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5章

第7話 ずーーっと、大好き

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 久々に会ったシエルは、やつれて疲れて、今にも消えてしまいそうなくらいくたびれて見えた。

 再会するまで、彼に言いたいことはたくさんあった。

 ──今までどうしてたの?
 ──どうして学校までやめてしまったの。

 ──ずっと心配してたのに。

 ──僕の目の前からいなくならないで。

 それなのに会った瞬間、それは言葉にならなくて、代わりに胸からこみ上げるような安堵を感じた。

 ──ああ、無事で良かった。また会えて良かった。

 そのとき、僕は気付いてしまった。僕はもう彼と離れることなんかできないことに。


##


 これは夢かとシエルは思った。

 ──ああそうか、最近ろくなこと無かったから。あのアステオとの再会のくだりから、俺は幸せな夢を見てたんだなあ。


「……目が覚めた?」

 そう声を掛けられて、ぼんやりしていた意識が覚醒する。はっと起き上がるとクラリと目眩がした。どうやら随分長いこと眠っていたらしい。

「ここは……?」
「僕の部屋。見覚えあるでしょ?」

 そう言われて見渡す。確かに言われてみればその通りだった。こんなにハッキリ覚えてるなんて、俺の執念や未練も捨てたもんじゃないな。

 クルリと回した首を、そのまま横に向ける。そこには以前より少し大人びたアステオがいた。

(前にチラッと見たけど……可愛いまま格好良くなったんだなー)

 髪も少し伸びた。触らせてくれないかなあとシエルは思った。
 しかしそんなシエルのよこしまな考えとは関係なく、幻覚の(と思われる)アステオは「はあ」と呆れたように溜息をついた。

「全く、君は……。急に行方を眩ましたかと思えば、再会するなり気絶。いったい何を考えているのか……まあ、もうフられた僕には関係ないけどね?」
「…………!」

 最初の頃のような、どこか懐かしささえ感じる毒舌にシエルは思わず感動で泣きそうになる。

「あ、アステオ……」
「! ……ちょ、ちょっと」

 勢いでぎゅっと手を掴まえると、アステオは一歩身を引こうとした。それを許さず、シエルは何だかグラグラする視界を無視してベッドから降りた。

「アステオ……俺、今も、ずーーっと……
 おまえのことが、ずっと大好きだよ」

 そうして、はずみのように伝えた言葉は………言うはずの無かった、シエルのほんとうの気持ちだった。
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