これは報われない恋だ。

朝陽天満

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16、朝の抱擁は濃厚に

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「今日は顔色がいいな。よかった」

「心配かけてごめん。それより俺、なんでヴィデロさんの腕の中にいるんだ?」



 苦しくはなくなったけれど、やっぱり腕は俺の身体を羽交い絞めしたまま、ヴィデロさんは俺の質問に盛大に溜め息を吐いた。



「マック昨日、倒れたのは覚えてるか?」

「あ、うん」

「いきなり倒れたマックを目の前にして、心配で一緒に泊まり込むのはそれほどおかしなことか?」



 恋人なのに、と続けられた言葉に、今日も朝から頬が熱くなる。

 こ、こ、恋人だったらおかしくないよな、たぶんな。

 真っ赤だろう顔を隠すにはヴィデロさんの立派な大胸筋に顔をうずめるしかなくて、思わずヴィデロさんのわきの下付近に顔をぐりぐりしてしまう。

 すると、頭の上から「はは……」と笑い声が聞こえた。



「マック、やめろ。それ、くすぐったい……っ」



 脇の下はヴィデロさんのウィークポイントだったらしい。

 俺にぐりぐりされて悶えるヴィデロさんが可愛い。

 身を捩るヴィデロさんをもっと笑わせるべく、俺はさらにぐりぐりを追求していった。



「や、やめ、マック……っ!」



 やめれそうもありません。楽しすぎる。

 さらに脇の下を攻撃していたら、ふいにヴィデロさんが俺を抱きしめたままゴロンと転がった。

 一瞬にして俺はヴィデロさんの身体の下。見上げるとヴィデロさんがちょっとだけ涙目で俺を見下ろしていた。

 ゴクリ、と喉が鳴る。



 これ、客観的に見て、とんでもなくエロい態勢だよな?!

 俺もヴィデロさんの腰に腕を回したままだし。世に言う押し倒し態勢。一瞬にしてこの態勢に持っていくヴィデロさんのエロスキルって、かなりのレベル上位者か?! あやかりたい。



 ベッドの上で転がって見つめ合う俺達。

 一瞬にして雰囲気がピンク色に染まったような錯覚に陥った。

 それをヴィデロさんも感じたらしく、そっと上から俺の唇をついばんできた。

 チュッチュッと唇で俺の口を抓んでは離れていくその仕草が、ディープキスよりさらにエロいって思うのは、なんでだろう。気持ちいい。



「ん……っ、は、ぁ……んん」



 思わず吐息を零すと、今度こそヴィデロさんは本格的に唇を塞ぎにかかった。

 舌がするりと口の中に入ってくる。絡まる舌の硬さと柔らかさに、頭が蕩けそうになる。

 気持ちよくて、ただキスをしてるだけなのにやたら気持ちよくて、鼻から声が出る。



「ふ……ん、ぁ」



 舌を啄ばまれ、離れていくときに見える唾液が視界を刺激する。

 うっとりした様なでもちょっと辛そうに眉を寄せるヴィデロさんの顔が、俺の胸を打ち抜く。

 口から受ける刺激に、背中も腰も下半身もやたらビリビリする。



 ヴィデロさんも、同じように感じてくれてるのかな。

 太ももに硬い物が当たるから。

 俺はたぶん、まだ成人してないから、物自体がついてないんじゃないかってくらいパンツはペタンコなんだけど。

 ヴィデロさんの下着は、脱げるんだよな……。



 太ももの感触が気になって、どうなってるのかかなり気になって、俺はそっと腰を掴んでいた手を放して、それを前に持って行った。

 うん、しっかり勃ってる。

 ちゅ、とヴィデロさんの口が離れた瞬間、俺は下を向いてみた。

 やっぱり、というかなんというか。俺の下半身は盛り上がりが全くなかった。これ、男として地味ーにショックなんだけど。

 ゲームの中でも、やっぱりカリがあって竿があって血管が浮いてたりするのかな。



「ヴィデロさん……手で、触っていい……?」



 さわ……と遠慮がちにヴィデロさんの元気なものを撫でてみると、ヴィデロさんの眉間の皺が少しだけ深くなって、少しだけ腰を引かれた。



「でもマックは、まだ未成年だから……」



 同じように俺のパンツをヴィデロさんが撫でるんだけど。

 この世界って、成人の儀、とかいうのを受けないと勃たないもんなの? なんの疑問もない顔なんだけど。

 不思議な世界だなあADOの世界って。



「成人したら、俺にも、これ、生えるのかなぁ……」



 キスだけですでに腰とか色々ぞくぞくするから、たぶん現実の俺はがっつり勃ってると思う。触りたいし、自分で扱きたい。けど出来ないこのジレンマは、ヴィデロさんのもので解消させてくれないかなあ。それにしても、ゲーム内だと射精ってどうなるんだろう。ほんと色々気になる。



「生えるって、マック……はは、その発想……。まあ、成人の儀を受けるまではそこは単なる体の一部で、生殖機能一切ないからな」

「だから勃たないのか……、ねえ、ヴィデロさん。ヴィデロさんの、触りたい。扱きたい。擦りたい。……だめ?」

「……っ」



 あ、少しデカくなった。この世界、言葉攻めもあるんだな。

 了承をまだ得てないけれど、ヴィデロさんのズボンに手を掛ける。



「歳的には成人したクラッシュと同じ歳なんだし、触らせて……」



 ね、とお願いすると、ヴィデロさんはクッと息をつめて、一瞬すごく険しい顔をして、考えて、そして、俺にキスをした。

 これは了承と取っていいのかな。いいんだよな。

 ということで、俺はいそいそとヴィデロさんのズボンとパンツを腰からずらし始めた。

 あ、でもキスしてるから見えない。手の感触は。

 そっと剥き出したそこに手を這わすと、同じだった。ちゃんとカリがあって、くびれてて、ぐっと太くて、付け根に毛が生えてて。血管まで。

 どこまで精巧にできてるんだろう。すごい。

 感動してそのまま手で触り続けてると、キスの合間にヴィデロさんの吐息が混ざり始めた。

 う、ヴィデロさんエロすぎだよ。俺までなんか、すごく。



「……っ、ぁ、ン……」



 すごく、したい。

 ヴィデロさんとセックス。

 現実でこんな風にしたい! ってなったことないから、新鮮なんだけど、この衝動をどうすればいいんだ。

 だって、最後までは出来ないから。

 そう思うと余計に頭の中で「したい」って欲求が渦巻いていく。



 発情ってこんな感情なんだろうな、と微かに思いながら、ヴィデロさんのものを手でひたすら扱く。時折眉を顰めるのが、エロい。したい。

 ヴィデロさんも、そう思ってるのかな。ごめん、俺まだ成人してなくて。でも他の人でこの熱を発散されるのは、ちょっとだけやだなあ。

 それに、これだけで投げ出すのがつらいのは、俺も十分にわかるし。お預け辛い。



「ヴィデロさん……気持ちいい……?」



 じゃあ、俺が口で咥えたら、ヴィデロさんは他で発散しなくても済むかなあ。

 俺はログアウトしたら右手とお友達になれるから。



「ああ……」



 何かを我慢してるような、低い声でヴィデロさんが肯定する。

 それなら、とちゅ、ちゅ、とキスを繰り返すヴィデロさんの胸を、ぐい、と押した。

 少しだけ寂しそうに身体を離したヴィデロさんを見上げて、口を開く。



「咥えさせて……」



 自分でもあり得ない提案をしてるってのはわかってるけど。

 なんか気分的にもっともっとヴィデロさんを感じさせたかったんだ。

 目を見開いたヴィデロさんを見上げて、お願い、と言い募る。



「マック……俺は、マックとこうしてキスするだけで満足してるから、無理するな」

「咥えたい。ねえヴィデロさん。俺の、口で」



 ごくり、とヴィデロさんの喉が上下した。



「ヴィデロさんに、気持ちよくなって欲しいから。咥えたい」



 自分の意志だから。ヴィデロさん強要じゃないから、後生だから、口でやらせて。





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