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魔手 5
しおりを挟む注意:エログロめのきつい表現があります。ご注意ください。
「やめろ! サヤに触れるな!」
身を乗り出した俺の眼前に、小刀が突き付けられた。
「動かないで」
「トゥーレ、お願いだ……サヤはっ」
「黙って」
「サヤに酷いことをしないでくれ!」
「黙れよ!」
眉間にしわを刻んだトゥーレ。
地面に押さえつけられ、身体を弄ばれているサヤを痛ましそうに見て、一度は視線を逸らした。
けれど堪え切れなくなったように、「なぁ!」と、男に呼びかける。
「今それしていいわけ? 頭が戻ったらただじゃ済まないと思うけど」
「お前が黙ってりゃいいんだヨォ」
「無理だって。時間的にどう考えたって……」
「黙ってろ! 今忙しいんだヨォ!」
興奮のあまり、周りなんて構ってられないとでもいうかのように、男は呼吸を荒くし、サヤの夜着を引き千切りそうな勢いで引っ張り、邪魔な腰帯を取り払った。
身をよじって抵抗するサヤに跨り、逃げられないよう、腹に体重をかける。
「やっ、イヤッ!」
「ちょっとでも抵抗したらあいつをぶっ刺すように言うぞ」
「⁉︎…………っ」
「あんたはともかく、あいつは別に、生かしておけともなんとも、言われてねぇんだからヨ」
「サヤ構うな! 俺たちはどうとでもする! 逃げろ!」
サヤならできるはずだ。そんなやつ蹴り飛ばしていい。ここに飛び込んできた時と同じように、垣根の向こうに逃げれば良いんだ!
ピッと頬に痛みが走る。叫んでもがいたせいで、トゥーレの持つ小刀が頬を掠めた。
たったそれだけのこと。なのに……っ、それを見たサヤは、くっと唇を噛み締め、抵抗を止めてしまった……っ。
「サヤ⁉︎」
「だよナァ。あっちに何かあっちゃ、困るんだよナァ」
「………………」
「大人しくしてりゃ、よくしてやるからヨォ」
男の手が、サヤの胸に伸びる。
サヤの腹に遠慮もなしに体重をかけ、縛られた手を下敷きにされたまま負荷をかけられたサヤが、痛みに顔を歪めることもお構いなしに、豊かな胸の膨らみを鷲掴みにした。
うううぅぅぅ!と、唸り声を上げるシザーを嘲るように見て、サヤの胸をやわやわと揉みしだき、やわらけぇなぁと舌舐めずり。
「逃げろ、いいんだサヤ!」
どうせこいつらは、俺を今すぐ殺すなんてできやしない。
ここを安全に出るために、俺は必要になるだろう。だから、抵抗していい。逃げていいんだ!
男の右手が胸を離れ、サヤの下穿きに伸びた。その中に指を忍び込ませようとするのを、耐えかねたようにトゥーレが叫ぶ。
「やめろって! 今そんなことしてる時間は……っ」
「黙ってろって言ったよナァ⁉︎」
けれど、振り返って叫んだ男の首に、小剣が食い込んだ。
「っ⁉︎………………お、お頭……」
「……こんな時に何サカってんだテメェよ……」
サヤに跨り、胸を掴んだまま、男は動けず硬直する。少しでも動けば、首に押し当てられた小剣は男の頚動脈を容赦なく傷付けるだろう。
ホッ……と、隣で息を吐く音。
「頭、ここは見とく。獲物確保してきてよ、早く逃げよう。
じゃなきゃそういう、我慢きかないやつがゴロゴロバカをして、時間を食う」
トゥーレの言葉に、頭と呼ばれた頭巾の男はこちらを見た。
トゥーレの小刀で頬に傷の入った俺を見て、橋の袂で震えるハヴェルを確認する。
「…………ちゃんと見とけよ」
「分かってる」
そうしてサヤに跨っていた男の襟首を掴み、無造作に投げ捨てた。ひぃっと、悲鳴をあげる男を、更に足蹴にする。
「目標、見つけて来なかったら、お前は指を詰めろ……。他のやつが見つけても同じだ」
「わっ、わかった、分かった行ってくる!」
慌てて舎に向かう男を追って、頭巾の男もそのあとを追った。
けれど、何をする間もなく、別の一人が何か言われたらしく、戻ってきた。チッ……子供らだけにはしない……信用しないってことか?
「またあいつ、なんかやらかしてんのかよ……」
「今その人に近付かない方がいいよ。頭、だいぶ気が立ってるみたいだったし……」
トゥーレのその忠告で、さっきの男が何をやらかしかけたのか理解したよう。
あられもない状態にされたサヤを残念そうに、けれど食い入るように魅入って、そっちに一歩を踏み出した。
ビクリと、恐怖に顔をひきつらせるサヤが、ぬかるんだ地面に身を横たえたまま、必死で距離を取ろうとする……。むき出しの下穿きや太腿が、男の目を引き寄せる。
男はゴクリと唾を飲み込んで、けれど慌てて視線を逸らし「トゥーレ、ちょっとアレ、しまっといてくれ」と、トゥーレを呼んだ。
「目の毒だわ……お前ガキだし平気だろ」
「大人って大変だな……」
「まったくだ。あぁあ、ありゃあいつ、指詰められんな、マジで」
「ジゴウジトクってやつだろ……」
「なんだぁお前、ちょっと見ない間に、なんか難しい言葉言いやがるようになったなぁ」
「……勉強させられるんだよ、ここ…………」
そんな風に男と言葉を交わすトゥーレ。
小刀を鞘に収めて腰帯に挟み、サヤの元に向かい、放り捨てられた腰帯を拾った。そして、はだけた夜着を極力戻し、腰帯をきっちりと結び直す……。
そうしてまた、俺のところに戻ってきたけれど……今度は小刀を抜かず、腰帯に鞘を挟んだまま。
「あ、手首動かすなよ。緩むだろ」
そう言い、俺の腕を確認………………。
重なる腕の隙間に、何かが、捻じ込まれた。
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