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夜会 8
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なんとかリヴィ様と和解が成立して、俺たちは歓談室をあとにした。
やー……あの手の話、学舎では言われてたけど、未だに来るとは思わなかった……。
ヒゲまで生えるようになって言われるとは……正直結構精神的に衝撃受けたな……。
内心ではそんな風に考えつつ、けどまあ誤解も解けたし良かったことにしようと割り切ったのだが。
「あれ……?」
部屋の外に、目立つはずの車椅子と黒髪が見当たらない。「サヤ?」と、声に出して呼びかけてみるも、返事が無く、姿も現れない……。
父上と一緒だから、滅多なことにはならないだろうと思っていたのに……どこだ⁉︎
「レイ殿?」
「リヴィ様、申し訳ない。二人を探しに行きたいので、ちょっと急いで親族の方と合流頂いて宜しいですか⁉︎」
ライアルドのこともあり、リヴィ様をこのまま一人だけで残すには気が引けた。けれど、嫌な予感が拭えなくて、口調が焦ってしまう。
そんな様子の俺に、リヴィ様は少々訝しげな顔。
それでも、手を上げて使用人を呼び、アギー公爵様方の様子と、セイバーン男爵家関係者の所在を確認してくれた。
「焦って探し回るより、こちらの方が確実でしてよ」
「す、すいません……」
部屋の近くにいると言っていたサヤが、理由も無しに離れたとは思い難い。だから、絶対何かあったのだという確信があった。
じりじりとしながら待っていると、体調を崩されたので休憩室にご案内しております。という知らせが入り、慌ててそちらに向かうことに。
リヴィ様も公爵様方はまだご挨拶で手一杯とのことで、心配ついでについてくることになった。
「サヤ⁉︎」
案内された休憩室に、サヤと父上はいた。思った通り、サヤが体調を崩していたようだ。
人払いしてもらえたようで、部屋の外に使用人は待機していたものの、中は父上とサヤ、二人きりだ。
「ごめん……夜会だってことを、失念していた……」
「ええの。私が、残るって、言うたんやし」
青い顔で、長椅子に座っているサヤ。気丈にも微笑みを浮かべるのだけど、無理をしているのは明白で、触れても大丈夫か確認すると、こちらに手を伸ばしてきたから、その手を取って胸に引き寄せた。
冷え切った手……小刻みな震え……やはり、同行させれば良かったと、強く後悔する……。
「サヤは、体調を崩していらっしゃったの? 医師は? すぐ手配致しますわ」
「いや、それはお断りさせて頂いたのだ。医師にかかる必要は無いと、サヤが言うのでな」
「遠慮など無用でしてよ。大丈夫、すぐに……」
「いえ。本当に、必要無いので。……医師にどうこうできることでは、ないんです」
使用人を呼ぼうとするリヴィ様を遮って、サヤの身体を抱き締めた。
少しでも俺の体温が伝わるように、凍えて縮こまった心が、落ち着くように……。
「何か嫌なこと、言われた?」
「ううん。面と向かって、言うてくる人は、いいひんかったから、大丈夫。
せやけど、やっぱり目立つし……仕方ない。分かってたのに、あかんやった……かんにん……」
「謝る必要なんて無い。俺がもう少し、考えなきゃならなかったんだ」
しばらく抱き締めていると、次第にサヤの震えは治まってきて、ホッと安堵の息が溢れる。
良かった……まだこれくらいで済んで。倒れるとかまで、いかなくて……。
「すまぬ。私がもう少し、早く気付けば良かったのだが……」
「いえ。サヤだけなら、無理やりにでも残ろうとしたでしょうから。
父上が早めに判断してくださったおかげで、この程度で済んだんです……」
それに、父上がいてくださったから、サヤに接触する者が現れるまでには至らなかったのだろう。
そうなっていればと考えたら、ゾッとした。
貴族の夜会に俺の華として伴われているサヤは、貴族ではない。
俺の妻となるまでは、一般庶民のままなのだ。
会場中の誰よりも立場が弱い。その上俺も……男爵家の、成人前……。立場としては、サヤの次に弱い……。
なのに、耳飾が、無い……。
「……っ」
そう考えると、もう恐怖でどうにかなりそうだった。
俺が離れている間に、もし万が一のことが起こっていたら……!
ライアルドのような者が、権威をかさにきてサヤを強引に求めていたら……後悔では、済まなかった!
耳飾が無いという状態を、皆が懸念した理由。
それは、印の無い者は、誰に何をされても文句が言えないからだ。
大切なら所有権を主張しておく。と、いうのが貴族社会と言えば良いのか……。
秘匿権や襟飾だって、そういうこと。
ただでさえ絶対的な身分差という優先順位がある。
それに対抗するために、数を揃えるという手段を取ったのが飾の類なのだ。
そんな中で、新たな飾を提案するということは、荒野に道を通すのと一緒。
誰にも守られない無法地帯に、生身を晒して声を上げる。と、いうこと。
俺たちは今、それをしようとしていて、その上で最も危険なのが、サヤなのだ…………。
夜会なんて、ほんの数時間のことだと……ずっと一緒にいれば、大丈夫だと……そんな風に考えていた。
父上だっているし、アギーの社交界だ。安全度で言えば、高い方だと。
だけど……ホーデリーフェ様らのあの出来事をみても、それは楽観的すぎたと言わざるをえない。
実際こうして、不測の事態は起こってしまった。
結局これも、俺の甘さが招いた結果だ。
祝賀会の時は、大丈夫だったからと…………。
場の頂点に立っていたあの時と、最下層にいる今……同じはずが、ないじゃないか…………。
「……サヤ、ハインたちと、先に部屋に戻っておいた方が良いと思う」
そう言うと、腕の中のサヤが慌てて顔を上げた。
「もうサヤのお披露目はしたわけだし、大丈夫だから……」
「そんなわけあらへんやろ⁉︎ まだ挨拶らしい挨拶もしてへん……耳飾の周知かて、なんもできてへん!」
うん……けど……それよりも俺は、サヤが心配。
「ここで周知しとかんと、戴冠式の時が、更に大変やって、ギルさんかて言うてたやろ⁉︎」
「そうだけど……だけどサヤ……」
「もう大丈夫。それに、レイと私が一緒におらな、周知の意味があらへんの。
今後のためやろ? 私たちだけのこととも違う。これから先かて、他の人たちにだって、必要になるかもしれへんものやろ?」
「……なんの、お話ですの?」
俺たちのやり取りを辛抱強く見守っていたリヴィ様が、たまらずといった様子で声を上げた。
「サヤ、私も、レイ殿のおっしゃる通り、体調が思わしくない貴女を会場に戻す気はなくってよ。
医師の診察だって受けていただくわ。アギーのお客様に、不手際があってはならないのですもの」
「リヴィ様、これは、病ではないんです。ちょっと、気分が悪くなっただけですから……」
「レイ殿が無理だと判断していらっしゃるのよ」
「大袈裟なだけなんです。前はちょっと失敗しましたけど今度は……」
「根拠を述べてくださらない? 大丈夫だと言い切れる理由。それに私たちが納得できたならば良くってよ」
厳しい表情でぴしゃりと言い放つリヴィ様に、サヤが困った顔になる。
と、そこでコンコンと、扉が叩かれた。
「失礼いたします。セイバーン男爵様に、御目通り願いたいと、ヴァイデンフェラー男爵様がお越しですが、お通ししても差し支えございませんか?」
ヴァイデンフェラー……なんか、聞いた気がする家名……。
答えに至る前に、サヤが首を傾げて呟いたのは……。
「ディート様の、お父様?」
……あっ!
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ライアルドのこともあり、リヴィ様をこのまま一人だけで残すには気が引けた。けれど、嫌な予感が拭えなくて、口調が焦ってしまう。
そんな様子の俺に、リヴィ様は少々訝しげな顔。
それでも、手を上げて使用人を呼び、アギー公爵様方の様子と、セイバーン男爵家関係者の所在を確認してくれた。
「焦って探し回るより、こちらの方が確実でしてよ」
「す、すいません……」
部屋の近くにいると言っていたサヤが、理由も無しに離れたとは思い難い。だから、絶対何かあったのだという確信があった。
じりじりとしながら待っていると、体調を崩されたので休憩室にご案内しております。という知らせが入り、慌ててそちらに向かうことに。
リヴィ様も公爵様方はまだご挨拶で手一杯とのことで、心配ついでについてくることになった。
「サヤ⁉︎」
案内された休憩室に、サヤと父上はいた。思った通り、サヤが体調を崩していたようだ。
人払いしてもらえたようで、部屋の外に使用人は待機していたものの、中は父上とサヤ、二人きりだ。
「ごめん……夜会だってことを、失念していた……」
「ええの。私が、残るって、言うたんやし」
青い顔で、長椅子に座っているサヤ。気丈にも微笑みを浮かべるのだけど、無理をしているのは明白で、触れても大丈夫か確認すると、こちらに手を伸ばしてきたから、その手を取って胸に引き寄せた。
冷え切った手……小刻みな震え……やはり、同行させれば良かったと、強く後悔する……。
「サヤは、体調を崩していらっしゃったの? 医師は? すぐ手配致しますわ」
「いや、それはお断りさせて頂いたのだ。医師にかかる必要は無いと、サヤが言うのでな」
「遠慮など無用でしてよ。大丈夫、すぐに……」
「いえ。本当に、必要無いので。……医師にどうこうできることでは、ないんです」
使用人を呼ぼうとするリヴィ様を遮って、サヤの身体を抱き締めた。
少しでも俺の体温が伝わるように、凍えて縮こまった心が、落ち着くように……。
「何か嫌なこと、言われた?」
「ううん。面と向かって、言うてくる人は、いいひんかったから、大丈夫。
せやけど、やっぱり目立つし……仕方ない。分かってたのに、あかんやった……かんにん……」
「謝る必要なんて無い。俺がもう少し、考えなきゃならなかったんだ」
しばらく抱き締めていると、次第にサヤの震えは治まってきて、ホッと安堵の息が溢れる。
良かった……まだこれくらいで済んで。倒れるとかまで、いかなくて……。
「すまぬ。私がもう少し、早く気付けば良かったのだが……」
「いえ。サヤだけなら、無理やりにでも残ろうとしたでしょうから。
父上が早めに判断してくださったおかげで、この程度で済んだんです……」
それに、父上がいてくださったから、サヤに接触する者が現れるまでには至らなかったのだろう。
そうなっていればと考えたら、ゾッとした。
貴族の夜会に俺の華として伴われているサヤは、貴族ではない。
俺の妻となるまでは、一般庶民のままなのだ。
会場中の誰よりも立場が弱い。その上俺も……男爵家の、成人前……。立場としては、サヤの次に弱い……。
なのに、耳飾が、無い……。
「……っ」
そう考えると、もう恐怖でどうにかなりそうだった。
俺が離れている間に、もし万が一のことが起こっていたら……!
ライアルドのような者が、権威をかさにきてサヤを強引に求めていたら……後悔では、済まなかった!
耳飾が無いという状態を、皆が懸念した理由。
それは、印の無い者は、誰に何をされても文句が言えないからだ。
大切なら所有権を主張しておく。と、いうのが貴族社会と言えば良いのか……。
秘匿権や襟飾だって、そういうこと。
ただでさえ絶対的な身分差という優先順位がある。
それに対抗するために、数を揃えるという手段を取ったのが飾の類なのだ。
そんな中で、新たな飾を提案するということは、荒野に道を通すのと一緒。
誰にも守られない無法地帯に、生身を晒して声を上げる。と、いうこと。
俺たちは今、それをしようとしていて、その上で最も危険なのが、サヤなのだ…………。
夜会なんて、ほんの数時間のことだと……ずっと一緒にいれば、大丈夫だと……そんな風に考えていた。
父上だっているし、アギーの社交界だ。安全度で言えば、高い方だと。
だけど……ホーデリーフェ様らのあの出来事をみても、それは楽観的すぎたと言わざるをえない。
実際こうして、不測の事態は起こってしまった。
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場の頂点に立っていたあの時と、最下層にいる今……同じはずが、ないじゃないか…………。
「……サヤ、ハインたちと、先に部屋に戻っておいた方が良いと思う」
そう言うと、腕の中のサヤが慌てて顔を上げた。
「もうサヤのお披露目はしたわけだし、大丈夫だから……」
「そんなわけあらへんやろ⁉︎ まだ挨拶らしい挨拶もしてへん……耳飾の周知かて、なんもできてへん!」
うん……けど……それよりも俺は、サヤが心配。
「ここで周知しとかんと、戴冠式の時が、更に大変やって、ギルさんかて言うてたやろ⁉︎」
「そうだけど……だけどサヤ……」
「もう大丈夫。それに、レイと私が一緒におらな、周知の意味があらへんの。
今後のためやろ? 私たちだけのこととも違う。これから先かて、他の人たちにだって、必要になるかもしれへんものやろ?」
「……なんの、お話ですの?」
俺たちのやり取りを辛抱強く見守っていたリヴィ様が、たまらずといった様子で声を上げた。
「サヤ、私も、レイ殿のおっしゃる通り、体調が思わしくない貴女を会場に戻す気はなくってよ。
医師の診察だって受けていただくわ。アギーのお客様に、不手際があってはならないのですもの」
「リヴィ様、これは、病ではないんです。ちょっと、気分が悪くなっただけですから……」
「レイ殿が無理だと判断していらっしゃるのよ」
「大袈裟なだけなんです。前はちょっと失敗しましたけど今度は……」
「根拠を述べてくださらない? 大丈夫だと言い切れる理由。それに私たちが納得できたならば良くってよ」
厳しい表情でぴしゃりと言い放つリヴィ様に、サヤが困った顔になる。
と、そこでコンコンと、扉が叩かれた。
「失礼いたします。セイバーン男爵様に、御目通り願いたいと、ヴァイデンフェラー男爵様がお越しですが、お通ししても差し支えございませんか?」
ヴァイデンフェラー……なんか、聞いた気がする家名……。
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……あっ!
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