューをじっくりと眺めていた。
本のことが気になって頭から離れない。
上の空でメニューを見つめていると、隣のエルメンヒルデが不満げな声色でノーラの体を揺らした。
「はーやーくー。店員さんも困ってるよー」
「いや、私は急いていない。しかし人に許された時間は有限なのでね。懊悩するも、即決するも自由だとも」
ちょっと変わり種というか、達観したような店員だ。
待たせるのも申し訳ないと思い、ノーラは目に留まった品を指さした。
「えっと、わたしはアイスカプチーノ? で……お願いします」
「承知した。作っている間、本でも読んでいてくれ」
「うぃひ! ありがとうございます!」
奇声を上げて喜ぶノーラ。
店員は立ち上がり、備え付けのコーヒーミルを動かし始めた。
まるでエルメンヒルデの注文を無視するかのように店員が動きだしたので、ノーラは虚を突かれる思いがした。
「あの、エルンの注文は……?」
「おや。そちらもドリンクをご所望かな?」
「んー……喉は乾いてないけどねぇ。魔力として消化はできますよ、一応。エルンはこのカフェモカでお願いしまーす」
「巫女って食べ物を魔力に変換できるんだ……衝撃の事実だよ」
新たに開示された事実に震えつつ、先程見た書棚へ向かう。
古臭い書物ばかりの棚も、ノーラにとっては宝石箱だ。
「たまんねぇぜ……ミリヤム・アルザティ、ソレンヌ・ラグランジュ、ユリウス・レジュニ……名だたる文豪たち。パトリック・マジエルにリア・アリフォメン!? 数百年前どころか数千年前の本もあるよ!? 魔法で保管してるのかな……?」
装丁を確認。
やはり酸性紙ではなく、魔石から作られたストーンペーパーだ。
普通の本ならば数十年でボロボロになるが、ほとんど劣化しないストーンペーパーが用いられているようだ。
文豪の書物はそれほど保存する価値がある。
「ど、どどっ、どれを読もうかな? というか昔の文字だけど読めるかな?」
さんざん悩み抜いた挙句、ノーラは一冊の本を抜き取る。
この手触り、装丁の具合、間違いなく古の書物。
文学オタクのノーラからすれば垂涎ものの代物だった。
本を丁重に持ってカウンター席へ戻ると、エルメンヒルデが強張った面持ちで店員と話し込んでいた。
「戻ったよ。エルン、どしたん?」
「あっ、なんでもないよ。な、なんの本を持ってきたの?」
「すごく迷ったけど、今回はこれにしたよ。『銀盤の魔女』……!」
カウンター席に座ると、目の前に注文したカプチーノが差し出される。
絶対に本にこぼしたりしないように気をつけなくては。
本の表題を見たエルメンヒルデは首を傾げる。
「知らないや。おもしろい本なの?」
「もう傑作よ。あの課題読書にもなってた『剣と遠雷』の作者、リア・アリフォメンが書いた本だからね! 現代では『実家で迫害されていた令嬢、貴族学園の門を潜る~完全無欠の冷酷令息に溺愛されている件~』って名前でリメイクされてるよ。主人公の男爵令嬢が実家で肩身の狭い思いをしているんだけどね、ある日貴族学園への招待状が送られてきて、その経緯がなんとなくわたしの境遇に近いっていうか……」
「あ、オタク語りはいらないから。好きな話の原典? が見つかって良かったねぇ」
興味なさげにエルメンヒルデは笑った。
「もう……エルンさぁ。こんな宝の山を前にして、よくそんな無関心でいられるね。同じ人間とは思えねぇよ」
「そこまで言う? 話の内容は同じなんだからさ、新しいやつ読めばよくない?」
「わかってねーな……」
渋面してノーラはカプチーノを飲んだ。
舌に伝った甘美なる味わい。
これは……今までに飲んできた中でも、相当な美味さ。
「おぉ……ドリンクも美味しい。あの、店員さん。ここにある本はどうやって揃えたのですか?」
「……友人から譲り受けたものだ。君のように熱心な人間に読まれて、その本も報われる思いだろう。かなり古い書物ゆえ、読めない箇所があれば私に聞いてくれ」
「はい! ありがとうございます!」
「ちなみに……その『銀盤の魔女』は、現代で出版されているものとは展開が異なる。現代版においては、残酷な描写は抹消され、反権威的な展開も改編されているようだ」
「マジすか。名著の展開を変えるなんて……許せねえよ。やっぱ現代の娯楽はクソだな」
古に囚われた老人のような罵言を吐きつつ、ノーラは本を開いた。
一応文字は読める。
引き籠り時期に古今東西の本を読み漁った経験が生きている。
「エルン。どれくらいこのカフェにいていい?」
「んー……まあ、夕方になる前には出たいね。日帰りの予定だったけど、夜に奉納の儀を終わらせて、村で一泊して帰るのもアリ。まあノーラちゃんに任せるよ」
「了解。どうしてもこの本を読みたいからさ……すまん」
二人の話を聞いていた店員。
彼女は涼しい顔で言い放った。
「その本は持ち帰っても構わない。急ぎの用事があるならば、家でじっくりと読むといい」
「へっ?」
あまりに予想外すぎる一言に、ノーラは硬直した。
まるで市販の本を貸すかのような流れである。
だが、自分の手中にある一冊は歴史的・文化的に見ても超貴重な代物で。
金貨を何枚積んでも買えないものなのだ。
「い、いや……それはさすがに」
「しっかりと向き合って読んでくれた方が、その小説の登場人物たちも……筆者も浮かばれるだろう。遠慮は不要だ」
「だってさ。良かったね、ノーラちゃん!」
「あ、あぉ……あ、あ、あ、ありがとうございますっ! あの、借用書を書きますので……」
「返す必要はない。ここに置いていても、埃を被っているだけだからね」
さすがに太っ腹すぎる。
ブックカフェの店員をしているくらいだから、この本の価値はわかっているだろうに。
本当にいいのだろうかと、ノーラは手を小刻みに震えさせる。
そんなノーラの様子を見たエルメンヒルデは、友の手から本を奪い取り、鞄に突っ込んだ。
「所有者からあげるって言われてんだからさ、もってきなよ。逆に失礼だよ」
「巫女長の言う通りだ。それと……この一冊も差し上げよう」
店員はカウンターの下から、黒い装丁の本を取り出した。
表題はなく、表紙絵も描かれていない。
「これは……」
「その昔、皇帝によって文書が厳しく検閲された時代があった。当時は検閲を避けるため、装丁を偽装して書物を保管することもあったのだよ。この本も検閲を避けるために偽装されたものだ。内容は……ああ、君の目で確かめることだ。――ノーラ・ピルット。『邪悪なる記憶』の正体がわかったのならば、もう一度ここへ戻ってくるといい」
「あれ……わたし、名乗りましたっけ?」
ノーラの問いに店員は答えず、鼻で笑った。
戸惑っているとエルメンヒルデがぐいと手を引く。
「いくよー。ほら、その本しまって」
「ああ、うん。待たせてごめん。……重ね重ね、本当にありがとうございます。よろしければお名前をお伺いしても?」
「私は……イクジィマナフという」
「イクジィマナフさん。絶対また来るので、そのときはもっとお話ししましょう! ここにある本のこと、たくさんお聞きしたいです」
「ああ、私で良ければ相手になろう。それでは壮健で」
店の扉を開く。
荒涼な山の寒気が店内に雪崩れ込んだ。
帰り際、ノーラたちの背にイクジィマナフの声がかかる。
「それと……先刻、不埒な輩が山頂へ向かったようだ。用心するといい」
「不埒な輩って……あれ!?」
聞き返そうと二人が振り向いたとき。
そこはもう山道の中腹で。
『ブックカフェ・エルヴィス』の姿はどこにもなかった。
ノーラは何が起こったのかわからず、狼狽して周囲を見渡す。
「え、あれ? 消えた? お店消えたよね?」
「消えたねぇ。……ま、たまにはそーいうこともあるんじゃない?」
「いやねーよ」
念のために鞄の中を確認してみたが、もらった本は入っている。
まるで狐につままれたようだ。
「とりあえず山頂に急ごう。さっさと奉納の儀を終わらせないと」
店が消えるという異常事態を前にしても、エルメンヒルデは特に驚いていない。
なんらかの魔法によって姿を消したのか、それともノーラが幻でも見ていたのか。
もう一度山を登れば姿を見せてくれるかもしれない。
山道を登り、何度振り返ってもカフェは見えず。
ノーラは後ろ髪を引かれる思いで山頂を目指した。
本のことが気になって頭から離れない。
上の空でメニューを見つめていると、隣のエルメンヒルデが不満げな声色でノーラの体を揺らした。
「はーやーくー。店員さんも困ってるよー」
「いや、私は急いていない。しかし人に許された時間は有限なのでね。懊悩するも、即決するも自由だとも」
ちょっと変わり種というか、達観したような店員だ。
待たせるのも申し訳ないと思い、ノーラは目に留まった品を指さした。
「えっと、わたしはアイスカプチーノ? で……お願いします」
「承知した。作っている間、本でも読んでいてくれ」
「うぃひ! ありがとうございます!」
奇声を上げて喜ぶノーラ。
店員は立ち上がり、備え付けのコーヒーミルを動かし始めた。
まるでエルメンヒルデの注文を無視するかのように店員が動きだしたので、ノーラは虚を突かれる思いがした。
「あの、エルンの注文は……?」
「おや。そちらもドリンクをご所望かな?」
「んー……喉は乾いてないけどねぇ。魔力として消化はできますよ、一応。エルンはこのカフェモカでお願いしまーす」
「巫女って食べ物を魔力に変換できるんだ……衝撃の事実だよ」
新たに開示された事実に震えつつ、先程見た書棚へ向かう。
古臭い書物ばかりの棚も、ノーラにとっては宝石箱だ。
「たまんねぇぜ……ミリヤム・アルザティ、ソレンヌ・ラグランジュ、ユリウス・レジュニ……名だたる文豪たち。パトリック・マジエルにリア・アリフォメン!? 数百年前どころか数千年前の本もあるよ!? 魔法で保管してるのかな……?」
装丁を確認。
やはり酸性紙ではなく、魔石から作られたストーンペーパーだ。
普通の本ならば数十年でボロボロになるが、ほとんど劣化しないストーンペーパーが用いられているようだ。
文豪の書物はそれほど保存する価値がある。
「ど、どどっ、どれを読もうかな? というか昔の文字だけど読めるかな?」
さんざん悩み抜いた挙句、ノーラは一冊の本を抜き取る。
この手触り、装丁の具合、間違いなく古の書物。
文学オタクのノーラからすれば垂涎ものの代物だった。
本を丁重に持ってカウンター席へ戻ると、エルメンヒルデが強張った面持ちで店員と話し込んでいた。
「戻ったよ。エルン、どしたん?」
「あっ、なんでもないよ。な、なんの本を持ってきたの?」
「すごく迷ったけど、今回はこれにしたよ。『銀盤の魔女』……!」
カウンター席に座ると、目の前に注文したカプチーノが差し出される。
絶対に本にこぼしたりしないように気をつけなくては。
本の表題を見たエルメンヒルデは首を傾げる。
「知らないや。おもしろい本なの?」
「もう傑作よ。あの課題読書にもなってた『剣と遠雷』の作者、リア・アリフォメンが書いた本だからね! 現代では『実家で迫害されていた令嬢、貴族学園の門を潜る~完全無欠の冷酷令息に溺愛されている件~』って名前でリメイクされてるよ。主人公の男爵令嬢が実家で肩身の狭い思いをしているんだけどね、ある日貴族学園への招待状が送られてきて、その経緯がなんとなくわたしの境遇に近いっていうか……」
「あ、オタク語りはいらないから。好きな話の原典? が見つかって良かったねぇ」
興味なさげにエルメンヒルデは笑った。
「もう……エルンさぁ。こんな宝の山を前にして、よくそんな無関心でいられるね。同じ人間とは思えねぇよ」
「そこまで言う? 話の内容は同じなんだからさ、新しいやつ読めばよくない?」
「わかってねーな……」
渋面してノーラはカプチーノを飲んだ。
舌に伝った甘美なる味わい。
これは……今までに飲んできた中でも、相当な美味さ。
「おぉ……ドリンクも美味しい。あの、店員さん。ここにある本はどうやって揃えたのですか?」
「……友人から譲り受けたものだ。君のように熱心な人間に読まれて、その本も報われる思いだろう。かなり古い書物ゆえ、読めない箇所があれば私に聞いてくれ」
「はい! ありがとうございます!」
「ちなみに……その『銀盤の魔女』は、現代で出版されているものとは展開が異なる。現代版においては、残酷な描写は抹消され、反権威的な展開も改編されているようだ」
「マジすか。名著の展開を変えるなんて……許せねえよ。やっぱ現代の娯楽はクソだな」
古に囚われた老人のような罵言を吐きつつ、ノーラは本を開いた。
一応文字は読める。
引き籠り時期に古今東西の本を読み漁った経験が生きている。
「エルン。どれくらいこのカフェにいていい?」
「んー……まあ、夕方になる前には出たいね。日帰りの予定だったけど、夜に奉納の儀を終わらせて、村で一泊して帰るのもアリ。まあノーラちゃんに任せるよ」
「了解。どうしてもこの本を読みたいからさ……すまん」
二人の話を聞いていた店員。
彼女は涼しい顔で言い放った。
「その本は持ち帰っても構わない。急ぎの用事があるならば、家でじっくりと読むといい」
「へっ?」
あまりに予想外すぎる一言に、ノーラは硬直した。
まるで市販の本を貸すかのような流れである。
だが、自分の手中にある一冊は歴史的・文化的に見ても超貴重な代物で。
金貨を何枚積んでも買えないものなのだ。
「い、いや……それはさすがに」
「しっかりと向き合って読んでくれた方が、その小説の登場人物たちも……筆者も浮かばれるだろう。遠慮は不要だ」
「だってさ。良かったね、ノーラちゃん!」
「あ、あぉ……あ、あ、あ、ありがとうございますっ! あの、借用書を書きますので……」
「返す必要はない。ここに置いていても、埃を被っているだけだからね」
さすがに太っ腹すぎる。
ブックカフェの店員をしているくらいだから、この本の価値はわかっているだろうに。
本当にいいのだろうかと、ノーラは手を小刻みに震えさせる。
そんなノーラの様子を見たエルメンヒルデは、友の手から本を奪い取り、鞄に突っ込んだ。
「所有者からあげるって言われてんだからさ、もってきなよ。逆に失礼だよ」
「巫女長の言う通りだ。それと……この一冊も差し上げよう」
店員はカウンターの下から、黒い装丁の本を取り出した。
表題はなく、表紙絵も描かれていない。
「これは……」
「その昔、皇帝によって文書が厳しく検閲された時代があった。当時は検閲を避けるため、装丁を偽装して書物を保管することもあったのだよ。この本も検閲を避けるために偽装されたものだ。内容は……ああ、君の目で確かめることだ。――ノーラ・ピルット。『邪悪なる記憶』の正体がわかったのならば、もう一度ここへ戻ってくるといい」
「あれ……わたし、名乗りましたっけ?」
ノーラの問いに店員は答えず、鼻で笑った。
戸惑っているとエルメンヒルデがぐいと手を引く。
「いくよー。ほら、その本しまって」
「ああ、うん。待たせてごめん。……重ね重ね、本当にありがとうございます。よろしければお名前をお伺いしても?」
「私は……イクジィマナフという」
「イクジィマナフさん。絶対また来るので、そのときはもっとお話ししましょう! ここにある本のこと、たくさんお聞きしたいです」
「ああ、私で良ければ相手になろう。それでは壮健で」
店の扉を開く。
荒涼な山の寒気が店内に雪崩れ込んだ。
帰り際、ノーラたちの背にイクジィマナフの声がかかる。
「それと……先刻、不埒な輩が山頂へ向かったようだ。用心するといい」
「不埒な輩って……あれ!?」
聞き返そうと二人が振り向いたとき。
そこはもう山道の中腹で。
『ブックカフェ・エルヴィス』の姿はどこにもなかった。
ノーラは何が起こったのかわからず、狼狽して周囲を見渡す。
「え、あれ? 消えた? お店消えたよね?」
「消えたねぇ。……ま、たまにはそーいうこともあるんじゃない?」
「いやねーよ」
念のために鞄の中を確認してみたが、もらった本は入っている。
まるで狐につままれたようだ。
「とりあえず山頂に急ごう。さっさと奉納の儀を終わらせないと」
店が消えるという異常事態を前にしても、エルメンヒルデは特に驚いていない。
なんらかの魔法によって姿を消したのか、それともノーラが幻でも見ていたのか。
もう一度山を登れば姿を見せてくれるかもしれない。
山道を登り、何度振り返ってもカフェは見えず。
ノーラは後ろ髪を引かれる思いで山頂を目指した。
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