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第2章・ロデベリス帝国革命 編

017:貴族たちの舵取り

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 僕がダリアン市長と交渉を終えて、まさかの二クラス将軍と接触していた頃、ファビオは革命派の貴族たちと合流していたのである。


「これで全員なのか?」

「はい、これで全員です。占めて10人の貴族が集まっています! 今回は我々の要請に対応していただき誠にありがとうございます!」


 ファビオの前に集まった革命派の貴族は10人だ。
 階級の大小はあるが、それでも国の貴族が10人も協力してくれるというのは大きい。
 ファビオは貴族の目をジッと見るのである。


「覚悟はできてるみたいだな。それで全ての兵士の数はどれだけいるんだ?」

「兵士の人数は全員で約20万人です」

「20万人にアラン様の12万、そして獣人族の1万を合わせて33万か」


 ここに来て革命派の兵力が明らかになる。
 ロデベリス帝国の兵力が35万として、少し足りないがそこは兵士の質で上回れるだろう。
 しかし決して油断できる状況では無い。
 3つの城砦を破っていかなければいけない。
 1つでも負けたりしたら、作戦が総崩れになる可能性を秘めているのである。


「出陣の準備は、どれくらいで出来るんだ?」

「そうですね。明日の朝には出来ると思います」

「そうか、なるべく早く準備をしておけ。指揮は俺が取るで良いのか?」

「はい! それでよろしくお願いします!」


 ファビオが全軍の指揮を取る事になった。
 しかしこんな風に集まっていれば帝国軍に目をつけられかねないので、各地に散り散りになって作戦が実行される時まで待機する。
 ファビオは全軍の指揮を取るに当たって、周辺地理についても調べるのである。


「こことここにも城があるみたいだな」

「はい。でも、どちらも簡単に陥せると思います」

「まぁ奥にイントゥ城砦があるからだとは思うけどな。イントゥ城砦の周りにある城を陥して食料と物資を補給する様に指示を出しておけ」


 物資や食料は進軍中に減っていくので、城砦の間にある城を陥落させて補給する。
 しかしその際に女性たちに対する強姦や略奪を禁止する様にファビオは促すのである。
 そうでなければ周囲の評価が関わって来る。
 それは僕が昔からファビオたちに教えている事だ。


「ファビオ殿、少しよろしいでしょうか?」

「ん? アンタは確か………貴族の《ペール=ネルダール》だったよな?」

「はい。ファビオ殿に貴族を代表して聞きたい事があるんです!」


 ペールという革命派の貴族がやって来る。
 何かモジモジしながら聞きない事があるというが、その聞きたい事の内容が貴族を代表する事だという。
 どんな事なんだろうかと少しキリッとした顔をする。
 ファビオが聞いてくれると分かったペールは、スーッと息を吸ってから話し始める。


「アラン殿が新たな皇帝になって、ロデベリス3世のように独裁者になるという事は無いんですか? ただトップが交代して現状が変わらない可能性は無いですか?」

「そんな事を心配してるのか。あの人は自分の配下となる人間の為なら、どんな手でも使う人だ。そんな人が独裁者になるとは考えられないだろ」

「………わかりました。ファビオ殿の言葉を信用させていただきます。他の貴族たちにも今の話をさせていただき納得してもらいます」


 ファビオは僕の事を良く思ってくれているみたいだ。
 それを信じるしか無いペールは、他の貴族たちにも話してみて納得して貰うという。
 確かに貴族からしたら革命を成功させたとしても僕が独裁者となってしまったら、何の意味も無くなってしまうので、そこが心配だったのだろう。
 ファビオは自分の騎士団の部下である男を呼ぶ。


「レンナント、貴族たちから目を離すんじゃないぞ。もしかしたらきな臭い事になるかもしれないからな」

「了解しました。他にも見張るべき人間はいますか?」

「いや貴族たちだけで良い。革命を成功した途端、こっち側に攻め込むとかあってはならないからな」


 ファビオは部下であるレンナントに、貴族たちを見張る様に指示を出すのである。
 もしも悪帝を倒したとしても、次は貴族たちが相手になるっていうのは洒落にもならない。
 あとは僕からの指示を待つだけで休息に入る。
 ファビオの休息は独特であり、汗だくになるまで剣を振りまくってから水風呂に浸かる。
 最後に熱い風呂に入るというものだ。


「ふぅ今日も良い休息になったなぁ」

「ファビオ様のそれは休息になってませんよ。逆に疲れが溜まるんじゃないんですか?」

「そんな事は無い! これをしたら次の日からの調子が上がるんだよ!」


 そんなファビオのルーティンに対して、レンナントと共に副団長を務める《ヨン=ヴァレニウス》が苦言を呈するのである。
 それに対してファビオは、これをやったのとやらないのとではパフォーマンスに違うんだという。


「それで俺が調べる様に言っておいた事は、ちゃんと調べがついてるのか?」

「はい。イントゥ城砦の周りには〈魔獣の住処モンスター・スポット〉は確認できませんでした」

「それなら不測の事態は起こらない可能性が高いな。もしかしたらいきなりモンスター・スポットが現れるかもしれないからな、そこには監視を強めろ」

「了解しました!」


 モンスター・スポットとは言葉の通り、魔獣が住み着いている場所である。
 それが進軍する時に衝突したら被害が大きくなる。
 そうなるとイントゥ城砦での攻城戦の難易度が当初の計画よりも遥かに跳ね上がる。
 その為、入念なチェックをしておく必要がある。
 今回の調査ではモンスター・スポットは見つからなかったが、何らかの問題が発生してモンスター・スポットが現れる可能性がある。
 だからファビオはヨンに、まだ周囲の警戒を解くなと指示を出して自室に戻る。


「さてと睡眠を、しっかりと取ろうか………」


 パンツ一丁で布団に入ると、アイマスクをして眠ろうとした時に部屋の扉がけたたましく叩かれた。
 眠りそうになった時に起こされたのでイラッとする。
 布団から出て扉をバンッと開けた。


「うるせぇな! 夜中って知らねぇのか!」

「す すみません! ちょっとファビオ騎士団の耳に入れておいた方が良い情報がありまして………」

「俺の耳に入れておいた方が良い情報? そんなに急ぎで来るような内容なのか?」


 やってきたのはファビオ騎士団の部下で、ファビオの耳に入れておいた方が良い情報だという。
 こんな夜中に来るほどかと聞いて中に入れる。
 そして椅子に座ってから報告を受ける。


「イントゥ城砦から周囲の城に兵士を移しているみたいなんです。それもここら辺を取り囲むようにです」

「もう俺たちの動きに勘付いているみたいだな。今からでも貴族たちのところに行って、明日には動き出すと伝えてきてくれ」

「明日から動くんですか!? ギルドマスターの指示を待たなくても良いんですか?」

「マスターから緊急時の指示は俺に任せると言ってくれているからな」


 ファビオは緊急事態だとして僕の指示を待たずに、イントゥ城砦の攻略に乗り出す事にした。
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