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【番外編】ローザの誕生日
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言ってる側から違う番番外編でごめんなさい。
これは本編終了前から書こうと思っていたのです。
————————————————————————
ローザの誕生日がもうすぐやって来る。
シモンさんと結婚して三年。子育てに疲れてる彼女に元気になるプレゼントを送りたい。
しかし彼女はオシャレだからな~。
小学校から仲良いから、正直プレゼントはもう出し尽くした感じ。
今年は何にしようと、買い物ついでに街をぶらついていた。
ふと、古本屋が目についた。
吸い込まれるように中に入る。
暗がりの一角に、忘れられたように、一冊の本があった。
手に取ってみると、それは古びた写真集だった。
「こ、これは!!!」
中をぺらりとめくると、若き日のレオナルドさんとアーサーさん。
J.Sの伝説のモデルとして活躍していた頃の写真集であった。
おおっ!凄い!二人とも超絶イケメン!
これだ、これをローザのプレゼントにしよう。
ローザはレオナルドさんのファンだ。
きっと喜んでくれるはず。
買って外に出ると、やっぱりかなり色褪せてボロい感はある。
う~ん。これ、何とかならんかなぁ。
せっかくなら、綺麗にしてプレゼントしたい。
家に帰って、早速写真集を前に考える。
試しに回復魔法をかけてみた。
変化なし。
まぁ、そうだよね~。
うーむ。どうするかな・・・
劣化を修復するんでしょう。
綺麗にする。戻す。戻す・・・
そうか!時を戻すって考えたらどうだろう。
新刊当初まで時間を遡ったら綺麗になるよね。
そうと決まれば魔術書で調べてみないとな。
家中の魔術書を持ってきてリビングの机の上に積み上げる。
一つ一つ丹念に調べてみるものの、時間を遡る魔術は書いてなかった。
書いてないなあ。図書館で調べてみるか。
私は家事と育児の合間を縫って図書館に通い、あらゆる魔術書を調べてみたが、惜しい感じのはある。
上級魔術書を何冊か借りて家に帰った。
夜、3人の子供達を寝かしつけ、リビングで魔術書を読んでいると、横からグラントが覗き込んで来た。
手にはお茶があり、淹れてくれたらしい。
さすが、我が夫よ!
「ミランダ、最近魔術書とにらめっこしてるけど、なに調べてるの?」
「劣化した物質の時を遡る方法は無いかなって。何か良い方法あるかな」
「物質の時を遡るねぇ。随分難しい魔術だな。アシュレイに相談してみては?」
「アシュレイさんかぁ。魔術研究所に勤めてるんだっけ?聞いてみようかな」
「連絡しておくよ」
「ありがとう。忙しそうだったら、無理しなくて良いよって言っておいて。自分でも探してみるから」
「わかった」
それから図書館で借りてきた魔術書を基に自分で魔法陣を描いて色々工夫してみたりしたが、中々上手くいかない。
魔術ってイメージが大事だもんね。
だから、物質の素となる紙の素材から時間を戻していくようにしてみるか。
本の元になる植物の繊維を調べ、本になって行く工程を調べたり、実際の紙を作ってる工場や製本作業を見学させてもらった結果、どうやって本が出来ているのか、物凄くくわしくなってしまった。
頭の中でイメージしてみる。
痛んだ繊維が綺麗に戻っていくイメージ。
古本屋に行って練習用にと特にボロい本を何冊か買い、イメージしながら修復していく方法を探る。
色んな方法を試しているうちに、アシュレイさんから連絡があった。
物質の時を遡る魔術というものに興味を持ってくれとらしい。
買い込んだ古本とともに、アシュレイさんの魔術研究室に行く。
子供たちはグラントにお願いした。
普段は仕事が忙しくて、夜遅いお父さんが一緒にいられると知って、子供たちはグラントにべったりだ。
なんだか私といるより楽しそうだな。
研究室の扉をノックすると、すぐに応えがあった。
「お邪魔します。ミランダです」
「ようこそ、ミランダさん。遠慮しないで入って」
学生時代は全くと言って良いほど接点もなかったのだが、グラントと結婚してからは親戚の集まりとかで何回か会ったが、いまだにどういう人かはわからない。
「兄貴から聞いたよ。劣化した物質の時を遡る魔術を探してるって。具体的に物はなに?」
「あ、これです」
私は一冊の写真集を取り出した。
「これ?」
ブルーグレーの綺麗な瞳がジロリとこちらを見た。
え?なに?何か文句でも?
「何だ、もっと貴重な魔術書とか文書とかじゃ無いんだ」
何か小さい声でぶつぶつ文句言ってるけど、私にとってはローズのプレゼントは大事な物なんですよ。
嫌なら協力してもらわなくても・・・
「ダメですか?お忙しいなら・・・」
「いや、いいよ。面白そうだ」
くく、と笑いをこらえながら了解してくれた。
良いんかい!
似てるんだけど、表情の作り方とか違うから、やっぱり別人なんだな、っていうのがわかる。
まぁ、筋肉差し引いても、私はグラントが好きなんだなと改めて思った。
「今まで作った魔法陣とか魔術を見せてくれる?」
「はい。これなんですけど」
バインダーに挟まった分厚い紙の束を渡す。
その量にちょっと驚いたようだ。
「魔術も試してみて良いですか?」
軽く頷いて促してくれたので、練習用の一番ボロい古本を取り出した。
表面も擦り切れて、何の本だかさっぱりわからない。
机の上に置き、下に魔術をより効果的に作用させる魔法陣を敷いて集中した。
本の工程を調べたおかげで、物凄く詳細にイメージ出来る。
え~っと、後は両手の平に意識を集中して魔力を練り上げる。
古本がパァァァと光り始め、そのまましばらくかけ続けた。
若干?気持ち程度?綺麗になった気がする。どう?
表面の文字がうっすら読める。
アシュレイさんを見るとビックリしている。
何でだ?
すぐに本を持ち上げてひっくり返したり、中をパラパラとめくったりして確認している。
「これ、どうやって魔力練り上げたの?」
「えっと、本の繊維とか、工程を調べたんです。それで、本の痛んだ繊維を元に戻すようイメージしてしてみました」
「なるほど。物の繊維ね。表面上ではなく素材その物に注目したわけね」
「はいそうです」
なるほど、とまたもやブツブツ言いながら、本を見ている。
「戻ってるよ。時間」
「へ?だって、あまり変わってないですよね」
「うん、だってこの本、何百年も前のだから。多少かけたくらいじゃ変わらないよね」
何と!!!本が古すぎて時が戻ってても、見た目は変わんなかったのか。
おうっ、なんて事だ!方法としては合ってたんだな。なんだ、少し古いくらいだったらすぐにわかったのに。
「実際戻したい本でやってみたら?大丈夫だと思うよ」
「はい。やってみます」
「あ、戻りすぎると、原料になるかもしれないから気をつけて」
ひえっ!そうか、そうなるのか。それはダメだ。
先程より精密にイメージして、魔力を練り上げて行く。
製本した日をみたら30年前だった。
両手の平に意識を集中し、魔力で本を覆うように放つ。
パァァァっと光って、しばらくすると、逆再生するように本が綺麗になっていった。
おおっ!戻ってる、戻ってるよ!
夢中でかけ続けた。
「ストップ!」
アシュレイさんが声をかけてくれたタイミングで手を離す。
机の上には新品同様の写真集があった。
凄い!新品だぁ。中身は?と思ってそっと持ち上げて中を見る。
そこには鮮やかに微笑むレオナルドさんとアーサーさんがいた。
いやった~!!成功した。
「出来た!成功しました!ありがとうございます」
「いや、俺は声かけただけだけどね」
「いえいえ、ボロい本でばかり試してたので。そこに気付けたのはアシュレイさんのお陰だよ」
私は満面の笑みで答えた。
ちょっとびっくりしたあと、苦笑する。
「何でボロいので練習するんだよ。相変わらず変な奴だな」
相変わらず?そんな風に言われる程接点ないはずだけど。
不思議そうにしてたのに気がついたのか、アシュレイさんが付け加えた。
「いつも教室で脇目も振らずに勉強ばっかりしてただろ。ガリ勉は案外目立つんだよ」
「へ~、知らなかった」
ふーん、そうなんだ。
さて、目的は達成したし、帰るとするか。
「じゃあ、そろそろ帰ります。お邪魔しました」
「あ、ちょっと待って。新しい魔術として登録するから、これに記入して」
「そんな大袈裟なもんじゃないんですけど・・・」
「アホ!周りに影響を出さずに物質の時だけを戻すって、かなり難しいんだぞ。凄い繊細にコントロールしてるはずだ」
そうかな?言われてみればそうかも。
私は頷いた。
「わかりました。記入します」
質問事項に記入し、アシュレイさんからも足りないところを確認してもらって、書き足した。
案外と面倒。
「魔術開発者はミランダ・ロックス、と、以上で終わりだ。ちなみにまだ魔力に余裕があるなら、この本も読めるくらいまで戻して欲しい」
「良いですよ」
見れば、初めに試した数百年前の古い本だった。
先程の要領で時を戻して行く。
おお!何か楽しくなってきたぞ。
しばらくは表紙に変化はなかったが、段々と色が鮮やかになって、掠れていた文字もくっきりしてきた。
凄い古い魔術書のようだ。
一旦止めて、中を確認する。
おお!読める。今は使われていない魔術のようだ。
古の魔術書ねえ、ロマンがあるなぁ。
アシュレイさんを見ると、目をまん丸にして食い入るように本を見てる。
何?何?そんなに貴重な物?
本をパラリとめくり、読める事を確認すると、眉根を寄せてこちらを見た。
「何で、魔術師になんなかったんだよ。こんなに才能あるのに事務官なんて勿体ない。兄貴が目的だったのか?」
「まさか!違うよ(まあ、しいて言えば騎士全員?)」
「今からでも遅くないからなれよ魔術師。推薦してやるから」
「や~、まだ子供小さいからなぁ。もう少ししたら考えるよ」
若干適当に答える。
「ふーん。わかった。本の修復ありがとう」
「貴重なな本だったの?」
「まぁね。歴史的に貴重な本だったから助かった」
「古本屋に積まれてたの適当にまとめて買ったらおまけでもらったんだよ、確か」
「ヘぇ~。古本屋も知らなかったんだな。とにかくありがとう」
「どういたしまして。じゃ、帰るね」
ニッコリして送り出してくれた。
今日はローザと娘をうちに呼んでランチにした。
ローザの子はシルヴィアとしいい、淡い金髪に紺色の瞳の可愛い子なのだ。うちのヴィアンカの一つ下で仲が良い。
二人はキャッキャとおままごとをしている。
早速、ラッピングした本をローザにプレゼントした。
「ローザ、開けてみて!」
「わあ、ありがとう。本かな」
「ふふふ。開けてからのお楽しみ」
何かな~と言いながらラッピングを解くと、中から写真集が出て来た。
ローザの顔が見る見る輝いた。
「これ!J.Sの写真集じゃない!凄い!こんなお宝よく見つけたね。しかも新品同様で!!」
「ふ、ふ、ふ。実は古本屋で見つけて、修復するために魔術を編み出したんだよ」
「ええ!わざわざその為に!凄いね、ミランダどうやったの?」
「実は、本だけ製本時まで時間を戻してるんだよ」
「何それ。もしかして物凄い魔術なんじゃないの?」
聞いたローザが若干引いた。
「どうかな?アシュレイさんに新しい魔術として登録する様言われて登録したけどね」
「ミランダってば・・・本当、昔からくだらない事にかける情熱は半端無いよね」
「くだらなくないよ!ローザのプレゼントだよ」
「ふふ、そうだね。ありがとう!本っっっ当に嬉しい」
「良かった。頑張った甲斐があったよ」
「大事にするね」
それから、二人できゃあきゃあ言いながら、写真集を見た。 ほぅぅぅ、とため息しか出ない。
レオナルドさんも、現バルパス国王アーサー陛下も若い頃カッコよかったんだたなぁ。
アーサー陛下は本当だビルさんとよく似てる。
ビルさんもカッコいいもんね。
レオナルドさんはクリストファーさんとよく似てるな、さすが親子。
平和な昼下がりであった。
*****
魔術局魔術研究所所長ライオネル・エコードは、アシュレイ・ロックスの持ってきた本と報告書を見て驚いた。
「この本が、始まりの魔術師と呼ばれるアダモス・ゴードンの残した魔術書か。王国から二百年前に突如として消え失せてから、王都の古本屋で見つかるとはな。不思議なもので、この魔術書自身にはゴードンの意志が乗り移ってると言われているそうだ」
「たまたま買った古本のおまけでもらってそうですよ」
「魔術書が相手を選んだのかもしれないな」
「特に魔力を消費して辛そうにはしてなかったので、この本との魔力の相性も良かったのでしょうね」
「ミランダ・ロックスは魔術師になると?」
「子供が小さいのでもう少ししたら考えるそうです」
「わかった。魔術研究所からモーリス陛下にそう進言しておこう」
私の預かり知らぬところで、魔術師になる計画が着々と進行しているのだった。
これは本編終了前から書こうと思っていたのです。
————————————————————————
ローザの誕生日がもうすぐやって来る。
シモンさんと結婚して三年。子育てに疲れてる彼女に元気になるプレゼントを送りたい。
しかし彼女はオシャレだからな~。
小学校から仲良いから、正直プレゼントはもう出し尽くした感じ。
今年は何にしようと、買い物ついでに街をぶらついていた。
ふと、古本屋が目についた。
吸い込まれるように中に入る。
暗がりの一角に、忘れられたように、一冊の本があった。
手に取ってみると、それは古びた写真集だった。
「こ、これは!!!」
中をぺらりとめくると、若き日のレオナルドさんとアーサーさん。
J.Sの伝説のモデルとして活躍していた頃の写真集であった。
おおっ!凄い!二人とも超絶イケメン!
これだ、これをローザのプレゼントにしよう。
ローザはレオナルドさんのファンだ。
きっと喜んでくれるはず。
買って外に出ると、やっぱりかなり色褪せてボロい感はある。
う~ん。これ、何とかならんかなぁ。
せっかくなら、綺麗にしてプレゼントしたい。
家に帰って、早速写真集を前に考える。
試しに回復魔法をかけてみた。
変化なし。
まぁ、そうだよね~。
うーむ。どうするかな・・・
劣化を修復するんでしょう。
綺麗にする。戻す。戻す・・・
そうか!時を戻すって考えたらどうだろう。
新刊当初まで時間を遡ったら綺麗になるよね。
そうと決まれば魔術書で調べてみないとな。
家中の魔術書を持ってきてリビングの机の上に積み上げる。
一つ一つ丹念に調べてみるものの、時間を遡る魔術は書いてなかった。
書いてないなあ。図書館で調べてみるか。
私は家事と育児の合間を縫って図書館に通い、あらゆる魔術書を調べてみたが、惜しい感じのはある。
上級魔術書を何冊か借りて家に帰った。
夜、3人の子供達を寝かしつけ、リビングで魔術書を読んでいると、横からグラントが覗き込んで来た。
手にはお茶があり、淹れてくれたらしい。
さすが、我が夫よ!
「ミランダ、最近魔術書とにらめっこしてるけど、なに調べてるの?」
「劣化した物質の時を遡る方法は無いかなって。何か良い方法あるかな」
「物質の時を遡るねぇ。随分難しい魔術だな。アシュレイに相談してみては?」
「アシュレイさんかぁ。魔術研究所に勤めてるんだっけ?聞いてみようかな」
「連絡しておくよ」
「ありがとう。忙しそうだったら、無理しなくて良いよって言っておいて。自分でも探してみるから」
「わかった」
それから図書館で借りてきた魔術書を基に自分で魔法陣を描いて色々工夫してみたりしたが、中々上手くいかない。
魔術ってイメージが大事だもんね。
だから、物質の素となる紙の素材から時間を戻していくようにしてみるか。
本の元になる植物の繊維を調べ、本になって行く工程を調べたり、実際の紙を作ってる工場や製本作業を見学させてもらった結果、どうやって本が出来ているのか、物凄くくわしくなってしまった。
頭の中でイメージしてみる。
痛んだ繊維が綺麗に戻っていくイメージ。
古本屋に行って練習用にと特にボロい本を何冊か買い、イメージしながら修復していく方法を探る。
色んな方法を試しているうちに、アシュレイさんから連絡があった。
物質の時を遡る魔術というものに興味を持ってくれとらしい。
買い込んだ古本とともに、アシュレイさんの魔術研究室に行く。
子供たちはグラントにお願いした。
普段は仕事が忙しくて、夜遅いお父さんが一緒にいられると知って、子供たちはグラントにべったりだ。
なんだか私といるより楽しそうだな。
研究室の扉をノックすると、すぐに応えがあった。
「お邪魔します。ミランダです」
「ようこそ、ミランダさん。遠慮しないで入って」
学生時代は全くと言って良いほど接点もなかったのだが、グラントと結婚してからは親戚の集まりとかで何回か会ったが、いまだにどういう人かはわからない。
「兄貴から聞いたよ。劣化した物質の時を遡る魔術を探してるって。具体的に物はなに?」
「あ、これです」
私は一冊の写真集を取り出した。
「これ?」
ブルーグレーの綺麗な瞳がジロリとこちらを見た。
え?なに?何か文句でも?
「何だ、もっと貴重な魔術書とか文書とかじゃ無いんだ」
何か小さい声でぶつぶつ文句言ってるけど、私にとってはローズのプレゼントは大事な物なんですよ。
嫌なら協力してもらわなくても・・・
「ダメですか?お忙しいなら・・・」
「いや、いいよ。面白そうだ」
くく、と笑いをこらえながら了解してくれた。
良いんかい!
似てるんだけど、表情の作り方とか違うから、やっぱり別人なんだな、っていうのがわかる。
まぁ、筋肉差し引いても、私はグラントが好きなんだなと改めて思った。
「今まで作った魔法陣とか魔術を見せてくれる?」
「はい。これなんですけど」
バインダーに挟まった分厚い紙の束を渡す。
その量にちょっと驚いたようだ。
「魔術も試してみて良いですか?」
軽く頷いて促してくれたので、練習用の一番ボロい古本を取り出した。
表面も擦り切れて、何の本だかさっぱりわからない。
机の上に置き、下に魔術をより効果的に作用させる魔法陣を敷いて集中した。
本の工程を調べたおかげで、物凄く詳細にイメージ出来る。
え~っと、後は両手の平に意識を集中して魔力を練り上げる。
古本がパァァァと光り始め、そのまましばらくかけ続けた。
若干?気持ち程度?綺麗になった気がする。どう?
表面の文字がうっすら読める。
アシュレイさんを見るとビックリしている。
何でだ?
すぐに本を持ち上げてひっくり返したり、中をパラパラとめくったりして確認している。
「これ、どうやって魔力練り上げたの?」
「えっと、本の繊維とか、工程を調べたんです。それで、本の痛んだ繊維を元に戻すようイメージしてしてみました」
「なるほど。物の繊維ね。表面上ではなく素材その物に注目したわけね」
「はいそうです」
なるほど、とまたもやブツブツ言いながら、本を見ている。
「戻ってるよ。時間」
「へ?だって、あまり変わってないですよね」
「うん、だってこの本、何百年も前のだから。多少かけたくらいじゃ変わらないよね」
何と!!!本が古すぎて時が戻ってても、見た目は変わんなかったのか。
おうっ、なんて事だ!方法としては合ってたんだな。なんだ、少し古いくらいだったらすぐにわかったのに。
「実際戻したい本でやってみたら?大丈夫だと思うよ」
「はい。やってみます」
「あ、戻りすぎると、原料になるかもしれないから気をつけて」
ひえっ!そうか、そうなるのか。それはダメだ。
先程より精密にイメージして、魔力を練り上げて行く。
製本した日をみたら30年前だった。
両手の平に意識を集中し、魔力で本を覆うように放つ。
パァァァっと光って、しばらくすると、逆再生するように本が綺麗になっていった。
おおっ!戻ってる、戻ってるよ!
夢中でかけ続けた。
「ストップ!」
アシュレイさんが声をかけてくれたタイミングで手を離す。
机の上には新品同様の写真集があった。
凄い!新品だぁ。中身は?と思ってそっと持ち上げて中を見る。
そこには鮮やかに微笑むレオナルドさんとアーサーさんがいた。
いやった~!!成功した。
「出来た!成功しました!ありがとうございます」
「いや、俺は声かけただけだけどね」
「いえいえ、ボロい本でばかり試してたので。そこに気付けたのはアシュレイさんのお陰だよ」
私は満面の笑みで答えた。
ちょっとびっくりしたあと、苦笑する。
「何でボロいので練習するんだよ。相変わらず変な奴だな」
相変わらず?そんな風に言われる程接点ないはずだけど。
不思議そうにしてたのに気がついたのか、アシュレイさんが付け加えた。
「いつも教室で脇目も振らずに勉強ばっかりしてただろ。ガリ勉は案外目立つんだよ」
「へ~、知らなかった」
ふーん、そうなんだ。
さて、目的は達成したし、帰るとするか。
「じゃあ、そろそろ帰ります。お邪魔しました」
「あ、ちょっと待って。新しい魔術として登録するから、これに記入して」
「そんな大袈裟なもんじゃないんですけど・・・」
「アホ!周りに影響を出さずに物質の時だけを戻すって、かなり難しいんだぞ。凄い繊細にコントロールしてるはずだ」
そうかな?言われてみればそうかも。
私は頷いた。
「わかりました。記入します」
質問事項に記入し、アシュレイさんからも足りないところを確認してもらって、書き足した。
案外と面倒。
「魔術開発者はミランダ・ロックス、と、以上で終わりだ。ちなみにまだ魔力に余裕があるなら、この本も読めるくらいまで戻して欲しい」
「良いですよ」
見れば、初めに試した数百年前の古い本だった。
先程の要領で時を戻して行く。
おお!何か楽しくなってきたぞ。
しばらくは表紙に変化はなかったが、段々と色が鮮やかになって、掠れていた文字もくっきりしてきた。
凄い古い魔術書のようだ。
一旦止めて、中を確認する。
おお!読める。今は使われていない魔術のようだ。
古の魔術書ねえ、ロマンがあるなぁ。
アシュレイさんを見ると、目をまん丸にして食い入るように本を見てる。
何?何?そんなに貴重な物?
本をパラリとめくり、読める事を確認すると、眉根を寄せてこちらを見た。
「何で、魔術師になんなかったんだよ。こんなに才能あるのに事務官なんて勿体ない。兄貴が目的だったのか?」
「まさか!違うよ(まあ、しいて言えば騎士全員?)」
「今からでも遅くないからなれよ魔術師。推薦してやるから」
「や~、まだ子供小さいからなぁ。もう少ししたら考えるよ」
若干適当に答える。
「ふーん。わかった。本の修復ありがとう」
「貴重なな本だったの?」
「まぁね。歴史的に貴重な本だったから助かった」
「古本屋に積まれてたの適当にまとめて買ったらおまけでもらったんだよ、確か」
「ヘぇ~。古本屋も知らなかったんだな。とにかくありがとう」
「どういたしまして。じゃ、帰るね」
ニッコリして送り出してくれた。
今日はローザと娘をうちに呼んでランチにした。
ローザの子はシルヴィアとしいい、淡い金髪に紺色の瞳の可愛い子なのだ。うちのヴィアンカの一つ下で仲が良い。
二人はキャッキャとおままごとをしている。
早速、ラッピングした本をローザにプレゼントした。
「ローザ、開けてみて!」
「わあ、ありがとう。本かな」
「ふふふ。開けてからのお楽しみ」
何かな~と言いながらラッピングを解くと、中から写真集が出て来た。
ローザの顔が見る見る輝いた。
「これ!J.Sの写真集じゃない!凄い!こんなお宝よく見つけたね。しかも新品同様で!!」
「ふ、ふ、ふ。実は古本屋で見つけて、修復するために魔術を編み出したんだよ」
「ええ!わざわざその為に!凄いね、ミランダどうやったの?」
「実は、本だけ製本時まで時間を戻してるんだよ」
「何それ。もしかして物凄い魔術なんじゃないの?」
聞いたローザが若干引いた。
「どうかな?アシュレイさんに新しい魔術として登録する様言われて登録したけどね」
「ミランダってば・・・本当、昔からくだらない事にかける情熱は半端無いよね」
「くだらなくないよ!ローザのプレゼントだよ」
「ふふ、そうだね。ありがとう!本っっっ当に嬉しい」
「良かった。頑張った甲斐があったよ」
「大事にするね」
それから、二人できゃあきゃあ言いながら、写真集を見た。 ほぅぅぅ、とため息しか出ない。
レオナルドさんも、現バルパス国王アーサー陛下も若い頃カッコよかったんだたなぁ。
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「たまたま買った古本のおまけでもらってそうですよ」
「魔術書が相手を選んだのかもしれないな」
「特に魔力を消費して辛そうにはしてなかったので、この本との魔力の相性も良かったのでしょうね」
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「子供が小さいのでもう少ししたら考えるそうです」
「わかった。魔術研究所からモーリス陛下にそう進言しておこう」
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『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
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不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
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