上 下
189 / 201
第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

185:命を賭けた

しおりを挟む
 ローズちゃんとイローナちゃんは、共闘してブギーマンを倒す事にした。しかしブギーマンは1度心臓を奪っているローズちゃんと、女の子供が共闘したところで負けるわけがないと思っている。


「女2人が共闘したところで、俺に勝てると思ってるのか? さっきも言ったが、ギルド・ボガードを安く見やがって………本気でかかって来い。女だろうとギルド・ボガードを舐める奴は殺してやる」


 ローズちゃんは、ブギーマンに向かって走り出す。イローナちゃんは、ローズちゃんの動きに合わせて雷魔法を使って援護しようと考える。
 ブギーマンは自分に向かってくるローズちゃんに対して、グッと力を込めるような姿勢になる。そして目の前にローズちゃんが現れた瞬間に、オリジナルスキルであるオーバーヒートと鉄拳を合わせた技を放つ。
 さっきまでならローズちゃんは、吹き飛ばされるだけだったが今回は違う。何が違うのか、それはローズちゃんの援護にイローナちゃんがいるという事だ。


「そう簡単に、ローズちゃんに手は出させない………」

――豪雷の鉄鎚クラックダウン・サンダー――


 イローナちゃんはブギーマンに狙いを定めて打ち込んだのである。さすがに受けてしまったら、深傷になってもおかしくは無いのでブギーマンはローズちゃんに振おうとした拳を雷魔法の方に向けて放つ。
 そして直ぐに正面から来るローズちゃんに視線を変えるのであるが、そこにはローズちゃんの姿が無かった。どこにいるのかと目をキョロキョロと動かして探すが見つける事ができない。


「そこかっ!? うぅ!!」

「ちっ。ギリギリで殺気を放ってしまった………」


 ブギーマンは微かに殺気を感じて、上を見てみるとローズちゃんが血で作った槍を持っていた。見つけた瞬間と同時にブギーマンはガードの体勢に入ると、ローズちゃんは力一杯に投げ込んだ。
 その槍はブギーマンの腕を貫通した。ダメージの痛みからブギーマンは声を出したが、体温を上げて血の槍を液状に戻して深傷にはならなかった。
 ローズちゃんはブギーマンに投げるギリギリのところで、思わず殺気を放ってしまったと反省する。しかしブギーマンは、それなりの傷を負ってしまって上手く拳を握れなくなってしまう。


「鉄拳を打たせないように俺の拳を狙ったんだな。その作戦は褒めてやる………死闘の時は、頭を使わなければ無駄死にするだけだ。こんな風に頭を使ってダメージを受けるのは、嫌な気分では無いぞ!!」

「新手の変態が現れた………」

「良いぞ、良いぞ!! そう来なくっちゃ面白くないからのぉ!!」


 ブギーマンは頭を使ったやられ方ならば、不快な気持ちにはならないと言って大笑いしている。イローナちゃんはブギーマンの事を新手の変態だと言って、ローズちゃんは面白がっている。
 そして笑っている勢いのままブギーマンは、2人に向かって突進していき、ローズちゃんはイローナちゃんの前に立って血をメリケンサックのようにする。ローズちゃんの拳と、ブギーマンの拳が衝突した。
 オーラとオーラが衝突した為に、バリバリッと目に見える衝撃波が出ている。その衝撃波によって城の中の窓ガラスが全て割れてしまう。


「中々良いじゃないか!! 前に会った時とは違うというわけだな!!」

「お主は弱くなったのではないか!! この程度で、妾に勝てるわけなかろう!!」

「ぐっ!!」


 ブギーマンの拳を押し返し始めて、ローズちゃんは完璧に腕を振り抜いたのである。そのままブギーマンは飛んで行って、王座を破壊して止まる。
 砂煙を払ってブギーマンは立ちあがろうとする。しかしそこにイローナちゃんが襲いかかる。


「ただでは立ち上がらせない………」

――雷鳥ライチョウ――


 イローナちゃんは手に雷を纏わせて、ブギーマンに向かって襲いかかる。ここは避けられないと判断したブギーマンは痺れるのを覚悟してガードを選択した。
 スタンガンを喰らったかのように、痛みに堪える声を出したブギーマンは、一瞬体が強張ったが直ぐに動き出してイローナちゃんを振り払う。
 さすがのブギーマンも息が上がり始めていた。それでも気合を入れる為に、自分の頬を叩いて全身の温度をさらに上げる。イローナちゃんたちから見て、ブギーマンの周りの空間が歪んで見える。


「雷にヴァンパイア………ここまで頭を使わなければいけない戦いは久しぶりだ。俺のオリジナルスキルのように、心が燃え上がってくるようだ!!」

「これは追い込んだら、追い込んだだけ面倒くさくなるタイプの男だった………」

「男ならば、そう来なくては面白くはないだろう。それで妾が、ブチ飛ばして心臓を取り返す!!」


 ブギーマンはローズちゃんに向かって飛び出すと、さっきの槍によるダメージを食いしばって耐えながら高速で拳を振るう。それに合わせてローズちゃんもパンチして対抗していて、互角の時間が続いている。
 イローナちゃんもアシストしようとするが、ローズちゃんの覇気とブギーマンの熱気のせいで近づけない。予想ではローズちゃんが押し返して殴り飛ばすと考える。
 しかし押され始めたのはローズちゃんの方だった。どうにか踏ん張ろうとしているが、ローズちゃんは次第に後ろ重心になり始めて、最後の最後にブギーマンによってローズちゃんは殴り飛ばされた。


「ローズちゃん!?」


 俺は吹き飛んで行ったローズちゃんの方に、体を引きずりながら行くと、衝撃でローズちゃんは気を失っていた。このままではローズちゃんが、危ないのでルイちゃんがいる安全なところ移動させている。
 するとローズちゃんを運んでいる時に、イローナちゃんも風に向かって吹き飛んでいく。このままではミナトファミリーが全滅してしまう。
 俺は足が震えて立ち上がれない中で、全力で脚を叩きながら全身に力を入れて立ち上がる。まさかブギーマンの腹パン1発で、ここまでのダメージがあるとは全くもって予想していなかった。


「ほぉ仲間の為なら立ち上がれないはずなのに、お前は立ち上がるのか………そういうの嫌いじゃないぞ!!」

「無理にでも立ち上がる身にもなって欲しいもんだ。お前がローズちゃんたちに、これ以上の危害を加えるというのなら………命に変えても戦ってやるよ!!」


 そうだ。俺はローズちゃんたちが、これ以上の危険が及ぶというのならば、ブギーマンとは言えども俺の命に変えて戦ってやるという気持ちがある。
 そんな俺にブギーマンは、普通の状況ならば立ち上がれないところを仲間の為だと言って立ち上がるのは素晴らしいとブギーマンは俺の事を褒める。ブギーマンに褒められたところで、全くもって嬉しいとは思わないが全てが悪人というわけではないのかと思った。
 しかしローズちゃんの心臓を持っていて、イローナちゃんたちにも深傷を負わした事は見逃すわけにはいかない。結局のところ命をかけて、これからブギーマンとの第2ラウンドが始まるのは確実だろう。


「ここからは俺も命を賭けて戦うからな………それなりの覚悟をしろよ!!」

「受けてたつぞ!!」


 俺は全身に力を入れて、せめてはブギーマンとの戦闘が終わるまで体が持ってくれと心の中で祈る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。 国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。 女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。 地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。 線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。 しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・ 更新再開。頑張って更新します。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。 異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...