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父の軌跡 11
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「まず……浅慮に走らず、父上の命に従ってくれたこと……こうして、諦めないでいてくれたことに……感謝する。
何も知らず、其方らの弱味に甘んじていた身を不甲斐なく思う……」
礼と、詫びを口にした。
すると、ずっと黙って聞いていたカークが、椅子から立ち上がり、俺の前に膝をつく。
「何をおっしゃいますやら……。
このアルドナン様からの命には、穴がございました。
奥方様……ジェスルのお膝元となるセイバーン村は、切り捨てられるはずであったのです……。
それを守り抜き、氾濫すら抑制し、更には国まで担ぎ出した。これほどの撹乱が、ありましょうか。
貴方様がこの地に戻り、セイバーンを担ってくださったおかげで、我々は少なからず、救われております……」
そう言って、俺の手を取り、額を当てた。
「魂は、もう捧げておりますので申し訳ありませんが……。
ですが、私の残り少ない命は、貴方様に使って頂きたい。どうか、お力をお貸しください……」
カークの行動に、ジークらもザッとその場で膝をつく。
俺に従うと態度で示した面々に、やっとハインが矛を下ろした様子をみせたので、シザーに離して良いよと伝えた。
「ありがとう。むしろこちらから、お願いする。
どうか父上を、救い出す手助けを、頼む。
そうだな……別館に残した者が、マルクスというのだけど……彼なら情報操作はお手のものだ。君らに疑いの目が及ばないよう、調整させよう。
それと……。ジェイド……」
「構わねぇよ。報酬さえ弾ンでくれりゃぁな。
騎士らで館を落とすより、俺らが忍び込ンで担ぎ出す方が確実だろ」
「ありがとう。勿論、報酬は弾む。確実な人数と人選を。金額は問わない。君らの命と、父上の命が最優先だ」
「そこで俺らの命を並べるあたりがあんただよなぁ……。あぁ、不殺もか」
そう言って、懐から笛を取り出し、吹く。
当然音はしない。ハインだけが慌てて耳を塞いだ。
しばらくすると、窓からひょこりと頭が覗いてそのままするりと中に入ってきたので、ジークらがギョッとし、慌ててカークを庇う位置に立つ。
まあ、入ってきた忍は、そっちに一切視線をやらなかったが。
自然に紛れるためか、緑や茶で斑に汚れた服に、覆面。目の部分しか晒していない。
「任務か」
「ああ、急いで知らせろ。ご領主様の救出だとよ。金は取り放題、人数も人選も、こっち任せ。いつもの命大事にと、不殺。
決行は?」
最後は俺に向けた言葉だ。
「まだ決めていない。状況を見定めよう。失敗は、できないからな」
「だとよ」
「分かった。伝える」
こくりと頷いてから、また窓へ。そのままひらりと、外に消えてしまう。
……そういえば、ここは何階だろうな?
「い、今……のは?」
「あー…………影かな?」
「王族ですか⁉︎」
「影いるんですか⁉︎」
「なんで⁉︎」
「んー……まぁ……縁があって?」
説明しにくい……。
彼らの元の素性もあるし、獣人のことも伏せなきゃだし……だから適当に誤魔化しておく。
「父上を救出するにしても、表から館を攻めるのでは分が悪い。彼らならことを荒立てずにおける。だから、主力は任せてほしい。彼らは信頼できるよ。私が保証する。
とりあえず、二日も潰してしまったからな……疑われないよう、俺は早急に、帰還した方が良さそうだ。
山城を占拠していた傭兵団とは話をつけて、立ち退いてもらったことにしておこうか。
ここの村人は……」
「事情は知らせておりません。
カーク様に報告頂いた通りの行動を取っております。
まあ、その分……他で還元しておりますが……」
少々乱暴な態度を取ったりして、傭兵団崩れを演じていたらしい。
その上で、旅人や商人を装って金を使ったり、残したりしているという。
資金源はどこだろうなと思ったら、カークだった。
うん……立ち退いてもらった方が良いだろうな……俺が視察に来た以上、対処が無いのは怪しいし。
「問題は、隠れ場所か……」
「レイシール様、エルランドさんに、連絡を取ってみては如何でしょうか。
彼の方は仕事上、傭兵団を使います。それに度々、私たちとも接触することになるでしょう?
あと、村のことも早く、知らせてあげたいですし……」
サヤの進言。ああ、使えそうだな。
「それだ。ではリディオ商会に書状を書こう。
ジーク、足の速い者はいるか? リディオ商会はアギーの運送業者だ。珍しい職種であるから、すぐに分かると思う。
そこのエルランドという男に、傭兵団として繋ぎを取ってくれ。
彼は、商機に聡い。傭兵団は偽装で、私の子飼いだと名乗れば、多分、受け入れてくれると思う。
その時、俺の書状を渡してほしい。本人に、直接だ」
エルランドの特徴も伝えておく。
村のことをネタに紹介状を書けば、それなりの対処をしてくれるだろう。
この時は、これがまた波乱を招くとは思わず、俺はその場で書状を書いた。
淡々と策を重ねる俺に、ジークらは唖然としている。
「御子息様は……その……思いの外伝手を、お持ちなんですね?」
「さした量は持っていないよ。私はセイバーンとメバックにしか出向かないから。……ああ、今は拠点村もあるか」
「拠点村?」
あ、まだ知らないのか。
「この西の地域に道を繋げる計画が立っているんだ。氾濫対策の延長でね。
詳しくは、また今度にしよう、少しこれも、ややこしいから」
国とか絡むしな。
「取り急ぎ、他に問題点は?」
「も、問題点……」
「概ね、片付いたかと……」
「そうか。ではエルランドとの接触を、急いでくれ。
私への連絡手段は……うーん……あまりリディオ商会に迷惑もかけられないしな……」
俺が思案していると、ジェイドがはああぁぁ、と、息を吐く。
「……犬笛、渡しておいてやる……。音はしないが吹け。近くにいれば、寄ってやる。
言っとくが、俺ら吠狼は、お前らに恩義なンざねぇ。このお人好しの縁で使われてやるだけだ。
俺らを詮索したり、好きに使おうなンざ、しないこった。こいつの顔に泥塗りやがったら、俺らの牙は、お前らに向く。
あと、使う時は金払えよ」
一瞬だけ尋常じゃない殺気を発して、ジェイドは懐の笛を取り出し、ジークに投げた。
冷や汗をかいたジークは、少し慌てつつ、それをなんとか受け止め、こくりと頷く。
うん、これでまぁ、大丈夫かな。
「はぁ……頭使った……。
ちょっと、休憩……、良いだろうか……」
椅子にもたれかかって、息を吐く。
落ちた直後だし、やりきったと思ったとたん、こめかみの辺りのズクズクが酷くなってきた……。
顔を顰めたら、ハインがスッと寄ってきて、ベチッと、額に掌を落とす。
「……痛い……」
「熱が上がってます。
また言いませんでしたね……貴方はいい加減、学習して下さい」
「気付かなかったんだよ……」
「言い訳はいりませんから今すぐ休んで下さい」
「分かってる……ありがとう……待ってくれて」
ハインは、気付いていたのだろうし……な。
ハインがシザー。と、呼ぶと。彼はスッと寄ってきて、俺の腰に手を回した。
いつも通りの無言で、細い目は見えないけれど、そっと添えられた手は揺るがない。
シザーの身体を支えに借りて立ち上がると、サヤが水をもらってきます。と、駆け出した。
あぁ、結局寝台に逆戻りか……。
「何か穴があったら、声を掛けてもらえるか」
最後に振り返ってアーシュにそう言うと、こくりと頷いたので、ありがとうと伝えて、後はハインに従った。
先ほどの部屋に戻り、上着を剥ぎ取られ、寝台に放り込まれる。
すぐにサヤも盥を持って戻ってきて、俺の額に濡らした手拭いを置くと、椅子を引いてきて、横に座った。
「サヤも……休んでないんだろう?」
「レイシール様がお休みになるまで、見張っておくだけですよ」
優しい表情でそう言って、俺の髪を指で梳く。
つまり、俺が休まないと、サヤも休まないと……。読まれてるなぁ……。
「分かった……ありがとう、サヤ……」
瞳を閉じたら、さして時間を取らずに、俺の意識は闇に落ちた。
同じ闇なのにな……サヤがいてくれるだけで、安らげるなんて、現金だなと思いながら。
何も知らず、其方らの弱味に甘んじていた身を不甲斐なく思う……」
礼と、詫びを口にした。
すると、ずっと黙って聞いていたカークが、椅子から立ち上がり、俺の前に膝をつく。
「何をおっしゃいますやら……。
このアルドナン様からの命には、穴がございました。
奥方様……ジェスルのお膝元となるセイバーン村は、切り捨てられるはずであったのです……。
それを守り抜き、氾濫すら抑制し、更には国まで担ぎ出した。これほどの撹乱が、ありましょうか。
貴方様がこの地に戻り、セイバーンを担ってくださったおかげで、我々は少なからず、救われております……」
そう言って、俺の手を取り、額を当てた。
「魂は、もう捧げておりますので申し訳ありませんが……。
ですが、私の残り少ない命は、貴方様に使って頂きたい。どうか、お力をお貸しください……」
カークの行動に、ジークらもザッとその場で膝をつく。
俺に従うと態度で示した面々に、やっとハインが矛を下ろした様子をみせたので、シザーに離して良いよと伝えた。
「ありがとう。むしろこちらから、お願いする。
どうか父上を、救い出す手助けを、頼む。
そうだな……別館に残した者が、マルクスというのだけど……彼なら情報操作はお手のものだ。君らに疑いの目が及ばないよう、調整させよう。
それと……。ジェイド……」
「構わねぇよ。報酬さえ弾ンでくれりゃぁな。
騎士らで館を落とすより、俺らが忍び込ンで担ぎ出す方が確実だろ」
「ありがとう。勿論、報酬は弾む。確実な人数と人選を。金額は問わない。君らの命と、父上の命が最優先だ」
「そこで俺らの命を並べるあたりがあんただよなぁ……。あぁ、不殺もか」
そう言って、懐から笛を取り出し、吹く。
当然音はしない。ハインだけが慌てて耳を塞いだ。
しばらくすると、窓からひょこりと頭が覗いてそのままするりと中に入ってきたので、ジークらがギョッとし、慌ててカークを庇う位置に立つ。
まあ、入ってきた忍は、そっちに一切視線をやらなかったが。
自然に紛れるためか、緑や茶で斑に汚れた服に、覆面。目の部分しか晒していない。
「任務か」
「ああ、急いで知らせろ。ご領主様の救出だとよ。金は取り放題、人数も人選も、こっち任せ。いつもの命大事にと、不殺。
決行は?」
最後は俺に向けた言葉だ。
「まだ決めていない。状況を見定めよう。失敗は、できないからな」
「だとよ」
「分かった。伝える」
こくりと頷いてから、また窓へ。そのままひらりと、外に消えてしまう。
……そういえば、ここは何階だろうな?
「い、今……のは?」
「あー…………影かな?」
「王族ですか⁉︎」
「影いるんですか⁉︎」
「なんで⁉︎」
「んー……まぁ……縁があって?」
説明しにくい……。
彼らの元の素性もあるし、獣人のことも伏せなきゃだし……だから適当に誤魔化しておく。
「父上を救出するにしても、表から館を攻めるのでは分が悪い。彼らならことを荒立てずにおける。だから、主力は任せてほしい。彼らは信頼できるよ。私が保証する。
とりあえず、二日も潰してしまったからな……疑われないよう、俺は早急に、帰還した方が良さそうだ。
山城を占拠していた傭兵団とは話をつけて、立ち退いてもらったことにしておこうか。
ここの村人は……」
「事情は知らせておりません。
カーク様に報告頂いた通りの行動を取っております。
まあ、その分……他で還元しておりますが……」
少々乱暴な態度を取ったりして、傭兵団崩れを演じていたらしい。
その上で、旅人や商人を装って金を使ったり、残したりしているという。
資金源はどこだろうなと思ったら、カークだった。
うん……立ち退いてもらった方が良いだろうな……俺が視察に来た以上、対処が無いのは怪しいし。
「問題は、隠れ場所か……」
「レイシール様、エルランドさんに、連絡を取ってみては如何でしょうか。
彼の方は仕事上、傭兵団を使います。それに度々、私たちとも接触することになるでしょう?
あと、村のことも早く、知らせてあげたいですし……」
サヤの進言。ああ、使えそうだな。
「それだ。ではリディオ商会に書状を書こう。
ジーク、足の速い者はいるか? リディオ商会はアギーの運送業者だ。珍しい職種であるから、すぐに分かると思う。
そこのエルランドという男に、傭兵団として繋ぎを取ってくれ。
彼は、商機に聡い。傭兵団は偽装で、私の子飼いだと名乗れば、多分、受け入れてくれると思う。
その時、俺の書状を渡してほしい。本人に、直接だ」
エルランドの特徴も伝えておく。
村のことをネタに紹介状を書けば、それなりの対処をしてくれるだろう。
この時は、これがまた波乱を招くとは思わず、俺はその場で書状を書いた。
淡々と策を重ねる俺に、ジークらは唖然としている。
「御子息様は……その……思いの外伝手を、お持ちなんですね?」
「さした量は持っていないよ。私はセイバーンとメバックにしか出向かないから。……ああ、今は拠点村もあるか」
「拠点村?」
あ、まだ知らないのか。
「この西の地域に道を繋げる計画が立っているんだ。氾濫対策の延長でね。
詳しくは、また今度にしよう、少しこれも、ややこしいから」
国とか絡むしな。
「取り急ぎ、他に問題点は?」
「も、問題点……」
「概ね、片付いたかと……」
「そうか。ではエルランドとの接触を、急いでくれ。
私への連絡手段は……うーん……あまりリディオ商会に迷惑もかけられないしな……」
俺が思案していると、ジェイドがはああぁぁ、と、息を吐く。
「……犬笛、渡しておいてやる……。音はしないが吹け。近くにいれば、寄ってやる。
言っとくが、俺ら吠狼は、お前らに恩義なンざねぇ。このお人好しの縁で使われてやるだけだ。
俺らを詮索したり、好きに使おうなンざ、しないこった。こいつの顔に泥塗りやがったら、俺らの牙は、お前らに向く。
あと、使う時は金払えよ」
一瞬だけ尋常じゃない殺気を発して、ジェイドは懐の笛を取り出し、ジークに投げた。
冷や汗をかいたジークは、少し慌てつつ、それをなんとか受け止め、こくりと頷く。
うん、これでまぁ、大丈夫かな。
「はぁ……頭使った……。
ちょっと、休憩……、良いだろうか……」
椅子にもたれかかって、息を吐く。
落ちた直後だし、やりきったと思ったとたん、こめかみの辺りのズクズクが酷くなってきた……。
顔を顰めたら、ハインがスッと寄ってきて、ベチッと、額に掌を落とす。
「……痛い……」
「熱が上がってます。
また言いませんでしたね……貴方はいい加減、学習して下さい」
「気付かなかったんだよ……」
「言い訳はいりませんから今すぐ休んで下さい」
「分かってる……ありがとう……待ってくれて」
ハインは、気付いていたのだろうし……な。
ハインがシザー。と、呼ぶと。彼はスッと寄ってきて、俺の腰に手を回した。
いつも通りの無言で、細い目は見えないけれど、そっと添えられた手は揺るがない。
シザーの身体を支えに借りて立ち上がると、サヤが水をもらってきます。と、駆け出した。
あぁ、結局寝台に逆戻りか……。
「何か穴があったら、声を掛けてもらえるか」
最後に振り返ってアーシュにそう言うと、こくりと頷いたので、ありがとうと伝えて、後はハインに従った。
先ほどの部屋に戻り、上着を剥ぎ取られ、寝台に放り込まれる。
すぐにサヤも盥を持って戻ってきて、俺の額に濡らした手拭いを置くと、椅子を引いてきて、横に座った。
「サヤも……休んでないんだろう?」
「レイシール様がお休みになるまで、見張っておくだけですよ」
優しい表情でそう言って、俺の髪を指で梳く。
つまり、俺が休まないと、サヤも休まないと……。読まれてるなぁ……。
「分かった……ありがとう、サヤ……」
瞳を閉じたら、さして時間を取らずに、俺の意識は闇に落ちた。
同じ闇なのにな……サヤがいてくれるだけで、安らげるなんて、現金だなと思いながら。
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