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第6章:リアライド王国・入国編
第67話:剣鬼ルゼ その3
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一対四の圧倒的不利な戦いが確定したこの状況でもルゼは楽しげに、余裕の笑みを見せる。そうして、後方にいるドラセナをチラリ、と見た。
「お前がドラセナ・エリアスか。お前の身柄の確保がオレたちの主目的だったな。だが、それもこいつらを倒してからだ」
鋭い視線に一瞥され、ドラセナがビクリ、と震え上がる。ドラセナをかばうようにイーニッドが声を出す。
「お前、わたしたち全員を相手にして勝てると思っているのか?」
「無論だ。お前たちなどオレの敵ではない。桜の勇者はそれなりにやるようだが、それでもオレの敵ではない。ましてや他の雑魚など論外だ」
雑魚、と言われてグレースとアイネ、イーニッドが険しい表情でルゼを睨む。ルゼはそれでも余裕の笑みを崩さなかった。ナハトは仲間たちに「気を付けろ」と言い放つ。
「あいつはヴァルチザンの剣鬼・ルゼだ! 強いぞ!」
「剣鬼……ヴァルチザン帝国、四獅の一人であり、ヴァルチザンで最強の剣士と言われている剣鬼ルゼ……!」
グレースが目を見開き、驚きをあらわにする。他の面子も少なからず驚いているようだった。
「剣鬼が何故、こんなところに……」
「何よ、帝国はそこまでしてドラセナの身柄を確保したいわけ?」
イーニッドとアイネがそう言い、ルゼを見、ルゼはフン、と鼻を鳴らす。
「そういう御大層な称号は好みではないのだがな……ああ、そうだ。オレがルゼだ」
どことなく不機嫌そうにルゼはそう言う。
「そういうことだ。さっさとかかってこい。来ないならこちらから行くぞ?」
ルゼはあくまで余裕綽々だ。最強の剣士は四人の人間をも同時に相手取るだけの力を秘めているというのか。最初に飛び出したのはイーニッドだった。
「ならば行くぞ!」
気合いの声を共にイーニッドが駆け出し、幻想具のガントレットを装備した拳の攻撃を繰り出す。
これを全く、こともなさ気にルゼは炎の太刀で受け止め、弾き返し、しのぎきる。
「アンタの相手は一人じゃないんだから!」
アイネも駆け出し、イーニッドに並ぶと氷雪剣を振るい攻撃を加える。二人がかりでの連続攻撃。
片方の攻撃が途切れた隙にはもう片方が補い、絶え間のない攻撃が繰り出される。だが、これもルゼは全て捌き切っていた。
「行くぞ、ナハト殿!」
「あ、ああ!」
そんなルゼの異様な強さにナハトは内心畏怖の感情を覚えたがそれを押し隠し、グレースと共に前に出る。
今度は四人掛かりだ。前の二人が攻撃し、それが途切れた時に後ろの二人が代わりに前に出て攻撃を繰り出す。
そうすることで相手を圧倒する。並の相手ならばあっという間に終わっていたであろう。しかし、ルゼは並の相手ではなかった。
四人掛かりの連続攻撃を全てしのぎ切る。その尋常ではない強さに驚嘆する。流石にルゼの表情から余裕の笑みは消えていたが、未だ、ナハトたちはルゼに傷の一つも与えることができていない。
「ふん……少しうっとおしいぞ、貴様ら……!」
ルゼはそう言うと紅蓮の太刀を振るった。そこから炎が吹き出し、四人に襲い掛かる。
四人は慌てて散開して、迫り来る炎を避けた。
その隙を狙いルゼはまずイーニッドに狙いを定めたようだ。イーニッドに接近し、太刀で斬り掛かる。イーニッドはこれに慌てて防御しようとするもルゼの超高速の剣さばきを前に防御し切れず、体のあちこちに斬り傷が走る。
「ぐぅ……」とイーニッドは苦悶の声を発した。その瞬間にルゼの太刀を持っていない左拳がイーニッドの腹を思いっきり殴りつけ、イーニッドは地面に倒れ込んだ。
次にルゼが狙ったのはアイネだった。イーニッドをあっという間に倒してしまった敵。アイネは警戒し、氷雪剣を油断なく構える。
「なめるんじゃないわよ!」
アイネはそう叫び、氷雪剣から氷雪の波動を放ち、ルゼに攻撃する。
ルゼは自身に迫った氷雪の波動を炎を纏った太刀ではたき落とすとアイネの元に接近する。
そんなアイネをフォローしようとグレースも前に出る。アイネとグレース二人を相手にルゼは紅蓮の太刀を振るう。
流石に一対二ではアイネもグレースもまたたく間に倒されるということはなかったが、ルゼの剣技を前に押されているのは明白だった。
ナハトが駆け寄ろうとした時、アイネの氷雪剣とグレースのハルバードが当時に弾かれ、防御の手がなくなったアイネの体を紅蓮の太刀が斬り裂いたところだった。
「あぅ……っ!」とアイネの悲鳴が響き渡る。「お前!」とナハトは聖桜剣でルゼに斬り掛かる。これもルゼは紅蓮の太刀で受け止める。フン、とルゼは鼻を鳴らした。
「どうやら強いのは桜の勇者だけで他は本当に雑魚ばかりのようだな。元より期待はしていなかったが、それでも失望したぞ」
そんなことを言い、ナハトの聖桜剣を押し戻す。
ナハトはグレースと並び、ルゼに対し抗戦の意志を示す。
イーニッドとアイネはおぼつかない足取りながらなんとか後退して、イヴを治療を受けることにしたようだ。
そんな二人に斬り掛かることもできただろうに、それをせず、ルゼは笑みを浮かべた。
「さあ、どうした? もっとかかってこい? オレを倒すのだろう?」
ヴァルチザン最強の剣士。剣鬼。その異名が全く伊達ではないことをナハトたちは実感させられていた。
ナハトはグレースの方に視線を向ける。グレースの瞳が了解、のサインを示す。
そうして二人同時にルゼに攻撃を仕掛けた。聖桜剣の斬撃とハルバードの突きが連続してルゼに放たれる。
それをルゼは紅蓮の太刀を振るってこともなさ気に受け止めてみせる。何撃加えてもその防御を崩せない。
それどころかルゼは反撃を仕掛けてくる余裕すらあった。自分に迫り来る紅蓮の太刀をナハトは慌てて聖桜剣を引き戻し、受け止める。
ナハトの聖桜剣とルゼの紅蓮刀が噛み合う。その隙を狙ってグレースがハルバードを振るったが、その瞬間にはルゼは紅蓮刀を手元に戻していてハルバードの斧の部分の振り下ろしの一撃を受け止めていた。
今度はその隙をナハトが狙うが、ルゼはハルバードをはねのけ、あいた太刀でナハトの剣を弾く。
二人がかりでかかっているのにこの有り様だった。ルゼは口元に余裕の笑みさえ浮かべている。
「ふははは! そうだ! 楽しい! 楽しいぞ! もっと、打ち込んでこい!」
その笑い声が癇に障ったのかグレースが激昂してハルバードを振るう。
「ふざけるな!」
グレースがハルバードで攻撃を仕掛けるも、全くルゼには届かない。全て紅蓮の太刀が受け止め、受け流し、弾き返していた。
ナハトも続いて攻撃を仕掛ける。しかし、結果は先程と同じだった。刃と刃が交差する戦いの中、ルゼの太刀が赤い炎を立ち上らせる。
まずい、と思った。さっきナハトに向けて放った爆発の攻撃。あれがもう一度来る……! 逃げろ……とナハトがグレースに言おうとしたところでグレースはハルバードでルゼに攻撃を仕掛けた瞬間だった。
その瞬間、紅蓮刀から爆発が巻き起こり、グレースの体を真後ろに吹っ飛ばす。少し離れていたナハトもその余波を受けて、後ろに飛ばされた。
「うう……」
苦しげにグレースがうめく。紅蓮刀が巻き起こした爆発をもろに受けてあちこち焼け焦げていた。
慌ててイヴが出てきて治癒杖キュアで治療を施す。しかし、全快までは至らないようだった。一人、残されたナハトにルゼは視線を向ける。
「さて、これでまた一対一になってしまったな。桜の勇者」
ルゼの言葉にナハトは強く聖桜剣の柄を握り締める。
「ドラセナ・エリアスを引き渡せばお前たちに危害は加えない……などという甘いことをオレは言わんぞ。どうせ、引き渡す気もないだろうからな。貴様ら全員をこの太刀のサビにして、そうしてからドラセナ・エリアスを連れて行く」
そう言い、ルゼは紅蓮の太刀で宙空を斬り裂く。
ブン、と音がして、紅蓮の太刀から立ち上る炎が火の粉となって辺りに飛び散る。
四人掛かりでも倒せなかった敵。最強の剣士。どうする、とナハトは思った。どうすればいい……? どうすれば、この男を倒せる……? 考え込むも答えはでない。そうしている隙に、
「さて、では行くぞ。桜の勇者!」
再びルゼは太刀を振るい、襲い掛かってきた。
「お前がドラセナ・エリアスか。お前の身柄の確保がオレたちの主目的だったな。だが、それもこいつらを倒してからだ」
鋭い視線に一瞥され、ドラセナがビクリ、と震え上がる。ドラセナをかばうようにイーニッドが声を出す。
「お前、わたしたち全員を相手にして勝てると思っているのか?」
「無論だ。お前たちなどオレの敵ではない。桜の勇者はそれなりにやるようだが、それでもオレの敵ではない。ましてや他の雑魚など論外だ」
雑魚、と言われてグレースとアイネ、イーニッドが険しい表情でルゼを睨む。ルゼはそれでも余裕の笑みを崩さなかった。ナハトは仲間たちに「気を付けろ」と言い放つ。
「あいつはヴァルチザンの剣鬼・ルゼだ! 強いぞ!」
「剣鬼……ヴァルチザン帝国、四獅の一人であり、ヴァルチザンで最強の剣士と言われている剣鬼ルゼ……!」
グレースが目を見開き、驚きをあらわにする。他の面子も少なからず驚いているようだった。
「剣鬼が何故、こんなところに……」
「何よ、帝国はそこまでしてドラセナの身柄を確保したいわけ?」
イーニッドとアイネがそう言い、ルゼを見、ルゼはフン、と鼻を鳴らす。
「そういう御大層な称号は好みではないのだがな……ああ、そうだ。オレがルゼだ」
どことなく不機嫌そうにルゼはそう言う。
「そういうことだ。さっさとかかってこい。来ないならこちらから行くぞ?」
ルゼはあくまで余裕綽々だ。最強の剣士は四人の人間をも同時に相手取るだけの力を秘めているというのか。最初に飛び出したのはイーニッドだった。
「ならば行くぞ!」
気合いの声を共にイーニッドが駆け出し、幻想具のガントレットを装備した拳の攻撃を繰り出す。
これを全く、こともなさ気にルゼは炎の太刀で受け止め、弾き返し、しのぎきる。
「アンタの相手は一人じゃないんだから!」
アイネも駆け出し、イーニッドに並ぶと氷雪剣を振るい攻撃を加える。二人がかりでの連続攻撃。
片方の攻撃が途切れた隙にはもう片方が補い、絶え間のない攻撃が繰り出される。だが、これもルゼは全て捌き切っていた。
「行くぞ、ナハト殿!」
「あ、ああ!」
そんなルゼの異様な強さにナハトは内心畏怖の感情を覚えたがそれを押し隠し、グレースと共に前に出る。
今度は四人掛かりだ。前の二人が攻撃し、それが途切れた時に後ろの二人が代わりに前に出て攻撃を繰り出す。
そうすることで相手を圧倒する。並の相手ならばあっという間に終わっていたであろう。しかし、ルゼは並の相手ではなかった。
四人掛かりの連続攻撃を全てしのぎ切る。その尋常ではない強さに驚嘆する。流石にルゼの表情から余裕の笑みは消えていたが、未だ、ナハトたちはルゼに傷の一つも与えることができていない。
「ふん……少しうっとおしいぞ、貴様ら……!」
ルゼはそう言うと紅蓮の太刀を振るった。そこから炎が吹き出し、四人に襲い掛かる。
四人は慌てて散開して、迫り来る炎を避けた。
その隙を狙いルゼはまずイーニッドに狙いを定めたようだ。イーニッドに接近し、太刀で斬り掛かる。イーニッドはこれに慌てて防御しようとするもルゼの超高速の剣さばきを前に防御し切れず、体のあちこちに斬り傷が走る。
「ぐぅ……」とイーニッドは苦悶の声を発した。その瞬間にルゼの太刀を持っていない左拳がイーニッドの腹を思いっきり殴りつけ、イーニッドは地面に倒れ込んだ。
次にルゼが狙ったのはアイネだった。イーニッドをあっという間に倒してしまった敵。アイネは警戒し、氷雪剣を油断なく構える。
「なめるんじゃないわよ!」
アイネはそう叫び、氷雪剣から氷雪の波動を放ち、ルゼに攻撃する。
ルゼは自身に迫った氷雪の波動を炎を纏った太刀ではたき落とすとアイネの元に接近する。
そんなアイネをフォローしようとグレースも前に出る。アイネとグレース二人を相手にルゼは紅蓮の太刀を振るう。
流石に一対二ではアイネもグレースもまたたく間に倒されるということはなかったが、ルゼの剣技を前に押されているのは明白だった。
ナハトが駆け寄ろうとした時、アイネの氷雪剣とグレースのハルバードが当時に弾かれ、防御の手がなくなったアイネの体を紅蓮の太刀が斬り裂いたところだった。
「あぅ……っ!」とアイネの悲鳴が響き渡る。「お前!」とナハトは聖桜剣でルゼに斬り掛かる。これもルゼは紅蓮の太刀で受け止める。フン、とルゼは鼻を鳴らした。
「どうやら強いのは桜の勇者だけで他は本当に雑魚ばかりのようだな。元より期待はしていなかったが、それでも失望したぞ」
そんなことを言い、ナハトの聖桜剣を押し戻す。
ナハトはグレースと並び、ルゼに対し抗戦の意志を示す。
イーニッドとアイネはおぼつかない足取りながらなんとか後退して、イヴを治療を受けることにしたようだ。
そんな二人に斬り掛かることもできただろうに、それをせず、ルゼは笑みを浮かべた。
「さあ、どうした? もっとかかってこい? オレを倒すのだろう?」
ヴァルチザン最強の剣士。剣鬼。その異名が全く伊達ではないことをナハトたちは実感させられていた。
ナハトはグレースの方に視線を向ける。グレースの瞳が了解、のサインを示す。
そうして二人同時にルゼに攻撃を仕掛けた。聖桜剣の斬撃とハルバードの突きが連続してルゼに放たれる。
それをルゼは紅蓮の太刀を振るってこともなさ気に受け止めてみせる。何撃加えてもその防御を崩せない。
それどころかルゼは反撃を仕掛けてくる余裕すらあった。自分に迫り来る紅蓮の太刀をナハトは慌てて聖桜剣を引き戻し、受け止める。
ナハトの聖桜剣とルゼの紅蓮刀が噛み合う。その隙を狙ってグレースがハルバードを振るったが、その瞬間にはルゼは紅蓮刀を手元に戻していてハルバードの斧の部分の振り下ろしの一撃を受け止めていた。
今度はその隙をナハトが狙うが、ルゼはハルバードをはねのけ、あいた太刀でナハトの剣を弾く。
二人がかりでかかっているのにこの有り様だった。ルゼは口元に余裕の笑みさえ浮かべている。
「ふははは! そうだ! 楽しい! 楽しいぞ! もっと、打ち込んでこい!」
その笑い声が癇に障ったのかグレースが激昂してハルバードを振るう。
「ふざけるな!」
グレースがハルバードで攻撃を仕掛けるも、全くルゼには届かない。全て紅蓮の太刀が受け止め、受け流し、弾き返していた。
ナハトも続いて攻撃を仕掛ける。しかし、結果は先程と同じだった。刃と刃が交差する戦いの中、ルゼの太刀が赤い炎を立ち上らせる。
まずい、と思った。さっきナハトに向けて放った爆発の攻撃。あれがもう一度来る……! 逃げろ……とナハトがグレースに言おうとしたところでグレースはハルバードでルゼに攻撃を仕掛けた瞬間だった。
その瞬間、紅蓮刀から爆発が巻き起こり、グレースの体を真後ろに吹っ飛ばす。少し離れていたナハトもその余波を受けて、後ろに飛ばされた。
「うう……」
苦しげにグレースがうめく。紅蓮刀が巻き起こした爆発をもろに受けてあちこち焼け焦げていた。
慌ててイヴが出てきて治癒杖キュアで治療を施す。しかし、全快までは至らないようだった。一人、残されたナハトにルゼは視線を向ける。
「さて、これでまた一対一になってしまったな。桜の勇者」
ルゼの言葉にナハトは強く聖桜剣の柄を握り締める。
「ドラセナ・エリアスを引き渡せばお前たちに危害は加えない……などという甘いことをオレは言わんぞ。どうせ、引き渡す気もないだろうからな。貴様ら全員をこの太刀のサビにして、そうしてからドラセナ・エリアスを連れて行く」
そう言い、ルゼは紅蓮の太刀で宙空を斬り裂く。
ブン、と音がして、紅蓮の太刀から立ち上る炎が火の粉となって辺りに飛び散る。
四人掛かりでも倒せなかった敵。最強の剣士。どうする、とナハトは思った。どうすればいい……? どうすれば、この男を倒せる……? 考え込むも答えはでない。そうしている隙に、
「さて、では行くぞ。桜の勇者!」
再びルゼは太刀を振るい、襲い掛かってきた。
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