5 / 39
高二ノ秋1
ヒロインに接触しよう2
しおりを挟む
「ヒロイン」なんて柄じゃないんですけどねーと苦笑した紘川だが、確かに女っぽくはない。散々女顔で舐められた俺が言うんだから、確かだ。
でもまあ、小動物っぽいというか。ちょこまかしていて、思わず愛でたくなってしまうような愛嬌がある。おにぎり頬張っているところは、ハムスターを想像させた。
「聞いた話だと、毎年目玉の役割があるそうですけど、今年は完全に先輩の悪役令嬢ですよね。それ有りきの僕のヒロインって思いました」
「……考えた奴、馬鹿だろ」
「最近ネットで流行ってるって言いますからね、悪役令嬢。乗っかってみたくなったんじゃないですか?」
やるなら内輪だけでやってほしい。人を巻き込むな。
ヒロインってだけなら、確かに他にも適用する世界観は数多くある。だが、今年は他はどれもこれも王道学園の系統しかなかった。つまり、関連があるのは俺だけだ。悲しいことに。
「簡単じゃないですか、悪役令嬢。パフォーマンスとして、たまに僕を虐めるだけで何とかいけますよ」
「あんまり目立ちたくないんだけど」
「そこは諦めてください。悪役令嬢は目立ってナンボです」
こっちはクソ親父と三年間問題を起こすな、という盟約が交わされているのだ。イジメの首謀者とか、アウトだろ。
「大丈夫ですよ。学園は、生徒達の鬱憤を晴らすお遊戯としてこのシステムを認めているんです」
「詳しいな」
「同室者が新聞部なので」
「なるほど……」
「来月からは僕や先輩にガンガン取材するって言ってたので、宜しくお願いします」
「嫌すぎる」
とにかく、と弁当セットを綺麗に片付けた紘川が締めに入った。
「あくまでもお遊びなので、たまに僕に嫌がらせをしにきてください。しみったれたご飯ね、とかそんな感じでいいと思います」
「なんか、悪役令嬢っていうか姑みたいなセリフだな」
「何でもいいんですよ。あくまでも、皆を楽しませるための娯楽ですから。パフォーマンスです」
それよりも、と紘川は俺の顔の前に人差し指を置いた。
「目立ちたくない先輩には悪い話ですが、否が応でも目立ちます。なんてったって、悪役令嬢ですから。どんなもんかと色々な生徒が観に来るでしょう。そして、先輩の綺麗さに世界が気づいてしまう」
「何言ってんだ」
「気をつけてください。悪役令嬢ってのは、本来文字通り女の人を示す言葉です。元々この学園では同性愛が蔓延ってましたが、つまりそういう目で見られやすくなるってことです」
オンナとして見られやすくなるってことか。
昔だったらそんな奴、片っ端から千切っては投げてやっていたが、そういうわけにはいかないのが悲しいところだ。
「おそらく、生徒会メンバーも気になって絡んでくるでしょう。ほんと気をつけてくださいね!?」
結論から言えば、紘川の予感は当たっていた。
一年半続いていた俺の平穏は、11月に入った瞬間、一変した。
でもまあ、小動物っぽいというか。ちょこまかしていて、思わず愛でたくなってしまうような愛嬌がある。おにぎり頬張っているところは、ハムスターを想像させた。
「聞いた話だと、毎年目玉の役割があるそうですけど、今年は完全に先輩の悪役令嬢ですよね。それ有りきの僕のヒロインって思いました」
「……考えた奴、馬鹿だろ」
「最近ネットで流行ってるって言いますからね、悪役令嬢。乗っかってみたくなったんじゃないですか?」
やるなら内輪だけでやってほしい。人を巻き込むな。
ヒロインってだけなら、確かに他にも適用する世界観は数多くある。だが、今年は他はどれもこれも王道学園の系統しかなかった。つまり、関連があるのは俺だけだ。悲しいことに。
「簡単じゃないですか、悪役令嬢。パフォーマンスとして、たまに僕を虐めるだけで何とかいけますよ」
「あんまり目立ちたくないんだけど」
「そこは諦めてください。悪役令嬢は目立ってナンボです」
こっちはクソ親父と三年間問題を起こすな、という盟約が交わされているのだ。イジメの首謀者とか、アウトだろ。
「大丈夫ですよ。学園は、生徒達の鬱憤を晴らすお遊戯としてこのシステムを認めているんです」
「詳しいな」
「同室者が新聞部なので」
「なるほど……」
「来月からは僕や先輩にガンガン取材するって言ってたので、宜しくお願いします」
「嫌すぎる」
とにかく、と弁当セットを綺麗に片付けた紘川が締めに入った。
「あくまでもお遊びなので、たまに僕に嫌がらせをしにきてください。しみったれたご飯ね、とかそんな感じでいいと思います」
「なんか、悪役令嬢っていうか姑みたいなセリフだな」
「何でもいいんですよ。あくまでも、皆を楽しませるための娯楽ですから。パフォーマンスです」
それよりも、と紘川は俺の顔の前に人差し指を置いた。
「目立ちたくない先輩には悪い話ですが、否が応でも目立ちます。なんてったって、悪役令嬢ですから。どんなもんかと色々な生徒が観に来るでしょう。そして、先輩の綺麗さに世界が気づいてしまう」
「何言ってんだ」
「気をつけてください。悪役令嬢ってのは、本来文字通り女の人を示す言葉です。元々この学園では同性愛が蔓延ってましたが、つまりそういう目で見られやすくなるってことです」
オンナとして見られやすくなるってことか。
昔だったらそんな奴、片っ端から千切っては投げてやっていたが、そういうわけにはいかないのが悲しいところだ。
「おそらく、生徒会メンバーも気になって絡んでくるでしょう。ほんと気をつけてくださいね!?」
結論から言えば、紘川の予感は当たっていた。
一年半続いていた俺の平穏は、11月に入った瞬間、一変した。
10
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!
甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!!
※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~
白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。
そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!?
前世は嫌われもの。今世は愛されもの。
自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!!
****************
というようなものを書こうと思っています。
初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。
暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。
なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。
この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。
R15は保険です。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる