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第4章 儚き天才の矜持
ダンスレッスン
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「そこで足を左回りに。かかと三つぶんくらい」
「え、こうすか?」
「いやいや、違いますよ。というかそちらは右ですって」
「フリッツ様から見てってこと? あれ、逆?」
苦節三時間。
結局ダンスの練習をすることになったノーラは、フリッツに指導を申し出た。
しかしクラスNの教室で練習を始めてからというもの、一向にダンスが上達しない。
カクカクとぎこちなく手足を動かして定期的にすっ転ぶ。
フリッツもやけに数学的なアドバイスばかりするものだから、素人的にわかりづらい。
そんなノーラの舞踏もどきを見て、時たま様子を覗きにくるマインラートは腹を抱えて悶絶していた。
「く……ハハハッ! なあピルット嬢、それが平民なりの『気品』ってやつか? まるで俺の作った魔法人形みたいな動きしやがるな!」
「う、うるさいですね……マインラート様は関係ないでしょう?」
「いーや関係あるね。クラスNの生徒がそんな奇行を披露したら、俺の名誉にも傷がつく。そもそもあんたさ、旅芸人出身だろ? 少しはまともに踊れないのかよ」
「わたしは歌専門なので……! ま、まあ歌もそこまで上手くないんですけどね」
引き籠り生活の弊害。
ルートラ公爵家で運動する習慣をつけてきたが、幼少期から離れに閉じ込められていた悪影響は拭えない。
どうしても体を動かすのが苦手なのだ。
小さいころは活発な子どもだったのだが……。
ノーラが都合十七回目の転倒をしたとき。
教室の扉が開き、ヴェルナーが入ってきた。
「……なんだ、この状況は」
地面に倒れ伏すノーラと、顔をしかめるフリッツ、爆笑するマインラート。
そんな珍奇な光景を見てヴェルナーが嘆息したのは言うまでもない。
「おや、ヴェルナー先輩。ピルット嬢に舞踏を教えていたのですよ。あまり上手くいっていませんが……」
「間近に控えた舞踏会か。しかし……舞踏の練習という割には、ノーラの相手が見えんが」
「私は婚約者がいますので。マインラートはピルット嬢と躍るわけがありませんし。とりあえず流れと動きだけを教えよう、という次第です」
「しかしまぁ、お前のことだ。どうせくだらん講釈を垂れて指導が上手くいっていないのだろう」
「そ、そんなことはありませんよ!? 無駄な話はせず、簡潔に要点だけを教えるように指導しているのですが……」
フリッツはたしかに真面目に教えている。
本人としては伝わりやすい指導をしているのかもしれないが、傍から聞いたぶんにはかなり理解しづらい。
「いやいや、フリッツの教え方は気色悪いぜ? 魔石何個ぶんだとか、書物を百ページ開いたくらいの角度とか……数学の授業かっての。なあヴェル先、あんたが教えてやった方が早いんじゃねえか?」
「そうだな……練習くらいなら付き合ってやる。ほら、さっさと立て」
「は、はいっ!?」
ヴェルナーに促され、ノーラは慌てて立ち上がる。
魔術のときもそうだったが、フリッツよりヴェルナーの方が人に教える能力は高い。
それだけに彼の申し出はありがたかったのだが……。
「…………」
目の前に差し出されたヴェルナーの大きな手。
剣をよく振っていることがうかがえる、しなやかで鍛えられた手。
ノーラはしばし動きを停止した。
「どうした。手を取れ」
どうしてか。
ノーラはこの手を取っていいものか迷ってしまった。
『僕は……君に誰とも踊ってほしくないんだ』
ふと、ペートルスの言葉を思い出す。
そうだ、彼はそう言っていた。
『今回の舞踏会、僕は君と踊ることはできない。その上でわがままなのは承知しているが、舞踏会では誰とも踊らないでほしいんだ』
だが……アレは舞踏会で踊ることをやめてほしい、という旨の発言だ。
そもそも舞踏会で踊らないのなら、こうして練習する意味もないのだが。
今は練習だから大丈夫。きっと。
「し、失礼、します……」
ペートルスの発言がどういう意味だったのか、それはノーラも理解していない。
けれど公の場で踊ることに問題があるのだろう……と勝手に予想している。
ノーラが手を取った瞬間、浮遊感を覚える。
体がひとりでに動く。
いや、動くようにヴェルナーが誘導しているのだ。
「お前は流れに身を任せるだけでいい。覚えるべきは基本動作とステップのカウント。これだけ覚えていればマシに見える」
「はい、はい……」
流れに身を任せるだけ……と言われても。
ノーラはなんだかんだで相手に気を遣ってしまい、ついていくのに精いっぱいだ。
しかし踊れている。
ヴェルナーが上手いおかげで一応形にはなっている。
見違えるレベルで改善したノーラの舞踏を見て、フリッツは両の眼を見開いた。
「これは……さすがはヴェルナー先輩。よどみない舞踏で、相手をしっかりとリードできている。こうも一瞬で改善するとは……やはり私は教えるのが下手なのか?」
そして自分に教導の素質がないことに愕然もして。
肩を落とすフリッツの横腹を、マインラートの肘がつついた。
「お前の価値観は独特だからなぁ。やっぱり教えるのには向いてないんじゃないか?」
「そ、そうですね……天才すぎるがゆえの悩みでしょうか。常人には理解できない感性といいますか」
「なーに言ってんだか。お前は天才なんてガラじゃねえだろ。むしろ真逆だ。自分で努力し続けて積み重ねた価値観だからこそ、他人には理解できない。俺はそう思うけどな」
「っ……」
言葉を詰まらせるフリッツを見て、マインラートは肩をすくめて去っていく。
自分の努力を頑なに認めようとしないフリッツの態度には、マインラートも煮えきらない思いだった。
動揺の色を瞳に浮かべるフリッツの視線の先、ノーラとヴェルナーがくるくると回る。
二人の舞踏の足運びに合わせて、彼の頭の中も混濁していった。
◇◇◇◇
「ぜぇ……ぜぇ……」
「思っていたよりは体力があるな。そこらの令嬢よりはマシだ」
練習を終えて。
ノーラは壮絶に息を切らしていた。
ずっとヴェルナーに振り回されていた記憶しかない。
「あ、あの……わたし、ただ回っていただけで。まったく上達した気がしないといいますか、ヴェルナー様の誘導が上手すぎただけで、他の人と踊ったらまた踊れなくなるのでは?」
「気にするな。最初はされるがまま足を運んでいればいい。おのずと体の動かし方は理解できるようになるだろう。誰しもが通る道だ。……お前なら舞踏会までにダンスは身につけられるはずだ」
「わかりました。とりあえずがんばってみますね」
「ああ。空いている時間なら練習の相手になってやる」
頼もしい練習相手ができた。
問題は舞踏会で踊るか、踊らないか。
そして踊るとしたら誰を相手にするのかということ。
ノーラが思い悩んでいると、乾いた拍手の音が響いた。
「お見事です、ピルット嬢。私の指導がお役に立たなかったのは残念ですが、その調子であれば最低限の舞踏はできるようになるでしょう。あと二週間ありますからね、焦らずいきましょう」
「いえいえ。フリッツ様に教わった基本動作のおかげでなんとか動きについていけました。ありがとうございます」
「しかし……ダンスは良いとして。肝心のお相手は見つかりそうなのですか?」
「あ、それなんですけど……聞きたいと思っていたことがあって。『舞踏会で誰とも踊らないでほしい』って言われたとして、それってどういう意味なんですか?」
ノーラの何気ない一言に場が凍りついた。
ヴェルナーが次第に剣呑な雰囲気を放ち始めた様子を見て、フリッツは慌てて口を開く。
「そ、それは……誰かにそう言われたのですか?」
「いえ、あの……仮にといいますか。例えばの話……ですけど」
「ふむ……ピルット嬢に婚約者がいて、婚約者からそう言われたのなら従った方がいいでしょう。しかし、何の関係もない方に言われたのなら従う必要はありません。好きな方と踊ればよろしいかと」
「なるほど……そんなに気にする必要ないってことですか?」
「ええ。まあ相手方との関係性にもよりますが、見ず知らずの令息に言われたのなら社交辞令程度に考えておけばよろしいかと」
ペートルスとは見ず知らずの仲ではないが、婚約者というわけでもない。
きっと賢いフリッツがそう言うのなら正しいのだろう。
あまり深刻に考えなくてもいいのかもしれない。
「わかりました。それじゃあ、舞踏会当日までになんとか相手を探してみます。とりあえず一曲くらい適当に踊って、後は退出する流れでいこうかと」
「ええ、それがよろしいでしょう。ヴェルナー先輩も頼みましたよ」
「……ああ。例年通り、俺も一曲だけ踊って出るとしよう。まったく……面倒な話だ」
ヴェルナーの返事を聞いて、フリッツは柔らかく笑う。
「ふふ……今から舞踏会が楽しみです。今年は特別な贈り物も用意しましたから、私の婚約者も楽しんで踊ってくれるでしょう」
今までに見たことのないフリッツの表情を見て、ノーラはなんだか温かい気持ちになった。
「え、こうすか?」
「いやいや、違いますよ。というかそちらは右ですって」
「フリッツ様から見てってこと? あれ、逆?」
苦節三時間。
結局ダンスの練習をすることになったノーラは、フリッツに指導を申し出た。
しかしクラスNの教室で練習を始めてからというもの、一向にダンスが上達しない。
カクカクとぎこちなく手足を動かして定期的にすっ転ぶ。
フリッツもやけに数学的なアドバイスばかりするものだから、素人的にわかりづらい。
そんなノーラの舞踏もどきを見て、時たま様子を覗きにくるマインラートは腹を抱えて悶絶していた。
「く……ハハハッ! なあピルット嬢、それが平民なりの『気品』ってやつか? まるで俺の作った魔法人形みたいな動きしやがるな!」
「う、うるさいですね……マインラート様は関係ないでしょう?」
「いーや関係あるね。クラスNの生徒がそんな奇行を披露したら、俺の名誉にも傷がつく。そもそもあんたさ、旅芸人出身だろ? 少しはまともに踊れないのかよ」
「わたしは歌専門なので……! ま、まあ歌もそこまで上手くないんですけどね」
引き籠り生活の弊害。
ルートラ公爵家で運動する習慣をつけてきたが、幼少期から離れに閉じ込められていた悪影響は拭えない。
どうしても体を動かすのが苦手なのだ。
小さいころは活発な子どもだったのだが……。
ノーラが都合十七回目の転倒をしたとき。
教室の扉が開き、ヴェルナーが入ってきた。
「……なんだ、この状況は」
地面に倒れ伏すノーラと、顔をしかめるフリッツ、爆笑するマインラート。
そんな珍奇な光景を見てヴェルナーが嘆息したのは言うまでもない。
「おや、ヴェルナー先輩。ピルット嬢に舞踏を教えていたのですよ。あまり上手くいっていませんが……」
「間近に控えた舞踏会か。しかし……舞踏の練習という割には、ノーラの相手が見えんが」
「私は婚約者がいますので。マインラートはピルット嬢と躍るわけがありませんし。とりあえず流れと動きだけを教えよう、という次第です」
「しかしまぁ、お前のことだ。どうせくだらん講釈を垂れて指導が上手くいっていないのだろう」
「そ、そんなことはありませんよ!? 無駄な話はせず、簡潔に要点だけを教えるように指導しているのですが……」
フリッツはたしかに真面目に教えている。
本人としては伝わりやすい指導をしているのかもしれないが、傍から聞いたぶんにはかなり理解しづらい。
「いやいや、フリッツの教え方は気色悪いぜ? 魔石何個ぶんだとか、書物を百ページ開いたくらいの角度とか……数学の授業かっての。なあヴェル先、あんたが教えてやった方が早いんじゃねえか?」
「そうだな……練習くらいなら付き合ってやる。ほら、さっさと立て」
「は、はいっ!?」
ヴェルナーに促され、ノーラは慌てて立ち上がる。
魔術のときもそうだったが、フリッツよりヴェルナーの方が人に教える能力は高い。
それだけに彼の申し出はありがたかったのだが……。
「…………」
目の前に差し出されたヴェルナーの大きな手。
剣をよく振っていることがうかがえる、しなやかで鍛えられた手。
ノーラはしばし動きを停止した。
「どうした。手を取れ」
どうしてか。
ノーラはこの手を取っていいものか迷ってしまった。
『僕は……君に誰とも踊ってほしくないんだ』
ふと、ペートルスの言葉を思い出す。
そうだ、彼はそう言っていた。
『今回の舞踏会、僕は君と踊ることはできない。その上でわがままなのは承知しているが、舞踏会では誰とも踊らないでほしいんだ』
だが……アレは舞踏会で踊ることをやめてほしい、という旨の発言だ。
そもそも舞踏会で踊らないのなら、こうして練習する意味もないのだが。
今は練習だから大丈夫。きっと。
「し、失礼、します……」
ペートルスの発言がどういう意味だったのか、それはノーラも理解していない。
けれど公の場で踊ることに問題があるのだろう……と勝手に予想している。
ノーラが手を取った瞬間、浮遊感を覚える。
体がひとりでに動く。
いや、動くようにヴェルナーが誘導しているのだ。
「お前は流れに身を任せるだけでいい。覚えるべきは基本動作とステップのカウント。これだけ覚えていればマシに見える」
「はい、はい……」
流れに身を任せるだけ……と言われても。
ノーラはなんだかんだで相手に気を遣ってしまい、ついていくのに精いっぱいだ。
しかし踊れている。
ヴェルナーが上手いおかげで一応形にはなっている。
見違えるレベルで改善したノーラの舞踏を見て、フリッツは両の眼を見開いた。
「これは……さすがはヴェルナー先輩。よどみない舞踏で、相手をしっかりとリードできている。こうも一瞬で改善するとは……やはり私は教えるのが下手なのか?」
そして自分に教導の素質がないことに愕然もして。
肩を落とすフリッツの横腹を、マインラートの肘がつついた。
「お前の価値観は独特だからなぁ。やっぱり教えるのには向いてないんじゃないか?」
「そ、そうですね……天才すぎるがゆえの悩みでしょうか。常人には理解できない感性といいますか」
「なーに言ってんだか。お前は天才なんてガラじゃねえだろ。むしろ真逆だ。自分で努力し続けて積み重ねた価値観だからこそ、他人には理解できない。俺はそう思うけどな」
「っ……」
言葉を詰まらせるフリッツを見て、マインラートは肩をすくめて去っていく。
自分の努力を頑なに認めようとしないフリッツの態度には、マインラートも煮えきらない思いだった。
動揺の色を瞳に浮かべるフリッツの視線の先、ノーラとヴェルナーがくるくると回る。
二人の舞踏の足運びに合わせて、彼の頭の中も混濁していった。
◇◇◇◇
「ぜぇ……ぜぇ……」
「思っていたよりは体力があるな。そこらの令嬢よりはマシだ」
練習を終えて。
ノーラは壮絶に息を切らしていた。
ずっとヴェルナーに振り回されていた記憶しかない。
「あ、あの……わたし、ただ回っていただけで。まったく上達した気がしないといいますか、ヴェルナー様の誘導が上手すぎただけで、他の人と踊ったらまた踊れなくなるのでは?」
「気にするな。最初はされるがまま足を運んでいればいい。おのずと体の動かし方は理解できるようになるだろう。誰しもが通る道だ。……お前なら舞踏会までにダンスは身につけられるはずだ」
「わかりました。とりあえずがんばってみますね」
「ああ。空いている時間なら練習の相手になってやる」
頼もしい練習相手ができた。
問題は舞踏会で踊るか、踊らないか。
そして踊るとしたら誰を相手にするのかということ。
ノーラが思い悩んでいると、乾いた拍手の音が響いた。
「お見事です、ピルット嬢。私の指導がお役に立たなかったのは残念ですが、その調子であれば最低限の舞踏はできるようになるでしょう。あと二週間ありますからね、焦らずいきましょう」
「いえいえ。フリッツ様に教わった基本動作のおかげでなんとか動きについていけました。ありがとうございます」
「しかし……ダンスは良いとして。肝心のお相手は見つかりそうなのですか?」
「あ、それなんですけど……聞きたいと思っていたことがあって。『舞踏会で誰とも踊らないでほしい』って言われたとして、それってどういう意味なんですか?」
ノーラの何気ない一言に場が凍りついた。
ヴェルナーが次第に剣呑な雰囲気を放ち始めた様子を見て、フリッツは慌てて口を開く。
「そ、それは……誰かにそう言われたのですか?」
「いえ、あの……仮にといいますか。例えばの話……ですけど」
「ふむ……ピルット嬢に婚約者がいて、婚約者からそう言われたのなら従った方がいいでしょう。しかし、何の関係もない方に言われたのなら従う必要はありません。好きな方と踊ればよろしいかと」
「なるほど……そんなに気にする必要ないってことですか?」
「ええ。まあ相手方との関係性にもよりますが、見ず知らずの令息に言われたのなら社交辞令程度に考えておけばよろしいかと」
ペートルスとは見ず知らずの仲ではないが、婚約者というわけでもない。
きっと賢いフリッツがそう言うのなら正しいのだろう。
あまり深刻に考えなくてもいいのかもしれない。
「わかりました。それじゃあ、舞踏会当日までになんとか相手を探してみます。とりあえず一曲くらい適当に踊って、後は退出する流れでいこうかと」
「ええ、それがよろしいでしょう。ヴェルナー先輩も頼みましたよ」
「……ああ。例年通り、俺も一曲だけ踊って出るとしよう。まったく……面倒な話だ」
ヴェルナーの返事を聞いて、フリッツは柔らかく笑う。
「ふふ……今から舞踏会が楽しみです。今年は特別な贈り物も用意しましたから、私の婚約者も楽しんで踊ってくれるでしょう」
今までに見たことのないフリッツの表情を見て、ノーラはなんだか温かい気持ちになった。
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