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第7章 文化祭
恐慌の二年生
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一年生が出発してからしばらく経ち、二年生が森へと入っていく。
「まったく……幽霊などいるわけありません。さっさとこの馬鹿げた行事は終わりにして、奥の慰霊碑へと向かいましょうか」
「おっと、フリッツ。声が震えてるぜ? そんなに強気なら、俺よりも前を歩いてもらってもいいんだが?」
「な、何を言いますか。震えてなどいませんよ。それにマインラートだって全然進んでないじゃないですか」
「これは……アレだよ。獣が出てくるかもしれないから、慎重に進んでるんだ」
二年生の進行ペースは遅い。
マインラートが少しずつ歩みを進め、フリッツはしきりに周囲を見渡しながら後を追っていた。
(おっそ……)
暗闇から彼らを観察していたノーラは苦笑する。
この調子では三年生が追いついてしまうかもしれない。
ここはひとつ追い立ててやるか。
慰霊碑までの道には、二つの驚かしスポットがある。
道の中ほどに墓地。終わり際に朽ちた教会。
ノーラは墓地で二人を驚かし、エルメンヒルデは教会で驚かす手筈になっていた。
「ここは……墓地か。ハッ、いかにもって感じだな」
「墓地は墓地です。ただの石の塊です。さっさと通り過ぎますよ」
ようやくマインラートとフリッツが墓地に到着。
ノーラは足音を殺して動きだした。
さっさと奥へ進んでほしいので、二人の後ろへ回り込む。
後ろから驚かせば二人は前方へ逃げてくれるだろう。
問題はノーラが上手く幻影を見せられるかどうか。
(やってみるしかないよなぁ……)
恐るおそる進む二人目がけて、そっと手をかざす。
魔力を籠めて、彼らの意識に働きかけるように。
夏休み中にアリアドナに協力して技を磨かせてもらったのだ。
ここで本領を発揮しなければ。
(怖いものを見るのです、お二人とも……)
霊を見るのは『心』だ。
心霊とか言うくらいだし、心を惑わせば勝手に霊を見てくれる。
魔力に指向性を持たせることで、見せる幻影の種類は操作可能。
今、ノーラは相手が恐怖するものを見せる魔力を放出している。
はたして二人にレジストされずに通るのかどうか。
固唾を呑んで魔力を放出し続けていると、不意にフリッツが足を止めた。
「…………」
「お? どうしたよ。そんなところで立ち止まって」
マインラートは振り返り、いきなり立ち止まったフリッツに尋ねる。
しかし彼から返答はない。
何か恐ろしいものでも見たかのように、目を瞠って後ろを見据えていた。
マインラートも彼の視線に従って前を見るが、そこには何もない。
どんどん青ざめるフリッツを見て、マインラートの額にも汗が浮かぶ。
「おいおい、そういうの寒いって。ほら行くぞ」
「あ、あれは……いますよ、マインラート! そこに血まみれの兵士が……」
「い、いやいや。どこにもいねぇだろ? 悪ふざけも大概に……」
瞬間、マインラートは閉口した。
フリッツが指し示す後方。
そこに血まみれの兵士は見えなかったが、マインラートの目には四つん這いの女が映っていたのだ。
「う……うわぁああっ!」
マインラートは我を失って駆け出した。
やはりこの男、クラスいちのビビりである。
奥へと駆け出していくマインラートを見て、フリッツも咄嗟に駆ける。
「ま、待ってください! マインラートーっ!!」
二人が行ったのを見て、ノーラは木陰から飛び出した。
「せ、成功したっぽい……? やったぜ!」
想像以上の出来だ。
魔術が得意なフリッツには気づかれてしまうのではないかと懸念していたが、どうやら効いたらしい。
これはお化け屋敷を運営する際にも有用なスキルになるかも。
次はエルメンヒルデのお手並み拝見といこう。
ノーラは逃走していった二人を急いで追いかけた。
◇◇◇◇
墓地から全力で疾走し、二人は奥へ進んだ。
息を切らしたマインラートが木にもたれかかり、そこへフリッツが追いつく。
「はぁ、はぁ……マインラート! 私を置いていくなんて酷いじゃないですか」
「し、仕方ないだろ……相手が賊や獣なら立ち向かうが、化け物が出たら逃げるさ。ど、どうやら噂はあながち間違いじゃないみたいだな。四つん這いになった病的に白い女が見えたんだ……」
「私は血まみれの兵士が見えて……きっとこの地で亡くなった方ですね。痛ましいものです」
ノーラが見せた幻影によって、二人は霊の存在を確信した。
これはお手柄と言わざるを得ない。
恐怖心は加速度的に高まっていくもの。
この後のエルメンヒルデの仕掛けも、さらに効果的になるだろう。
フリッツはマインラートの手を取り、彼を立ち上がらせた。
「先を急ぎますよ。一年生のペアが怖い思いをしているかもしれません」
「……そうだな。特にピルット嬢とかは気絶してるかもしれねえ」
二人は意気投合し、歩みを再開した。
早い歩調で森の奥へ。
やがて木々の隙間から古びた建物が姿を見せた。
「あれは……」
「慰霊碑じゃないな。もう使われてない教会か……なんかいそうだし行くのはやめておこうぜ。このまま進もう」
「そ、そうですね。もうじき慰霊碑に着くはずなのですが」
すでに及び腰になっている二人は、朽ちた教会をスルーして進む。
その中にエルメンヒルデが隠れていることも知らずに。
二人を教会の窓から眺めて、エルメンヒルデはほくそ笑んだ。
「ふふっ……いい感じにノーラちゃんが怖がらせてくれたね。それじゃあ私も気合を入れて……」
彼女は手のひらを合わせ、床に置かれた和紙に力を籠めた。
「巫術――『擬人式・焔苦』」
和紙に炎が灯り、一気に膨れ上がる。
形成されたのは全身が燃え盛る人間のような怪物だった。
「補足 悪霊発炎」
教会から燃える怪物が飛び出していく。
まるで痛苦にのたうち回るような動きで、二人のもとへ向かっていく。
バチバチと、何かが燃えるような音。
鼓膜を叩いた異音にマインラートは振り向いた。
「う……おおおおっ!? フリッツ後ろ後ろ!!」
「……!? うわぁ!?」
こちらへ向かって全力疾走してくる炎の人型。
明らかに尋常ではない怪物に、二人は戦慄した。
「逃げろ逃げろっ! なんかヤバい!」
「くっ……この怨霊が!」
駆け出したフリッツは去り際に魔術を放つ。
フリッツの魔力によって生み出された巨大な水の球体が、人型に衝突。
しかしまったく効果はないようで、人型は走りを止めることはない。
「魔術が効かない! やはりアレは魔物ではなく霊の類です!」
「ごちゃごちゃ言ってねえで逃げろ!」
もう生きた心地がしない。
生気を失った顔でフリッツとマインラートは走り去っていった。
そしてしばらく追いかけたところで、炎の人型は消滅する。
エルメンヒルデは満足そうな表情を浮かべて教会から出た。
「大成功! 予想通り、二年生はいい反応してくれるね」
「エルン、おつかれー」
「おっ、ノーラちゃん。今の見てた? いい反応だったねぇ!」
たいそう愉快そうにエルメンヒルデは笑う。
ノーラ的には若干かわいそうだと思ったが……これが肝試しというものだ。
そしてお化け屋敷にも通ずる経験なのである。
「あの炎のバケモン、なに?」
「エルンの式神だよ。実質お化けみたいなとこある」
「そ、そっか……わたしもあんなのが襲ってきたら叫んで逃げるわ。てか気絶するわ」
よきものを見せてもらった。
なぜ人が霊を恐れるのか……手がかりを得た気がする。
人は『得体の知れないもの』を恐れるのだろう。
遭遇したのが魔物や獣であれば、彼らもそこまで動揺していなかったはずだ。
「じゃ、エルンは二年生ペアにネタばらししてくるから。ノーラちゃんは持ち場に戻って、三年生を待ってて」
「了解。しかし……三年生の先輩方は怖がるのかな……」
「まったく……幽霊などいるわけありません。さっさとこの馬鹿げた行事は終わりにして、奥の慰霊碑へと向かいましょうか」
「おっと、フリッツ。声が震えてるぜ? そんなに強気なら、俺よりも前を歩いてもらってもいいんだが?」
「な、何を言いますか。震えてなどいませんよ。それにマインラートだって全然進んでないじゃないですか」
「これは……アレだよ。獣が出てくるかもしれないから、慎重に進んでるんだ」
二年生の進行ペースは遅い。
マインラートが少しずつ歩みを進め、フリッツはしきりに周囲を見渡しながら後を追っていた。
(おっそ……)
暗闇から彼らを観察していたノーラは苦笑する。
この調子では三年生が追いついてしまうかもしれない。
ここはひとつ追い立ててやるか。
慰霊碑までの道には、二つの驚かしスポットがある。
道の中ほどに墓地。終わり際に朽ちた教会。
ノーラは墓地で二人を驚かし、エルメンヒルデは教会で驚かす手筈になっていた。
「ここは……墓地か。ハッ、いかにもって感じだな」
「墓地は墓地です。ただの石の塊です。さっさと通り過ぎますよ」
ようやくマインラートとフリッツが墓地に到着。
ノーラは足音を殺して動きだした。
さっさと奥へ進んでほしいので、二人の後ろへ回り込む。
後ろから驚かせば二人は前方へ逃げてくれるだろう。
問題はノーラが上手く幻影を見せられるかどうか。
(やってみるしかないよなぁ……)
恐るおそる進む二人目がけて、そっと手をかざす。
魔力を籠めて、彼らの意識に働きかけるように。
夏休み中にアリアドナに協力して技を磨かせてもらったのだ。
ここで本領を発揮しなければ。
(怖いものを見るのです、お二人とも……)
霊を見るのは『心』だ。
心霊とか言うくらいだし、心を惑わせば勝手に霊を見てくれる。
魔力に指向性を持たせることで、見せる幻影の種類は操作可能。
今、ノーラは相手が恐怖するものを見せる魔力を放出している。
はたして二人にレジストされずに通るのかどうか。
固唾を呑んで魔力を放出し続けていると、不意にフリッツが足を止めた。
「…………」
「お? どうしたよ。そんなところで立ち止まって」
マインラートは振り返り、いきなり立ち止まったフリッツに尋ねる。
しかし彼から返答はない。
何か恐ろしいものでも見たかのように、目を瞠って後ろを見据えていた。
マインラートも彼の視線に従って前を見るが、そこには何もない。
どんどん青ざめるフリッツを見て、マインラートの額にも汗が浮かぶ。
「おいおい、そういうの寒いって。ほら行くぞ」
「あ、あれは……いますよ、マインラート! そこに血まみれの兵士が……」
「い、いやいや。どこにもいねぇだろ? 悪ふざけも大概に……」
瞬間、マインラートは閉口した。
フリッツが指し示す後方。
そこに血まみれの兵士は見えなかったが、マインラートの目には四つん這いの女が映っていたのだ。
「う……うわぁああっ!」
マインラートは我を失って駆け出した。
やはりこの男、クラスいちのビビりである。
奥へと駆け出していくマインラートを見て、フリッツも咄嗟に駆ける。
「ま、待ってください! マインラートーっ!!」
二人が行ったのを見て、ノーラは木陰から飛び出した。
「せ、成功したっぽい……? やったぜ!」
想像以上の出来だ。
魔術が得意なフリッツには気づかれてしまうのではないかと懸念していたが、どうやら効いたらしい。
これはお化け屋敷を運営する際にも有用なスキルになるかも。
次はエルメンヒルデのお手並み拝見といこう。
ノーラは逃走していった二人を急いで追いかけた。
◇◇◇◇
墓地から全力で疾走し、二人は奥へ進んだ。
息を切らしたマインラートが木にもたれかかり、そこへフリッツが追いつく。
「はぁ、はぁ……マインラート! 私を置いていくなんて酷いじゃないですか」
「し、仕方ないだろ……相手が賊や獣なら立ち向かうが、化け物が出たら逃げるさ。ど、どうやら噂はあながち間違いじゃないみたいだな。四つん這いになった病的に白い女が見えたんだ……」
「私は血まみれの兵士が見えて……きっとこの地で亡くなった方ですね。痛ましいものです」
ノーラが見せた幻影によって、二人は霊の存在を確信した。
これはお手柄と言わざるを得ない。
恐怖心は加速度的に高まっていくもの。
この後のエルメンヒルデの仕掛けも、さらに効果的になるだろう。
フリッツはマインラートの手を取り、彼を立ち上がらせた。
「先を急ぎますよ。一年生のペアが怖い思いをしているかもしれません」
「……そうだな。特にピルット嬢とかは気絶してるかもしれねえ」
二人は意気投合し、歩みを再開した。
早い歩調で森の奥へ。
やがて木々の隙間から古びた建物が姿を見せた。
「あれは……」
「慰霊碑じゃないな。もう使われてない教会か……なんかいそうだし行くのはやめておこうぜ。このまま進もう」
「そ、そうですね。もうじき慰霊碑に着くはずなのですが」
すでに及び腰になっている二人は、朽ちた教会をスルーして進む。
その中にエルメンヒルデが隠れていることも知らずに。
二人を教会の窓から眺めて、エルメンヒルデはほくそ笑んだ。
「ふふっ……いい感じにノーラちゃんが怖がらせてくれたね。それじゃあ私も気合を入れて……」
彼女は手のひらを合わせ、床に置かれた和紙に力を籠めた。
「巫術――『擬人式・焔苦』」
和紙に炎が灯り、一気に膨れ上がる。
形成されたのは全身が燃え盛る人間のような怪物だった。
「補足 悪霊発炎」
教会から燃える怪物が飛び出していく。
まるで痛苦にのたうち回るような動きで、二人のもとへ向かっていく。
バチバチと、何かが燃えるような音。
鼓膜を叩いた異音にマインラートは振り向いた。
「う……おおおおっ!? フリッツ後ろ後ろ!!」
「……!? うわぁ!?」
こちらへ向かって全力疾走してくる炎の人型。
明らかに尋常ではない怪物に、二人は戦慄した。
「逃げろ逃げろっ! なんかヤバい!」
「くっ……この怨霊が!」
駆け出したフリッツは去り際に魔術を放つ。
フリッツの魔力によって生み出された巨大な水の球体が、人型に衝突。
しかしまったく効果はないようで、人型は走りを止めることはない。
「魔術が効かない! やはりアレは魔物ではなく霊の類です!」
「ごちゃごちゃ言ってねえで逃げろ!」
もう生きた心地がしない。
生気を失った顔でフリッツとマインラートは走り去っていった。
そしてしばらく追いかけたところで、炎の人型は消滅する。
エルメンヒルデは満足そうな表情を浮かべて教会から出た。
「大成功! 予想通り、二年生はいい反応してくれるね」
「エルン、おつかれー」
「おっ、ノーラちゃん。今の見てた? いい反応だったねぇ!」
たいそう愉快そうにエルメンヒルデは笑う。
ノーラ的には若干かわいそうだと思ったが……これが肝試しというものだ。
そしてお化け屋敷にも通ずる経験なのである。
「あの炎のバケモン、なに?」
「エルンの式神だよ。実質お化けみたいなとこある」
「そ、そっか……わたしもあんなのが襲ってきたら叫んで逃げるわ。てか気絶するわ」
よきものを見せてもらった。
なぜ人が霊を恐れるのか……手がかりを得た気がする。
人は『得体の知れないもの』を恐れるのだろう。
遭遇したのが魔物や獣であれば、彼らもそこまで動揺していなかったはずだ。
「じゃ、エルンは二年生ペアにネタばらししてくるから。ノーラちゃんは持ち場に戻って、三年生を待ってて」
「了解。しかし……三年生の先輩方は怖がるのかな……」
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