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学園編
オークションと妖精1
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私はベルるんの部屋で一人ノートを開いている。
ベルるんは期末テストを受けている最中で、さすがにテスト中はそばにいられないので部屋で留守番だ。
暇なのでノートに落書きをしているのだが、どうしても星降りの夜のことを思い出して顔がニヤける。
あの夜は一生の思い出になりそうだなー。と思いながら、落ち着かない気持ちでペンを走らせる。
とんとん
「誰だろ?」
ベルるんが帰ってくる時間には早いし、この時間は学生はみんなテストを受けているはずだ。
寮の掃除の人かな?
鍵をかけていないため、待っているとドアが開いた。そこには、黒いローブを深々と被ったヘレナが立っていた。
「妖精さん。いるんでしょう?」
どうしよう、と私が固まっていると、ヘレナが部屋の中に入ってくる。
「妖精さん。出てきてください。話をさせてください」
そう言ってヘレナが頭からフード部分を下ろすと、やつれて痛々しい顔があらわになる。
いざとなればテレポートすればいいか。
私とヘレナには圧倒的なレベル差があり、襲われても全く問題ない。そう判断をして、透明化を解いた。
「何の用かな?」
私の姿を見たヘレナが走り寄り、私の首に触ったかと思うと、かちりと音がした。
「ははは。上手くいったわ。邪神様ありがとうございます」
ヘレナは何もない部屋の天井を見つめ、ぶつぶつと話しかけている。
私が自分の首に手をやると、硬い金属製の首輪が付けられていたことが分かった。
首輪を触ると、テロンと説明画面が出る。
魔封じの首輪。装備者の魔法を封ずる首輪。
「魔封じ?……テレポート」
咄嗟にテレポートを唱えるが、何も起きない。まずい、魔法が使えなくなった?
動揺している私をヘレナはつまみあげ、箱のようなものへポイと放り投げた。
がたん、と箱の底に身体をぶつける。
「羽虫はここでじっとしてなさい。有効活用してあげるから」
ふんふん、とヘレナが上機嫌に鼻歌混じりに、その場から歩き出す気配がした。
箱の中は真っ暗で、ヘレナが動くたびに中で転がってしまう。
ぶつかっても痛くないけどね!
衝撃は多少あるものの、レベル80の私の防御力からすれば、全くもって痛くもない。
ん?そういえば、抑えられたの魔法だけ?
自分のステータスを確認すると、特記事項の欄に、魔封じ。という文字はあるが、その他は変わりない。
魔法は使えないけど、普通に防御力も攻撃力も高いままだった。
攻撃力がそのままなら、こんな箱から簡単に脱出できるな。
そう思い、箱に穴を開けようとする。が、そこで先ほどヘレナが口にした邪神という言葉が引っかかった。
このまま着いていけば、邪神復活が早まった原因、関わってる貴族が分かるかもしれない。
そう思い、箱から脱出するのは辞めて、しばらくヘレナの行動を泳がせることに決めた。
「生きてるかしら?」
気がついたら眠っていた私は、バンッという衝撃で目を覚ました。どうやら、私が入っていた箱を、ヘレナが床に投げたようだった。
箱の蓋が空いたので、そこからそっと出てみる。
「おお。これが妖精ですか」
部屋にいた老人はそういうと、私を小さな鳥籠へ押し込めた。抵抗する元気がないように、わざとぐったりとしてみせる。
「弱っているようですな。死んでしまう前に、早く売ってしまいましょう」
「ええ。任せたわ」
「今日のオークション最後の目玉品として出しましょう。ぜひ、観ていってください」
「そうさせてもらうわ。邪神様のために」
「邪神様のために」
信者の合言葉か何かなのか、二人は同じ言葉を繰り返す。ヘレナは私を見て、にやりと笑う。
「あなたの運命も今日までね。あなたをほしいって言う変態のところに、死ぬまでいると良いわ」
ヘレナの言葉にゾッとする。入っている鳥籠の金属部分を軽く指で押すと、ぐにゃりと簡単に曲がった。
大丈夫。殴り合えば私最強だから。
今すぐ逃げ出したい気持ちをグッと抑え、ヘレナの言葉に返事はせず目を閉じて横になっておく。
返事がないことが気に入らないのか、ふんっと鼻を鳴らしてヘレナが出ていった。
「さて、こいつ世話は…。おい、お前ら。死なないようにオークションまで見張っていろ」
「かしこまりました」
部屋の隅に控えていた数名の女性にそう言うと、老人も部屋から出て行った。
これから始まる、と言っていたオークションまでいれば、邪神教に関わっている貴族について情報が集まりそうだ。
売り飛ばされるのは絶対嫌だから、ギリギリまで情報集めたら逃げよう。
80レベルの筋肉舐めるなよ、と思いながら、鳥籠の中でじっと息をひそめるように過ごした。
ベルるんは期末テストを受けている最中で、さすがにテスト中はそばにいられないので部屋で留守番だ。
暇なのでノートに落書きをしているのだが、どうしても星降りの夜のことを思い出して顔がニヤける。
あの夜は一生の思い出になりそうだなー。と思いながら、落ち着かない気持ちでペンを走らせる。
とんとん
「誰だろ?」
ベルるんが帰ってくる時間には早いし、この時間は学生はみんなテストを受けているはずだ。
寮の掃除の人かな?
鍵をかけていないため、待っているとドアが開いた。そこには、黒いローブを深々と被ったヘレナが立っていた。
「妖精さん。いるんでしょう?」
どうしよう、と私が固まっていると、ヘレナが部屋の中に入ってくる。
「妖精さん。出てきてください。話をさせてください」
そう言ってヘレナが頭からフード部分を下ろすと、やつれて痛々しい顔があらわになる。
いざとなればテレポートすればいいか。
私とヘレナには圧倒的なレベル差があり、襲われても全く問題ない。そう判断をして、透明化を解いた。
「何の用かな?」
私の姿を見たヘレナが走り寄り、私の首に触ったかと思うと、かちりと音がした。
「ははは。上手くいったわ。邪神様ありがとうございます」
ヘレナは何もない部屋の天井を見つめ、ぶつぶつと話しかけている。
私が自分の首に手をやると、硬い金属製の首輪が付けられていたことが分かった。
首輪を触ると、テロンと説明画面が出る。
魔封じの首輪。装備者の魔法を封ずる首輪。
「魔封じ?……テレポート」
咄嗟にテレポートを唱えるが、何も起きない。まずい、魔法が使えなくなった?
動揺している私をヘレナはつまみあげ、箱のようなものへポイと放り投げた。
がたん、と箱の底に身体をぶつける。
「羽虫はここでじっとしてなさい。有効活用してあげるから」
ふんふん、とヘレナが上機嫌に鼻歌混じりに、その場から歩き出す気配がした。
箱の中は真っ暗で、ヘレナが動くたびに中で転がってしまう。
ぶつかっても痛くないけどね!
衝撃は多少あるものの、レベル80の私の防御力からすれば、全くもって痛くもない。
ん?そういえば、抑えられたの魔法だけ?
自分のステータスを確認すると、特記事項の欄に、魔封じ。という文字はあるが、その他は変わりない。
魔法は使えないけど、普通に防御力も攻撃力も高いままだった。
攻撃力がそのままなら、こんな箱から簡単に脱出できるな。
そう思い、箱に穴を開けようとする。が、そこで先ほどヘレナが口にした邪神という言葉が引っかかった。
このまま着いていけば、邪神復活が早まった原因、関わってる貴族が分かるかもしれない。
そう思い、箱から脱出するのは辞めて、しばらくヘレナの行動を泳がせることに決めた。
「生きてるかしら?」
気がついたら眠っていた私は、バンッという衝撃で目を覚ました。どうやら、私が入っていた箱を、ヘレナが床に投げたようだった。
箱の蓋が空いたので、そこからそっと出てみる。
「おお。これが妖精ですか」
部屋にいた老人はそういうと、私を小さな鳥籠へ押し込めた。抵抗する元気がないように、わざとぐったりとしてみせる。
「弱っているようですな。死んでしまう前に、早く売ってしまいましょう」
「ええ。任せたわ」
「今日のオークション最後の目玉品として出しましょう。ぜひ、観ていってください」
「そうさせてもらうわ。邪神様のために」
「邪神様のために」
信者の合言葉か何かなのか、二人は同じ言葉を繰り返す。ヘレナは私を見て、にやりと笑う。
「あなたの運命も今日までね。あなたをほしいって言う変態のところに、死ぬまでいると良いわ」
ヘレナの言葉にゾッとする。入っている鳥籠の金属部分を軽く指で押すと、ぐにゃりと簡単に曲がった。
大丈夫。殴り合えば私最強だから。
今すぐ逃げ出したい気持ちをグッと抑え、ヘレナの言葉に返事はせず目を閉じて横になっておく。
返事がないことが気に入らないのか、ふんっと鼻を鳴らしてヘレナが出ていった。
「さて、こいつ世話は…。おい、お前ら。死なないようにオークションまで見張っていろ」
「かしこまりました」
部屋の隅に控えていた数名の女性にそう言うと、老人も部屋から出て行った。
これから始まる、と言っていたオークションまでいれば、邪神教に関わっている貴族について情報が集まりそうだ。
売り飛ばされるのは絶対嫌だから、ギリギリまで情報集めたら逃げよう。
80レベルの筋肉舐めるなよ、と思いながら、鳥籠の中でじっと息をひそめるように過ごした。
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