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望む未来 13
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案の定だ……。サヤが、遠い……。
昼食を終え、部屋に戻ると、体力と精神力の限界だった。
寝室に直行して、寝台に倒れ込む。
「誤解なんだよ……囲われたいわけないじゃないか……。ここを離れようだなんて、かけらも思ってない。サヤと、共に在りたいって、それしか、望んでない……」
枕に顔を埋めて、息を吐くような小声で言ってみた。勿論、誰の何の反応も無い。
うううぅ、どうしてこんな、要領が悪いんだ、俺……。
今、サヤは食堂で昼食中だ。リカルド様は学舎出身ではないから、従者と食事を共にする習慣は無いだろうと、まずは我々三人だけ、配下の方々の介添えで昼食となった。俺もサヤに世話されていたのだけれど、サヤは終始無言。お二人の視線もあるから、サヤを気にしておくわけにもいかず……。
美味しいはずの食事に味なんて無かった。砂を噛んでいる心地だった。
その間に、手の空いていた従者方は、執務室の応接用の部屋で食事を取って頂いていたので、今はそれぞれ、食事の終わった者が、傍についている筈だ。
「レイシール様、寝ないで下さい。
マルが、情報共有の時間を持ちたいと言ってましたが、如何致しますか」
「ん……良いよ、呼んでくれて。……サヤは……まだ食事中だよな……」
「急ぐとは言っておりました。終わり次第、執務室に顔を出す様、伝えてあります」
昼食後は、業務があると言い訳して、3時間程の時間を作っている。
だから、執務室で作戦会議を開くつもりだ。
ああ、因みに……リカルド様方のお部屋だが、ギルバート商会用の部屋と、客間をお貸しすることで落ち着いた。
流石に寝台一つの小部屋を四人で利用してもらうわけにはいかない。これもハインが気を回し、準備してくれていたのだ。寝台と長椅子で、なんとか四人休める。
ギルとルーシーは、サヤの部屋を利用する。サヤは現在夜番もある為、身支度くらいにしか部屋を使っていない。
化粧道具と少量の衣服を、夜番用の寝室に持ち込むだけで準備が出来た。何かあれば、荷物を取りに戻れば良いし。
あぁ、別館に、これだけ人が来るなんて想定外すぎる……。
今回の話、ギルとルーシーは関わらない方が無難だろうということで、二人には席を外してもらうこととなった。ギルはともかく、ルーシーが不安だったのだ。こんなぐちゃぐちゃした問題にからまれると、またどこかで箝口令を敷かれかねない。人生において、口外禁止事項は少ないに越したことはない。
ルーシーが、執務室が片付いたと知らせて来たので、私室での短い休憩を終えて、執務室に移動することとなった。
部屋の前で、ルーシーとは別れる。遅れて食事をする方々の後片付けがある。それが終われば、部屋で針仕事をしてもらう予定だ。
「レイ殿は、随分と疲弊した様子だな。
まあ、疲れもするか。こんな意味不明の修羅場に放り込まれればなぁ」
食事を堪能し、機嫌の良いディート殿が言う。
もう間もなく、護衛終了の時間帯だ。この方にも色々世話になってしまった。あの修羅場から一度引き離してくれたのは、本当に助かった。きっとあのままだったら、今、こうなってない。
「ディート殿……ありがとうございます。
貴方が冷静に対応して下さったから、まだなんとか、頭が働く……」
「気にするな。あの状況を巻き返せたのは、レイ殿が動いたからであって、俺の働きではない。
まあ、まだ渦中か。気を抜けぬな」
「そう、ですね……。でもまぁ、粘りますよ」
「そうだな。とりあえずやれることがあるうちは、動くが肝要だ」
にかりと笑う顔が男前だ。
うん……落ち込んでたって仕方がない。やれることをやって、時間ができた時にサヤとすぐ話せる様、準備しておくか。
さしあたって、今確認しておけることは確認しておこう。
「……ディート殿。
ルオード様ですが……、彼の方は、当然、姫様を姫様と分かって、従者をしてこられていますよね」
「当然だな。ルオード様は、姫様の乳母の身内だから、幼き頃からの縁だ」
幼い頃から、姫様の運命も、努力も、苦悩も、姉弟との死別も……全て分かち合ってきているのか……。
そう考えると、ルオード様のあの態度の意味が、なんとなく分かった気がする。
「……姫様の、姉上様は……おいくつで身罷られたか、お聞きしても良いのだろうか……」
「十五を間近に控えていたと聞いた覚えがある。
姫様が、十三の頃であった筈だ」
あまり、歳の離れていないご姉妹だったのだな……。
かつて見た、姫様の絵姿を思い出す。
あれは確か、十五歳を迎えた祝いにと、描かれたものだ。
俺が初めて目にしたのは、学舎入った、しばらく後……? もう記憶が曖昧だな。逆算すると、八歳以降となる。
多分、学舎の中で目にしたのだとは思うが、あの頃の記憶は結構曖昧だ。
そんな風に考えていたら、マルがやって来た。
先程はお疲れ様でしたと、にこやかに笑う。
マルも、ずっと黙っていたから、きっと目を光らせて情報収集していたことだろう。
「やぁ、お疲れ様です。なかなかに楽しげな駆け引きしてらっしゃいましたね」
ニコニコと上機嫌だ……。これは……何か思惑を含んでいるな。マルが面白いってことは、結構な難事であると思うが……。問題は、それを俺に言う気があるのかどうかって部分だ。
自分の目論見は除外されたと言ったけれど、それは「理想としていた状況を生み出す可能性が、一番高い」と考えていた事柄のみの話だろうし……。
「もうしたくない……俺には向いてない……」
サヤにも誤解されるし、良いことない……。
「そうですか? レイ様って、人の表情を読むのは存外、得意でしょう?
学舎でも討議の時とか、結構上手く拾ってらっしゃったじゃないですか。
相手の表情や雰囲気だけで、あそこまで読めれば凄いと思いますよ。僕なんて、事前情報が揃ってないと、役に立ちません」
よく言う……。
自身の手足の扱う様に相手の心理を操るって恐れられていたくせに……。まあ、鬼の様な事前情報の賜物なのかな。まずそれを用意されることが凄い怖いんですけど。
ていうか、この状況や俺の事前情報も山盛り用意されているのだろうか……嫌だなぁ。
「……マル……リカルド様について、聞きたいのだけど……。
彼の方の人となり、あと、マルの印象を聞きたい」
「リカルド様ですか?」
気持ちの切り替えと、情報整理のつもりでマルにリカルド様の情報開示をお願いした。
マルはこてんと首を傾げ少し考えてから口を開く。
「見たまんまですよ。少々短気で苛烈。常に怒ってるって噂があります。頭は悪くないと思いますよ。軍の指揮は的確な方の様です。武特化型なんでしょうねぇ。
学舎には通われていませんが、嫡子とはそんなものでしょうし。
あ、エレスティーナ様が御健勝の頃は、理知的な方という印象もあった様です。ただ、ものがよく壊れるって噂があったから、どうなんでしょう? ものに八つ当たりされてたんですかね?
騎士団に所属されてからは、なんか一気に開花されたというか……凶暴化した? 粗暴が具現化した感じですねぇ。水が合ったんでしょうか?」
エレスティーナ様? 姫様の、姉上様の名前かな。
十五歳を迎えずに他界された王家の方は、名前も公にはされないから、男爵家みたいな下っ端貴族には情報が入らない。でもマルは知ってる……流石だな。
それを聞きながらも、マルの観察は続ける。
誤魔化してきたりとかはしてない様に思う……なら……。
「……リカルド様、周到に、演技されている感じだけど。
彼の方は……結構、冷静な方だよな。粗暴に見せているのは、意図してやっているのだろう?
あれはどういった目論見があって、そうされているんだ?」
そう言うと、マルの表情が輝いた。
え……物凄く面白そうだ。俺、何か変なこと言ったか?
「どう?
何故そんな印象を持たれたのか、伺っても良いですか?」
なんか、食いつき方が想像していたのと違う……。
疑問に思いながらも、先程のリカルド様の様子と、出会い、過去の記憶からの印象などを話すことにした。
「俺の一番古い記憶では、多分……十四……? 姫様の替え玉をさせられていた頃だから……」
「その頃から、多少の違和感があったということですか?」
「記憶は美化されるから、あまり信用は出来ないな。あの頃は、挨拶をする程度しか、口をきかなかったし。
だけど、苛烈な方という印象はない……。
今日、お会いしてからも、二度、印象の違う瞬間がある」
「えええぇぇ?それ、僕も見てました? ……見てましたか……。うーん……」
「? 姫様が亡くなられた後、俺が孤立するぞって話をしていた辺りだ。
今こうして説明していても、はっきり違うと、認識出来るけど……。
より、はっきりしているのは、玄関広間で俺の胸倉を掴んでいた時かな」
苛烈な方であるなら、勢いに任せ、怒鳴り散らしたりすると思うのだが、あの時のリカルド様は、怒りをギリギリまで体内で、小さく押し固めた様な雰囲気だった。
憤りを抑えられないけれど、冷静であろうとしていた様に思う。
ただ、演技として、怒りのままに動いている様に、演じて見せていたというか……表現が難しいな……。
説明し辛く言葉を探していると、
「……よくまあ、観察してましたね……あの怖い顔が、眼前にある状態で」
と、呆れた風に言われた。
人のこと言えるのかな……肩を斬られても観察続行してた奴が。
けれど、マルにはリカルド様の違いが認識出来ない様子だ。首を捻っている。
その辺りでやっと見当がついた。
マルに無い情報なんだ……。マルの知る中では、リカルド様は、苛烈で粗暴な方なんだ。
途端に、自分が感じた印象が間違っていないか不安になる。
けど、思い返しても……やっぱり、違う。彼の方は、冷静な方だよな、やっぱり。
マルは、しばらくブツブツと何か呟いていたと思ったら、納得したのか。視線をこちらに戻し、言った。
「分かりました。レイ様の感覚を信じます。
そうなると、思っていた状況がかなり、変動しますね。
リカルド様が冷静沈着な策士だとすると、相当数が騙されていることになるんですが……うわぁ、怖い」
怖いと言いながら、楽しそうなマル。
何が怖いんだろうな……? 騙されている相当数って、何の話だろう……?
そう思いながら待っていると、何から話そうかなぁ? と、楽しそうに検討した後、
「えっと、まずレイシール様、象徴派ってご存知です?別名傀儡派とも言われてますね」
と、問うてきた。
え?聞いたことない……けど、また傀儡?
昼食を終え、部屋に戻ると、体力と精神力の限界だった。
寝室に直行して、寝台に倒れ込む。
「誤解なんだよ……囲われたいわけないじゃないか……。ここを離れようだなんて、かけらも思ってない。サヤと、共に在りたいって、それしか、望んでない……」
枕に顔を埋めて、息を吐くような小声で言ってみた。勿論、誰の何の反応も無い。
うううぅ、どうしてこんな、要領が悪いんだ、俺……。
今、サヤは食堂で昼食中だ。リカルド様は学舎出身ではないから、従者と食事を共にする習慣は無いだろうと、まずは我々三人だけ、配下の方々の介添えで昼食となった。俺もサヤに世話されていたのだけれど、サヤは終始無言。お二人の視線もあるから、サヤを気にしておくわけにもいかず……。
美味しいはずの食事に味なんて無かった。砂を噛んでいる心地だった。
その間に、手の空いていた従者方は、執務室の応接用の部屋で食事を取って頂いていたので、今はそれぞれ、食事の終わった者が、傍についている筈だ。
「レイシール様、寝ないで下さい。
マルが、情報共有の時間を持ちたいと言ってましたが、如何致しますか」
「ん……良いよ、呼んでくれて。……サヤは……まだ食事中だよな……」
「急ぐとは言っておりました。終わり次第、執務室に顔を出す様、伝えてあります」
昼食後は、業務があると言い訳して、3時間程の時間を作っている。
だから、執務室で作戦会議を開くつもりだ。
ああ、因みに……リカルド様方のお部屋だが、ギルバート商会用の部屋と、客間をお貸しすることで落ち着いた。
流石に寝台一つの小部屋を四人で利用してもらうわけにはいかない。これもハインが気を回し、準備してくれていたのだ。寝台と長椅子で、なんとか四人休める。
ギルとルーシーは、サヤの部屋を利用する。サヤは現在夜番もある為、身支度くらいにしか部屋を使っていない。
化粧道具と少量の衣服を、夜番用の寝室に持ち込むだけで準備が出来た。何かあれば、荷物を取りに戻れば良いし。
あぁ、別館に、これだけ人が来るなんて想定外すぎる……。
今回の話、ギルとルーシーは関わらない方が無難だろうということで、二人には席を外してもらうこととなった。ギルはともかく、ルーシーが不安だったのだ。こんなぐちゃぐちゃした問題にからまれると、またどこかで箝口令を敷かれかねない。人生において、口外禁止事項は少ないに越したことはない。
ルーシーが、執務室が片付いたと知らせて来たので、私室での短い休憩を終えて、執務室に移動することとなった。
部屋の前で、ルーシーとは別れる。遅れて食事をする方々の後片付けがある。それが終われば、部屋で針仕事をしてもらう予定だ。
「レイ殿は、随分と疲弊した様子だな。
まあ、疲れもするか。こんな意味不明の修羅場に放り込まれればなぁ」
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もう間もなく、護衛終了の時間帯だ。この方にも色々世話になってしまった。あの修羅場から一度引き離してくれたのは、本当に助かった。きっとあのままだったら、今、こうなってない。
「ディート殿……ありがとうございます。
貴方が冷静に対応して下さったから、まだなんとか、頭が働く……」
「気にするな。あの状況を巻き返せたのは、レイ殿が動いたからであって、俺の働きではない。
まあ、まだ渦中か。気を抜けぬな」
「そう、ですね……。でもまぁ、粘りますよ」
「そうだな。とりあえずやれることがあるうちは、動くが肝要だ」
にかりと笑う顔が男前だ。
うん……落ち込んでたって仕方がない。やれることをやって、時間ができた時にサヤとすぐ話せる様、準備しておくか。
さしあたって、今確認しておけることは確認しておこう。
「……ディート殿。
ルオード様ですが……、彼の方は、当然、姫様を姫様と分かって、従者をしてこられていますよね」
「当然だな。ルオード様は、姫様の乳母の身内だから、幼き頃からの縁だ」
幼い頃から、姫様の運命も、努力も、苦悩も、姉弟との死別も……全て分かち合ってきているのか……。
そう考えると、ルオード様のあの態度の意味が、なんとなく分かった気がする。
「……姫様の、姉上様は……おいくつで身罷られたか、お聞きしても良いのだろうか……」
「十五を間近に控えていたと聞いた覚えがある。
姫様が、十三の頃であった筈だ」
あまり、歳の離れていないご姉妹だったのだな……。
かつて見た、姫様の絵姿を思い出す。
あれは確か、十五歳を迎えた祝いにと、描かれたものだ。
俺が初めて目にしたのは、学舎入った、しばらく後……? もう記憶が曖昧だな。逆算すると、八歳以降となる。
多分、学舎の中で目にしたのだとは思うが、あの頃の記憶は結構曖昧だ。
そんな風に考えていたら、マルがやって来た。
先程はお疲れ様でしたと、にこやかに笑う。
マルも、ずっと黙っていたから、きっと目を光らせて情報収集していたことだろう。
「やぁ、お疲れ様です。なかなかに楽しげな駆け引きしてらっしゃいましたね」
ニコニコと上機嫌だ……。これは……何か思惑を含んでいるな。マルが面白いってことは、結構な難事であると思うが……。問題は、それを俺に言う気があるのかどうかって部分だ。
自分の目論見は除外されたと言ったけれど、それは「理想としていた状況を生み出す可能性が、一番高い」と考えていた事柄のみの話だろうし……。
「もうしたくない……俺には向いてない……」
サヤにも誤解されるし、良いことない……。
「そうですか? レイ様って、人の表情を読むのは存外、得意でしょう?
学舎でも討議の時とか、結構上手く拾ってらっしゃったじゃないですか。
相手の表情や雰囲気だけで、あそこまで読めれば凄いと思いますよ。僕なんて、事前情報が揃ってないと、役に立ちません」
よく言う……。
自身の手足の扱う様に相手の心理を操るって恐れられていたくせに……。まあ、鬼の様な事前情報の賜物なのかな。まずそれを用意されることが凄い怖いんですけど。
ていうか、この状況や俺の事前情報も山盛り用意されているのだろうか……嫌だなぁ。
「……マル……リカルド様について、聞きたいのだけど……。
彼の方の人となり、あと、マルの印象を聞きたい」
「リカルド様ですか?」
気持ちの切り替えと、情報整理のつもりでマルにリカルド様の情報開示をお願いした。
マルはこてんと首を傾げ少し考えてから口を開く。
「見たまんまですよ。少々短気で苛烈。常に怒ってるって噂があります。頭は悪くないと思いますよ。軍の指揮は的確な方の様です。武特化型なんでしょうねぇ。
学舎には通われていませんが、嫡子とはそんなものでしょうし。
あ、エレスティーナ様が御健勝の頃は、理知的な方という印象もあった様です。ただ、ものがよく壊れるって噂があったから、どうなんでしょう? ものに八つ当たりされてたんですかね?
騎士団に所属されてからは、なんか一気に開花されたというか……凶暴化した? 粗暴が具現化した感じですねぇ。水が合ったんでしょうか?」
エレスティーナ様? 姫様の、姉上様の名前かな。
十五歳を迎えずに他界された王家の方は、名前も公にはされないから、男爵家みたいな下っ端貴族には情報が入らない。でもマルは知ってる……流石だな。
それを聞きながらも、マルの観察は続ける。
誤魔化してきたりとかはしてない様に思う……なら……。
「……リカルド様、周到に、演技されている感じだけど。
彼の方は……結構、冷静な方だよな。粗暴に見せているのは、意図してやっているのだろう?
あれはどういった目論見があって、そうされているんだ?」
そう言うと、マルの表情が輝いた。
え……物凄く面白そうだ。俺、何か変なこと言ったか?
「どう?
何故そんな印象を持たれたのか、伺っても良いですか?」
なんか、食いつき方が想像していたのと違う……。
疑問に思いながらも、先程のリカルド様の様子と、出会い、過去の記憶からの印象などを話すことにした。
「俺の一番古い記憶では、多分……十四……? 姫様の替え玉をさせられていた頃だから……」
「その頃から、多少の違和感があったということですか?」
「記憶は美化されるから、あまり信用は出来ないな。あの頃は、挨拶をする程度しか、口をきかなかったし。
だけど、苛烈な方という印象はない……。
今日、お会いしてからも、二度、印象の違う瞬間がある」
「えええぇぇ?それ、僕も見てました? ……見てましたか……。うーん……」
「? 姫様が亡くなられた後、俺が孤立するぞって話をしていた辺りだ。
今こうして説明していても、はっきり違うと、認識出来るけど……。
より、はっきりしているのは、玄関広間で俺の胸倉を掴んでいた時かな」
苛烈な方であるなら、勢いに任せ、怒鳴り散らしたりすると思うのだが、あの時のリカルド様は、怒りをギリギリまで体内で、小さく押し固めた様な雰囲気だった。
憤りを抑えられないけれど、冷静であろうとしていた様に思う。
ただ、演技として、怒りのままに動いている様に、演じて見せていたというか……表現が難しいな……。
説明し辛く言葉を探していると、
「……よくまあ、観察してましたね……あの怖い顔が、眼前にある状態で」
と、呆れた風に言われた。
人のこと言えるのかな……肩を斬られても観察続行してた奴が。
けれど、マルにはリカルド様の違いが認識出来ない様子だ。首を捻っている。
その辺りでやっと見当がついた。
マルに無い情報なんだ……。マルの知る中では、リカルド様は、苛烈で粗暴な方なんだ。
途端に、自分が感じた印象が間違っていないか不安になる。
けど、思い返しても……やっぱり、違う。彼の方は、冷静な方だよな、やっぱり。
マルは、しばらくブツブツと何か呟いていたと思ったら、納得したのか。視線をこちらに戻し、言った。
「分かりました。レイ様の感覚を信じます。
そうなると、思っていた状況がかなり、変動しますね。
リカルド様が冷静沈着な策士だとすると、相当数が騙されていることになるんですが……うわぁ、怖い」
怖いと言いながら、楽しそうなマル。
何が怖いんだろうな……? 騙されている相当数って、何の話だろう……?
そう思いながら待っていると、何から話そうかなぁ? と、楽しそうに検討した後、
「えっと、まずレイシール様、象徴派ってご存知です?別名傀儡派とも言われてますね」
と、問うてきた。
え?聞いたことない……けど、また傀儡?
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★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★8月22日投稿開始、完結は8月25日です。初日2話、2日目以降2時間おき公開(10:10~)
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
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