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27. マルコの同僚、レオナルド田中くん⑦
しおりを挟むマルコが15歳、レオン19歳で出会い、あれから3年。
この間に「親子禁断の愛」の淵に勝手に堕ちたレオンは、本人の意図せぬところで強力な支援者(主にマジョリカ妃殿下とかマジョリカ妃殿下とか)を得て、本人の努力は皆無ながら(せいぜいレオンが努力したことといえば妃殿下に呼ばれたら即見参するくらいか)、マルコのランチ友達の地位を獲得していた。
この地位さえ、実は妃殿下が用意周到に画策したものとは、マルコはもちろんレオンさえ知らない。
妃殿下は巧みな誘導でマルコにランチに最適な場所を伝授。マルコに伝える前に雑草は取り除き、ベンチを設置して、花を植え、樹木を整え、パラソルも常備したことはいうまでもない。
ちなみにこのメンテナンスは、1週間に一度行われている。
初めてこの場所にマルコが来て、「穴場ですね」とレオナルドにいい、食べ始めようとしたところにレオン登場。
計算したようなタイミングである。
実は計算されていた。
今日もそうだが、一見するとこのあたりにいるのは、この3人しかいないように見える。
しかし、池の右端で3人の視界に入らないところに護衛1名、左端に1名、池を挟んだ対面で散歩道になっているところに1名、王城の壁際にも左右に1名づつと、まるでテレビのロケハンスタッフのように、一般人の接近を遮断すべく護衛が張り込んでいるのだ。彼らはマルコの警護も兼ねていた。
妃殿下はマルコと同時並行で、レオンには「王城勤務を始めたばかりのマルコと一緒にランチを食べてあげたらどうかしら?」と、さりげなくアドバイス。
それまでレオンは騎士団専用の食堂、別名野獣食堂と呼ばれる量重視、そして早食いを競うがごとく食いまくる獣の中で、自身も獣と化して食っていたのだが、妃殿下に言われた翌日から、自邸料理人による弁当を持参するようになった。
そして、言われるままに指定の場所にいくと、マルコとレオナルドがいたというわけである。以来、休日以外はここで昼食を取るレオンである。
レオンの名誉のために付け加えると、レオンは高位貴族としての食事マナーは、当然身に着けている。しかし「郷に入っては郷に従え」で、部下たちの食いっぷりに合わせていたのだ。
左にマルコ、右にレオナルド、真ん中がレオンというのが定位置。いつもこの位置に座る時、レオンは妖精を従えた精霊王の気分になった。おいおい…。
貴族令嬢令息からなるレオンファンクラブの会員たちからは「無口でクール」と言われる彼だが、それは不埒者を近づけないようにするための壁で、本来のレオンはそんなことはない。
とはいえ、ここ3年あまり、「父親にときめく禁断の愛」に溺れるレオンは、マルコの前では口数が少なくなるのは致し方ないであろう。そんな彼をフォローしてくれるのがレオナルドだ。
さっそく弁当を取り出したレオンに、すかさずレオナルドが声をかけた。
「今日はまた一段と大きいサイズの弁当ですね」
「ああ、料理人が気合を入れて作ったようだ」
蓋をあけて弁当の中身を見たマルコが「すごい!初めてみるお弁当です」と感想を漏らすと、レオンも「俺も初めて見るな」と相槌。二人で「そうなんですか?」、「そうなんだよ」と、気恥ずかしささえ覚える初々しさを披露。
しかし、いつもはここで「二人はお似合いだよ」と明るく場を盛り上げるレオナルドが、弁当を凝視して沈黙したまま。
「先輩?」
心配そうにマルコがレオナルドに声をかけた。
「これ!厚焼き卵とおにぎりだ!」
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