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第4章・ロリっ子な吸血鬼の女の子

160:生まれた隙

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 俺たちは砦攻撃を開始した。
 そして俺が砦の奥に進んでいくと、今回の目的であるギルド・ボガードの幹部の服心たちが現れる。笑った鬼のような仮面を付けたスマイリーという男だ。


「確かに歳の割には、良く戦えているんじゃないか。でも俺たちのような本物の強者とはランクが違う。これじゃあ及第点止まりだぞ」

「大きなお世話な奴だな。いいや、お節介な野郎じゃない………ただ自分の力を過信している馬鹿だな」


 スマイリーは俺の事を歳の割には強いが、ただ強者とは違うんだと言ってきた。別に気にする事ではないのだろうが、ここは乗ってやった方が戦況は良くなるのではないかと俺は考えた。
 前世の俺ならば口答えなんてした事はないが、ここは異世界で第2の人生だ。好き勝手に生きると決めたのならば、こんなところで舐められるわけにはいかない。その2つがスマイリーの挑発に乗った意味だ。


「嬉しいじゃねぇかよ。ただの雑魚ってだけなら時間の無駄だったが………こりゃあ良いタイマンになるわ」

「言われなくても俺の完勝で、お前からギルド・ボガードの情報を聞き出してやるよ!!」

・炎魔法Level1《ファイヤーハンド》
・闇魔法Level2《ドレインハンド》
――――炎魔の拳イフリート・ナックル――――


 俺はメリケンサックを付けると、スマイリーに向かって走り出す。スマイリーも向かってくる俺に対して、ドシッと踏ん張って剣を構える。
 とりあえず渾身のパンチをスマイリーに向かって放つと、地面がドンッと陥没してしまった。しかしスマイリーは笑みを浮かべるくらいに、余裕たっぷりで俺の拳を受け止めやがったのである。


「腰の入った良いパンチじゃないか。こんなに全力でやってくれて嬉しいぞ!!」

「そりゃあどうもな!! このパンチを顔面に喰らったら、もっと気持ちいい事になるぞ!!」

「それは魅力的な提案だが、ここの仕事があるんでね」


 スマイリーは俺のパンチを素直に誉めてきた。気持ち悪いと思いながらも、俺は頬に受ければ気持ち良くなれると提案をした。その提案は魅力的だったらしいが、仕事からあるからと言って押し返した。
 押し返された俺は後ろに飛ばされて着地する。そこを狙ってスマイリーが剣を構えながら向かってきた。魔法もオリジナルスキルも使わずに、ここまで強いのかと俺は少しゾッとしてきた。


「身体能力は高いみたいだが、魔法もオリジナルスキルも使わないなら対処はできるぞ!!」

「そうか? それなら少し早いが、オリジナルスキルを使ってやるか………直ぐに死ぬんじゃないぞ」

オリジナルスキル『影絵の猛獣シャドー・アニマル

「なにっ!?」


 俺はスマイリーにオリジナルスキルを使わないのならば、対処は可能だと言い放った。それに対して少しムスッと顔に出ると、オリジナルスキルを使うという。
 どんなスキルなのかと思ったら、スマイリーの影の中から影絵のオオカミが2体も出てきた。そうスマイリーのオリジナルスキルは自分の影から影絵の動物を、実際に召喚するという能力だった。
 オオカミを出すと俺に向かって放ってきた。動物くらいならば問題ないと思っていたら、その動物たちに合わせてスマイリーも斬りかかってくる。確かに、これは動物だけではなくスマイリーにも目を向けなければいけない為、さっきまでとは難易度の桁が違う。


「危なっ!? 動物の使い手ってわけか………こりゃあ確かに普通なら数分も持たないだろうな」

「俺が戦ってきた中で、ここまで持ったのは君が初めてだぞ? それだけで賞賛に値するが………もっともっと俺を嬉しくさせてくれよ!!」

「お前を楽しませる為にやってるわけじゃないが、手応えが無いのも面白くは無いか………たくっ。俺の性分も面倒なもんだな」


 どうやらスマイリーが、オリジナルスキルを使った相手の中で、俺が最も長く生きているという。確かに難易度は高くなっているが、これくらいじゃないと異世界を冒険してる感が感じられない。
 楽しくなりそうだと互いに感じてから、スマイリーがオオカミやらリスやらを出して俺に向かわせてくる。リスも出てきたが侮れない。
 たくさんの動物たちとスマイリーが向かってくるのに対して、俺はドラゴン・ブレスを出して動物たちを一掃するとスマイリーとの距離を詰めていく。そして動物を出させる暇なく攻撃を仕掛ける。


「これはこれは凄い攻撃だな!! さっきまでとは違ってギアが桁違いだ!!」

「お前には動物を出させる隙なんて与えねぇよ!!」

「それは、どうかな?」

「なんだと………うっ!?」


 俺の怒涛の攻撃にスマイリーは笑顔になって、喜んでいるように見えるが、俺が窮地に追い込んでいるとはスマイリーは思っていない。と俺は考えていたが、逆に窮地に立たされていたのは俺の方だった。
 スマイリーの影は俺の背後に伸びていて、そこからオオカミが現れて俺の脇腹に噛みついてきた。痛みで顔を顰めてしまった瞬間、スマイリーの剣は俺の胸に斜めに振り下ろされたのである。



* * *



 場所は変わってルイちゃんの方に変わる。
 ルイちゃんは四本刀のアングリーという奴と戦闘を行なっているが、アングリーはルイちゃんよりも遥かに大きくガタイが良い怒った鬼の仮面を付けた奴だ。


「女のガキが、俺様を舐めるんじゃねぇ。こんなガキに舐められるなんて、怒りで一杯だ………ここで殺して八つ裂きにしてやるよ!!」

「できるもんならやってみるでござる!! 拙者の武士道は、誰にも崩せないでござるよ!!」

「武士道が何なのかは知らねぇが、ガキに大人の事情なんて分かりはしないだろ!! 分かったフリをされる事こそ怒りで火を吹きそうだ」


 アングリーはルイちゃんが、自分を舐めていると思って憤りを感じているという。しかし完全な八つ当たりだと、ルイちゃんは思って刀を構えるのである。
 アングリーの武器は引くくらいに重たそうな木の棍棒を持っている。常人ならば持ち上げるのも難しそうで、武器としては完全に欠陥があるところだろう。しかし体格が良いアングリーにしては威力も出て良い武器だ。
 アングリーは棍棒を地面に引きずりながらルイちゃんに接近する。ルイちゃんは刀を鞘にしまって左足を後ろに引いて、グッと腰に力を入れる。


「潰れろ!!」

「居合抜刀術………」

――定型居合メンゼンツモ――


 ルイちゃんはアングリーが、距離を詰めたところから棍棒を振り上げた瞬間の隙を狙う。居合抜刀術で、アングリーの胸をバッサリ斬った。
 斬られた瞬間にアングリーは、振り上げた棍棒を地面にドサッと落とした。ルイちゃんは完全に、アングリーの隙を突いて斬る事に成功した。少しは耐えたとしても地面にバタンッと倒れるだろうと考えている。
 しかし何秒待ってもアングリーが倒れる音が聞こえずに、どうなっているのかと振り返るとアングリーは棍棒を拾っていた。ルイちゃんは焦って剣を握り直そうとしたが、拾った姿勢のままルイちゃんに棍棒を振って殴り飛ばしたのである。


「あの程度の傷で死ぬと思われている事に、これ以上ないくらいの怒りを感じているぞ!!」


 アングリーの胸の傷は、死に至るまで深い傷ではなくタラーッと血が少し垂れるくらいだった。
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