428 / 1,121
新たな問題 19
しおりを挟む
若干やりすぎたかな……と、思ったものの。
とりあえず衝撃だけは叩き込んだ。
一同が現実をまだ受け止めきれていないうちに、俺はころりと態度を変える。
「とまぁ、そんなわけだよ。
だけど俺はね、こんな腹黒い俺を、サヤに幻滅されるのも嫌なんだよね。
彼女は俺の女神なんだ。彼女が俺に望むなら、それを全部叶えてやりたいと思うくらい、彼女を愛してる。彼女を失いたくないから、そのためなら努力だって惜しまない。
彼女は善良で、領民思いな娘だよ。俺なんかよりよっぽど、ここを愛してる。
農家の者と一緒に汗を流して収穫に精を出すくらい、大切に思ってくれている。
彼女がこの地を愛するから、俺はここを捨てられない……。
セイバーンを豊かにしたいと望むから、俺はここを豊かにだってするんだ。
だから間違っても、彼女を俺から奪おうなんて、考えないことだよ。
彼女がここを愛する限り、俺もここを愛する。良い領主とやらにだって、なろうじゃないか」
そうしてパチン! と、指を鳴らすと、皆がハッとした顔になって俺を見た。策は成った。夢から覚めてもらおう。
「それで、アギーからの招待状の件ですが。
アギーのクリスタ様は俺の懇意にしている方です。この方が俺を名指ししたのは、そうでもしなければ異母様が俺を伴ってアギーに向かうことはないと、知ってらっしゃるからです。
マルの言う通り、そんなに深刻に考えなくても大丈夫だと思いますよ。口実としてのご令嬢は紹介されるでしょうが、その先を考えてらっしゃるとは思いません」
「これは良い機会だと思いますよぅ。
アギーで領主様の健在を伝えれば、それはフェルドナレン中に伝わることでしょう。無論、ジェスルへの牽制にもなりますしね。
レイシール様を仮の後継とするにしても、やはり庇護者がいると釘を刺しておく方が、周りになめられずに済むでしょうし。
他の方を候補に立てた場合でも、この方だって鬼じゃありませんから、急に放り出したりなんてしません。引き継ぐまでの上手い隠れ蓑くらいは演じてくださいますよ」
「か、仮…………次の方……?」
何事もなかったかのように話を進めるが、当然なかったことにするわけじゃなく、言葉の節々に前提条件を差し込んでおく。
そんな俺たちに、皆は慄き口を閉ざし、やっと喋ったガイウスは、狼狽えた、震える声音でそう呟くのがやっとだった。
上手く術中にはまっている様子に、俺とマルはガイウスを見る。
「だって、レイシール様を排するなら、そうするしかないでしょう?
あ、次の候補の方が決まり次第、早めに教えていただけると有難いです。引き継ぎの準備もあることですし」
そんな風に言うマルに、今まで後方に控えていたルフスが、見かねた様子で慌てて口を挟む。
「ま、待ってください! もう、セイバーンにはレイシール様しか候補がいらっしゃらないんですよ⁉︎」
「無論理解していますよ。ですから、レイシール様は譲歩されました。
三年を棒にふったようなものなんですよ? 成人さえしていればと、僕だって本当、歯軋りしたい思いだったんですから。
そんな義理もないのに、身を削るようにしてここで三年過ごし、あまつさえ成果だって上げたじゃないですか。
今だって、愛する女性のためとはいえ、嫌々でも、良い領主になろうとさえしています。
けれど、婚姻一つで理想にそぐわないからと、この方を切り捨てるのなら、仕方がありません。
その重要な婚姻による政策を実行できる候補者を、選べば良いんじゃないですか?
幸い、レイシール様を望むのはアギーだけじゃありませんし、ここはいつだって引き払いますよ。僕らは別に、困らないんで」
しらっと答えるマルに、ルフスはそれ以上、言葉を続けられなかった様子。助けを求めるように視線を巡らせるが、そんな猛者はいなかった。
俺はあえて表情を消し、無に徹しておく。今はマルに任せているからだ。
「言っておきますけど、この方は十六歳にして王都に望まれる方です。決して無能ではない。やると決めたなら、それなりの成果を上げます。
正直、婚姻なんて手段を重要視する必要なんて無いんですよ。異母様の元で、命の危険に晒されながら、こんな少数の部下しか持たない身で、今のこの状況を作り上げてしまえる人なんですから。
得体の知れない二子って言われようも、気に食わなかったんですよねぇ。
この方がそんな、簡単に推し量れるわけないじゃないですか。僕がお仕えしようと思う方ですよ? 器が違いますもん」
言いようだよなぁ……。
別にこの状況、俺が作り上げたわけじゃないんだけど。
王都に望まれたのは、運良く姫様に気に入られたというだけだし、マルが仕えてくれるのだって、利害関係の一致っていう理由だし。
そんな風に内心では思うけれど、勿論口には出さない。言わなければ分からない。好きに想像を膨らましてもらう方が良い。
俺の「得体の知れない二子」という印象を強調させて、鬼にする。それが俺たちの考えた作戦なのだ。
姫は無論、サヤの役。
彼女が命綱。俺をこの地に繋ぐには、彼女という鎖が必要。
当然その鎖は、俺を制御するのにも使う。セイバーンは彼女を手放せば終わるのだと、そう仕向けた。
「……婚姻の件を飲むならば、お前はここに、縛られて良いのか?」
不意に、それまで黙っていた父上が、そう声を上げ、俺に問う。
内心では動揺したものの、仕上げだ。真っ直ぐに父上を見返した。
「……彼女にもう一度、故郷を作ってあげたいという気持ちも、あるもので……。
サヤはここの生活を、案外気に入っている様子ですから。正直彼女が良いなら、俺はどこだって、構わないんです」
父上は思いの外、落ち着いた雰囲気だった。
動揺も、苦悩も、悲しみすら、見事に隠してしまっている。上手な仮面だなと、内心では舌を巻いていた。心のうちが読めない……。
「……分かった。お前がそれで良いというなら、その話を受けよう。
とはいえ……彼女を今一度口説くのは、其方に任せるしかないがな。
サヤは、領主の妻となってくれるものなのか……」
そんなことを問われ、少し言葉に困ってしまった。
口説く……しかないんだよな……ここでできるのはお膳立てだけ。あとは、彼女の気持ち次第……。
だけど譲らないと言った彼女が、今まで俺に譲ってくれたことは、一度も無い……。
「彼女にその力量が無いなんて思いません。
彼女以上の者なんて、フェルドナレン中を探したって、いやしませんよ。
ただまぁ……妻にはならない。魂も返すとは言われましたが、恋人を、やめたとは言われていませんから、承諾を得られるまで、必死で口説きます。
どちらにしろ、彼女の成人までまだ三年ありますし、時間の許す限り、諦めませんから」
そう言うしかなかった。
◆
「やー、レイ様やればできますねぇ。鬼役、思いの外、さまになってましたよぅ!」
「そう? それは、良かった……」
だけど身も心も削った……。
父上の元を引き上げて、今は自室。
待っていたギルやシザー、そしてオブシズとジェイド。その面々を前に、俺は長椅子に身を沈めていた。
慣れない鬼役に、結構精神を消耗したのだ。やってる時は必死だったんだけど、部屋に帰り着いたらもう、足が震えて立てなかった。
「大胆なことしたもんだな……。
お前を知ってりゃ、正直吹き出してしまえるくらい、無い設定なんだけどな……」
「レイシール様を色眼鏡で見ているうちは騙されてくださいますよ。本当、笑いを堪えるのに必死でしたけど」
喋らないと思ったら、ハインは笑いをこらえていたらしい……。
きっといつも以上に眉間にしわを刻んで、剣呑な表情をしていたことだろう。ハインの怖い顔の相乗効果も期待できるかもな。
「サヤ……って、あの少年だよなぁ。いや、女性だとは思ってなかった」
まだサヤの男装姿しか知らないオブシズは、なんとも複雑そうな顔だ。距離が近いとは思ってたけどなぁと、そんなことを言う。
「彼女の男装には年季も入ってますからねぇ」
「女の姿知ってると、男にゃ見えてこねぇンだけどな……」
マルとジェイドがそんな風に言い、そういえばサヤは? となった。ルーシーも来ているのだよな? 姿が見えないが……。
「サヤはルーシーに付き合ってお茶でもしてんだろ。
あいつに、サヤかまっとけって言っといたからな。喜んで捕まえてるだろうぜ」
ギルの言葉に、じゃあ話しても大丈夫だなと結論を出す。
「……諦めないんだろ?」
「当然だ。了承を得られるまで口説くしかない」
「……なんとかあいつが頑なな理由、探り出せないもんかな……本当にその……そうとは限らないだろ?」
「……もう理由なんて、どうでも良いよ。
言いたくないなら、それでも良い……。どんな理由があったって、俺は構わない。もう腹は括ったから」
恋人にはなれて、妻にはなれない。
俺が後継となったからじゃない。その前から、恋人となる瞬間から、それ以上は無いと覚悟していたサヤ。
それをそう易々と、探り出せるとは思わない。
「…………サヤの身体に、妙な傷があったりとかはしていないって、ルーシーが。
あっ、ほら、計ったり着替えたりってのを目にしてきてるから、あいつ。
まあ、だからってなんの慰めになるわけでもないと思うが……。
拷問とか、そういった扱いを受けたわけじゃ、ないと思う……ぞ?」
「はン、五年以上前の傷なんざ、深くなきゃ消えちまってる」
「ジェイド! お前はなんでそう……っ⁉︎」
「希望持たせてどうすンだ。最悪を想定しとく方が良いンじゃねぇの? 本当に最悪でも、それ以上はねぇよ」
睨み合うギルとジェイドに、二人とも、やめてくれと宥めて止める。
そして、ちょっとその……最悪を想像してしまって、いてもたってもいられなくなって、不浄場に行ってくると嘘をついて、一人で部屋を出た。
とりあえず衝撃だけは叩き込んだ。
一同が現実をまだ受け止めきれていないうちに、俺はころりと態度を変える。
「とまぁ、そんなわけだよ。
だけど俺はね、こんな腹黒い俺を、サヤに幻滅されるのも嫌なんだよね。
彼女は俺の女神なんだ。彼女が俺に望むなら、それを全部叶えてやりたいと思うくらい、彼女を愛してる。彼女を失いたくないから、そのためなら努力だって惜しまない。
彼女は善良で、領民思いな娘だよ。俺なんかよりよっぽど、ここを愛してる。
農家の者と一緒に汗を流して収穫に精を出すくらい、大切に思ってくれている。
彼女がこの地を愛するから、俺はここを捨てられない……。
セイバーンを豊かにしたいと望むから、俺はここを豊かにだってするんだ。
だから間違っても、彼女を俺から奪おうなんて、考えないことだよ。
彼女がここを愛する限り、俺もここを愛する。良い領主とやらにだって、なろうじゃないか」
そうしてパチン! と、指を鳴らすと、皆がハッとした顔になって俺を見た。策は成った。夢から覚めてもらおう。
「それで、アギーからの招待状の件ですが。
アギーのクリスタ様は俺の懇意にしている方です。この方が俺を名指ししたのは、そうでもしなければ異母様が俺を伴ってアギーに向かうことはないと、知ってらっしゃるからです。
マルの言う通り、そんなに深刻に考えなくても大丈夫だと思いますよ。口実としてのご令嬢は紹介されるでしょうが、その先を考えてらっしゃるとは思いません」
「これは良い機会だと思いますよぅ。
アギーで領主様の健在を伝えれば、それはフェルドナレン中に伝わることでしょう。無論、ジェスルへの牽制にもなりますしね。
レイシール様を仮の後継とするにしても、やはり庇護者がいると釘を刺しておく方が、周りになめられずに済むでしょうし。
他の方を候補に立てた場合でも、この方だって鬼じゃありませんから、急に放り出したりなんてしません。引き継ぐまでの上手い隠れ蓑くらいは演じてくださいますよ」
「か、仮…………次の方……?」
何事もなかったかのように話を進めるが、当然なかったことにするわけじゃなく、言葉の節々に前提条件を差し込んでおく。
そんな俺たちに、皆は慄き口を閉ざし、やっと喋ったガイウスは、狼狽えた、震える声音でそう呟くのがやっとだった。
上手く術中にはまっている様子に、俺とマルはガイウスを見る。
「だって、レイシール様を排するなら、そうするしかないでしょう?
あ、次の候補の方が決まり次第、早めに教えていただけると有難いです。引き継ぎの準備もあることですし」
そんな風に言うマルに、今まで後方に控えていたルフスが、見かねた様子で慌てて口を挟む。
「ま、待ってください! もう、セイバーンにはレイシール様しか候補がいらっしゃらないんですよ⁉︎」
「無論理解していますよ。ですから、レイシール様は譲歩されました。
三年を棒にふったようなものなんですよ? 成人さえしていればと、僕だって本当、歯軋りしたい思いだったんですから。
そんな義理もないのに、身を削るようにしてここで三年過ごし、あまつさえ成果だって上げたじゃないですか。
今だって、愛する女性のためとはいえ、嫌々でも、良い領主になろうとさえしています。
けれど、婚姻一つで理想にそぐわないからと、この方を切り捨てるのなら、仕方がありません。
その重要な婚姻による政策を実行できる候補者を、選べば良いんじゃないですか?
幸い、レイシール様を望むのはアギーだけじゃありませんし、ここはいつだって引き払いますよ。僕らは別に、困らないんで」
しらっと答えるマルに、ルフスはそれ以上、言葉を続けられなかった様子。助けを求めるように視線を巡らせるが、そんな猛者はいなかった。
俺はあえて表情を消し、無に徹しておく。今はマルに任せているからだ。
「言っておきますけど、この方は十六歳にして王都に望まれる方です。決して無能ではない。やると決めたなら、それなりの成果を上げます。
正直、婚姻なんて手段を重要視する必要なんて無いんですよ。異母様の元で、命の危険に晒されながら、こんな少数の部下しか持たない身で、今のこの状況を作り上げてしまえる人なんですから。
得体の知れない二子って言われようも、気に食わなかったんですよねぇ。
この方がそんな、簡単に推し量れるわけないじゃないですか。僕がお仕えしようと思う方ですよ? 器が違いますもん」
言いようだよなぁ……。
別にこの状況、俺が作り上げたわけじゃないんだけど。
王都に望まれたのは、運良く姫様に気に入られたというだけだし、マルが仕えてくれるのだって、利害関係の一致っていう理由だし。
そんな風に内心では思うけれど、勿論口には出さない。言わなければ分からない。好きに想像を膨らましてもらう方が良い。
俺の「得体の知れない二子」という印象を強調させて、鬼にする。それが俺たちの考えた作戦なのだ。
姫は無論、サヤの役。
彼女が命綱。俺をこの地に繋ぐには、彼女という鎖が必要。
当然その鎖は、俺を制御するのにも使う。セイバーンは彼女を手放せば終わるのだと、そう仕向けた。
「……婚姻の件を飲むならば、お前はここに、縛られて良いのか?」
不意に、それまで黙っていた父上が、そう声を上げ、俺に問う。
内心では動揺したものの、仕上げだ。真っ直ぐに父上を見返した。
「……彼女にもう一度、故郷を作ってあげたいという気持ちも、あるもので……。
サヤはここの生活を、案外気に入っている様子ですから。正直彼女が良いなら、俺はどこだって、構わないんです」
父上は思いの外、落ち着いた雰囲気だった。
動揺も、苦悩も、悲しみすら、見事に隠してしまっている。上手な仮面だなと、内心では舌を巻いていた。心のうちが読めない……。
「……分かった。お前がそれで良いというなら、その話を受けよう。
とはいえ……彼女を今一度口説くのは、其方に任せるしかないがな。
サヤは、領主の妻となってくれるものなのか……」
そんなことを問われ、少し言葉に困ってしまった。
口説く……しかないんだよな……ここでできるのはお膳立てだけ。あとは、彼女の気持ち次第……。
だけど譲らないと言った彼女が、今まで俺に譲ってくれたことは、一度も無い……。
「彼女にその力量が無いなんて思いません。
彼女以上の者なんて、フェルドナレン中を探したって、いやしませんよ。
ただまぁ……妻にはならない。魂も返すとは言われましたが、恋人を、やめたとは言われていませんから、承諾を得られるまで、必死で口説きます。
どちらにしろ、彼女の成人までまだ三年ありますし、時間の許す限り、諦めませんから」
そう言うしかなかった。
◆
「やー、レイ様やればできますねぇ。鬼役、思いの外、さまになってましたよぅ!」
「そう? それは、良かった……」
だけど身も心も削った……。
父上の元を引き上げて、今は自室。
待っていたギルやシザー、そしてオブシズとジェイド。その面々を前に、俺は長椅子に身を沈めていた。
慣れない鬼役に、結構精神を消耗したのだ。やってる時は必死だったんだけど、部屋に帰り着いたらもう、足が震えて立てなかった。
「大胆なことしたもんだな……。
お前を知ってりゃ、正直吹き出してしまえるくらい、無い設定なんだけどな……」
「レイシール様を色眼鏡で見ているうちは騙されてくださいますよ。本当、笑いを堪えるのに必死でしたけど」
喋らないと思ったら、ハインは笑いをこらえていたらしい……。
きっといつも以上に眉間にしわを刻んで、剣呑な表情をしていたことだろう。ハインの怖い顔の相乗効果も期待できるかもな。
「サヤ……って、あの少年だよなぁ。いや、女性だとは思ってなかった」
まだサヤの男装姿しか知らないオブシズは、なんとも複雑そうな顔だ。距離が近いとは思ってたけどなぁと、そんなことを言う。
「彼女の男装には年季も入ってますからねぇ」
「女の姿知ってると、男にゃ見えてこねぇンだけどな……」
マルとジェイドがそんな風に言い、そういえばサヤは? となった。ルーシーも来ているのだよな? 姿が見えないが……。
「サヤはルーシーに付き合ってお茶でもしてんだろ。
あいつに、サヤかまっとけって言っといたからな。喜んで捕まえてるだろうぜ」
ギルの言葉に、じゃあ話しても大丈夫だなと結論を出す。
「……諦めないんだろ?」
「当然だ。了承を得られるまで口説くしかない」
「……なんとかあいつが頑なな理由、探り出せないもんかな……本当にその……そうとは限らないだろ?」
「……もう理由なんて、どうでも良いよ。
言いたくないなら、それでも良い……。どんな理由があったって、俺は構わない。もう腹は括ったから」
恋人にはなれて、妻にはなれない。
俺が後継となったからじゃない。その前から、恋人となる瞬間から、それ以上は無いと覚悟していたサヤ。
それをそう易々と、探り出せるとは思わない。
「…………サヤの身体に、妙な傷があったりとかはしていないって、ルーシーが。
あっ、ほら、計ったり着替えたりってのを目にしてきてるから、あいつ。
まあ、だからってなんの慰めになるわけでもないと思うが……。
拷問とか、そういった扱いを受けたわけじゃ、ないと思う……ぞ?」
「はン、五年以上前の傷なんざ、深くなきゃ消えちまってる」
「ジェイド! お前はなんでそう……っ⁉︎」
「希望持たせてどうすンだ。最悪を想定しとく方が良いンじゃねぇの? 本当に最悪でも、それ以上はねぇよ」
睨み合うギルとジェイドに、二人とも、やめてくれと宥めて止める。
そして、ちょっとその……最悪を想像してしまって、いてもたってもいられなくなって、不浄場に行ってくると嘘をついて、一人で部屋を出た。
0
お気に入りに追加
836
あなたにおすすめの小説
【完】前世で子供が産めなくて悲惨な末路を送ったので、今世では婚約破棄しようとしたら何故か身ごもりました
112
恋愛
前世でマリアは、一人ひっそりと悲惨な最期を迎えた。
なので今度は生き延びるために、婚約破棄を突きつけた。しかし相手のカイルに猛反対され、無理やり床を共にすることに。
前世で子供が出来なかったから、今度も出来ないだろうと思っていたら何故か懐妊し─
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
旦那様、私は全てを知っているのですよ?
やぎや
恋愛
私の愛しい旦那様が、一緒にお茶をしようと誘ってくださいました。
普段食事も一緒にしないような仲ですのに、珍しいこと。
私はそれに応じました。
テラスへと行き、旦那様が引いてくださった椅子に座って、ティーセットを誰かが持ってきてくれるのを待ちました。
旦那がお話しするのは、日常のたわいもないこと。
………でも、旦那様? 脂汗をかいていましてよ……?
それに、可笑しな表情をしていらっしゃるわ。
私は侍女がティーセットを運んできた時、なぜ旦那様が可笑しな様子なのか、全てに気がつきました。
その侍女は、私が嫁入りする際についてきてもらった侍女。
ーーー旦那様と恋仲だと、噂されている、私の専属侍女。
旦那様はいつも菓子に手を付けませんので、大方私の好きな甘い菓子に毒でも入ってあるのでしょう。
…………それほどまでに、この子に入れ込んでいるのね。
馬鹿な旦那様。
でも、もう、いいわ……。
私は旦那様を愛しているから、騙されてあげる。
そうして私は菓子を口に入れた。
R15は保険です。
小説家になろう様にも投稿しております。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる