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第二章 婚約破棄
頼もしい協力者①
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その日も私はいつもの通り、勉強するために図書館へ向かっていた、
政治学、経済学、医学、薬学、魔法学……。私が学びたい分野は多岐に及んでいて、勉強するスケジュールを組むのも一苦労である。
特に、私の命を奪う病について調べるために学ぶ必要がある医学と薬学が難しい。以前は専攻していなかったため、学ぶのは今回が初めてということもあるが、わからないことだらけだ。教科書の内容を理解するのにまた別の資料が必要になり、効率を考えたら図書館の住人になるのが一番だった。
そういう実益も兼ねて図書館を利用していたのだが、近頃私にはもう一つ、ここに通う目的が増えた。
「リリー。今日もお疲れさま」
今日もルイ様がいた。彼の姿を見つけると、すぐ笑顔になってしまう自分に気づく。
最初はただ勉強するためだけに通っていた図書室だったのに、彼に会えるかもしれないことが、ここに通う楽しみの一つになってしまったのだ。
昨日も、その前も……最近は毎日ルイ様がいつも私が使っているスペースで待っている。初めて出会った翌日にまた図書館で一緒になり、その後毎日会って話すようになったのだ。
クラウスの浮気現場をまた目撃した時のために……とルイ様は気を遣ってくれているのだと思う。
この場所は人目につきづらい場所だから、クラウスが普段から女性との逢瀬に使っているのだろうと私は予想した。目撃した日が初めてとは到底思えない。
だから、ここで息を潜めて勉強しつつ、また現場を押さえて証拠を集めるつもりだということを彼に話したから。本当に優しいお方だ。
本来なら犯人を待ち伏せしているだけでなく、もっと能動的に動いて証拠を迅速に集め、さっさと婚約破棄したいところだ。けれど、不器用な私にはそのために割く時間が今のところうまく作れず……。受け身の調査というのも案外焦れて疲れるものだとげんなりしているところである。
そんな話をとりとめもなくルイ様にしていると、ルイ様は困ったような表情で私を見つめていた。
「リリー。私をなんだと思っているの」
「もちろん大切で大好きな友人です!」
「うん。そうだね。大切で大好きな友人が言った言葉は忘れちゃったのかな? 大切で大好きなのに? 寂しいなぁー……」
「……もう。ルイ様はそうやっていつも私を甘やかすんですから」
「私にとってもリリーは大切で大好きな友人だからね。素直に甘えてくれないかなと常日頃思ってる」
今日も瞳の中に様々な色の星を閉じ込めたように輝くアレキサンドライトの視線が、私の瞳を真剣に射抜く。
そして私はまた誘惑に負けてしまうのだ。
親にもこんなに甘やかしてもらった記憶はない。弟が生まれてから、姉らしく振る舞うためにいつもそれなりに我慢をしていたから。
でも不思議なことに、私は彼の前では何の抵抗もなく素直に甘えることができた。
「ルイ様。助けてくださいますか?」
「もちろんだよ。いつでも頼ってほしいって言っただろう? リリーのための時間ならいくらでも作れるから」
そう言ってルイ様はその優秀な頭脳を使って私に勉強を教えてくれること、クラウスの浮気を証明するための証拠集めを手助けするため、ルイ様の私的な従者を紹介してくれることを約束してくれた。
✳︎✳︎✳︎
ルイ様はまごうことなき天才である。
私はその日の授業でわからなかったことはその場で教師に質問して解決するようにしているけれど、一人で復習と予習をしていると、どうしてもつまずく箇所がいくつも出てくる。
それをひとりで解決しようと思うと何倍もの時間がかかってしまうところが、ルイ様が隣にいてくれればものの数分で解決する。質問して正確な答えが返ってこなかったことは一度もない。
調べて考えて、答えを探す工程も本来であれば大切なのかもしれないが、命に、かけられる時間に限りがあると知っている私にとってはそれも些細なこと。「結果が全て」の私には救世主のような存在だ。
政治学、経済学、医学、薬学、魔法学……。私が学びたい分野は多岐に及んでいて、勉強するスケジュールを組むのも一苦労である。
特に、私の命を奪う病について調べるために学ぶ必要がある医学と薬学が難しい。以前は専攻していなかったため、学ぶのは今回が初めてということもあるが、わからないことだらけだ。教科書の内容を理解するのにまた別の資料が必要になり、効率を考えたら図書館の住人になるのが一番だった。
そういう実益も兼ねて図書館を利用していたのだが、近頃私にはもう一つ、ここに通う目的が増えた。
「リリー。今日もお疲れさま」
今日もルイ様がいた。彼の姿を見つけると、すぐ笑顔になってしまう自分に気づく。
最初はただ勉強するためだけに通っていた図書室だったのに、彼に会えるかもしれないことが、ここに通う楽しみの一つになってしまったのだ。
昨日も、その前も……最近は毎日ルイ様がいつも私が使っているスペースで待っている。初めて出会った翌日にまた図書館で一緒になり、その後毎日会って話すようになったのだ。
クラウスの浮気現場をまた目撃した時のために……とルイ様は気を遣ってくれているのだと思う。
この場所は人目につきづらい場所だから、クラウスが普段から女性との逢瀬に使っているのだろうと私は予想した。目撃した日が初めてとは到底思えない。
だから、ここで息を潜めて勉強しつつ、また現場を押さえて証拠を集めるつもりだということを彼に話したから。本当に優しいお方だ。
本来なら犯人を待ち伏せしているだけでなく、もっと能動的に動いて証拠を迅速に集め、さっさと婚約破棄したいところだ。けれど、不器用な私にはそのために割く時間が今のところうまく作れず……。受け身の調査というのも案外焦れて疲れるものだとげんなりしているところである。
そんな話をとりとめもなくルイ様にしていると、ルイ様は困ったような表情で私を見つめていた。
「リリー。私をなんだと思っているの」
「もちろん大切で大好きな友人です!」
「うん。そうだね。大切で大好きな友人が言った言葉は忘れちゃったのかな? 大切で大好きなのに? 寂しいなぁー……」
「……もう。ルイ様はそうやっていつも私を甘やかすんですから」
「私にとってもリリーは大切で大好きな友人だからね。素直に甘えてくれないかなと常日頃思ってる」
今日も瞳の中に様々な色の星を閉じ込めたように輝くアレキサンドライトの視線が、私の瞳を真剣に射抜く。
そして私はまた誘惑に負けてしまうのだ。
親にもこんなに甘やかしてもらった記憶はない。弟が生まれてから、姉らしく振る舞うためにいつもそれなりに我慢をしていたから。
でも不思議なことに、私は彼の前では何の抵抗もなく素直に甘えることができた。
「ルイ様。助けてくださいますか?」
「もちろんだよ。いつでも頼ってほしいって言っただろう? リリーのための時間ならいくらでも作れるから」
そう言ってルイ様はその優秀な頭脳を使って私に勉強を教えてくれること、クラウスの浮気を証明するための証拠集めを手助けするため、ルイ様の私的な従者を紹介してくれることを約束してくれた。
✳︎✳︎✳︎
ルイ様はまごうことなき天才である。
私はその日の授業でわからなかったことはその場で教師に質問して解決するようにしているけれど、一人で復習と予習をしていると、どうしてもつまずく箇所がいくつも出てくる。
それをひとりで解決しようと思うと何倍もの時間がかかってしまうところが、ルイ様が隣にいてくれればものの数分で解決する。質問して正確な答えが返ってこなかったことは一度もない。
調べて考えて、答えを探す工程も本来であれば大切なのかもしれないが、命に、かけられる時間に限りがあると知っている私にとってはそれも些細なこと。「結果が全て」の私には救世主のような存在だ。
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