【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話

近藤アリス

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学園編

一休みをする妖精

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 女神様から夢で邪神復活を知らされて、2週間が経っていた。ベルるんは火の国に行くため、教授から授業の範囲を教えてもらい、予習を進めている。

 学園生活自体は穏やかで、あれ以来ヘレナと会っても、あちらからベルるんに構ってくることがなくなった。

 やっと興味がなくなったんじゃない?なんて、ベルるんは言っていたけど不安だ。

「アリサ様、大丈夫ですか?」

「あ。うん!ごめんね」

 ぼうっとしていると、目の前に心配そうなリンの顔。今日はリンと目線の高さが同じだ。

 今日は授業がない日のため、リンと二人で首都のカフェにお出かけをしている。一人で話している、と思われるのは申し訳ないので、初めて人型になっている。

 ベルるんには人間の大きさになれることは言っていないので、リンとお茶に行くとしか伝えていない。

 ちなみに青色のワンピースは、リンに借りたものだ。

「お待たせいたしました」

 そう言って、ウェイターさんが私とリンの前にケーキがのったお皿置いてくれる。

「わあ」

 思わず私たちが歓声をあげると、ウェイターさんはにっこりと笑顔を浮かべてくれる。

 私はチョコレート、リンはベリーのケーキにした。私のケーキは繊細なチョコレート細工でできた蝶がのっていて、とても美味しそうだ。

 いただきます。と二人とも手を合わせて、フォークを持ち食べてみる。

「おいしい!」

 ふわっと優しいチョコレートの甘さが、疲れた脳を癒してくれる。リンの方を見ると、幸せそうな顔をしている。

 しばらく二人とも無言で食べ進める。ふぅ、と温かい紅茶で喉を潤すと、リンが嬉しそうに話し出した。

「ここのケーキ、評判通りにすごく美味しいですね!」

「ね!来てよかったよ」

 にこにこと話をしていると、じっとリンが私の顔を見る。

「アリサ様。青色がよくお似合いですよ」

「ありがとう。突然言ったのに、服貸してくれてありがとうね」

 二人でカフェに行こう、と決めた昨日、服を貸して欲しいと言った私に、笑顔で青いワンピースを貸してくれた。

「それに。大きくなった私見ても、驚かなかったね」

 待ち合わせ場所で会ったリンは、初めて見る人型の私の姿にそれほど驚いていないようだった。

「どちらかと言いますと、初めて妖精様を見た時の方が驚きました」

 そう言って笑うリンに、そんなものかと納得する。

「今日、服買ったらちゃんと綺麗にして返すから」

 プラス、何かリンが欲しがっているものが買い物中にあれば、お礼にプレゼントするつもりだった。

 そう。カフェでのんびりした後は、二人でショッピングの予定だ。この世界に来てベルるん以外の人と、買い物をするのは初めてだった。

 のんびり紅茶を飲んでいると、周りのお客さんが騒がしくなる。

「あの人かっこいいね」

「あー。でも、女の子連れてる。彼女かな?」

 ざわざわ、とする方を見てみると、そこには可愛らしい女の子を連れたパーシヴァルがいた。

 深い緑色の和服を着こなしたパーシヴァルは、こちらを見て驚いたように目を丸くする。

「アリサ殿?びっくりでござるよ」

 そう言ってこちらに歩いてくるパーシヴァル。後ろの女の子は、私とリンにぺこりと挨拶をしてくれる。

「ベルるんには、まだ大きくなれること言ってないから、内緒にしといてね」

「了解でござる」

 うんうん、と頷くパーシヴァルに、ひとまずホッとする。

「妹さんは元気にしてる?」

「おかげさまで。もう外で同じ歳の子と走って遊べるまで元気になったでござるよ」

 にこにことパーシヴァルが嬉しそうな顔で言い、私も嬉しくなる。

「それじゃあ、拙者はこれで」

 そう言って、パーシヴァルは私たちと離れた席に座った。

「彼女ですかね?」

 若い少女らしく恋の話が好きなのか、リンが嬉しそうに言ってくる。

「パーシヴァルと関わりってあんまりないの?」

「そうですね…。同じクラスなので話したことはありますが、学園外で話したのは初めてですね」

「そっかあ」

 乙女ゲームのはずなのに、ローレン以外の人が積極的にリンに近づく様子はなかった。

 ベルるんだけではなく、アーサーやパーシヴァル、タイロンもリンと親しくする様子はない。

「どうかされましたか?」

「ううん。リンはやっぱりローレンが好きなの?」

「えええ。急に何を!」

 私の問いに顔を真っ赤にして慌てるリン。その姿から、ローレンが好きなことが分かる。

「私はただの巫女です。第一王子であるローレン様と、不釣り合いですから」

 真っ赤な顔をしていたリンは、そう言うと今度は悲しそうな表情を浮かべた。

「大丈夫。リンはローレンと世界を救うから。誰も文句は言えないはずだよ」

「え?」

「邪神復活の時には、リンとローレンにも力を貸してもらうことになるから」

 周りの客に聞こえないように声をひそめて話す。リンとローレンは邪神復活に向けて、レベル上げも頑張ってくれている。

 そっとリンの両手を握る。

「世界を救って、幸せにもなろう。ね?」

 そう言うと、リンはパチパチと瞬きをしてから、ふわっと笑顔を浮かべてくれた。

「頑張ります!」

「よし。そろそろお買い物行こうか」

 そう言って二人でお店を出た。邪神復活の時な迫ってきているけれど、今日は束の間の休息だ。

 イーライに素材を渡して貰ったお金で、思う存分買い物を楽しんだ。
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