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閑話 料理 3
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「なんか凄く、楽しかったなぁ。久しぶりに息抜きが出来た気分だ」
食事処からの帰り道、昼食を終えた近衛の一人に護衛をしてもらいながら、俺たちは話に花を咲かせていた。
食事処では、ルオード様に、今までの食事を作っていた料理人を紹介した。
つまり、ユミルとカーリンなのだが、村人が交代で作ってたんですよと言った時の顔は見ものだったな。茫然自失といった感じだった。
そして、この村の、氾濫対策という事業を行うにあたり、色々と新しいことを模索して行くつもりでいるのだという話を、それとなく話した。
支援金を募り、河川敷を作って行くのだとしても、支援金だけでは足りない可能性が高い、大規模な工事となる予定だから。
その為、資金を運用し、増やす必要があるのだと、肩の怪我の為、熱を出し療養中のマルに変わって伝えたのだ。
工事に必ず必要なものを中心に、新しい企画、新しい商品、新しい人材の育成など、幅広く手を伸ばすことになる。
ただし、失敗するわけにはいかない。それなりに重圧はあるのだが、この事業を成功させる為だ。やれると思ったことはなんだってやってみるつもりだ。
さしあたり、この食事処では、料理人や村人同士が料理の情報を共有しあって、新しい料理を模索していくことにした。上手くやれば、同じ料理の腕を持った料理人が、複数誕生することになるし、新しい料理だって増える。
あまりに型破りな方法なので、きちんと結果が出るかが不安ではあるのだけど。
話すうちに、ルオード様は、眉間のシワを深くしていったわけだけれど、最後に大きく息を吐いて、
「君は、随分と変わったな」
と、言った。
「委細承知。ただし、姫には伝える。報告は私の義務だ」
「畏まりました。運営の仕方、共有した料理の作り方を資料として提出することも可能ですので、必要なら仰って下さい」
「…………そこまでするのか…………」
ルオード様が頭を抱えた姿を見たのは初めてだ。
クリスタ様に振り回されても、常に冷静な方だったからな。
「ところで、食事処で供給する食事の量ですが、賄いだけというのは、あの場所を使う以上、考えた方が良さそうですね」
ハインが、ふと思い立ったように口にする。やっぱりそう思うか。そうだよな。
「ああ、案外覗きに来てる人が居たよな。俺に関わること事態を避けられるかと思ってたんだが……ちょっと意外だった」
そうなんだ。
案外村に住む者たちが見に来てたんだよなぁ。
いつから食事が出来るようになるのかと聞かれている近衛までいたのだ。慌ててまだ試験営業だと伝えたのだけれど、凄く残念そうにされた。
「作る食事の量を増やして、村の者にも提供する方が良いのかな……。
しかし、何食作るかという問題がな……。
賄い作りは作る分量が定まっていたから、費用を必要分だけに絞ることが出来たけど、不特定多数にとなると、うーん……」
「天候や内容によって偏りが出るかもしれませんからね」
「そういえば、マルに、食事の時間が同時にならない弊害についても言われたんだよな。
近衛の方々も、仕事の形式上、交代で食事をすることになるだろうし、誰が食べて誰がまだか、管理しにくいって。
そうなると、下手に村人に提供してると、後で足りないなんて話にもなりそうだし……ちょっとそれはなぁ……」
ああそういえば、あの時は、効率化民族に相談しようって結論で、保留されたんだ。
効率化民族……つまりサヤな訳だが……。
「サヤ、何か良い方法ってあるだろうか」
「そうですね。私の国では、食券を発行して食数管理をしている店がありましたよ」
即答で返って来た…………。
一秒たりとも悩まなかったな……流石効率化民族。ありとあらゆる部分の効率化は既に検討済みか。
「詳しく教えてもらえるか?」
「はい。まあ、難しいものではないですよ。
あらかじめ、提供する日時、内容を定めた食券を販売するんです。
その券の売れた数だけ食事を作り、提供します。お金だけ払って食べずにいる人なんて、そうそう居ないでしょう?」
「確かに!」
「店に来た人は、券を店員に渡し、食事を受け取るんです。前もってお金を貰っているので、安全性も高いですし、品も決まっているので下準備を進めておけます。だから、お店の回転率も若干上がるのではないでしょうか。
券との引き換えとなるので、渡し間違いや、渡しそびれといった失敗もしにくいですし」
「券を持っていない者には食事を売らぬのか。へぇ……よく出来ている」
近衛の方の相づちが入った。
ちらりと視線をやると、爽やかな長髪の美丈夫だ。
長髪って、成人前……か? 成人前から職務についている人って、珍しいな。自分以外では初めて見た。
つい口から出てしまったらしく、口を押さえて「失礼」と、謝罪を述べられた。いいえ、お気になさらず。と、かえしておく。
「仕入れの日から逆算して、数日前に食券を発行しておくのが無難でしょうか……。
売れ行きがある程度好調で、売上の見込みが立つようならば、何食作ると決めて、その分を後から販売しても良いと思います」
「券を偽装したりはされないのですか」
「印を押すとか、木片に刻むとか、偽装しにくい方法はいくらでもあります」
「よし。じゃあ、マルにもその案、相談してみるか」
サヤの国で使われている手法なら、実用性は高い。まず通るだろう。そう思いつつ、近衛の方の前では話を流しておくことにした。
食事処からの帰り道、昼食を終えた近衛の一人に護衛をしてもらいながら、俺たちは話に花を咲かせていた。
食事処では、ルオード様に、今までの食事を作っていた料理人を紹介した。
つまり、ユミルとカーリンなのだが、村人が交代で作ってたんですよと言った時の顔は見ものだったな。茫然自失といった感じだった。
そして、この村の、氾濫対策という事業を行うにあたり、色々と新しいことを模索して行くつもりでいるのだという話を、それとなく話した。
支援金を募り、河川敷を作って行くのだとしても、支援金だけでは足りない可能性が高い、大規模な工事となる予定だから。
その為、資金を運用し、増やす必要があるのだと、肩の怪我の為、熱を出し療養中のマルに変わって伝えたのだ。
工事に必ず必要なものを中心に、新しい企画、新しい商品、新しい人材の育成など、幅広く手を伸ばすことになる。
ただし、失敗するわけにはいかない。それなりに重圧はあるのだが、この事業を成功させる為だ。やれると思ったことはなんだってやってみるつもりだ。
さしあたり、この食事処では、料理人や村人同士が料理の情報を共有しあって、新しい料理を模索していくことにした。上手くやれば、同じ料理の腕を持った料理人が、複数誕生することになるし、新しい料理だって増える。
あまりに型破りな方法なので、きちんと結果が出るかが不安ではあるのだけど。
話すうちに、ルオード様は、眉間のシワを深くしていったわけだけれど、最後に大きく息を吐いて、
「君は、随分と変わったな」
と、言った。
「委細承知。ただし、姫には伝える。報告は私の義務だ」
「畏まりました。運営の仕方、共有した料理の作り方を資料として提出することも可能ですので、必要なら仰って下さい」
「…………そこまでするのか…………」
ルオード様が頭を抱えた姿を見たのは初めてだ。
クリスタ様に振り回されても、常に冷静な方だったからな。
「ところで、食事処で供給する食事の量ですが、賄いだけというのは、あの場所を使う以上、考えた方が良さそうですね」
ハインが、ふと思い立ったように口にする。やっぱりそう思うか。そうだよな。
「ああ、案外覗きに来てる人が居たよな。俺に関わること事態を避けられるかと思ってたんだが……ちょっと意外だった」
そうなんだ。
案外村に住む者たちが見に来てたんだよなぁ。
いつから食事が出来るようになるのかと聞かれている近衛までいたのだ。慌ててまだ試験営業だと伝えたのだけれど、凄く残念そうにされた。
「作る食事の量を増やして、村の者にも提供する方が良いのかな……。
しかし、何食作るかという問題がな……。
賄い作りは作る分量が定まっていたから、費用を必要分だけに絞ることが出来たけど、不特定多数にとなると、うーん……」
「天候や内容によって偏りが出るかもしれませんからね」
「そういえば、マルに、食事の時間が同時にならない弊害についても言われたんだよな。
近衛の方々も、仕事の形式上、交代で食事をすることになるだろうし、誰が食べて誰がまだか、管理しにくいって。
そうなると、下手に村人に提供してると、後で足りないなんて話にもなりそうだし……ちょっとそれはなぁ……」
ああそういえば、あの時は、効率化民族に相談しようって結論で、保留されたんだ。
効率化民族……つまりサヤな訳だが……。
「サヤ、何か良い方法ってあるだろうか」
「そうですね。私の国では、食券を発行して食数管理をしている店がありましたよ」
即答で返って来た…………。
一秒たりとも悩まなかったな……流石効率化民族。ありとあらゆる部分の効率化は既に検討済みか。
「詳しく教えてもらえるか?」
「はい。まあ、難しいものではないですよ。
あらかじめ、提供する日時、内容を定めた食券を販売するんです。
その券の売れた数だけ食事を作り、提供します。お金だけ払って食べずにいる人なんて、そうそう居ないでしょう?」
「確かに!」
「店に来た人は、券を店員に渡し、食事を受け取るんです。前もってお金を貰っているので、安全性も高いですし、品も決まっているので下準備を進めておけます。だから、お店の回転率も若干上がるのではないでしょうか。
券との引き換えとなるので、渡し間違いや、渡しそびれといった失敗もしにくいですし」
「券を持っていない者には食事を売らぬのか。へぇ……よく出来ている」
近衛の方の相づちが入った。
ちらりと視線をやると、爽やかな長髪の美丈夫だ。
長髪って、成人前……か? 成人前から職務についている人って、珍しいな。自分以外では初めて見た。
つい口から出てしまったらしく、口を押さえて「失礼」と、謝罪を述べられた。いいえ、お気になさらず。と、かえしておく。
「仕入れの日から逆算して、数日前に食券を発行しておくのが無難でしょうか……。
売れ行きがある程度好調で、売上の見込みが立つようならば、何食作ると決めて、その分を後から販売しても良いと思います」
「券を偽装したりはされないのですか」
「印を押すとか、木片に刻むとか、偽装しにくい方法はいくらでもあります」
「よし。じゃあ、マルにもその案、相談してみるか」
サヤの国で使われている手法なら、実用性は高い。まず通るだろう。そう思いつつ、近衛の方の前では話を流しておくことにした。
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