これは報われない恋だ。

朝陽天満

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632、守護樹ミニは順調みたい

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 ソファーにばかりもかまけていられない、ということで、俺は今日は雄太たちと一緒に魔大陸に来ている。

 守護樹ミニは元気に育ってるかな。

 村に入って、空気が正常であることを確認して、急いで守護樹の元へ行くと。



「育ってる」



 枝一本の大きさだった守護樹は、俺の腰近くまで育って、枝を増やしていた。



「マック君に貰った聖水、来るたびにあげてたんだよ。そしたら大きくなったの。また聖水貰っていい?」

「もちろん。いくらでも作るよ。ユイ、ありがと」

「この子が大きくなると、私も嬉しいから」



 俺とユイが守護樹の横でそんな会話をしていると、雄太が無言で俺の頭にチョップを入れた。

 痛いよ。なんだよ一体。

 口を尖らせて雄太の方に振り向くと、ブレイブと海里は笑いを堪えていて、雄太は半眼で俺を見下ろしていた。圧がすごい。



「お前とユイが二人で子供を育ててるみたいに聞こえてくそマジむかつくふざけんなって普通だったら思うからやめろ」

「あ、ごめん」

「お前が相手だからこそこのチョップひとつで済んでるんだってこと自覚しろ。お前はユイの身体になんかこれっぽっちも反応しないの知ってるからこそチョップひとつだ。その会話は工房で何かをヴィデロさんと一緒に育てて二人でしろってんだ」

「え、あ……うん。そうするありがと」



 ヴィデロさんと二人でこの子も大きく育ったね、なんて会話出来たら……と雄太が言ったことを想像していると、とうとう海里とブレイブが吹き出した。



「ほんとあなたたち親友よね。そういうところすっごく親友だと思うわ。しかも高橋ってばマックの事私達よりよほど信用してるのよね。そういう関係素敵よね」

「海里、そういう言葉はな、吹き出しながら言うと逆効果だってことを知れ」

「だってほんと面白過ぎて、あははははマックなんてユイとの浮気説流れるし! 一瞬で消えたけど!」

「何それ! 何で俺がユイと浮気説なんて流れるんだよ!」



 海里の言葉にびっくりしていると、ユイもあははと笑った。



「前に魔大陸から迎えに行ったでしょ、私。その時、2人で手を繋いで転移したのをプレイヤーに見られてたんだって。海里が大喜びしてたの」

「は……? だからってなんでユイと俺の浮気説……」

「だってお互い相手がいるじゃない。そういうスキャンダルは世間では騒がれやすいのよ。私たちもマックも結構注目されてるプレイヤーだしね」

「なんで俺が高橋の彼女と浮気をしないといけないんだ……世間の噂、怖い」



 ほんと怖いね、怖い怖い、と俺の後に続いてユイと雄太も頷いた。その瞬間ブレイブが声を出して笑った。







 またしてもブレイブと海里に置き場計算をしてもらって、起爆剤をセットして、浄化の聖魔法を唱える。空気は変わりなかったけど、一応ね。元気に育って欲しいし。

 浄化魔法を受けて、守護樹もキラキラと輝いている、気がする。

 そっと触れると、元気だよ、とミニ守護樹は答えていた。



 雄太たちに討伐を任せて少しの間採取をすると、俺たちは魔大陸を後にした。



「また例のポーション頼むな。ユイとの浮気説、忘れてやるから頼むな」

「そんな脅しかけなくても作るけど。これ聖水。こっちこそ守護樹を頼むね」

「任せろ。今の俺たちの活動は魔大陸中心だ。勇者公認のな」

「週末には『白金の獅子』も魔大陸に一緒に行くんだよ。素材、みんなで沢山取ってくるね、マック君」

「うん、よろしくね。ってことは、白金の獅子にも例のポーションは作っておいた方がいいってことかな」

「そうだな。月都さんなんかは俺よりHP高いから助かるんじゃないか?」



 めっちゃ高く売ってやれよ! とサムズアップしてきた雄太に苦笑する。そんな雄太はまたしても新しい大剣を背負っていて、懐が寒いらしい。

 山積みの薬草を俺に渡しながら、魔大陸の魔物素材と交換な、と爽やかな顔をして言っていた。正直お金よりそっちの方が嬉しいけどね。





 工房に帰って来て、素材をディスペルポーションで洗うと、さっそく魔大陸産ハイパーポーション製作にかかった。

 魔大陸に行った後はハイパーポーション製作がメインになるけど、めっちゃ性能がいい物が作れるのはとても嬉しい。

 結局は、ヴィデロさんが帰って来るまでずっとカーテンの奥にこもりっきりになっていた。







 次のヴィデロさんの休みの日。俺のバイトとも重ならなかったので、今度こそソファー素材を集めよう、ということになった。

 今度こそあの人たちが邪魔してこないといいんだけど。

 前に沢山羊鳥が出てきた場所に跳ぶと、黒い鎧を着たヴィデロさんは早速一撃で魔物を屠っていた。カッコいい。

 俺も隠密を掛けつつ、羊鳥探しをする。

 魔物は順調に見つかり、邪魔もなし。



「この間のユニーク魔物は誰かが倒したのかな」

「一応トレの門からオットとセィとセッテにはユニーク魔物が出たことは連絡してもらったから、大丈夫だとは思う。あとでどこかの街に寄って確認しようか」

「うん」



 ヴィデロさんは抜かりなかった。

 
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