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祖母の伝言

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時は流れ、結婚式が明日に迫ったある日、新婦側の親族と招待客を迎えに行くことになった、悠里とクリストファー。

通信機で連絡をすると、雅と蘭は久条家で既にスタンバイしてるらしい。
早速久条家に転移する。

リビングでは皆んなが和気あいあいとして2人を待っていた。

あれからちょこちょこ行き来してるし、蓮司も蒼司も何かと行き来してるため、転移はもう慣れたものだった。

父と母はレオナルドたちと意気投合し、良くネハーコの温泉に行ってるらしい。
リタによると、母の魔力も相当多く、悠里の部屋からレオナルドの屋敷まで父と2人で行けるとのことだった。
全くどうなってる?久条家。



この半年の間、あの蒼司が本気を出して頑張ったかいがあり、宣言通り、恋愛も結婚も興味が薄かった雅を見事射止め、今年結婚するところまで漕ぎ着けた。

蓮司もドS腹黒のウォルフのお眼鏡に叶い、職についたのは何と外交官だった。
魔力も多く、頭もキレて見目も良く、護身術も使え、慧眼持ちの上、外国との交渉に長けた蓮司にはピッタリだった。
その上、職を得た蓮司は怒涛のごとき頑張りを見せ、ライバル過多で、恋愛に超疎いアンナと結婚までしている。

やるときゃやる男達だったのだ。

雅とアンナに相談を受けていた悠里だけに、幸せになってくれて本当に嬉しかった。


「じゃあ後はおばあちゃん達かな?クリストファー、フランスまで一緒に行こう」

地図を広げようとした悠里。それを見た母が思い出したように言った。

「あ、そうだわ、お母さんから伝言頼まれてたの」
「「?」」
「悠里の部屋のクローゼットの中を見て欲しいんですって」
「?わかった。行ってみよう、クリストファー」
「そうだね」

詳しい地図でも置いてあるのかな?と2人は2階の悠里の部屋に入った。
クローゼットを開け、キョロキョロと見回した。

「特に何も無いけど」
「ちょっと待って」

クリストファーが悠里をとめて、そっと服をかき分けた。
奥の壁をじっと見つめている。

「どうしたの?何かあった?」
「魔法陣だ」

クリストファーが呟いた。

「何で!?クリストファーが描いたの?いつ?」
「違う。もっと古くからあったみたいだ。隠すように細工されてある。これは間違いない」

クリストファーが悠里を見て言った

「魔術師の描いた物だ」
「え?嘘?誰が?」

クリストファーの言ってることがよく分からない。
混乱したまま、クリストファーが魔法陣に手をかざし、悠里と共に転移した。

目を開けるとそこは紛れもなく、フランスにある祖母の家。
ニコニコと2人を待っていた祖父母。

「よく来たね、2人とも。久しぶりユーリ。初めましてクリストファー」
「おばあちゃん、おじいちゃん。どうして私のクローゼットに魔法陣があるの?」
「まあまあ、後でちゃんと説明してあげるから、まずは行こう。転移なんて久しぶりだわね」
「あの魔法陣はあなたが?」

クリストファーの問いかけニコリと笑う祖母。

3人は悠里の部屋に転移した。

「これは私が描いたの。あんたは小さい頃は身体が弱くて、すぐ熱を出していたのよ。夜中魔力を込めた薬を持って行って飲ませていたわ」
「!!あれ、夢じゃ無かったんだ」

悠里が小さい頃、熱を出すと決まっておばあちゃんが夢に出て来て薬を飲ませてくれていた。それを飲むと朝には不思議に熱が下がり、体調も回復していた。
あれが本当のことだったなんて・・・

「下に行きましょう説明するから」

3人はリビングにやって来た。
悠里が先程のことをかいつまんで説明する。
祖母が一歩前に出た。

「こんにちは、皆さん。実は私、魔術師なのよ」

えーっ!と一斉に驚く。
クリストファーはすでにわかっていたのか驚いてはいなかった。
悠里が聞いた。

「魔術師なのに、なんで異世界じゃなくてフランスにいるの?」
「たまたま、わたしのいた国にはフランスから来た渡り人がいたの。役目を終えて帰るって言うからその人について来てみたのよこっち異世界へ。そしたら、日本から留学してたおじいさんに出会って一目惚れしちゃって、そのまま結婚しちゃった」

うふ、と祖母は照れながら笑う。
祖父も少し照れていた。
若い頃は絶世の美女だったという祖母。

「おじいちゃんは知ってたの?」
「まぁね。麻里子が小さい時は向こうで生活してた時もあったから」

びっくりだ。ポーションは小さい頃に飲んだから母は懐かしかったのだろう。

物心が着く頃またフランスに来たらしい。
じゃあ、お母さんも覚えてないはずだ。
そして、母も孫達も魔力が多い事が納得できる。

麻里子が結婚して日本に行ってからは、頻繁にあちらとこちらは行き来していたらしい。なるほど、自由だ。


そろそろ向こうに移動することになった。
グリードエンドではレオナルドがぜひうちに泊まって欲しいと皆を招待してくれてので、ネハーコに転移する。

いつ見ても立派な屋敷に祖父母、雅、蘭はびっくりしている。

「本当にここ異世界?」
「信じられない!老舗の旅館みたい。素敵」

雅と蘭が話していた。

「俺も初めて来たときはびっくりしたよ」

カラオケもあるんだぞ、と蒼司が説明していた。
嘘でしょ、と二人は笑っていた。

蓮司はアンナと先に来て待っているらしい。


「皆さん、お待ちしておりました」

ジョルジュが玄関まで出迎えてくれていた。
それを見て、ギラン!っと反応したのは蘭だった。

「執事さん!本物!」

感激している。
実は蘭は大の執事好き。執事カフェに行くくらい好きなのだ。マニアと言っても良い。
元々制服フェチがあり、中でも執事服に目がない。

イケオジの執事姿に釘付けになっている。
無理もない。本物なのだ。

アルスを見たら、失神するかもしれない。

後で写真撮らせて下さいと、食い付かんばかりにジョルジュに、お願いしている。
突然、現れた華やかな美女に言われ、わ、私ですか?とジョルジュは混乱していた。

とりあえず中へ、と皆を居間まで案内してくれた。












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