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番外編

タイロンと人間になった妖精4

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 ドワーフの長は夏休み休暇の前日、首都にある武器屋に行くと会うことができる。

 ゲームでの発生条件としては、以下の3つが必要だ。

 1、サブストーリーを進めて麦酒を手に入れる
 2、男神の像を手に入れ、修理する
 3、ヒロインが図書館でドワーフについての情報を得る

 この3つの条件を揃えた条件で、夏休み休暇の前日に武器屋に行くと発生するイベントだ。ちなみに、2年を逃すと、次は3年の夏休み休暇の前日まで手に入れることはできない。

「攻略サイトにお世話になったもんな」

 土の珠どこで手に入るの!と慌てて攻略サイトを頼ったのも、いい思い出だ。

「アリサ?」

「ごめん、何でもない。……あ!来た!」

 武器屋の入り口が見える位置に、私たち3人は立っている。そんな武器屋に、背丈の低いローブを被った人物が入った。彼がドワーフの長だ。

「ベルるん、タイロン。行こう」

 二人が頷いたのを確認してから、武器屋へと向かう。

 店内にいるドワーフの長はローブを取り、顔を店長へと見せている。毎年この時期にまとめて武器を売りにきており、店長との仲は良好なようだ。

「はじめまして」

 私が声をかけると、ドワーフの長が振り向く。私は胸に右手を置き、片足を下げて頭を下げる。

「古き酒豪の神に敬意を」

 私がそう言うと、タイロンとベルるんも同様に礼の形をとる。ドワーフの長は少し驚いたように目を見開いた後で、同じように礼を返してくれる。

「古き酒豪の神に信仰を」

 そう言うと長はニカっと笑顔を浮かべる。

「こんな古い挨拶をよく知っているな若いの」

「たまたま本で見かけたことがあるんです」

 今のやりとりはドワーフが、人間と行う挨拶の礼だ。ちなみに、ドワーフ同士だと古き酒豪の神に信仰を、と言い合うらしい。

「そっちのは。土臭いな」

 ちら、とタイロンを見て、ドワーフの長があからさまに嫌な顔をした。私がタイロンに目配せをすると、彼は頷いて背負っていた袋から酒瓶を出す。

「俺はタイロン・マンハイムだ。一緒に飲まないか?」

「ふん。マイハイム家の人間しては礼儀を知ってるみたいだな。俺はジーグだ。そこの嬢ちゃんと兄ちゃんも行くのか?」

 私とベルるんが頷くと、ついて来い。と言ってドワーフの長、ジーグが店を出る。

 やった!上手くいった!この世界のドワーフたちは、初対面の人間と必ず酒を酌み交わすことで親しくなる。しかも恐ろしいことに、最初に酒を飲まなかった人とは、一生親しくなろうとしないという。

「アリサ。行こうか」

 ベルるんに声をかけられ、慌ててジーグとタイロンの後をついて行った。









 ドワーフの長に案内されたのは、こじんまりとした酒場だった。日本でいうところの、雰囲気のある個人経営のバーが近いかもしれない。

 どかっと椅子に座ると、すぐにジーグが店長を大きな声で呼ぶ。店長は空のガラスとおしぼりを机の上に置いた。

「腸詰めと、適当に麦酒に合うつまみを用意してくれ!」

 白ひげの生えた店長が頷き、ホールからキッチンの方へ消えていく。まだ日の明るい午前中なので、私たち以外に客はいなかった。

「さて、飲もうか」

「ああ。注がせてもらおう」

 タイロンが酒瓶の蓋を開けると、ぽんっと小気味いい音がなる。ジーグが待つグラスに注ぐと、小麦色の麦酒が泡立ち、とても美味しそうだ。

 ジーグもタイロンにグラスを渡し、注ぎ返す。

「お前らもグラスを持て」

「私たちはこれでお願いします」

 私はアイテムボックスから、ハーブティーを炭酸水で割ったものを取り出す。色と見た目はお酒に見えるから、問題はないだろう。

 ちなみに、この世界では15歳を過ぎると普通に飲酒をする。平民に至っては、特に年齢に決まりはないらしい。

 ジーグに瓶を渡し、グラスを持つと注いでくれた。

「それじゃあ。新たな友に乾杯!」

 ジーグの掛け声に合わせ、私たちも「乾杯」と言ってグラスを合わせると、グラスに口をつけた。
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