975 / 1,121
終幕 10
しおりを挟む
ここの事業にも、少なからず影響が出てしまうだろうな……。
職人たちにも、大変申し訳ないことをしてしまった。
だけど、幸か不幸か、ここの事業自体は国の管理下に入った。
元々俺が個人の裁量で処理していたことも無きに等しいし、ブンカケンは俺無しでもちゃんと回る。
クロードを筆頭とした貴族関係者は、ここの重要性をきちんと弁えてくれているだろうし、動き出した以上、最低一年はこのままが維持されるだろう。
なにより国内への影響を考えれば、続けざるを得ない。それだけの経済効果をもたらしているという自信はある。
その一年があれば、ここが俺の存在とは関係なしに動いていることも、ここの事業を存続させる価値も理解してもらえる。なにより、離宮建設はきっと止まらない。陛下がここでご出産となった以上は。
セイバーンは……当面陛下の管理下かな……。
その後、適した貴族が選ばれ、領名を変えることになるだろう……。
父上がご存命のうちは、セイバーンでいれた……それがせめてもの救いだったなと思う。
せっかくサヤが守ってくれたセイバーンの名も、結局俺自身が潰してしまったな……。
獣人らの安らげる場所も、俺が壊した。
せっかくアイルが忠告してくれたのに、俺はそれを活かせなかった。
最悪の結果を招いてしまった。
戸惑うべきじゃなかった。俺は即座に、こんな配下を持った覚えは無いと、口にすべきだった。
そうすれば犠牲にするものは今よりずっと少なかったと思う。ウォルテール一人を切り捨てれば、全て丸く収まっていたのに!
…………収まっていたか?
ズキズキと痛みを伝えてくる右肩……突き立ったままの小刀。
そこに視線を落とし、今の俺にできることは考えることだけだ……と、そう思った。
最悪の結果を、本当の最悪にしないために、考えることだけだ……。
あの状況……あそこには、表に出ていない第三者の存在が、確かにあった。
その決定的な証拠がこの小刀……。俺の命を刈り取る目的で放たれたこれだ。
ホライエンと神殿に、それをする理由は無い。
何故なら彼らは、自分たちが正しいことを、知っている。
正当な理由を持ち、堂々と俺を裁ける立ち位置を取ってあそこにいたのだから、俺を誅するのに隠れる必要は無いし、実際そう動いた。
……あの兇手らは、昨日今日で潜ませたものじゃない……。何日も掛けて、少しずつ送り込まれていたはずだ……。
そう考えれば……どっちみち何かの形で、この状態になっていたようにも思える。現状を考えると彼らの目的は、俺たちの始末……命を取るという意味だけでなく、社会的にも……ということだったろうから。
そしてできるなら最後まで、その存在を他には悟らせないつもりでいたはずだ。町人に扮していたのはそれもあってのことだろう。
あそこで俺が死んでいたとしたら。
あの兇手らは町人のふりに戻り、何食わぬ顔で逃げる民らに紛れただろう。
セイバーン側は俺の死を、ホライエンか神殿の手だと考え、逆にホライエン側は、口封じ、濡れ衣を着せられたと主張し、お互いが譲ることをせず、ただ状況を混乱させるだけの結果を招いた可能性が高い。
その後俺たち不在のまま、俺たちは悪魔の使徒に仕立て上げられ、討伐が完了したということで、万事解決……。まぁ色々ごちゃごちゃして時間は掛かるだろうが、民らの不安を払拭することが優先され、その結末で落ち着くだろう。
こうして俺が死ななかった場合も……。
俺が吠狼を使い、住人らを殺戮し始めたように演出した……。
サヤは悪魔として神殿に狙われ、俺はその使徒を操る手先に仕立て上げられ、獣人らと共に、全国民を敵に回す。
本来なら考えられない与太話だけれど、実際に獣人がおり、獣化までして見せたんだ……疑いようもない。
クロードたちは、もう俺を罪人と定めたろうし、追手もかかるだろう。
このフェルドナレンに俺たちの居場所は無くなった。
俺たちの退路を断つこと、信頼を失墜させること、悪魔の使徒に仕立て上げることには、見事成功しているから、どのみちこの第三者の目的は達成されているのだろう。
どこに逃げたって追われるだけだろうし、俺たちがあとどれくらい生きていられるかも、時間の問題……。
どっちに転ぼうと、損はしない。失敗しない。そんな風に設定されていたということ……。
第三者は、容赦無く、そして頭のキレる相手なのだろう。
生きて帰らない可能性が高いと分かっていただろうに、それを承知で、結構な人数の兇手を投入してきている。
駒は駒……。消耗することも厭わない……いや、必要ならばそう使うし、それを痛いとも思ってもいないのか……。
それだけの数を持っている……そうじゃないな……そもそも駒に駒であること以外を求めてない……。
使うべき時に、使いたい方法で使う。消耗して当然と思っている。
そんな風に考えている相手だということが、嫌でも伝わってくる……。
駒は駒……なら当然、ウォルテールのこの先は……。
逃げるのに必死で、彼がその後どうなったかが、分からない……。
でも、このままであれば、彼の先は容易に想像できた。
どの勢力に捕まろうと、命を失うことだけは確か。待っているのは来世への旅立ちだけだ。
そう思ったら、ギュッと、胸が締め付けられた。
…………この後に及んで……っ。
俺は何を考えているのだろう。
ウォルテールは群れを裏切った。俺が何を言ったところで、もう吠狼の中に彼の居場所は無いだろう……。
それは分かっているのに、何故か気持ちが振り払えない。
ウォルテールをこのままにしたくない……。
裏切り者に構ってる余裕がある状況じゃないって、分かっているのに。
世界はこの形でできているんだよ。
そう言った時の必死な表情に、嘘があったなんて、未だに思えないのだ……。
「主、乗って。頃合いを見て出るから」
悶々と考えていたら、走り寄って来たイェーナがそう言い、俺は慌てて立ち上がろうとした。
けれど、失血と痛みにくらりと頭が揺れ、身体が傾ぐ。それを横から伸びたハインの手が支えてくれた。
だらりと下げたままになっている腕を伝い、ぽたりと滴った血。
それを見たイェーナが、眉を寄せ、くしゃりと顔を歪める。
「ごめんなさい……本当は私が、真っ先に気付いてなきゃいけなかった……」
「そんなわけないじゃないか。あれは俺にだって予想できてなかったし……避けられなかったのは、俺の失敗。
それにイェーナは、俺を助けてくれたろう? ありがとう……君は命の恩人だ」
手を汚させてしまった……。
だけどアイルはそれを「よくやった」と褒めた。
彼女に今後襲い来る後悔や葛藤を、そうやって肯定することで、引き受けた。
だから俺も、彼女に言うべきはごめんじゃなくて、ありがとうだ。
それに、あれはどう考えたってイェーナの責任ではない。小刀の投擲者は本職の兇手だ。
イェーナはまだ吠狼となったばかりで経験も浅い。街の警備以外の職務経験は殆ど無いに等しいのだ。見破るのは困難だったろう。
足を進めようとして。
「でも、私は察せなきゃ駄目だった……」
小さなイェーナの呟きに、ふと思い出したのは……。
イェーナは人だ……だけど、身内に狼になれる獣人を持っていたからその関係か、鳴き声や仕草、表情等から、狼らの言いたいことを察することができた。
イェーナと初めて顔を合わせた時、狼姿だったウォルテールの言いたいことを俺たちに訳してくれたのも、彼女だった……。
イェーナの察せなきゃいけなかったは、ウォルテールの咆哮の意味?
先程も、あの場に彼女はいたのだ……。っ、なら、もしかして……っ。
職人たちにも、大変申し訳ないことをしてしまった。
だけど、幸か不幸か、ここの事業自体は国の管理下に入った。
元々俺が個人の裁量で処理していたことも無きに等しいし、ブンカケンは俺無しでもちゃんと回る。
クロードを筆頭とした貴族関係者は、ここの重要性をきちんと弁えてくれているだろうし、動き出した以上、最低一年はこのままが維持されるだろう。
なにより国内への影響を考えれば、続けざるを得ない。それだけの経済効果をもたらしているという自信はある。
その一年があれば、ここが俺の存在とは関係なしに動いていることも、ここの事業を存続させる価値も理解してもらえる。なにより、離宮建設はきっと止まらない。陛下がここでご出産となった以上は。
セイバーンは……当面陛下の管理下かな……。
その後、適した貴族が選ばれ、領名を変えることになるだろう……。
父上がご存命のうちは、セイバーンでいれた……それがせめてもの救いだったなと思う。
せっかくサヤが守ってくれたセイバーンの名も、結局俺自身が潰してしまったな……。
獣人らの安らげる場所も、俺が壊した。
せっかくアイルが忠告してくれたのに、俺はそれを活かせなかった。
最悪の結果を招いてしまった。
戸惑うべきじゃなかった。俺は即座に、こんな配下を持った覚えは無いと、口にすべきだった。
そうすれば犠牲にするものは今よりずっと少なかったと思う。ウォルテール一人を切り捨てれば、全て丸く収まっていたのに!
…………収まっていたか?
ズキズキと痛みを伝えてくる右肩……突き立ったままの小刀。
そこに視線を落とし、今の俺にできることは考えることだけだ……と、そう思った。
最悪の結果を、本当の最悪にしないために、考えることだけだ……。
あの状況……あそこには、表に出ていない第三者の存在が、確かにあった。
その決定的な証拠がこの小刀……。俺の命を刈り取る目的で放たれたこれだ。
ホライエンと神殿に、それをする理由は無い。
何故なら彼らは、自分たちが正しいことを、知っている。
正当な理由を持ち、堂々と俺を裁ける立ち位置を取ってあそこにいたのだから、俺を誅するのに隠れる必要は無いし、実際そう動いた。
……あの兇手らは、昨日今日で潜ませたものじゃない……。何日も掛けて、少しずつ送り込まれていたはずだ……。
そう考えれば……どっちみち何かの形で、この状態になっていたようにも思える。現状を考えると彼らの目的は、俺たちの始末……命を取るという意味だけでなく、社会的にも……ということだったろうから。
そしてできるなら最後まで、その存在を他には悟らせないつもりでいたはずだ。町人に扮していたのはそれもあってのことだろう。
あそこで俺が死んでいたとしたら。
あの兇手らは町人のふりに戻り、何食わぬ顔で逃げる民らに紛れただろう。
セイバーン側は俺の死を、ホライエンか神殿の手だと考え、逆にホライエン側は、口封じ、濡れ衣を着せられたと主張し、お互いが譲ることをせず、ただ状況を混乱させるだけの結果を招いた可能性が高い。
その後俺たち不在のまま、俺たちは悪魔の使徒に仕立て上げられ、討伐が完了したということで、万事解決……。まぁ色々ごちゃごちゃして時間は掛かるだろうが、民らの不安を払拭することが優先され、その結末で落ち着くだろう。
こうして俺が死ななかった場合も……。
俺が吠狼を使い、住人らを殺戮し始めたように演出した……。
サヤは悪魔として神殿に狙われ、俺はその使徒を操る手先に仕立て上げられ、獣人らと共に、全国民を敵に回す。
本来なら考えられない与太話だけれど、実際に獣人がおり、獣化までして見せたんだ……疑いようもない。
クロードたちは、もう俺を罪人と定めたろうし、追手もかかるだろう。
このフェルドナレンに俺たちの居場所は無くなった。
俺たちの退路を断つこと、信頼を失墜させること、悪魔の使徒に仕立て上げることには、見事成功しているから、どのみちこの第三者の目的は達成されているのだろう。
どこに逃げたって追われるだけだろうし、俺たちがあとどれくらい生きていられるかも、時間の問題……。
どっちに転ぼうと、損はしない。失敗しない。そんな風に設定されていたということ……。
第三者は、容赦無く、そして頭のキレる相手なのだろう。
生きて帰らない可能性が高いと分かっていただろうに、それを承知で、結構な人数の兇手を投入してきている。
駒は駒……。消耗することも厭わない……いや、必要ならばそう使うし、それを痛いとも思ってもいないのか……。
それだけの数を持っている……そうじゃないな……そもそも駒に駒であること以外を求めてない……。
使うべき時に、使いたい方法で使う。消耗して当然と思っている。
そんな風に考えている相手だということが、嫌でも伝わってくる……。
駒は駒……なら当然、ウォルテールのこの先は……。
逃げるのに必死で、彼がその後どうなったかが、分からない……。
でも、このままであれば、彼の先は容易に想像できた。
どの勢力に捕まろうと、命を失うことだけは確か。待っているのは来世への旅立ちだけだ。
そう思ったら、ギュッと、胸が締め付けられた。
…………この後に及んで……っ。
俺は何を考えているのだろう。
ウォルテールは群れを裏切った。俺が何を言ったところで、もう吠狼の中に彼の居場所は無いだろう……。
それは分かっているのに、何故か気持ちが振り払えない。
ウォルテールをこのままにしたくない……。
裏切り者に構ってる余裕がある状況じゃないって、分かっているのに。
世界はこの形でできているんだよ。
そう言った時の必死な表情に、嘘があったなんて、未だに思えないのだ……。
「主、乗って。頃合いを見て出るから」
悶々と考えていたら、走り寄って来たイェーナがそう言い、俺は慌てて立ち上がろうとした。
けれど、失血と痛みにくらりと頭が揺れ、身体が傾ぐ。それを横から伸びたハインの手が支えてくれた。
だらりと下げたままになっている腕を伝い、ぽたりと滴った血。
それを見たイェーナが、眉を寄せ、くしゃりと顔を歪める。
「ごめんなさい……本当は私が、真っ先に気付いてなきゃいけなかった……」
「そんなわけないじゃないか。あれは俺にだって予想できてなかったし……避けられなかったのは、俺の失敗。
それにイェーナは、俺を助けてくれたろう? ありがとう……君は命の恩人だ」
手を汚させてしまった……。
だけどアイルはそれを「よくやった」と褒めた。
彼女に今後襲い来る後悔や葛藤を、そうやって肯定することで、引き受けた。
だから俺も、彼女に言うべきはごめんじゃなくて、ありがとうだ。
それに、あれはどう考えたってイェーナの責任ではない。小刀の投擲者は本職の兇手だ。
イェーナはまだ吠狼となったばかりで経験も浅い。街の警備以外の職務経験は殆ど無いに等しいのだ。見破るのは困難だったろう。
足を進めようとして。
「でも、私は察せなきゃ駄目だった……」
小さなイェーナの呟きに、ふと思い出したのは……。
イェーナは人だ……だけど、身内に狼になれる獣人を持っていたからその関係か、鳴き声や仕草、表情等から、狼らの言いたいことを察することができた。
イェーナと初めて顔を合わせた時、狼姿だったウォルテールの言いたいことを俺たちに訳してくれたのも、彼女だった……。
イェーナの察せなきゃいけなかったは、ウォルテールの咆哮の意味?
先程も、あの場に彼女はいたのだ……。っ、なら、もしかして……っ。
0
お気に入りに追加
837
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる