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第1章・王弟の反乱 編
003:運命の出会い
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北星暦112年、蝦夷領函館県。
共和国軍が函館湾を攻撃してから10年の月日が経って、俺は16歳になった。
体も見違える程、大きくなり179cmまで伸びた。
身長もそうだが、体も10年間鍛え続けて16歳とは思えないムキムキな筋肉を手に入れた。
そして俺は今日、叔母さんの家を出る。
「叔母さんっ! 今日までの10年間、本当にお世話になりました! ありがとうございました!」
「良いんだよぉ。それよりも本当に、このウチを出て行って兵士になるのかい?」
「はいっ! それが俺の夢であり、父の夢でもあるので絶対に兵士になります!」
「そうかい、それは寂しくなるねぇ。宗一郎さんの事もあるし、本当に気をつけるんだよ」
俺は叔母さんに10年分の感謝を伝える。
叔母さんとしても10年間も、一緒に暮らしていた為に寂しく思ってくれているみたいだ。
俺だって第2の母と父だと思っているので、この家を後にするのは寂しい。
だけど父との約束や俺の夢もある。
ここを飛び出して戦わなければいけないんだ。
そう決意した俺は深々と頭を下げて、叔母さんに挨拶をして家を出発する。
叔母さんは俺に向かって全力で手を振る。
俺も見えなくなるまで手を振った。
そして遂に俺の人生がスタートする。
「えぇと兵士募集をしているのわぁ………陸奥領岩盛県で募集してるのか。ここからだと函館港から津軽外浜県に渡らなきゃダメか」
現在兵士を募集しているのは〈陸奥領岩盛県(旧岩手県)〉の第6師団しか無かった。
その為、函館港から津軽外浜県に渡る。
そこから馬で岩盛県に向かうというルートだ。
両親と暮らしていた時は函館港の近くに住んでいた。
しかし叔母さんの家に引き取られてからは、少し首都よりのところに住んでいたので、まずは函館港に行かなければいけない。
金はある程度はあるので、港行きの馬車を止めて乗り込んで函館港に向かうのである。
「なぁ兄ちゃん、随分と若そうだけど、いくつだぁ?」
「俺ですか? 俺は今年で16になりました」
馬車の運転手が聞いて来たので素直に答える。
すると「16歳?」と聞き返すくらい驚いている。
運転手的には俺が若いと思っていたが、16歳まで若いとは思っていなかったらしい。
それから運転手は「函館港で働くのか?」と、俺が出稼ぎに来たんだと考えた。
しかし俺は函館港で働くわけじゃ無い。
だから素直に答える。
「いや、岩盛県まで行って兵士の試験を受けるんです」
「なっ!? その歳で兵士になるのか!?」
俺は兵士になる為に陸奥領に行くんだと説明した。
運転手は俺の方を見るくらい驚いている。
普通は18歳くらいから志願する人が多いので、俺のように16歳くらいから志願するのは珍しい。
運転手は言いづらそうに「やめた方が良いんじゃないかな?」と止めて来たのである。
心配してくれるのは良いが、もう覚悟は決まっているので、周りに止められても兵士になるつもりだ。
「そういうわけにもいかないんですよ。心配して貰ってありがとうございます」
「そうかそうか、覚悟はできてるみたいだね。なんか野暮な事を言ってしまって悪かったね。俺の倅が先日の戦争で命を落としたんだ………君に倅を重ねていたのかもしれないな」
この人の息子も兵士で、少し前に起こった戦争で命を落としたのだと運転手は話してくれた。
自分の亡くした息子と、俺の事を重ねている。
だから俺の事を心配してくれたわけだ。
兵士になるのを辞めるつもりは無いが、こんな風に心配してもらえるのは良いものだ。
その後は運転手と意気投合して、色々な雑談で港までの道中を楽しみながら進むのである。
すると運転手が前を指差して「見えて来たぞ!」と、俺に函館港が見えて来た事を伝えてくれた。
俺はスッと馬車の窓から顔を出して見てみると、何年振りだろうかと思う程に久しぶりの函館港だ。
「ここら辺で良いな? 金は半額で良いぞ。コレから大変なんだろ? なら金は貯めておいた方が良い」
「本当ですか!? それは本気でありがたいです!」
ここまでの馬車代を請求されるが、普段請求している額の半分で良いと言ってくれた。
コレは本当に助かる。
これからどれだけの金がかかるのか。
馬車代が節約できたのは大きな収穫だ。
俺は運転手にペコペコッと頭を下げて、馬車が出発するのを見送ってから「よし!」と船場を目指す。
ちょうど津軽外浜に行く便が無いので、とりあえず食事を済ませる事にした。
函館港と言えば海産物だ。
海鮮丼がある店に入って、さすがに上は頼めなかったので並を注文するのである。
するとお腹が空いている俺の前に、ドンッと盛りの良い海鮮丼が到着した。
俺は思わず「美味そうぉ!」と声が出た。
手を合わせて「いただきます!」と言ってから、割り箸を取って海鮮丼に醤油をかける。
そして食べようとした時、店の窓から外が見えたのだが、黒色のローブを着た怪しい人間を発見する。
「なんだ? あんな明らかに怪しそうな格好で……まぁ悪い事してるわけじゃ無いし無視するか」
黒色の怪しいローブを着ているが、何をしていないし俺が何かをする道理は無いと飯を掻っ込む。
あまりの美味しさに10分もしないで食べ終わった。
満足した俺は仕上げに味噌汁を飲み干す。
そして食べ終わると金を、テーブルの上に置いてから満足げに店を後にするのである。
こんなに早く食べ終わると思っていなかった俺は、早いかもしれないが港の近くまで行って休むと決めた。
食事も終わってルンルン気分で歩く。
すると向こうから、さっきのローブを着た怪しい人間が歩いてくるのである。
あっちこっちを歩き回っているのか。
ちょっと分からないが、ああいう人間には関わらない方が良いなと身を合わせないようにする。
だんだんと近づいてきてギリギリのところを通る。
俺は体の芯からザワッとする。
そして反射的に振り返ってローブの人間の手を掴む。
この感じでは女ではなく男だと分かった。
「アンタ、なんで殺気を放ってんだ? 何か悪い事でもしようとしてんじゃねぇだろうな?」
ザワッとしたのはローブの男から殺気を感じたからであり、なんで殺気を放っているのかと聞く。
しかし男は「………」と無言を貫いている。
普通は動揺するか、それとも直ぐに言い訳するかのどちらかだと思っている。
だが男は動揺する様子も言い訳する様子も無い。
それに最大限の違和感を感じる。
明らかに何かを企んでいるような気がする。
「俺は殺気を放っていたのか?」
芯のあるような強い声だ。
低いとか高いとかではなく、声に力強さを感じる。
その声を聞いて、少し困惑したが「あぁ放ってた」と男に伝えるのである。
「すまなかった。少し理由があってな………誰かを害そうとか、そういうわけじゃ無いんだ」
「それじゃあ何で殺気なんて出してんだよ? 理由ってどんな理由があんだよ?」
俺は何の理由があって殺気を放っているかを聞いた。
すると男は周りを少しキョロキョロして見渡してからフードを少し上げた。
俺は目を細めて顔を確認する。
そして首を捻る。
どこかで見たような顔だ………。
思い出した。
この男は北星王国の第1王子だ!
共和国軍が函館湾を攻撃してから10年の月日が経って、俺は16歳になった。
体も見違える程、大きくなり179cmまで伸びた。
身長もそうだが、体も10年間鍛え続けて16歳とは思えないムキムキな筋肉を手に入れた。
そして俺は今日、叔母さんの家を出る。
「叔母さんっ! 今日までの10年間、本当にお世話になりました! ありがとうございました!」
「良いんだよぉ。それよりも本当に、このウチを出て行って兵士になるのかい?」
「はいっ! それが俺の夢であり、父の夢でもあるので絶対に兵士になります!」
「そうかい、それは寂しくなるねぇ。宗一郎さんの事もあるし、本当に気をつけるんだよ」
俺は叔母さんに10年分の感謝を伝える。
叔母さんとしても10年間も、一緒に暮らしていた為に寂しく思ってくれているみたいだ。
俺だって第2の母と父だと思っているので、この家を後にするのは寂しい。
だけど父との約束や俺の夢もある。
ここを飛び出して戦わなければいけないんだ。
そう決意した俺は深々と頭を下げて、叔母さんに挨拶をして家を出発する。
叔母さんは俺に向かって全力で手を振る。
俺も見えなくなるまで手を振った。
そして遂に俺の人生がスタートする。
「えぇと兵士募集をしているのわぁ………陸奥領岩盛県で募集してるのか。ここからだと函館港から津軽外浜県に渡らなきゃダメか」
現在兵士を募集しているのは〈陸奥領岩盛県(旧岩手県)〉の第6師団しか無かった。
その為、函館港から津軽外浜県に渡る。
そこから馬で岩盛県に向かうというルートだ。
両親と暮らしていた時は函館港の近くに住んでいた。
しかし叔母さんの家に引き取られてからは、少し首都よりのところに住んでいたので、まずは函館港に行かなければいけない。
金はある程度はあるので、港行きの馬車を止めて乗り込んで函館港に向かうのである。
「なぁ兄ちゃん、随分と若そうだけど、いくつだぁ?」
「俺ですか? 俺は今年で16になりました」
馬車の運転手が聞いて来たので素直に答える。
すると「16歳?」と聞き返すくらい驚いている。
運転手的には俺が若いと思っていたが、16歳まで若いとは思っていなかったらしい。
それから運転手は「函館港で働くのか?」と、俺が出稼ぎに来たんだと考えた。
しかし俺は函館港で働くわけじゃ無い。
だから素直に答える。
「いや、岩盛県まで行って兵士の試験を受けるんです」
「なっ!? その歳で兵士になるのか!?」
俺は兵士になる為に陸奥領に行くんだと説明した。
運転手は俺の方を見るくらい驚いている。
普通は18歳くらいから志願する人が多いので、俺のように16歳くらいから志願するのは珍しい。
運転手は言いづらそうに「やめた方が良いんじゃないかな?」と止めて来たのである。
心配してくれるのは良いが、もう覚悟は決まっているので、周りに止められても兵士になるつもりだ。
「そういうわけにもいかないんですよ。心配して貰ってありがとうございます」
「そうかそうか、覚悟はできてるみたいだね。なんか野暮な事を言ってしまって悪かったね。俺の倅が先日の戦争で命を落としたんだ………君に倅を重ねていたのかもしれないな」
この人の息子も兵士で、少し前に起こった戦争で命を落としたのだと運転手は話してくれた。
自分の亡くした息子と、俺の事を重ねている。
だから俺の事を心配してくれたわけだ。
兵士になるのを辞めるつもりは無いが、こんな風に心配してもらえるのは良いものだ。
その後は運転手と意気投合して、色々な雑談で港までの道中を楽しみながら進むのである。
すると運転手が前を指差して「見えて来たぞ!」と、俺に函館港が見えて来た事を伝えてくれた。
俺はスッと馬車の窓から顔を出して見てみると、何年振りだろうかと思う程に久しぶりの函館港だ。
「ここら辺で良いな? 金は半額で良いぞ。コレから大変なんだろ? なら金は貯めておいた方が良い」
「本当ですか!? それは本気でありがたいです!」
ここまでの馬車代を請求されるが、普段請求している額の半分で良いと言ってくれた。
コレは本当に助かる。
これからどれだけの金がかかるのか。
馬車代が節約できたのは大きな収穫だ。
俺は運転手にペコペコッと頭を下げて、馬車が出発するのを見送ってから「よし!」と船場を目指す。
ちょうど津軽外浜に行く便が無いので、とりあえず食事を済ませる事にした。
函館港と言えば海産物だ。
海鮮丼がある店に入って、さすがに上は頼めなかったので並を注文するのである。
するとお腹が空いている俺の前に、ドンッと盛りの良い海鮮丼が到着した。
俺は思わず「美味そうぉ!」と声が出た。
手を合わせて「いただきます!」と言ってから、割り箸を取って海鮮丼に醤油をかける。
そして食べようとした時、店の窓から外が見えたのだが、黒色のローブを着た怪しい人間を発見する。
「なんだ? あんな明らかに怪しそうな格好で……まぁ悪い事してるわけじゃ無いし無視するか」
黒色の怪しいローブを着ているが、何をしていないし俺が何かをする道理は無いと飯を掻っ込む。
あまりの美味しさに10分もしないで食べ終わった。
満足した俺は仕上げに味噌汁を飲み干す。
そして食べ終わると金を、テーブルの上に置いてから満足げに店を後にするのである。
こんなに早く食べ終わると思っていなかった俺は、早いかもしれないが港の近くまで行って休むと決めた。
食事も終わってルンルン気分で歩く。
すると向こうから、さっきのローブを着た怪しい人間が歩いてくるのである。
あっちこっちを歩き回っているのか。
ちょっと分からないが、ああいう人間には関わらない方が良いなと身を合わせないようにする。
だんだんと近づいてきてギリギリのところを通る。
俺は体の芯からザワッとする。
そして反射的に振り返ってローブの人間の手を掴む。
この感じでは女ではなく男だと分かった。
「アンタ、なんで殺気を放ってんだ? 何か悪い事でもしようとしてんじゃねぇだろうな?」
ザワッとしたのはローブの男から殺気を感じたからであり、なんで殺気を放っているのかと聞く。
しかし男は「………」と無言を貫いている。
普通は動揺するか、それとも直ぐに言い訳するかのどちらかだと思っている。
だが男は動揺する様子も言い訳する様子も無い。
それに最大限の違和感を感じる。
明らかに何かを企んでいるような気がする。
「俺は殺気を放っていたのか?」
芯のあるような強い声だ。
低いとか高いとかではなく、声に力強さを感じる。
その声を聞いて、少し困惑したが「あぁ放ってた」と男に伝えるのである。
「すまなかった。少し理由があってな………誰かを害そうとか、そういうわけじゃ無いんだ」
「それじゃあ何で殺気なんて出してんだよ? 理由ってどんな理由があんだよ?」
俺は何の理由があって殺気を放っているかを聞いた。
すると男は周りを少しキョロキョロして見渡してからフードを少し上げた。
俺は目を細めて顔を確認する。
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