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交流 6

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 バート商会に帰り、サヤには購入したものを片付けてくるように伝え、俺は一足先に応接室に戻った。
 ハインは、先ほどサヤの使っていた執務机を、利用している最中だった。顔を上げず、報告を寄越す。

「レイシール様はまだなんの音沙汰も無しですよ」
「まあそうだよな。反応があるのは明日以降か……」
「そうでしょうね……。一日で持ち直せば良いのですが……。
 大店会議もありますし、雨季もあります。あまり崩れていられる状態でもないです。
 レイシール様のことですから、必要最低限だけ取り繕って出て来られますよ」
「……それはそれで、なんか、可哀想でならねぇな……」

 気分が滅入っても、死にそうなほど辛くても、やるべきことを放棄して苦悩してられるほど、レイは単純にできていない。
 ハインの言う通り、必要最低限だけ取り繕って、顔に無機質な笑顔を貼り付けて、出てくるのだろう……。

「なあ……、レイが出て来たら、サヤはどうするんだ。
 今まで通り従者見習いをさせておくのか?   それとも、顔を合わさないよう、配慮しておくべきなのか……?」

 必要最低限だけ取り繕ってる状態のレイには、少しの刺激も均衡を崩す切っ掛けになってしまう可能性が高い。
 俺がそう聞くと、ハインは書いていた書類を片付け始める。

「そんなこと、私にだって判断つきかねますよ。
 サヤを見るだけで精神の安定が崩れる可能性も高いですが、サヤが居ないことで不安を掻き立ててしまう可能性だってあるでしょう。
 ただ、マルとの交渉の席も、大店会議も、サヤ抜きで行える気がしません。
 レイシール様は、何故この段階で、サヤを突き放そうとされたのか……」
「…………そんなこと考えてられないくらい、気持ちの制御がきかなかったってことだろ……。
 じゃあ、レイが辛いかどうか考えてる余裕もねぇな。サヤを同行する前提にするしかないってことだ」
「そうですね。
 ところで、サヤはどうでしたか?姿が見えませんが」

 書類を片付け終えたハインが、そう言って席を立ち、こちらに来る。
 俺は長椅子に移動して、ハインもそちらに促した。

「今、戦利品を部屋に持ち帰らせてる。
 ……なんていうか、あの娘はよく分からねぇな。分からんというか、計り知れない?
 良いものを見慣れているのか、審美眼は結構確かだった。その割に、華美なものには興味が無い。美しいと認識はしているんだか、価値をそこに見出してない感じだな。
 通貨も、位を一回伝えただけで理解しちまって……屋台の買い物も、つり銭の計算すら勝手にこなした。
 そのくせ、腸詰めが萵苣で巻いてあるだけで感動してるし……」

 俺の報告に、ハインはどことなく、口元を緩ませる。
 今まであまり、したことがない表情に、俺はまたむずりと、胸の奥がむず痒くなる感じがした。
 笑うまでいかねぇけど、少し和んだって顔だよな……。
 なんというか、サヤは本当に、人の懐に入り込むのに長けてるというか……警戒感を抱かせない。凝り固まったハインの表情すら動かし、動くことを拒否したレイの気持ちすら震わすのだ。相当だよな、これは。
 今だって、本来ならハインは、レイのことが心配すぎて、こんな顔してられないはずだ……。

「私は今更驚ききませんよ。あの娘が計り知れないのは、初日から嫌という程実感しましたからね。
 計り知れないのがサヤらしいと思えてしまう。
 ……サヤは、落ち着いた様でしたか」

 こうやって、サヤの心配をする……。レイ以外に、気を配るなんてな……。

「大丈夫じゃねぇか?
 レイの事情は、ちゃんと理解してくれた様だし、まだ周りを見てられる余裕を持ってる。
 ……なんつうか……あの娘は、芯がしっかりしてる感じがするし」

 下手したら、お前らより頑丈かもな。
 内心そんな風に思う。
 ハインがレイを刺した話の感想が、信頼関係を築けたことへの賞賛だったしな。
 酷いとか、痛かったでしょうねとか、そんな表面的な答えじゃなく、今の俺たちの関係を認めてもらえた様で、妙に気持ちが揺さぶられてしまった。
 本来なら、貴族と、町人と、孤児だ。接点なんて無い。こんな風に、仲間だと思えること自体が奇跡なんだよな。ハインが孤児だということも、口外していないのは、それをよく思わない人間の方が、圧倒的に多いからだ。言わなきゃ誰も、ハインが孤児だなんて思わないのだから。
 サヤは、それを知っても、そんなこと位に解さない。態度も変わらなかったのだろう。そうやって、二人の気持ちを得たのだと思う。

「お前は何してたんだ?」
「大店会議の下準備ですよ。ワドル師に、土嚢どのうは麻袋が金額的にも、強度的にも最有力という報告を頂きましたから、商業会館に取り寄せておいて頂こうかと。
 相当数必要でしょうしね。ざっくりとした計算でも、二万枚程は必要となりました。
 一度にそれだけは揃わないでしょうから」

 二万枚発注って……麻袋であっても結構なものだぞ? 

「まだ決定もしてないのに、良いのか?」
「決定するでしょう。他の手段は今までやって、意味を成さなかったのですよ?それをまた繰り返す必要は無い。
 一度は試してみなければ、良し悪しも分かりませんから、まずは一度、試すことになると思いますよ」

 大店会議で主に会議の進行をしていくのはハインになるだろう。
 だから、こいつがそう言うからには、その流れになるように話を持っていくということだ。

「それよりも、まずはマルですよ。
 あれを引き込むのが一番問題だ。土嚢や河川敷は魅力的な情報だと思うのですが、もっとこう……餌を与えて手懐ける方が、簡単なんですがね。
 何か良い餌がないものか……」
「大抵のことを知ってるあいつにそんな手軽な餌があるかよ。
 サヤの知識くらいのもんだぞ、あいつが知らないことなんて……」
「サヤの知識はできる限り与えたくありません。サヤの負担になる。そして将来の我々の負担です」
「だよなぁ……」

 サヤに教えてもらった料理の知識を与えるしかないですかね……など呟くハイン。
 それは、最悪の選択だと思う。料理の知識は金を積む奴が多そうだ。危険すぎる。
 ……サヤの料理か……やはり美味いのかな……。

「美味いのか、サヤの国の料理は」
「奇天烈で美味です。なぜそのような方法が編み出されたのか、不可思議でなりません」
「奇天烈……ってのは、どういう意味だ?   料理だろ?   食えるもん調理するんだろ?」
「言いません」

 くっそ……。そうやって隠されると気になるんだよな……。
 こいつが美味って言うからには美味いんだろうし……こっそりサヤに頼んでみるか?
 俺たちがそんな愚にもつかない話しをしていると、サヤが部屋から戻ってきた。

「レイシール様のお部屋、物音一つしなかったです……」

 片付けのついでに、部屋の様子を伺ったのだろう。少し、沈んだ感じでそう言った。
 部屋が隣だと、やはり気になるよな……。

「大丈夫ですよ。明日か、遅くても明後日には、出てこられます。
 サヤ、辛いとは思うのですが……レイシール様がどのような態度でも、暫く耐えて頂きたいのです。
 きっと、不安定な状態が続くと思うのですよ。
 あの方は、他に当たるようなことは無いのですが、逆に自分を追い詰めていくように見えるので……見るに耐えないと思うのですが……それでも耐えるしかないのです。
 もし難しいようなら、私の方に報告して下さい。なんとかしますから」
「はい……。
 なにも、しない方が、良いのですよね……。はい、畏まりました」

 納得はできていないと思う。
 だがサヤは、そう言って頷いた。
 その顔は先程までの、朗らかなサヤではなくて、俺はサヤの気持ちを切り替えるために、声を掛けた。

「サヤ、じゃあ、約束した文字の一覧、あれをするか。
 紙に書き出せばそれでいいか?」
「あっ、待って下さい。
 百二十文字って、一音一文字ってことですよね。それなら、文字と一緒に発音をして頂けたら、私の国の文字がどれにあたるか嵌め込めると思うんです」
「ふーん……よく分からんが……じゃあどうすればいいか教えてくれ」
「はい。……あの、色インク……じゃ、なくて。色のついた墨って、あるのですか?とても高価だったりするのでしょうか?」
「んー?ある。うちはよく使うから、好きに使って良い。何色いるんだ?」
「何色もあるんですか……。とりあえず、赤色?だけ、お借りしたいです」

 ワドが色墨を準備する間、サヤが、紙に定規で線を引いていく。
 その辺の扱いも手馴れたものだ。
 縦に五、横に十の枠を作り、その端に、用意された赤墨で小さく文字を記していく。
 そんな紙を三枚用意してから、サヤは席を俺に譲る

「では『あ』の文字をここにお願いします。
 ここは縦に、あ、い、う、え、おです」

 なにやら順番も決まってるようだ…。
 とりあえず、言われた通りに記していく。
 つまり、この赤で書かれた文字がサヤの国の文字の、同じ音に当たるものなのだろう。
 たまに空白を挟みつつ、言われた音を言われた所に記していく。
 そうしていくうちに、枠は二枚目まで埋まり、三枚目を少しだけ埋めた。

「有難うございます。
 まだ書き出していない音はあるでしょうか」
「んー……全部書いた……か?」
「抜けてます。ツァ、ツゥ、ツォの音が無いです。
 ヴァや、ヴォの音の列も無いのでは?」
「順番がバラバラだと拾いにくいな……でもまあ、これで全部か」

 一応思いつく限り書き出すと、百二十文字弱となった。
 なんか忘れてたりしないよな……まあ、そうであっても後で書き足せば良いか。
 その一覧を、サヤは大事そうに受け取る。

「ありがとうございます。
 セイバーンに戻れたら……書類仕事もお手伝いします。
 それまでに、覚えておきますね」

 そう言いサヤは、書き上げた表に視線を落とした。
 とても嬉しそうに、眺めている……。
 あ、思い出した。サヤの意匠代を決めなければ。

「サヤ、後は意匠代だ。ものの物価は理解したろ。意匠代だが、俺は金貨五枚を希望する。
 お前の希望は幾らだ」
「え?広場でお買い物したので充分です」
「五枚に足りて無いだろうが⁉︎」
「じゃあ、文字を教えて頂いたぶんを足します」
「足りるか!そんなの銅貨一枚にもならねぇ!」

 俺とサヤのやり取りを、ハインが不思議そうに眺め、口を開いた。

「おや、随分と、親しくなれたようで」

 その言葉に俺が詰まると、サヤが少し微笑んで「はい」と、答える。
 ……なんかむず痒い。恋愛対象でない女性というのは、俺には希少だ。まあ、いることはいるが……あの人とは全然違うしな。
 どことなく、ルーシー感覚で扱っていたのだが、マズかったろうか……。
 そんな俺の内心を他所に、さやは顎に指を当て、こてんと首を傾げたあの愛らしい仕草で逡巡している。

「ギルさん、意匠代……という、抽象的なものにつける値段というのは、まだよく分かりません。
 私の図にそれほど価値があると思えませんし、そもそも、あの図は私の案ではありません。私の世界にあるものです。そこにお金を貰って良いのでしょうか……」
「お前しか持ってないものである事に変わりはない。
 お前の案でなかろうが、これが有効だと判断して、その図を記したんだろ。用途に沿った案だったから、俺は買うと決めた。金を出すと言ってるのは俺なんだから、貰え。あとな、こういうものは、要らなくても受け取れ。金で解決したと思わせておく方が、良い場合も多々あるんだぞ」

 なんでも良いから受け取れよ。
 この世界に一人で来て、頼る身内も居ないのだから、金は幾らあっても良い筈だ。
 そう言うわけにはいかなかったから、世間の常識を持ち出したのだが、何故だ……サヤがまた、例のキラキラした目を向けて来た。
 俺がビビって一歩引くと、両手を胸の前に組んで、そのキラキラの目で言うのだ。

「ギルさんって……かっこいいですよね。
 レイシール様が、ギルさんを慕う理由が、よく分かりました」

 な、なん……っ⁉︎
 かっこいいは聞き慣れてる。けれど、サヤの言うそれは、俺の普段聞き慣れたものとは違う響きだった。
 見た目について言ってるんじゃない。それはサヤの顔でよく分かる。
 見た目に関しては聞き慣れているが、そうでないのは慣れてない。おかげで顔が一気に熱くなった。

「おや、聞き慣れてるでしょうに」
「うるせぇ!」

 意地の悪い顔で、棘を刺してくるハインを怒鳴りつけ、俺は頭を掻きむしった。
 ああもう、なんか、やりにくいな!
 サヤは、不可解な娘だ。思いもよらないことを言ってくる。なんか他の娘と、見ている所が違う。感じていることが違う。この社会で好まれる娘とは程遠く違うが、そこが変に目を惹く。
 やばい。こいつは女の格好ではない方がいい。男装すべきだ。女だと思うと、変に意識してしまいそうだ!

「とにかく、金貨五枚!もうそれで良いな⁉︎」

 この話は終わりだ!俺の気が変になっちまう!
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