社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

174:化け物対決

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 俺はスマイリーに完璧な奇襲をかけて、生まれた隙を見逃す事なく懐に飛び込んでいった。スマイリー自身でも懐に飛び込まれると覚悟はしていたが、それでも奇襲によって体が強張ってしまっている。


「(腰を落として!! 拳を鉄のように!! オーラを全身に巡らせろ………)吹き飛べっ!!」

・マーシャルアーツ:鉄拳
・筋力増強魔法Level2
――剛腕の鉄拳ジャイアント・ナックル――

「ゔぅ!!」


 俺は全身にオーラを流す事を意識しながら筋力増強魔法を使って、さっきできた鉄拳を上手くやろうと思い出しながらやってみると成功した。鉄拳にプラスして筋力増強魔法が相まって威力が増したのである。
 俺の拳がスマイリーの顔面を捉えると、顔が歪む程の威力で吹き飛んでいった。そして壁に激突すると、壁を貫通して外まで転がっていった。
 スマイリーの仮面は、俺の拳の威力で完璧に壊れた。仮面の下から現れたのは、端正な顔立ちをしている20代半ばの青年だった。どうして仮面をしてまで、自分の顔を隠したがるのか理解できない。まぁイケメンな顔を見せびらかすようにしてる奴よりかは、幾分かはマシだから俺的には良いんだけどな。


「倒しちゃったけど、アレで話は聞けるか………ん? マジかよ。あんなの喰らって立てるのかよ」

「うぅ……クソがぁ………」


 俺は完璧に顔面をとらえていたので、さすがに倒し切って終わった後の心配をしていたが、その心配とは裏腹にスマイリーは震えながら立ち上がっていた。あまりにもクリーンヒットしていたのにも関わらず、立ち上がった事に俺は驚いて敵ながらあっぱれである。
 しかし立ち上がって左右にフラフラッと千鳥足になってしまっている。逆にいえば千鳥足にもならず、普通に向かって来られていたら怖かったところだった。とりあえずは普通の人間である事に安心する。


「テメェは俺の事を化け物だって思ってるみたいだが、テメェだって俺と同じく化け物じゃねぇかよ」

「こんなところで……負けられないんだよ………こんなところで、ギルド・ボガードの看板を傷つけられねぇ」

「テメェにも根性があるじゃねぇかよ。憎い的ではあるが、立ってプライドを見せた事に脱帽だぜ」


 俺は立ち上がったスマイリーに、自分と同じ化け物じゃないかと思った。そして何よりも、敵ながら根性を見せてきたスマイリーに脱帽である。
 しかし立ち上がったのならば、まだ決着はついてはいないという事だ。それならば徹底的にやらなければ、立ち上がったスマイリーに失礼だろう。そうなったら俺は俺のオリジナルスキルを見せてやろうと決めた。


「スマイリーっ!! テメェに面白いものを見せてやるからありがたく思えよ!!」

「面白いものだと? ふざけやがって………」

「ティラノサウルスまでは出せなくても、楽しませてやる事はできるはずだっ!!」

・オリジナルスキル『影絵の動物シャドー・アニマル


 俺はスマイリーに大きな声で、面白いものを見せてやると大々的に伝えた。スマイリー的には、さっきまで優位に立っていたのに、逆に自分が遊ばれる側の立場になった事が許せないらしい。
 そんな事を言われながらも俺は、どうにかオリジナルスキルのコピーを使ってシャドー・アニマルを実演してやろうと思った。さすがにコピーしたてで、ティラノサウルスは出せないだろうがやってみようとする。
 早速、俺はスマイリーに向けてシャドー・アニマルを使って影の狼を出したのである。


「なにっ!? 僕のオリジナルスキルを使った!?」

「どうだ? それなりに面白い余興にはなりそうじゃないか?」

「僕のオリジナルスキルを使いやがって………馬鹿にするんじゃねぇ!!」

――虎の祖サーベルタイガー――

「負けず嫌いは最高じゃねぇか!!」


 俺のオリジナルスキルであるコピーに、スマイリーは素直に驚いている。どうして自分のオリジナルスキルが使われているのかと困惑していながら、頭では俺のオリジナルスキルがコピーだと分かっていながらも、認めたくないという感情が邪魔をしていた。
 それでも自分自身のオリジナルスキルを使われたままでは終われないと、俺の出した狼に対抗してスマイリーはサーベルタイガーを出してきた。そんなの出してくるなんて、あまりにも卑怯じゃないかと思っちゃってる。
 そのサーベルタイガーは、俺の出した狼たちを一掃し始めている。見る見るうちに俺の影は倒れていき、残りは俺になるとサーベルタイガーは、ジッと建物の上にいる俺の事を見てくるのである。


「おいおい。こっちの世界にもサーベルタイガーはいるのかよ………さっきの本気ダッシュと、鉄拳で体力が空になっちまったよ」


 俺は出血量もそうだし、死にそうなところを踏ん張って戦った事での代償が現れていた。立っているのもようやくな状況で、今の俺にはサーベルタイガーを相手にするだけの力は残っていない。
 サーベルタイガーは俺に向かって走り出してきた。完全に俺は、ここまでの人生かと死ぬ事を覚悟してしまうくらいだった。そんな時に、突然としてサーベルタイガーが俺の目の前から消えたのである。どうなっているのかと周りを見てみると、下にいるスマイリーが地面にバタンッと倒れていた。


「クソッ……意識が保てない。こんなところで、あんな奴にやられるなんて………」


 スマイリーは最初に鉄拳を喰らったタイミングで、内臓がほぼグチャグチャになっていた。そして無理しているのを顔に出さず、俺と戦闘していたが顔面にジャイアント・ナックルを喰らった事で頭蓋骨が割れて脳に刺さっていたのである。
 それで内臓の損傷と脳内出血によって、既にスマイリーは立っていられない状況になっていた。俺と同じか上回って満身創痍だったが、その姿を俺には見せずに戦おうとしたのは、またまた脱帽するところだ。
 しかしスマイリー的には、こんなところで俺に負けてしまった事に悔しさを感じている。地面の土を強く握り締めて、小さい時に自分自身へと誓った約束を破ってしまった事に強く後悔している。



* * *



 スマイリーは他の四本刀と同じくヤンリュウマウルで生まれて、同じく貧困生活を行なっていた。しかしそれでも両親と共に、ひもじいながらも楽しく暮らしていてスマイリーは幸せに暮らしていた。


「お父さん、お母さんっ!! 今日もいっぱい、お金稼いできたよ!!」

「そうかい、そうかい。いつもありがとうね」

「ううん!! 大丈夫だよ!!」


 スマイリーは両親と同じく小さい時から、小さな仕事を多くやっていた。その頃は、全くもって苦痛ではなかったが両親が10歳になった時から、酒を浴びるように飲み始めるのである。
 スマイリーが汗水流して頑張って働いた金を、全て両親の酒代に消えていく。普通ならば怒って良いところでも異名の通りに、笑顔で全てを許していた。
 それはスマイリーが家族に対して、愛情を感じていたので笑顔で許せていた。
 しかしそんなスマイリーでも許せる事がなく。現在のスマイリーを作り上げる事になる、ある事件がスマイリー家族に起きてしまうのである。
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