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衣装はお揃いにしたい

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クリストファーの元にウォルフから連絡が入った。
3週間後、王宮にて夜会が開かれることになったと。
そこでクリストファーの婚約者もお披露目することになるからよろしく、とのことだった。


夜会とな!!悠里と蓮司、蒼司は当然ながら、夜会に出るような服は無い。
急遽、アルスがJ.Sに連絡を入れた。
クリストファーも背が伸びてしまったせいで新しく作らなくてはならなかった。

早速、J.Sからアランとアンリが助手を連れてやって来た。
クリストファー、蓮司、蒼司、悠里と4人が待ってる部屋に、アルスに案内されて入った。

((うっっ眩しい!!!))

クリストファーは相変わらず、いや、今まで以上に輝いているが、渡り人の3人も負けず劣らずの美しさ。
双子でこれ程の美しさはさぞかし目立つことだろう。
お揃いにするか、いっそ真逆にするか、とアイデアは止まらない。

そして、クリストファーの隣の小柄で妖精の様に可憐な女性が婚約者なのだろう。
キラキラと淡い光を放ち、幸せオーラに満ちていた。

「では、順番に採寸をさせていただきます。
それまではデザインをご提案させていただきます」

アランが応接のテーブルのうえにデザイン画を置く。

「ご希望はございますか?」

アンリが悠里に聞く。
正直、どれが正解かわからない。

「う~ん、あんまりゴテゴテと飾りが着いたのよりはシンプルで軽くてき易いのが良いのですが。あと、踊るのでこれぐらい広がるのが理想です」

レオナルドから、当日は思いっきり踊れ、と言われているので、柔らかく、軽いのが良かった。
悠里は立ち上がると左足を上げ、そのまま上げ続け、I字バランスをした。
アランとアンリはビックリした。身体が柔らかい。

「そ、それくらい上げるのですか?」
「はい。あ、ずっとじゃなくて、一瞬なんですけど、ふんわりと柔らかい生地が良いんです」

悠里は小さい頃から高校卒業までバレエを習っていた。
一時は本当に留学してプロを目指そうとしていたのだ。
足を怪我をして断念したが。

バレエの時の衣装を思い出して、こんな感じとサラサラと絵に描いてみる。
上はピッタリとして、下は柔らかいフレアスカートだ。

「ああ、なるほど。胸元はあまり開けないで、背中をこう開けるのはどうですか?紐でこう言う感じで結んで、スカート部分はこうで・・・」
「あ、素敵です」
「お色はクリストファー様と対になるように合わせましょう」
「はい。お任せします」

では、サイズをお測りしましょうと、奥の衝立をした場所にアンリと移動した。


「クリストファー様、背が伸びたと聞いたのですが」
「ああ、5cmくらいかな。澱みの影響が無くなったら魔力が活性化して、それまで止まってた成長が一気に来たみたいだ」
「ほぉぉ、そんな事があるんですね。では再度お測りいたしましょう」

アランがクリストファーを採寸する。
助手が書き取っていった。

(クリストファー様、更に神がかっていらっしゃる。雰囲気も少し和らいで、そこはかとなく色気と余裕も出て、もうパーフェクトですぅぅぅ)

アランは内心、大興奮だった。
留まること を知らない、クリストファー愛が炸裂していた。

兄達もそれぞれ採寸して行く。

「皆さん、素晴らしいです。お色はどうしましょう。4人それぞれのお色を少しずつ入れて、トータルでお揃いになるようなコーディネートでも良いかと」

アランは採寸している間も、双子達をレン兄、ソウ兄と呼んで親しくしているクリストファーを見てそう提案した。

「それで頼む。デザインは任せるよ」

クリストファーが嬉しそうにアランに微笑む。
初めて見るクリストファーの表情にアランはドキリとした。
本当に良い出会いをされたようだ、とアランまで嬉しくなった。

「ではまた一週間後に参ります」
「そんなすぐで大丈夫か?夜会があるから忙しいだろう」
「いいえ。主役であるクリストファー様方を最優先とさせていただきますので、ご心配なく」

アランとアンリ達はそれでは、とにこやかに去って行った。




そして一週間後、またアラン一行がやってきたのだった。

「刺繍や飾りはこれからなので、着心地はどうでしょうか」
「うん、しっくりくる」
「俺も大丈夫」
「俺も。凄いな、一週間で」
「3人とも凄く似合ってる!素敵」

悠里はパチパチと手を叩く。
蓮司と蒼司は黒ベース、クリストファーは白ベースのフロックコートに、3人お揃いのシルバーブルーのベストとタイ。
悠里は白のノースリーブドレスにスカート部分はシフォンがいく層かに重なり、軽やかでふんわりとしていた。

「ユーリもよく似合ってる」
「そう?軽くて動き易い」

くるりと悠里が一回転すると、スカートがふわりと美しく広がった。

「まだ完成ではなくて、クリストファー様はユーリ様の瞳に近いゴールドの刺繍、ユーリ様、レンジ様、ソージ様は紫とシルバーの刺繍をさせていただこうと思いますが、いかがですか?」
「刺繍はレン兄、ソウ兄とお揃い?」
「はい、そうします」
「じゃあ、いいよ」

細かく調整したあと、では完成したらお持ちいたします、とアランとアンリは屋敷を後にした。


「後は夜会のダンスの練習する?」

悠里が彼らに聞く。

「ピアノは俺が弾く。蓮司は悠里とバレエ習ってたから大丈夫だけど、クリストファーって踊れるの?」
「一通り習ってはいたけど、この間ユーリが踊っていたようなのは初めて」
「わかった。じゃあ、俺に任せて」

蓮司と蒼司は悠里の習い事だったバレエを一緒に習っていた。
蓮司が先生役を買って出る。

何でも出来るクリストファーは飲み込みも早く、蓮司の指導でメキメキ上達、悠里との息もピッタリですぐに夜会用の踊りをマスターした。

「当日、楽しみだね」
「どうせならみんなをビックリさせてやろう」

悠里とクリストファーはお互いに顔を見合わせてふふふと笑った。










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