新訳媚薬を拾った日

いじめ

そもそもこんな事はおかしいのだ。
学校という場所は、必ず日当たりが悪く誰もわざわざ足を踏み入れたりしないような死んだ空間がある。

小学校、中学校、そして高校とそうだったんだからそれはもう間違いない事だと思っていいだろう。

「お前今日は金どれくらい持ってきた？」

常套句。
常套句だ。

物語の世界だけだと、そんなことは時代遅れだと僕だってそう思いたい。
そう信じたい。

だけど実際こいつらはこうして定期的に僕を学校の“死んだ場所”に連れ込んでは、こうして金をむしり取ってくる。

確かに僕の家は会社の経営が上手くいっている事もあり裕福だが、規模は零細の域を出ない。
規模に対して利益がややあるだけで、僕は大企業の息子でも何でもないのだ。

「ねー、私これでアプリ課金したいんだけどいい？」

不良グループに何人かいる女の一人、秋野玲香が、僕の財布から無造作に札と小銭を取り出しそういった。

秋野玲香。

金髪ショートカットでスタイルも良いが、コイツは本当に最悪な性格をしている。

今みたいにコイツが無駄なことで金を独占しなければカツアゲの頻度は少しは減るのに、コイツのせいで僕は……。

｢仕方ねーな、おい、お前放課後までに金かき集めて俺の所に持ってこい｣

無理難題を吹っ掛け、下品な笑い声を廊下に響かせながら去っていく不良達。

昔からそうだ。
僕は昔からいつもこんな風に虐げられてばかりで……。