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波に乗れる時に乗っておけ

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あっぶなかったぁぁぁ。踏みとどまった俺、エライ!!
雅を送った帰り、思わず軽くとはいえキスしてしまったが、そのまま本気で連れ帰りそうになってしまった。
ヤバイ、ヤバイ、いや、別にヤバく無いか。
びっくりした雅ちゃん、可愛かったなぁぁと、それでご飯三杯食べれそうな勢いの蒼司であった。

つまり、ご機嫌だったのである。
プロポーズもできたし、自分の意識は伝えた。
後は説得だ!!グッと拳を握りしめて、異世界に向かう蒼司だった。



クリストファーに事前に連絡し、指定された時間に転移する。

「久しぶり、クリストファー。急に魔道具頼んだりしてごめんな」
「久しぶり、蒼兄。良いよ。前にも作ったことあるし」

コトリ。と蒼司の方に置いたのは、軽く認識障害をかけたメガネ。
黒縁眼鏡がオシャレだ。

これをかければ、蒼司の印象がぼやけ、認識されにくくなる。
外に出れば何かと注目されることが多い蒼司にとって、夢のアイテムだった。

クリストファーの魔道具作りは実用一辺倒で、デザイン性はイマイチ。
つまり、ちょいとダサいのである。

眼鏡やアクセサリーに魔術を施す場合は、依頼者が持ち込む場合もあるが、それ以外は一からクリストファーが作ることもある。

あまりに非デザイン的なフォルムに見兼ねたアルスがある時デザインを買って出た。
それ以降、アルスがデザイン担当する事になったのだ。
C&Aとして、世間では人気が高い。


『何気にアルスさんが、異世界No. 1ハイスペだと思う』と、いうのが悠里の見解だ。
料理もでき、魔力も高く、器用で何でも出来る。確かに。


キチンと報酬も払い、メガネをかけてみる。

「どう?」
「うん。良い感じ。ちょいイケメンくらいには見える」
「ははは。クリストファーの基準で大丈夫かなぁ」

アルスが持って来てくれた鏡で確認すると、いい感じで印象がぼやける。
確かに、人目を引くほどでは無い。
これなら、待ち合わせしてても注目されることなく、蒼司だとわからないほどでも無い。

「あ、良い感じ。ありがとうクリストファー気に入った」
「メガネもよくお似合いです」

アルスも自分のデザインが蒼司に良く似合っていたので、ほっとした。

「アルスさんもありがとう。凄くいいな、このデザイン」

恐れ入ります、と、優雅に一礼して微笑んだ。
相変わらず洗練された物腰だ。

「あ、蒼兄いらっしゃい」

悠里がやって来た。
ポーション作りをひと段落して、休憩してたらしい。

「悠里、元気だったか?」
「うん。蒼兄は?雅ちゃんと上手く行ってる?」

蒼司はニマっと笑った。ここに来る前のデートを思い出したのだ。
やだ、と悠里はちょっと引いた。

「まあ、上手く行ってるなら、良いけど、強引なことはしないでよね」
「大丈夫だよ。そんな事しないし。大事にしてるから心配すんなって」

結婚式まであと少し、溜まってる依頼をなるべく多くこなすべく、クリストファー、悠里、アルスの3人は忙しかった。


蓮司にも会いに行く。

「久しぶり、蒼司。どう?雅ちゃんと上手く行ってる?」
「はは、悠里にも聞かれた。まあまあかな?蓮司はいつ結婚するの?」

蓮司は悠里のお披露目パーティ後からアンナさんと良い雰囲気になり、既に恋人同士になっていた。
結婚まで順調そうだ。

「そうだな、お互いの仕事の都合がつかないとな~」

蓮司は外交官に抜擢され、連日ドSウォルフに仕事を仕込まれ、あちこち行かされ、大変忙しいらしい。
アンナは副隊長として元々忙しい。

お互い頑張ろうと、検討しあった。


翌日にはレオナルドのところにも挨拶に行った。

「おぉ!よく来たな、ソージ!」
「お久しぶりです、レオさん。お元気そうで、っていうか、何か若返ってません?」
「あはは、そうだろ。ユーリのポーションだぞ。凄いんだよあれ」
「俺、土産に持たされました」
「寝る時飲んで寝てみろ、次の日肌ピカピカなんだぞ」

俄には信じられなかったが、本当に翌日、ツルツルピカピカだった。
異世界、恐るべし。

蒼司のピアノをすっかり気に入ったリタは、家に友人を招き、即席のリサイクルをした。
もちろん、ピアノも調律した。

リタの友人である王妃キャスリーンもリサイタルに来ていた。
キャスリーンも蒼司を気に入り、ぜひ、王宮のピアノも調律して欲しいし、子供たちにも聴かせたいと依頼を受けた。

王妃を通じて、異世界でもピアノの調律やリサイタルの依頼を受けたので、定期的に来る事になった。
思わぬ収穫である。

あちらでは今まで、悠里を優先していたため、表立った仕事はしてこなかったが、これからは表舞台に立つのも良いかもな、と思うようになった。

そんなこんなであっという間に一週間は過ぎた。
毎日雅には連絡していたとはいえ、会えないのはやはり寂しい。

夜、雅にメッセージを送る

『こんばんは。明日帰るよ。良かったら会わない?』

ピロリン

すぐ既読になって、返事が来た。
お、早いな、と早速読む。

『明日は残業で遅くなりそうなので、土曜はどうですか?』

明日会えなくてちょっと残念だが、その次の日の土曜、蒼司に断る選択はない。

『良いよ。何時にする?お昼一緒に食べよう』
『ちょっと遠いんですが、美味しいお蕎麦屋さんがあるって後輩に教えてもらったんですが、良かったら行きませんか?』
『良いね。じゃあ車で行くか、どこ?』
『那須の方なんですけど』

那須!?ちょっとした旅行だ。都内からなら日帰りで行けなくも無い。
え?泊まり?泊まりもあり?ちょっとドキドキして来た。

『じゃあ、ついでに温泉も入る?』
『お任せします』

任されちゃったぁぁぁ。
当然

『じゃあ、温泉付き』
『わかりました』

ぺこり、の絵文字付き。
良いんだよね?良いんだよね?雅ちゃん。
期待が膨らむ蒼司だった。
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