94 / 146
14章
3 人狼って!?
しおりを挟む
シロウは自身を奮い立たせて、姉の目をしっかり見返す。
「俺はリアムさんのことが好きだよ。姉さん」
シロウは意志の強さを見せた。
「獅郎……でも、二人とも男の子よ」
二人とも男の子って歳でもないんだけど……とお門違いなところに須臾気を取られる。
シロウは今まで興味を持った相手も、好きになった相手もいなかった。それは男性にだけでなく、女性に対しても。
だが、リアムを好きだと気づいたとき、好きになる気持ちに性別は関係ないと思った。
「男とか、女とか関係ないよ。側に……ただ側に居たいって気持ち、姉さんにもわかるよね」
サクラコは驚いた。今までサクラコはシロウがこんなにはっきりと自分の気持ち──考えを口にしたところを見たことがなかった。
「そう……。なら……でも……」
「でも」のあとに続く言葉をシロウに言うことが出来ない。サクラコはただただシロウが心配だった。それはわかってほしかった。
姉の目を見つめていたシロウは姉の手を取り、力強く握りしめた。
「大丈夫だよ」
「心配なの……」
そう言った姉が何かを思い出したようにハッと目を見開く。
「あと!人狼ってどういうこと!?」
姉の剣幕に驚くが、答えを持たない質問に何と返事をするか躊躇う。
「それは……」
「いつから!?いつからなの」
「俺にもわからないんだよ。こっちに来て、気がついたら狼になってしまって」
自分でもありえない説明だとは自覚している。それでも、そうとしか答えられない。
「そんな……」
「でも、姉さんだって、義兄さんが人狼だって……いつ知ったの?俺には何も言ってなかった」
ノエルが人狼だと知っていたら、
「それは……」
言えなかった事情はシロウにも少しは理解できる。いきなり、「実はあなたのお兄さんになる人は狼なのよ」と言われて、素直に「はい、わかりました」とはいかない。
サクラコも折を見てシロウに伝えるつもりだったのではないかと思う。
「俺にも、リアムさんにもどうして俺が人狼なのかはわからないんだよ。だから……さっき、リアムさんのお父さんに尋ねたんだ」
「血がどうのって言っていたのは?」
サクラコは先天的人狼と人から人狼になることが出来る後天的人狼がいることを知らないようだった。
シロウは上手く説明できると思えなかったが、自分がわかることを最大限に伝えることにした。
「生まれながらに狼になれる人、リアムさんやノエルさんがそうなんだけど、普通の人間も人狼の血を与えられると人狼に変化するんだって」
「なら!」
「待って!最後まで聞いて」
勘違いをしそうな姉を押し留めて、続きを話す。
「姉さんは俺がリアムさんによって人狼にされたと思うかもしれないけど、そうじゃない」
「と思う」という言葉はあえて言わない。シロウが曖昧な説明をすれば、その非難が一身にリアムの身に降りかかるから。
「俺は生まれながらの人狼なんだよ」
シロウにも確信はない。でも、リアムを信じると決めたシロウにはそう答えるしかなかった。
「じゃあ、私もそうなの?もし、そうじゃなくても、血を貰ったら人狼になれるの?」
その言葉でシロウはサクラコがノエルからあまり人狼の説明を受けていないことがわかった。
「人狼は男性?雄?だけなんだ」
「そんなぁ……」
あからさまにガッカリする姉にかける言葉が見つからない。
ここまでの話からすると、サクラコはノエルと知り合うまで、人狼の存在をかけらも知らなかったのだと理解する。
両親が亡くなったとき、シロウはまだ幼かった。たとえ、両親のどちらかが人狼の家系であると知っていたとして、それをシロウに伝えたとは思えない。姉も10歳か11歳か──、狼に変身しない女性ならあえて伝えていなかった可能性もある。
でも、両親のどちらも人狼の家系でなかった場合、自分の人狼の血はどこから来たものなのだろう。
その謎を解くために、日本に行くことが決まっている──シロウの意思は無視して。
知りたいと思う一方、その真実を明るみにした時にどんな答えが見つかるのかシロウは少し怖かった。
「俺はリアムさんのことが好きだよ。姉さん」
シロウは意志の強さを見せた。
「獅郎……でも、二人とも男の子よ」
二人とも男の子って歳でもないんだけど……とお門違いなところに須臾気を取られる。
シロウは今まで興味を持った相手も、好きになった相手もいなかった。それは男性にだけでなく、女性に対しても。
だが、リアムを好きだと気づいたとき、好きになる気持ちに性別は関係ないと思った。
「男とか、女とか関係ないよ。側に……ただ側に居たいって気持ち、姉さんにもわかるよね」
サクラコは驚いた。今までサクラコはシロウがこんなにはっきりと自分の気持ち──考えを口にしたところを見たことがなかった。
「そう……。なら……でも……」
「でも」のあとに続く言葉をシロウに言うことが出来ない。サクラコはただただシロウが心配だった。それはわかってほしかった。
姉の目を見つめていたシロウは姉の手を取り、力強く握りしめた。
「大丈夫だよ」
「心配なの……」
そう言った姉が何かを思い出したようにハッと目を見開く。
「あと!人狼ってどういうこと!?」
姉の剣幕に驚くが、答えを持たない質問に何と返事をするか躊躇う。
「それは……」
「いつから!?いつからなの」
「俺にもわからないんだよ。こっちに来て、気がついたら狼になってしまって」
自分でもありえない説明だとは自覚している。それでも、そうとしか答えられない。
「そんな……」
「でも、姉さんだって、義兄さんが人狼だって……いつ知ったの?俺には何も言ってなかった」
ノエルが人狼だと知っていたら、
「それは……」
言えなかった事情はシロウにも少しは理解できる。いきなり、「実はあなたのお兄さんになる人は狼なのよ」と言われて、素直に「はい、わかりました」とはいかない。
サクラコも折を見てシロウに伝えるつもりだったのではないかと思う。
「俺にも、リアムさんにもどうして俺が人狼なのかはわからないんだよ。だから……さっき、リアムさんのお父さんに尋ねたんだ」
「血がどうのって言っていたのは?」
サクラコは先天的人狼と人から人狼になることが出来る後天的人狼がいることを知らないようだった。
シロウは上手く説明できると思えなかったが、自分がわかることを最大限に伝えることにした。
「生まれながらに狼になれる人、リアムさんやノエルさんがそうなんだけど、普通の人間も人狼の血を与えられると人狼に変化するんだって」
「なら!」
「待って!最後まで聞いて」
勘違いをしそうな姉を押し留めて、続きを話す。
「姉さんは俺がリアムさんによって人狼にされたと思うかもしれないけど、そうじゃない」
「と思う」という言葉はあえて言わない。シロウが曖昧な説明をすれば、その非難が一身にリアムの身に降りかかるから。
「俺は生まれながらの人狼なんだよ」
シロウにも確信はない。でも、リアムを信じると決めたシロウにはそう答えるしかなかった。
「じゃあ、私もそうなの?もし、そうじゃなくても、血を貰ったら人狼になれるの?」
その言葉でシロウはサクラコがノエルからあまり人狼の説明を受けていないことがわかった。
「人狼は男性?雄?だけなんだ」
「そんなぁ……」
あからさまにガッカリする姉にかける言葉が見つからない。
ここまでの話からすると、サクラコはノエルと知り合うまで、人狼の存在をかけらも知らなかったのだと理解する。
両親が亡くなったとき、シロウはまだ幼かった。たとえ、両親のどちらかが人狼の家系であると知っていたとして、それをシロウに伝えたとは思えない。姉も10歳か11歳か──、狼に変身しない女性ならあえて伝えていなかった可能性もある。
でも、両親のどちらも人狼の家系でなかった場合、自分の人狼の血はどこから来たものなのだろう。
その謎を解くために、日本に行くことが決まっている──シロウの意思は無視して。
知りたいと思う一方、その真実を明るみにした時にどんな答えが見つかるのかシロウは少し怖かった。
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる