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有りか?有りだな

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一旦意識したら、熱い男ビル。
好きな気持ちは止まらないのだ。

だか、待てよ、と考える。まずはアルディールが成体になってるかどうかの確認だ。
年齢は成人なので問題はない、はず。
風呂の中でブクブクしながらここまで考えた。

よし、聞いてみよう、とザバァと上がった。



「あれ?早いね」
「ああ、うん。アルディールに確認したい事があって」
「何?」

無邪気に小首を傾げて聞いてくる。
手にはさっき渡したマグカップを両手持ちしていた。
くっ、かわいいかよ。

なんて聞く?成体ですか?いや違うな。え~っと。
ぐるぐる考えてたら、アルディールがついっと近寄って来て、下からビルを覗き込む。

「何?聞きにくいこと?私何かしたか?」
「いや、違うんだ・・・その・・・」
「ビル」

少し心配そうに金の瞳が揺れていた。

「さっき、家族みたいって言ったの、気に病んだならごめん。ビルに無理強いしたいわけじゃないんだ。つい嬉しくて」

そっと長いまつ毛をふせて離れようとする。
反射的にキュッと抱きしめてしまう。

「!!」
  
アルディールはかなりびっくりして固まった。

「違うんだよ、アルディール。はぁぁ、情けないな、俺は。惚れた女にこんな事言わせて」
「惚れた?」

目を丸くして下から見上げてくる。

「うん。惚れた。いつのまにか惚れてたらしい」
「ビル!!」

アルディールの顔がパァァァっと輝いて、ギュッと抱きついて来た。


「大好きっ!初めて会った時からずっと大好き!!」
「ぐぅぇぇ!強い!締め上げんな!夕飯が出るだろ」
「あ、ごめん」

慌てて緩める。
顔を見合わせてブハッと笑った。
それからまた、今度は軽~く抱きつく。

「これからもよろしくな。俺の嫁さんになってくれ」
「え?ビルが嫁じゃないの?」
「嫁って、だから俺は男だっつうの」
「だって、ビルはガヴァンになるんじゃないの?」
「え?そうなる?」
「ダメかな?」

そうか・・・その可能性は考えなかったが、有りか?
別にバルパスに固執しなくていいし、グルドは偽名だし。
ビル・ガヴァン、うん良いな。有りだな。

「ダメじゃね~な」
「相手の姓になる事を嫁じゃないの?」
「・・・違うな。俺の場合は婿だな」
「わかった。婿にもらう」

ふふふとまた二人で笑って。
自然に顔が近づいて軽く触れるだけのキスをした。

「11歳から俺が好きなら、彼氏とかどうしてたんだ?」
「いるわけないし、興味も無かったよ」
「だよな。えっ!じゃあさっきのが・・・」
「う~んと、違う」

ちょっと、ショック。さすがにキスくらいはしてるか、とビルは思った。

「相手はビルだけど」
「え!?俺?」
「ガヴァンのところに来て、高熱で倒れたでしょ。ずっと口移しでクスリ飲ませてた」
「そうだっけ?」
「意識なかったから覚えてないと思う。キスとカウントして良いかは別として」

何だ、そっか。口移しで・・・ちょっと照れるな。
じゃ、全部自分が初めて。その破壊力に本当に自分で良いのかと、申し訳なくなる。

「ビルの過去は気にしない。そんなのはどうでもいい。大事なのは今だから」

ニコリとしたアルディール。なんて男前なやつなんだと、改めて惚れ直した。

「そうだ、ジイさんのとこに挨拶に行かなくちゃな」
「うん。でも両親にもね」
「え?身内はジイさんしかいないと思ってた」

確か、ガヴァンの集落にはジイさんと二人で暮らしてたはずだ。

「いるよ。両親と兄弟達は王都に住んでる」
「はぁ!?」

ちょっと待て。よりによって王都だと!!
ジイさん、さも俺しか頼る相手がいないように書きやがって、紛らわしい。 
王都に家族がいるなら、二人暮らしは必要なかったんじゃ・・・まあ、聞かなかった俺も悪いのか。
元々俺に会いに出て来たんだしな、うん、良しとしようと、納得した。

聞けば、集落から都市に出て来ているガヴァンは思ったより多く、髪の毛も瞳も魔術で変えて市井に紛れて暮らしている人達を『隠れガヴァン』というらしい。

「だから王都にはすんなり馴染んだんだな」
「バルパスは南の国で珍しかったけど、王都はごくたまに家族に会いに来ることもあったんだ」
「なるほどな、飴玉を知ってるわけだ」

昔、アメぐらい知ってると怒られたことを思い出した。

「じゃあ、親父さんとお袋さんに挨拶に行かなきゃな」
「ありがとう。両親も喜ぶよ」
「ところで、アルディールはもう大人になったんだよな」
「うん。成体だ」
「そうか」
「いつでも子供は作れるぞ」
「ばっ!女の子がそういうこと言わない!」

ケロリと言うアルディールに、真っ赤になるビル。
これではどちらが女子か分からない。

「本当にすぐに成長するんだな」
「私はビルを番と認識してから会ってなくて途中で止まってたからな。一気にきたね。夜中全身ギシギシいってた」
「っ!無理させたんだな。すまなかった」
「気にしなくていい。結果こうしていられるんだ」

ニコリと笑うアルディール。本当に男前だ。
ビルは再度ギュッと抱きしめた。
心の底から愛おしさが湧いてくる。
自覚したのはさっきとはいえ、思いが通じ合うというのは何とも心地良い。

どこかでライラがほらな、と豪快に笑っているような気がするが、アルディールを大事にしようと心から誓った。

「あ、それと、竜になったりしないよな?」
「まさか!それはさすがに出来ないよ。竜性が強くても人間だからね」
「そうだよな」

いや、人間でもポメラニアンになれるやつがいるんだよ。
でも、竜にはならなくて良かった。
ちょっとホッとするビルだった。












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