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アルバの高等学園編

メモの意味と剣術クラブ

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「じゃあ少し相談します」

 セピア嬢は上級生にそう答えると、問題用紙を持ったまま席まで戻ってきた。

「どうしましょう。あのメモが気になって何か聞けるかと思ったんですが、それも助言の一つに入ってしまうそうです」
「じゃあ質問しない方がいいんですかね」

 ランド君も眉をへにょっと下げて腕を組んだ。
 あのメモは未だに意味がわからなくて、けれどかなり意味深だったよね。

「魔術は1-5でしたっけ……」

 ううむ、と俺も唸りながら問題用紙を見つめる。問一には五カ所記入する場所があり、そこにセピア嬢の綺麗な字で回答が書き込まれている。

「魔術というものは、『その者』の持つ『属性』により使える魔法の種類がわかれる。そしてその者のもつ魔力の『量』により放てる魔法の『威力』や飛距離が変わってくる。魔力量は生まれたときから『決まって』いる……」

 問一の問題をアーチー君が声に出して読む。

「もしこの1-5というのが問一の五番目というのであれば、『決まって』なのですが……ああ、やっぱり問題の質問をするより、あのメモのことを聞いた方がいいですね。問題ならわからなくても諦めもつきますし」
「わかりました。聞いてきます」

 俺の言葉に、セピア嬢が頷いてもう一度上級生の元に行く。

「教えてください。階段にあったメモの意味を。助言枠にチェックを付けて貰って大丈夫です。でも曖昧ではなく、しっかりと回答を答えて欲しいです」

 キリッと質問するセピア嬢はまるでやり手の商人のようだった。頼りになる。この班のメンバーすごく頼りになる。
 上級生は苦笑してから、「わかりました」と頷いた。

「まず、最初のところにあった『階段を上がって左』というのは、最初に答えを求めるべきところです。一番簡単な問題ということですね。そして踊り場にある紙に書かれた記号は、その部屋の問題用紙に書かれた回答を覚えておくべき、という意味です。もちろん問題用紙は丸を付けたら差し上げますので、後から見ることもできます。ここから上へ行く階段にも同じように貼られていますので、それも見てみるといいですよ」

 気付かれてたみたいですけどね、と上級生は苦笑していた。

「でもね、中には最初の助言の紙を見て片方のメモしか見なくて、最後の質問で詰む班もいるんじゃないかな、って思って敢えてああいう風にしました。引っかかる一年生もいるかなって考えたら面白くなっちゃって。それにしてもメモのことを質問されるとは思わなかったです。その慧眼、素晴らしいです。ぜひ魔術クラブに来ませんか? いつでも歓迎しますね!」

 女性の上級生がセピア嬢の手を取って、にこやかにクラブアピールしてくる。なる程、勧誘の場でもあるのか。このレクリエーションって、色々な学園のことを一気に知ることが出来るんだね。これを考えた人天才だな。

「ありがとうございました。あのメモの意味がわかってすっきりしました。魔術クラブは私もとても気になっておりましたので、そのうちお邪魔させていただこうと思います」

 隣でせっせと丸付けをしていた上級生から問題用紙を受け取り、セピア嬢が満足そうな顔で俺たちの方に振り返った。全問正解だったらしい。
 俺も袋から解答用紙を取り出して、チェックをしてもらった。けれどここでは、助言チェック欄にしかチェックされていなかった。
 首を捻りながら紙をしまって、今度は剣術クラブの部室に向かう。
 すると、今度は大柄な上級生が拍手で俺たちを迎えてくれた。

「君たちには、俺たちが日々行う鍛錬を見てもらおうと思ってる。まずは中等学園の最初で習う型」
「はっ」

 一人が広い場所に出てきて、木の剣で型をなぞる。最初だから素振りや受け身、足運びなどだいたい三種類がかけ声と共に披露された。

「次、中等学園三年次に習う型」
「はい!」

 今度もまた力強い型を三種類見せてもらった。それが中等学園高学年、高等学園初期、高等学園最終学年の総仕上げ、と続いた。
 屋内とは思えない迫力だった。思わず皆で拍手を送ると、上級生たちは嬉しそうに礼をした。

「ここでは課題はないんだ。ただ、こういうクラブがあるよって見てもらって、興味があれば放課後ここに来てもらうためのデモンストレーションをしているんだ。見てくれてありがとう」

 終了だよ、と何事もなく見送られて、俺たちはそのまま部屋を出た。見応えはあったけれど、なんだったんだ。
 首を傾げていたら、ランド君が大興奮でメモを見下ろしていた。そこには、全部の型の名前が順番に走り書きで書かれていた。

「3-2っていうと『突き』でしたね! 動きがキレッキレだったあ。かっこよかったですよね。俺は剣術クラブ入りたいです」

 ランド君はぐっと手を握って、メモをポケットに戻した。
 
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