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2章

第1話 そんな行事あったな。

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 さて、実習も無事に終わった明くる週。シエルが登校すると、学校は朝から何だかお祭り騒ぎだった。
 その理由は、朝会の担任の言葉でわかる。


「来週から学園祭の準備期間が始まるな。おまえたち一年生は初めての行事だが──」

 そうか。学園祭。
 そういえばそんな行事があったな、とシエルはひとり呟く。


♯♯


「この学校の学園祭は、かなり盛り上がるんだ」

 いつの間にか恒例になってたアステオとの昼食でシエルが話題にすると、当たり前のようにそう返された。
 けれどシエルとしては学校は勉強するところ、というイメージが強くいまいちピンとこない。

「ふぅん。やっぱり年に一度のお祭りだからか?」
「まあ、それもあるけど……」
「結果次第では、王宮に就職するチャンスにもなるからな!」

 一緒にいたアステオの友人の一人、エリックがそう答えた。

「は? たかが学校行事のひとつなのに?」
「ここは国内でも有数の名門校だからな! 結構な身分の来賓も来るし、偉い方々の目にとまるのは俺たち下位・中位貴族にとっちゃチャンスだ!」
「実際、毎年数人がそれで就職先を決めてるらしい」

 補足するようにアステオのもう一人の友人、マイクがそう答える。しかし俺としてはそれでも信じがたい。そんなんで雇う人間を決めるのって、アリなのか?

「まあそれは、一年の僕たちにはそんなに関係ないね。それより学んだことを生かして、クラス順位を上げる方が大事だ」

 ツン、と胸を張って言い切るアステオ。やっぱり負けたくないんだな。俺は苦笑しながら相槌を打つ。

「ああ、出しものや祭中にある競技の成績でクラスごとに点数がつくんだっけ? まあ、せっかくやるなら勝ちたいよなあ」
「当然」

 不敵に笑うアステオ。そんな彼を見ていると、シエルもなんとなくやる気がわいてくるのを感じた。そうだ、せっかくの祭だし、勝って気持ちよく終わるほうがいいに決まってる。

 とはいえそのやる気は所詮、アステオにつられて起きたやる気で、「勝てるといいな」という他人事に過ぎなかったのだが。

♯♯

「では投票の結果、演舞の代表者はアステオくんとシエルくんに決まりました~!」

 シエルの気持ちとは裏腹に、だんだんそうも言ってられない状態になるのである。
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