上 下
6 / 13

いろんか奈介連八

しおりを挟む

いろんか奈介連八がなければ


「どうにも菅笠すげがさが重荷になって仕方ないから貰ってくれないか、異論がなければ」 (『小袖の花づくし判じ物』第二話 や 梅の花よな)

 墨をがさがさにしてから書き出すなどトリッキーなことをしてみんとしたところへ、最近遊びに来るようになった地域猫の猫パンチが横から飛んできて、か→なへの連綿あたりからすこぶる筆が乱れた。

 もう少し綺麗なものをと書き直してもみたが、それはそれで調い過ぎていてなんだかつまらなく感じたので、猫の思い出とともにそのまま載せることにした。

 今回はどうにも演じきるだけの集中力が続かなかったのかもしれない。あるいは演じるキャラクターを間違っていたのかもわからない。

 気づけばですます調で書くことすら忘れている有り様である。

 字を書く(筆文字にしろ小説にしろ)という行為は私にとり、歌う、踊る、生きる等と同じく『演じる』というジャンルに分類されるが、あるいはすべて集中力の賜物だったのかもしれない。


◇補足

 以前カクヨムの『田原総一朗で二次創作コンテスト』に参加した際、うちの田原さんには近江商人風の格好をしてもらったのだけれども(他にも女子高生とかマングースとか色々いて面白かった)、近江商人はどうやら天秤棒を担いで歩いていたようだと。

 しかし(うちの)田原さんに持たせようとするとどうにもストーリーが止まってしまい、続きが書けない。映像が見えてこない。

 結局、天秤棒は登場させなかったということがあったが、今になって思えばあれは、重荷になったから何処かへ置いてきたのかしら。

 当時、自分としては結構攻めた作品を書いたつもりでいたが、そもそも実在する人物の二次創作など書いたことがなかったうえ(意味がわからなかったということもある)、本人が審査するとあっては、どこまでが失礼にあたらないか悩み所であった。

 後で作家の岩井志麻子さんが参戦されるというので拝読してみたらば、彼女の総一朗は最初から死んでいた。

 なるほど、プロとはこういうものかと感動を覚えた。
しおりを挟む

処理中です...