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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

107:完膚なき

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 俺は今、共和傭兵団・第4師団長のロジェと対峙している。俺たちは互いに睨みをきかしているが、俺の視界にロジェの目の下に彫られている星の刺青が入る。


「ぷふーっ!!」

「なに笑ってんだ? 俺たちに喧嘩を売っておいて、なにを調子に乗ってるんだ!! あぁん!!」


 そりゃあ笑ってしまうだろ。
 ロジェの目の下に彫られている刺青が、あまりにも似合っていないというか、誰が入れてもオシャレになりようがない。この刺青をイケメンが入れたとて、女の子が地面に倒れ込んで爆笑するくらいにダサいんだよなぁ。


「いや、ごめんごめん。アンタからしたら、その刺青はオシャレだと思ったんだもんな………あるある、自分にしか理解できないオシャレってのはさ」

「なに言ってんだ? おい。本気で俺を馬鹿にしてんだろ? この刺青がダサいって言ってんだろ? これ以上にオシャレな刺青なんてねぇだろ!!」

「はいはい!! 確かにオシャレだわぁ………プププッ。ごめんて、ツボっちゃって我慢できないんだわ」


 本気の目で言っているから、さらに俺のツボを突いてきて爆笑が抑えられない。このロジェが芸人になれば、俺は毎日のようにでも劇場に通ってやると思っている。
 あまりにも俺に爆笑されて完全に、堪忍袋の尾が切れかかっているロジェは、プルプルと顔を赤くしながら震えている。これで怒らない方が変ってくらいに、俺が煽ってしまったから震えてんだろうけど、こうも分かりやすく怒るとは思わなかった。


「舐めんじゃねぇよ!! ぶっ殺してやる。鉄拳っ!!」

「そう怒るんじゃねぇよ。そんなに怒ってたら、動きが単調になっちゃうじゃんよぉ………」

・炎魔法Level1《ファイヤーハンド》
・闇魔法Level2《ドレインハンド》
――――炎魔の拳イフリート・ナックル――――

「なにっ!? 俺の鉄拳と張り合っているだと!?」

「よく見ろよ。張り合ってねぇ、アンタの拳の方が後ろに押されてるんじゃんか………力負けだ!!」


 ロジェは鉄拳を使って俺に向かって飛んでくる。そんなロジェに対して俺は右手を武装して、その場でグッと踏ん張り鉄拳に合わせてパンチを放つのである。
 2つの拳が重なった瞬間に、バリバリッという衝撃波が出るくらいの威力だった。ここが砂漠である為に、後ろで見ているエッタさんたちに砂が飛んできて目を開いて入れない。
 少しの間、刀の鍔迫り合いのようにグーッと押し合っていたが俺の方が力が上だった。俺がロジェを押し切ると、砂漠に数回バウンドしてドサッと倒れ込んだ。しかし俺に負けるのは嫌だからと、立ち上がって余裕っぷりをアピールしてくる。


「俺の鉄拳を押し切っただと。俺の鉄拳は、共和傭兵団の中でもトップレベルだぞ!!」

「このレベルでトップレベルだって? アンタがトップを名乗ると、共和傭兵団が安く見られるぞ」

「ふざけるな!! お前に、俺たちの何がわかる!!」

「何がわかるって言われても、アンタらの事を理解しようとしちゃいないんだよ。全くもって興味がないんだよ」


 自分の鉄拳に自信があるみたいで、俺に押し切られたのが認められずに飛沫を飛ばしながら怒っている。こんなレベルでトップを名乗っているのには笑い話になったっておかしくはない。
 俺の発言に対してロジェは、共和傭兵団の事を馬鹿にされた瞬間に自分だとを馬鹿にするなと叫ぶ。何が分かると言われても、何の興味もないから理解しようとも思っていない。唯一気になるところがあるとすれば、どうして何も関係のない人間たちを苦しめる事ができるのかという事だ。


「興味ないだとっ!! お前たちが、俺たちの仲間を潰して回ってると聞いたが、どうして邪魔をするんだ!!」

「邪魔をするだって? 何に対しての邪魔だと思ってるんだ?」

「我々のカホアール教は素晴らしいものだっ!! スミカ様は多くの民を助けて下さる方だ………それなのに、お前たちは世界平和の邪魔をするのかって言ってんだ!!」


 これは助けようがないくらいにオリヴァーから洗脳を受けてるんだろう。そのカホアール教の神様である、スミカ様を完全に救世主だと思っているみたいだ。そんなのが居たのかは、俺なんかには分からない事だが他人に影響を与えたらダメだろ。
 こんな奴とまともな会話が成り立つわけがないと、俺は思うと右耳に入った声を左耳に流して頭に入れない。こんな話を聞いていたら時間の無駄ではないかと思って、チラッと後ろを向くとアラグが顎をクイックイッとやって急かしてきた。
 俺はハァーッと溜息を吐くと、こんな奴を相手にしたのは失敗だったかもしれないと後悔しているところだ。しかし片付けないと先に進めないのも事実だからと気合いを入れる。


「まぁ興味はないが、お前らの理由があるみたいだな………それは知らないけど、とっとと決着をつけようよ。俺たちも、それなりに時間がないんだからさ」

「こんなもんじゃ話は足りないが、まぁお前たちを殺してから悟らせてやるよ!!」

「おいおい。宗教を語ってる奴らが、殺すとか言って良いものなのか………カホアール教は、ガバガバ過ぎるだろ」


 決着をつけようと言った時に、殺してから悟らせてやるって宗教団体を名乗ってる奴が口にして良い言葉なのだろうか。尚更、カホアール教が怪しさを増していくんだと気づけよ。
 まぁ俺には関係のない事だから、コイツらの教団が怪しまれて立場が危ぶまれても興味はない。しかし俺たちの時間を使って、無駄な事を聞かされるのはたまったもんじゃない。


「今度は、かなり響くのをいくから覚悟しろよ? やり返さなきゃ、頭でも飛んでいくから気をつけろよ!!」

・オリジナルスキル『牛変化バイソン
・炎魔法Level1《ファイヤーハンド》
・氷魔法Level4《氷の時代アイス・エイジ
――迫撃砲の一撃ラディカル・スマッシュ――

「牛っ!? どうなってんだ、そ………」


 俺はバイソンに変化して腕力を上げると、炎の熱と氷の冷気でパンチの威力を、何十倍にも膨れ上げさせたのである。
 ロジェは速度についていけるわけがなく、俺がバイソンに変化したところで置いて行ってしまった。そんな無防備な人間の顔面に向かって拳を振るってしまう。それを受けたロジェの顔面は、スイカ割りをしたかのように真っ赤なモノが周りに散らばる。


「お おいおい。ちゃんと俺は警告したからな………危ないと思ったら避けるくらいはしてくれよ」

「おーっと、ミナト君を怒らせたら怖そうだ。こんなにも頭の破片が飛び散ってるんだからなぁ」

「冷やかすんじゃねぇよ。これくらいだったら、避けられると思ったんだけどなぁ………」


 俺としては避けるか、打ち返してくると予想していたので顔面が吹き飛んでしまった事に驚く。そんなチャンスをアラグが見逃すわけがなく、馬から降りると俺の周りをニヤニヤしながら回ってロジェを殺した事を指摘してくる。


「ミナト様の実力を見誤った、あの男が悪いんです!! それにミナト様だって手を抜いてくれたんですから!!」

「ミナト。見事なヘッドショットだったよ………」


 エッタさんとイローナちゃん的には、俺の事を慰めてくれているのだろう。確かに嬉しいが、少し言葉に棘がある感じがして心に突き刺さるのである。
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